数学ができる・分かるようになり,授業を通 じて社会性も身につけさせる

(高)第 3 分科会
その際,生徒の学習観や授業観,課題の条件や集団
構成の条件等も考慮する。
数学ができる・分かるようになり,授業を通
じて社会性も身につけさせるための試み
3
―学習環境作りの視点から―
研究仮説
高校数学の学習における小集団学習のあり方や意
義について新たな知見および視点が生まれることを
宮城県石巻北高等学校飯野川校
期待する。
茂泉 優
4
1
主題設定の理由
クラス替えをしたら,数学ができるようになって
研究の方法と概要
2014 年 9 月上旬~中旬に,小集団学習を取り入れ
た授業を複数回実施する予定である。
きた。
席替えをしたら,数学が分かるようになってき
その際,学習観及び授業観の調査を質問紙により
たし,コミュニケーション力も高まってきた。
このよ
実施する。
小集団学習の際には,集団の心理的な特徴
うな話しを耳にすることがある。担当教諭等に変化
を数学的に研究するソシオメトリックテストの結果
がなくとも,環境条件に伴う変化は,数学の学習に限
を元に班編成を行う予定である。
らず他教科にもあることだと考える。
「学習とはどのようにして起こるのか」という疑問
各々の実施の最後には,多肢選択型及び自由記述
型による質問紙調査を行う。
から,高校生が持つ学習観をボトムアップ的に調査
した文献によると,学習方法や学習量に加え,学習環
また,2014 年 9 月下旬に数名の生徒を対象にイン
タビュー調査を実施する予定である。
境も大きく作用しているという報告があった。
学習環境にも,学習場所としての環境,学習集団づ
くり,学習習慣の育成などがあるという。
5
研究のまとめ
本研究は,高校数学の学習における学習集団づく
学習集団づくりの点で,生徒同士の人間関係づく
りに着目し,学習形態として小集団学習を取り上げ,
りは,『よい授業』づくりの大きなポイントとなると
複数回にわたる授業,行動観察,質問紙調査及びイン
いう報告がある。
その中で,学習形態の一つとして小
タビュー調査を行う。結果については大会発表時に
集団学習がある。
報告する予定である。
少人数の集団では,他のメンバーからの心理的圧
「良い授業」
の尺度は,学習者一人ひとりにより異
迫が小さく,対人的技能・態度の好ましい形成が期待
なり,日々変化していき,それは授業者にとっても同
でき,学習内容の整理・定着が可能となるという。
様であると考える。今後の進路の見通しによっても
小集団形成の際,学習効果面でも,課題の条件,指
導過程,集団構成の条件等も影響を与えるという報
告がある。
異なるであろう。
生徒がどのような進路をとるにしても,広義の意
味で社会性というのは必要である。数学の授業を通
数学における高校生の授業観の構造や個人差を複
じて学習内容を頑強に習得し,さらにコミュニケー
数の学校で調査した文献によると,様々な志向が存
ション能力まで身につけられるような授業展開の一
在し,大学進学率,性差による有意な相違も存在して
つとして小集団学習について検討するのも意義があ
いる。
るのではないかと考える。
以上のような背景のもと,学習観や授業観が異な
なお,本研究において,課題もいくつかある。第 1
る中,数学学習において小集団学習を導入し,学習効
に,学校やクラスにより大学進学率やクラスの男女
果面,対人的技能・態度の形成の視点から適切な方略
比の相違があり,総合的な考察のためには複数の学
を検討するために本主題を設定した。
校学級で同様の調査を行う必要がある。
第 2 に,小集
団学習形態は他にもいくつか存在し,さらに検討を
2
研究の目標
重ねる必要である。第 3 に,学習効果について,でき
高校数学の学習に小集団学習を導入し,学習効果
ることとわかることのより明確な区分を行う必要が
面,社会性の育成の視点から適切な運営方法を検討
ある。
以上から,今後更なる研究の蓄積と検討が必要
する。
である。