時 の 話 題 ~平成26年度 第23号(H27.3.31調査情報課)~ 近年、国民の健康志向の高まりから、健康食品が広く普及し、 テレビ、雑誌等を利用した広告・宣伝も盛んに行われている。こ 健康食品の 機能性表示 の健康食品の機能性表示(食品の体調調節機能に関する表示)の 規制が平成 27 年4月から緩和される。市場の拡大も予測され、 ますます身近になる健康食品についてまとめる。 1 健康食品とは 健康食品とは健康の増進に資する食品として販売・利用されるもの全般を指し、大きく 「国が特定の機能の表示を許可したもの(保健機能食品)」とそれ以外の「いわゆる健康食 品」の2つに分けられる。 (1)保健機能食品 保健機能食品は「特定保健用食品(通称:トクホ)」と「栄養機能食品」の2種類がある。 ア 特定保健用食品(通称:トクホ) からだの生理学的機能等に影響を与える保健機能成分を含む食品で、お腹の調子を整え たりするのに役立つ、などの特定の保健の用途に資する旨を表示するものをいう。特定保 健用食品として販売するためには、食品の有効性や安全性等について審査を受け、国の許 可を受ける必要がある(健康増進法第 26 条第1項)。 イ 栄養機能食品 栄養成分(ビタミン・ミネラル)の補給のために利用される食品で、栄養成分の機能を 表示するものをいう。国への許可申請や届出は不要であるが、国が定めた規格基準に適合 していなければならない(食品衛生法及び健康増進法の規定が平成 27 年4月より食品表 示法へ移行)。 ▼栄養機能食品として機能表示ができる栄養成分 ミネラル ビタミン カルシウム、亜鉛、銅、マグネシウム、鉄 ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、 ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD,ビタミンE、葉酸 (2)いわゆる健康食品 「いわゆる健康食品」は、サプリメント、栄養補助食品、健康補助食品、自然食品など と称して業者が独自の判断で販売しているものであり、法令上で定義されているものでは ない。 【健康食品の分類】 健康食品 保健機能食品 保健機能食品制度により機能性表示等を許可 特定保健用食品 (個別許可型) (消費者庁許可) 栄養機能食品 (規格基準型) 機能性表示は認められていない いわゆる 健康食品 出典:福祉保健局「東京都食品安全推進計画」より作成 ‐1‐ 2 国の取組 (1)規制改革実施計画 これまでの制度では、栄養機能食品については対象成分が限定されていること、また、 特定保健用食品については、安全性や有効性に係る臨床試験が必須で、許可手続に費用が かかるため、中小企業参入のハードルが高いこと等の課題があった。 このため、平成 25 年1月に設置された「規制改革会議」において、「一般健康食品の機 能性表示を可能とする仕組みの整備」が検討項目の一つとして議論された。その結果、平 成 25 年6月に閣議決定した規制改革実施計画において、「いわゆる健康食品」に関する機 能性表示を容認する規制改革の方向性が示された。 <規制改革の方向性> ○加工食品及び農林水産物について、企業等の責任で科学的根拠をもとに機能性を表示できる 新たな方策を検討し、平成 27 年3月末までに実施 ○検討に当たっては、米国のダイエタリーサプリメント(※1)の表示制度を参考とする ○安全性の確保も含めた運用が可能な仕組みとする <現行制度> 機能性表示が可能 特定保健用食品 栄養機能食品 一般食品 栄養機能食品 ★一般食品 <新しい制度> 機能性表示が可能 特定保健用食品 ★一定要件を満たせば事業者責任で機能性表示を可能とする ※1:ダイエタリーサプリメント制度 米国では、健康食品企業は、食品医薬品局(FDA)に届け出れば、栄養補助食品(サプリメン ト)の健康機能をうたえる。例えば、果実のブルーベリーのサプリメントは「目の健康を増進する」 と表示できる。「病気予防」や「治療」など医薬品的な表示は禁止され、「この表示はFDAによ って評価されたものではない。この製品は病気を診断、治療、予防することを目的としたものでは ありません」と表示することも義務付けられている。だが、科学的根拠の証明や安全性の確認は企 業に任されている。 (2)食品の新たな機能性表示制度に関する検討会 国は、規制改革実施計画を踏まえ、企業の責任において食品に機能性を表示できる新た な方策を検討するために、消費者庁に「食品の新たな機能性表示制度に関する検討会」を 設置した。食品の新たな機能性表示制度が消費者の自主的かつ合理的な商品選択に資する ものとなるように検討が行われ、平成 26 年7月、検討結果について報告書が出された。 ‐2‐ 食品の新たな機能性表示制度に関する検討会報告書概要【抜粋】 誤認のない食品の機能性表示の在り方 (1)適切な機能性表示の範囲 ①対象食品、②対象成分、③対象者、④可能な機能性表示の範囲 (2)容器包装への表示 ○機能性関与成分名、1日摂取目安量、1日摂取目安量当たりの機能性関与成分の含有量、摂取上の注 意、医薬品を服用している者は医師・薬剤師に相談した上で摂取すべき旨 ○安全性・有効性について国による評価を受けたものではない旨 ○疾病の診断、治療、予防を目的としたものではない旨 等 (3)容器包装への表示以外の情報開示 ○安全性に係る評価結果 ○品質管理の取組状況 ○機能性に係る科学的根拠情報 国の関与の在り方 (1)販売前届出制の導入 ○安全性や有効性等の根拠情報を含めた製品情報について、消費者庁に販売前に届出 ○届出を受理した際は、消費者庁において届出に係る情報を原則として販売前に公開 (2)消費者教育等 ○消費者庁は関係機関と連携しつつ、バランスの取れた食生活の普及啓発、安全性も含めた食品の機能 性表示制度に関する消費者の理解増進に向けた取組を継続的に実施 平成 27 年4月より、食品表示関係の法制度を一元化するための新たな法律である食品表 示法が施行される。