2015 年度 制御工学 II 期末試験 (模範解答) 1 2015 年 9 月 28 日 河合康典 2015 年度 制御工学 II 期末試験 (模範解答) 2015 年 9 月 28 日 1 限 (9:30-10:50) 注意:途中計算が解答欄に記入されていない場合は減点とする。 [問題 1] (配点 25 点 (各 5 点))*学生の到達目標 (4), (5) ある開ループ伝達関数 L(s) のボード線図を図 1-1 に 示す。以下の問いに答えよ。 (2) 位相交差周波数 ωpc は,位相が −180◦ のときの周 波数なので ωpc = 2 [rad/s] である。 (3) ゲイン余裕 (GM) は,ωpc におけるゲインである (1) ゲイン交差周波数 ωgc [rad/s] を求めよ。 ので,GM= 20 [dB] である。 (4) 位相余裕 (PM) は,ωgc における位相であるので, PM= 60 [◦ ] である。 (2) 位相交差周波数 ωpc [rad/s] を求めよ。 (3) ゲイン余裕 GM [dB] を求めよ。 (5) ボード線図においてゲイン K を増やすとき,ゲイン (4) 位相余裕 PM [◦ ] を求めよ。 線図は変化するが位相線図は変化しない。2 [rad/s] (5) KL(s) のゲイン交差周波数 ωgc [rad/s] が 2 [rad/s] のとき,ゲイン K をおよそいくらにすればよいか のとき −20 [dB] であるので,20 [dB] 上がればよ い。よって, 求めよ。 K = 10 (1-2) このときのボード線図を図 1-2 に重ねて示す。 −1 10 0 10 0 10 Frequency [rad/s] 1 10 1 10 図 1-1: ボード線図 [解答] 図 1-2 のように考える。 (1) ゲイン交差周波数 ωgc は,ゲインが 0 dB のとき の周波数なので ωgc = 0.4 [rad/s] である。 50 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 −5 −10 −15 −20 −25 −30 −35 −40 −45 −50 −55 −60 −2 10 −80 −90 −100 −110 −120 −130 −140 −150 −160 −170 −180 −190 −200 −210 −220 −2 10 Magnitude [dB] −1 10 Phase [deg] Phase [deg] (1-1) を満たす K を求めればよい。 Magnitude [dB] 50 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 −5 −10 −15 −20 −25 −30 −35 −40 −45 −50 −55 −60 −2 10 −80 −90 −100 −110 −120 −130 −140 −150 −160 −170 −180 −190 −200 −210 −220 −2 10 20 log10 K = 20 GM −1 0 10 10 10 1 PM −1 10 10 Frequency [rad/s] 0 図 1-2: ボード線図 10 1 2015 年度 制御工学 II 期末試験 (模範解答) 2 [問題 2] (配点 30 点 (各 10 点))*学生の到達目標 (3) (2) 点 (-1,0) を左に見えるように動く。よって,安定 で 開ループ伝達関数のベクトル軌跡から,ナイキスト ある。 の安定判別法を用いて,制御系がそれぞれ安定であるか (別解) 図 2-2 より,ナイキスト軌跡は, 点 (−1, 0) どうかを判別せよ。Π は,開ループ伝達関数の極の中 のまわりを時計方向に 1 回,反時計方向に 1 回ま で実部が正であるものの個数を表す。 わっているため N = 1 − 1 = 0 である。また,右 半平面に極が存在しないため Π = 0 である。よっ (1) Π = 0 て,Z = N + Π = 0 + 0 = 0 であるため 安定 で Im ある。 != !=0 −1 O Im Re −1 ! != !=0 O Re ! (2) Π = 0 Im 図 2-2: ナイキスト軌跡 −1 != !=0 O Re (3) 図 2-3 より,ナイキスト軌跡は, 点 (−1, 0) のまわ りを反時計方向に 1 回,回っているため N = −1 ! である。また,右半平面に極が存在しており Π = 1 である。よって,Z = N + Π = −1 + 1 = 0 であ (3) Π = 1 Im るため 安定 である。 Im !=0 −1 != Re O !=0 −1 ! != Re O ! [解答] (1) 点 (-1,0) を左に見えるように動く。よって,安定 で ある。 (別解) 図 2-1 より,ナイキスト軌跡は, 点 (−1, 0) のまわりを回っていないため N = 0 である。また, 右半平面に極が存在しないため Π = 0 である。よっ て,Z = N + Π = 0 + 0 = 0 であるため 安定 で ある。 Im != −1 O !=0 Re ! 図 2-1: ナイキスト軌跡 図 2-3: ナイキスト軌跡 2015 年度 制御工学 II 期末試験 (模範解答) 3 [問題 3] (配点 20 点 (各 5 点))*学生の到達目標 (4),(6) r + 次の制御対象 P (s) を考える。 