平成27年度 青野原小中学校 校内研究計画

平成27年度
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研究主題
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主題設定の理由
青野原小中学校
校内研究計画
9年間で学びと心を育む小中連携教育をめざして
~学ぶ喜びを味わい、確かな学力を身につける授業づくり~
<今、小中学校が抱える諸問題について>
近年、小学校と中学校の間に共通する問題として、小学校から中学校への移行の際のいわゆる
「中1ギャップ」問題、不登校やいじめの発生、自尊感情の低下、学習離れ等があり、どのよう
な対応をするのか、どの学校にも解決が求められている。
しかしこれは、一つの学校の中だけで自己完結的に努力しても成果となり得ないような課題で
はないだろうか。むしろ、小学校と中学校が力を合わせてこそ解決の方向が見えるのではないか
と、私たちは思っている。
<小中連携の積み重ねが育てたこと>
かつて本校にも他者を拒絶するかのような険しい表情の生徒達がいた。しかし、そんな彼らも
幼い小学生と関わるときには、この子がこんな表情になるのかと驚くほど、穏やかでやさしい笑
顔を見せるのであった。
これを励みに、小中の教職員集団は時には試行錯誤しながらも、少しずつ少しずつ懸命に連携
を模索し、共働の行事や乗り入れ授業を開発しながら、学びと心の両面で子ども達を育ててきた。
始めたばかり、手探りの小中合同運動会で「がんばれー!」と、発音さえままならない幼い声
で精一杯応援する小学生の目の前を、彼らは全力で走り抜け、真剣に競い合い、満面の笑顔で応
援合戦をし、フォークダンスをしたのである。
遊んでくれるとき、あんなにやさしい中学生たちが見せるこうした真剣な表情や、迫力満点の
研ぎ澄まされた集中力。若々しいたくましさ。団結力。文化祭で見せる心を一つに合唱する、凜
とした清々しさと一体感。
中学生のそんな姿は、様々な困難を抱えて前向きな意欲を失いそうになる児童にも、やがて自
分もあんなふうになりたいと幼い心に憧れとなって焼き付き、自らの進むべき道を無言のうちに、
しかし鮮やかに示してきたのである。
それは、どんな説教よりも具体的で、説得力を持っていた。
今、青野原小中に学ぶ子ども達は様々に課題を持ちながらも、例外なくまっすぐ教師を見つめ、
授業に取り組んでいる。この姿こそ、長年培ってきた大きな成果だと私たちは考えている。
中学生の一つ一つの努力が小学生の成長につながり、小学生のひたむきながんばりが中学生を
自立へと促していく。この優れた教育作用は、単独の校種で生み出すのは難しい。
<小中連携そのものが大きな実践的研究>
ふりかえって今、私たちは青野原の子どもたちに、生きる力につながる様々な力を育てるため
には、小中が連携して教育にあたるのが最良の方法ではないかと考えている。
私たちは、様々な困難をもつ思春期の児童生徒に寄り添い、学びの面でも人としての成長の面
でも力をつけたい。自己の有用感や存在感を十分に感じ取らせ、自己肯定感や若者らしい誇りを
強めて、ここを巣立たせていきたい。なんとしても、全員を希望する高校に進学させたい、と思
う。そして夢を見つけ、夢に向かい、自分を探す旅を豊かに続け、全員が幸せな人生を送って欲
しいと願っている。
そのために、私たち教職員集団は一つになって連携し、挑戦を続けていきたいと思う。
<小中連携の優れた教育機能>
少し前まで、教育界で使われていた「小中連携教育」という用語は、「小学校から中学校への
円滑な接続を目指す教育」という意味合いが強かったのではないかと思う。しかし、これまでの
私たちの取り組みでは、それにも大きな効果はあるが、そうした部分的な局面だけでなく、9年
間を通した大きな教育的効果があることを実感している。
連携の幅を年々広げ、合同行事も充実させ、小中をまたがった授業交流も積極的に行ってきた
結果、確実に学力向上と心の成長で成果を挙げてきたからである。
とりわけ「豊かな学びと心の育み」を重点に、小中混合のグループで研究し共働で取り組んで
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きたことにより、育ってきた子どもたちの学びの姿勢や落ち着いた生活態度には、目を見張るも
のがある。
そこで、これまでの研究・実践で明確になってきたことを整理してみると、小中連携には以下
のような非常に有効な教育的機能があり、効果を上げているように思う。これを青野原型小中連
携教育のいわば研究仮説として、教職員全員の共通理解のもと、今年度も様々な場で子どもたち
の成長という大きな成果を目指して取り組んでいきたいと思う。
<研究の仮説 ~優れた小中連携の機能を生かして~ >
(1)息長く継続して育てることが必要な内容は、小中連携が有効である。
小学校、中学校単独だけでは完結しない、9年間のスパンでこそ育てられるものとして、「学
ぶ意欲、学ぶ習慣、自己有用感、自己肯定感、仲間を思いやり行動する力、仲間と充実した生活
をつくっていこうとする創造的な実践力」などがある。
これからを生き抜く子どもたちに欠かせない「プライド」や「自己教育力」を育てるには、思
春期前期から後期まで、つまり子どもから大人へという大事な節目に寄り添って絶えず見守り励
ます教職員集団と、ゆとりある9年間のスパンがきわめて有効に働くように思う。
(2)児童・生徒のありのままを受け止め安心感を与えるには、小中連携が有効である。
