D.C.通信 海外だより 連載 54 中村岳志(JA全中農政部WTO・EPA対策課<在ワシントン>) November, 2015 アメリカの米生産 ――カリフォルニア州を訪れて 米が収穫期を迎える 9 月、カ ha /戸)が生産を支えている。 リフォルニア州の稲作地帯を訪 連携して効率よく収穫 問する機会を得た。 ■大規模稲作農家を訪問 今回は、その内容を含め、ア サンフランシスコの北に位置 ha 程度だという。一方、コシヒ メリカの米生産の概要について するサクラメント盆地は、シエ カリは倒伏し、効率よく作業が ご紹介したい。 ラネバダ山脈の雪解け水を利用 できない場合が多いため、1 日 したかんがい設備に支えられ、 10ha 程度とのことだった。 ■アメリカの米生産の概要 州内屈指の米生産地である。 米国農務省(USDA)による 今回訪問した農家は、1854年 ■低コストの良食味米との競合 と、アメリカでは、長・中・短 から 5 世代にわたり稲作を続け 本農家が生産するコシヒカリ 粒種の全てが栽培されており、 てきた。入植時は約1.6ha から は高品質で知られる有名ブラン 生産量は2013/14作物年度で約 始めた経営面積は、受託分も合 ドに成長しており、試食したと 862万 t。このうち、長粒種(約 わせ、中粒種が約1,012ha、短 ころ、炊きたてならば日本産と 598万 t)はアーカンソー州や 粒種(コシヒカリ)が約1,214ha 区別は難しい味わいであった。 ルイジアナ州などの南部が中心 まで拡大し、昨期の収量はそれ アメリカの米生産コストは、 であり、日本の米と競合する中 ぞれ約 1 万 t(反収約1,000kg) 、 60kg 当たり2,100円とされ、日 粒種(約249万 t)と短粒種(約 約7,500t(反収約620kg)に上 本( 約 1 万5,200円 /60kg) と 14万 t)の栽培は、カリフォル る。コシヒカリについては、食 大きな格差がある状況である 注。 ニア州が中心である。 味を向上させるため、施肥バラ アメリカの米生産者団体が環太 ンスなどを工夫しており、高級 平洋連携協定(TPP)を通じて ■カリフォルニア州の米生産 米として市場・消費者の評価を わが国への主食用米の輸出拡大 カリフォルニア州は、全米の 得ているとのことだった。 を狙っている中で、品質を伴い ながら低コストで栽培されるア 生産量のうち、中粒種約81%、 短粒種約98%を占めている、一 ■複数台の大型農機での収穫 ほ じょう 大生産地である。内訳は、中粒 訪れた圃場は、ちょうど中粒 種が約201万 t、短粒種が約14 種の収 穫真っただ中。横幅約 万 tと、ほとんどが中粒種であり、 7 m のコンバイン 6 台と補助農 大規模農家(平均経営規模160 機で作業、作業面積は 1日に60 メリカ産米は、日本にとって脅 威となると感じた視察であった。 注:農林水産省「米をめぐる関係資 料」 (平成27年 7 月) 2015/11 月刊 JA 37
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