P (s) = − K(s) u P(s) y 1 s(s + 2) 図 3-2: フィードバック制御系 P (s) のボード線図は図 3-1 の (X) のようになり,P (s) に対してゲイン補償,位相遅れ補償,位相進み補償を用 いたボード線図は (A)∼(C) のようになる。このとき, 以下の問に答えよ。 ゲイン補償 K(s) = 10 (1) ゲイン補償は (C) より 3 [rad/s] (2) 位相進み補償は (A) より 30s + 1 位相遅れ補償 K(s) = 10 300s + 1 4s + 8 位相進み補償 K(s) = 10 s+8 180 − 115 = 65◦ (3-1) (3) 位相遅れ補償は (B) より (1) ゲイン補償のゲイン交差周波数 ωgc [rad/s] を求 めよ。 180 − 108 = 72◦ (3-2) (2) 位相進み補償の位相余裕 PM [◦ ] を求めよ。 (4) 速度偏差定数 Kv は以下のようになる。 (3) 位相遅れ補償の位相余裕 PM [◦ ] を求めよ。 Kv (4) (フィードバック制御系図 3-2 において) 位相遅れ 補償を用いた場合の速度偏差定数 Kv を求めよ。 Phase [deg] Magnitude [dB] 60 50 (B) 40 30 20 10 (X) 0 −10 −20 −30 −40 −50 −60 −2 −1 10 10 −80 −85 −90 −95 −100 −105 (X), (C) −110 −115 −120 −125 −130 −135 (B) −140 −145 −150 −155 −160 −165 −170 −175 −180 −2 −1 10 10 (A) (C) 0 10 2 10 (A) 0 10 Frequency [rad/s] 図 3-1: ボード線図 [解答] 1 10 1 10 2 10 30s + 1 1 × 10 s(s + 2) 300s + 1 10(30s + 1) = lim s→0 (s + 2)(300s + 1) 10 = =5 2 = lim s s→0 (3-3) 2015 年度 制御工学 II 期末試験 (模範解答) 4 [問題 4] (配点 25 点 (各 5 点))*学生の到達目標 (3), (5) を満たす ω となるが,ω ≥ 0 より次のようになる。 図 4-1 のフィードバック制御系について,以下の問い ωpc = 1 に答えよ。 P (s) = K(s) = 1 s(2s + 1)(3s + 1) KP (1 + s) (4-4) (3) (4-4) 式を (4-2) 式に代入する。 −6 − 4 25 + (1 − 6)2 −10 = KP 25 + 25 −10 = KP 50 1 = − KP 5 1 よって,交点は, − 5 KP , 0 L(jωpc ) = (1) 開ループ伝達関数 L(s) を求めよ (KP は記号のま ま用いること)。 (2) ベクトル軌跡が実軸と交わるときの角周波数 ωpc を求めよ。 (3) ベクトル軌跡が実軸と交わるときの交点 (実軸の値, 虚軸の値) を求めよ。 (4) フィードバック制御系が安定となるゲイン KP の 範囲を求めよ。 KP (4-5) (4) 安定であるためには, 実軸との交点が −1 より大き ければよい,つまり (5) フィードバック制御系が安定のときのベクトル軌 1 − KP > −1 5 跡の概形を描け。 * 始点と終点のゲインと位相,点 (−1, 0) に対して (4-6) であればよい。よって, 安定のための KP の条件は どこを通過するかを明確にすること。 KP < 5 r + − K(s) u P(s) (4-7) y となる。 (5) 始点は, 図 4-1: フィードバック制御系 1 を 1 つ含むので s |L(0)| = ∞, L(0) = −90◦ (4-8) となり,終点は, [解答] |L(∞)| = 0 (1) 開ループ伝達関数 L(s) は次のように計算できる。 KP (1 + s) L(s) = P (s)K(s) = s(2s + 1)(3s + 1) (4-1) L(∞) = (4-9) KP s 1 = 2 = −180◦ s(2s)(3s) s (4-10) となる。よって,ベクトル軌跡の概形は,図 4-2 の (2) 開ループ伝達関数は, s = jω を代入する。 L(jω) = = = = = ようになる。 KP (1 + jω) jω(j2ω + 1)(j3ω + 1) KP (1 + jω) −5ω 2 + jω(1 − 6ω 2 ) (1 + jω)(−5ω 2 − jω(1 − 6ω 2 )) KP 25ω 4 + ω 2 (1 − 6ω 2 )2 −5ω 2 − jω(1 − 6ω 2 ) − j5ω 3 + ω 2 (1 − 6ω 2 ) KP 25ω 4 + ω 2 (1 − 6ω 2 )2 −6ω 4 − 4ω 2 + jω(ω 2 − 1) KP (4-2) 25ω 4 + ω 2 (1 − 6ω 2 )2 となる。実軸と交わるとき,L(jω) の虚数成分が 0 となることから周波数 ωpc は (4-2) 式の虚数成分 に注目すると, ω2 − 1 = 0 (4-3) Im != Re O −1 !=0 図 4-2: ベクトル軌跡
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