それに合わせ、平成 27 年3月、消費者庁はこの報告書を踏まえ「機能 性表示食品に係る届出に関するガイドライン(案)」を公表した。 機能性表示食品 根拠疑問なら撤回 消費者庁、厳しく監視 体にどのように良い食品なのかを、企業の責任で表示できる新しい「機能性表示食品」制度について、 消費者庁は2日、ガイドライン(指針)を公表した。国の審査がない届出制のために、食品業界にとっ ては迅速な商品開発や市場投入につながる面もありそうだ。 新制度では、信頼性の高い論文などで効果を証明できることを前提に、販売の 60 日前までに消費者庁 に届け出る。 新制度で販売される商品は、容器包装のよく見える場所に「機能性表示食品」と明示。その上で「○ ○を含み、おなかの調子を整える機能があることが報告されています」などと表示する。また一日の摂 取目安量や効果的な食べ方、問い合わせ方も表示する。 新制度を利用する企業は、医薬品と併用した場合のリスクを確認したり、健康被害情報を収集し消費 者庁などへ報告したりすることが義務づけられる。 【機能性表示食品の表示例】 その理由 × 糖尿病の人に、高血圧の人に 表示できない ナチュラルキラー細胞が増えて体の免疫機能が上がる 科学的な根拠に基づいていない ○○を含みおなかの調子を整える機能があることが報告されています ○ 表示できる 3 病気の治療や予防の効果を暗示 本品は○○を△△㍉㌘含むので、魚介類を1日●㌘程度食べている人の××に役立ちます (平成 27 年3月3日 毎日新聞より抜粋) 都の取組 (1)健康食品の試買調査 都は、薬局、デパート等での店頭販売の健康食品やインターネット等での通信販売の健 康食品などを購入し、医薬品成分の有無や表示・広告の適正性、といった観点から検査し ている。平成 26 年度の試買調査では、健康食品の表示や広告に関する検査を実施し、医薬 品的な効能効果の標ぼうや合理的根拠のない表示などの不適正な表示・広告を行った事業 者に対し、改善等の指導を行った。また、他自治体が所管する事業者については、当該自 治体に通報し、指導等を依頼している。 ‐3‐ 【健康食品についてのリーフレットとDVD】 (2)健康食品に関する普及啓発 都は、都民向けに健康食品についてのDVDや スポット映像を作成し、健康食品の適正利用のた めの正しい知識や注意すべき情報について、わか りやすく解説している。 また、「健康食品ナビ」のサイトを開設し、健 康食品に関する注意喚起や、医療関係者や都民が いわゆる健康食品の製品情報を手軽に入手でき るように「健康食品データベース」を設けている。 出典:福祉保健局「健康食品ナビ」より (http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/anzen/supply/index.html) (3)東京都食品安全推進計画の改定 都は、東京都食品安全条例に基づき「東京都食品安全推進計画」を策定し、生産から消 費に至る各段階で、関係各局の連携のもと、全庁横断的に食品の安全確保に関する施策を 推進している。平成 27 年2月、これまでの全庁的な施策の継続を基本としつつ、昨今の食 品の安全に関する諸課題等を見据えた今後の課題を整理し、都における食品の安全を確保 する施策を一層推進するため、計画の改定を行った。この改定において、健康食品対策は 重点施策に位置づけられ、新たな機能性表示制度への対応についても、新規施策として盛 り込まれている。 【東京都食品安全推進計画】重点施策6「健康食品」対策 1 2 3 4 5 4 市販品に対する監視指導 店頭やインターネット等を通じて販売されている市販品の試買調査を実施し、成分や表示等の 確認を行い、インターネット広告等も定期的に調査する 健康被害事例専門委員会による情報の分析・評価 医師会や薬剤師会と連携して健康被害情報を効率的に収集、分析、評価し医療機関に情報提供 健康食品取扱事業者講習会の開催 事業者を対象に定期的に講習会を開催し、法令や違反事例などの周知、意識向上を図る 都民への普及啓発 講習会、DVD、広報誌などで広く普及啓発するとともに、「健康食品ナビ」のサイトで最新 の注意情報などを随時発信し、 「健康食品」による健康被害の未然防止を図る 新たな機能性表示制度への対応 新規 食品の機能性表示が可能となる新たな制度について、事業者への制度の周知及び都民への正し い利用法などの普及啓発を行う等、適切に対応する 今後に向けて 今回の制度改正により、企業の責任で食品の機能性表示が可能となることで、健康食品 の市場規模の拡大と利用者の増加が予想される。 都は、都民に対して健康食品についての正しい知識や、新しい機能性表示等に関する普 及啓発等を行うとともに、事業者にも新しい制度について適切に周知を図る等、都民が安 全に健康食品を利用できるよう、取組を行っていく必要がある。 ‐4‐
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