子どもたちの中には、様々な困難や不安を抱えて入学してくる子もいる。そうした子どもたち
に、「あなたはここで勉強すればいい。安心してここにいればいい。」「卒業までずっとそばにい
るから、ここでがんばろう。」というメッセージは、小学校の教員だけが伝えれば良いのではな
い。中学校の教員も同じように、思春期の子どもたちに寄り添って、卒業まで支えていける本校
のような連携が有効なのではないだろうか。
(3)小中連携で「新しい学校文化を創る」という発想で取り組むのが有効である。
小・中学校教職員が互いのカリキュラム、生活面などの違いを知り合い、学び合い、尊重し合
うところから本校の連携は進んできた。教職員の意識を一言で言うなら「共働」である。
例えば、本校は中学校教員が小学校の算数で TT をやり、英語・外国語活動、理科や音楽を指
導し、小学校教員も中学校の数学科や国語科で TT をやり、指導してきた。これは、中学校が教
科担任制をベースにしているからこそできることである。
だから、私たちは一つの学校になって同じシステムで教育にあたろうとしてきたのではなく、
教職員が一つになって子どもたちの教育に当たろうとしてきたのである。言い換えれば、私たち
は『一貫教育』ではなく、互いの学校のスタイルや文化を尊重しての『連携教育』を進めている。
これは、これまでの単独校の延長では絶対に発想できなかった新しい学校文化を、日々創って
いると言えるし、そう考えた方がかえって自然に取り組めるのである。
(4)教職員の教育への意気込みが高まる。
連携、共働のためには、日常的な話し合いや情報交換、打ち合わせが欠かせない。良い加減な
提案では、小中にまたがった職員集団は動かせないからである。これではどうだろう、あれでは
どうだろうかと、共に考え合ってきた私たち自身が、実は互いの努力を励みに、育てられていた
のだと思う。活気あふれる若い職員の多い本校にあって、互いに影響し合って授業力や児童生徒
指導の力を伸ばすにも、連携は非常に有効である。
<今年度の合同校内研究の方向性>
私たちは、青野原型小中連携教育自体が長く大きな実践的な研究として取り組んできたが、そ
の年その年でさらに具体的なテーマを持って合同で校内研究を行ってきた。
昨年度まで小中連携の持つ『9年間のスパン』と、2校の職員が1つの学校として指導できる
優れた教育機能を活かして『学びの育み』グループと『心の育む』グループで「確かな学力の定
着と、豊かな心の成長」を育んできた。今年度から、校内研究のこのグループを一つにして取り
組んでいきたい。
次の3点が主な理由である。
①生活や学習に困難を持つ児童・生徒の増加により、学びの意欲や自己有用感が総合的な学
習や大きな行事など、短期的な取り組みで大きな成長を期待するのではなく、教科学習と
特別活動を含む日々の授業で高まっていくようにすることが求められてきたこと。
②9年間のスパンが最も有効に働くのは児童生徒指導や心の教育、そして学ぶ力である。
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特に、一貫校のように特別な教育課程を編成しないため、9年間蓄積できるのは学ぶ力の
基盤となる『言語能力』や『学ぶ姿勢』である。とりわけ自信や自己有用感が学びの意欲
に直結する以上、これは小中一体で指導した方が良い結果が得られると思う。
③教育委員会の人事上の優遇措置がなくなって、過去のような乗り入れ授業が難しくなり、
それに代わる小中をつなげるための、異年齢を活かした交流授業や合同授業の創造が求め
られているからである。
以上、両グループは統合して共働のテーマをもとに研究を行う。
ただし、これまで大きな柱としてあった『9年間を一貫した児童生徒指導』として「自らを伸
ばす力(自己教育力の向上)
」などの指導は、担当を中心に引き続き担っていって欲しい。
また、運動会や文化祭等、これまで小中連携を牽引してきた分野での成果を引き継ぎ、今後も
自己有用感を育てる場として担当者は充実を図って欲しい。
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ねらい
めざす青野原っ子像
「素直で思いやりのある
自分を大切にする
夢のある子」
両校がめざす教育実践の姿
「共有・共働」をキーワードとして、小学校・中学校の境をできる限り取り払い、一
つの学校に在籍する子どもとして小学校1年生から中学校3年生までを捉え、子ども
も教職員も一体となって歩んでいく姿
基本方針
・施設一体型小中連携教育校として、互いの学校の持ち味を生かしながら、9年間で子ども
たちを育てようとする新しい学校の姿・文化を創造する。
・「めざす青野原っ子」の育成を目標として、子どもたちにより豊かな学びと心を育てるため
に、共働して授業や指導方法の実践的な研究を行い、小中教職員の教育的技量を高める。
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研究方法
・小中が一体となった研究組織を構築し、過去の研究成果や課題を財産としながら児童生徒
や教職員の実態に即して、豊かな学びと心の育みをめざす。
・経験年数の浅い教職員が多いことも鑑みて、原理・原則に基づく基本的な授業づくりの研
修&実践をベースに、先輩教師はさらに思考・判断・表現力の向上を狙った授業づくりに
挑む。
・研修の講師は、矢野先生他、校内の先輩教師や学校教育課、総合学習センターの指導主事に
依頼する。
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