A6 高アミロース米を原料とした加工による 生理的機能性食晶の開発 長岡工業高等専門学校 物質工学科 • • 教授菅原正義 技術の概要 コシヒ力リなど美昧しい通常の米とは異なる、新しい特徴を持った米の利用 革新形質米と呼ば について生理的機能性の点から紹介します。このような米 l れるが、その特徴を生かした用途開発が求められています。今回の技術シーズ は、高アミロース米を原料にした安全な加工による、メタポ予防に役立つ食後 血糖値上昇の穏やかな食品開発です。 キーワー ド 難消化性成分、生理機能、局アミロ 従来技術・ 競合技術との比較 局アミロース米は、アンプンの消化速度が遅く、食後血糖値の急激な上昇がお こりにくい米です。本技術は、この米に湿熱処理や部分糊化老化処理などの 水蒸気のみを用いる安全な加工を行うことによって、より消化性速度を低下 させ生理的機能性を強化する点で従来技術とは異なります。 技術の特徴 局アミロ ス米利用 グリセミックインデックスの評価 湿熱処理 腸内細菌叢改善効果の評価 部分糊化 ・ 老化処理 想定される用途・ 利用分野 特定保健用食品 血糖値上昇速度の遅い(低GI)健康食畠 ー 腸内環境改善機能を持った健康食品 ー 特定保健用食品 米粉食品 2 7 ス米、湿熱処理、部分糊化処理 高アミロース米を原料とした加工による生理的機能性食品の開発 長岡工業高等専門学校 教授 物質工学科 菅原正義 e m a i l : s u g a@n a g a o k a c t . a c . j p 唱 • 高アミロース米とは 米消費量の減少による生産過剰l や食糧自給率低下に対して、段林水産省が中心となって 育種した米消費拡大につながる新たな需要を生み出す、多様な新しい性質を持った米を新 形質米といいます。新形質米にはアミロース含量変異米、糖質米、タンパク質含量変異米、 低可消化性タンパク質米、低塩可溶性タンパ ク質米、玄米色素米、巨大応米、香り米など アミロス があります。高アミロース米は、アミロース 含量変異米の一つで、米デンプン中のアミロ ース含量が高い米です。デンプンは、アミロ 岳協 埼 ースとアミロペクチンか ら構成され、もちデ ンプンがアミロベクチン 100%に対してコ シヒカリデンプンではアミロース 17%アミ ロベクチン 83%です。高アミロース米デン : : i l : } t 1 7 1 プンは、アミロース含量が 25~30% であり、 • 粘りが弱く米飯としては食味が劣ります。 我々は、昨年農業生産者団体と共同で、 新潟県で生産可能な 3品種の高アミロー ス米(①夢十色、②新潟 7 9号(こしの めんじまん)、③北陸 2 0 7号)の試験栽 培を行いました。これらの高アミロース アミロベウチン 31%) 新潟 7 9号 ( 27%)北陸 2 0 7号 ( 33%) 米は、米飯としての食味が劣るが、小麦 夢十色 ( 粉中のデンプン(アミロース含量約 25%) のアミロース組成に近いものです。したがって、米粉を小麦粉の代替目的で利用する場合 には、他の良食味米品種より適しています。 2 我々の加工シーズ 我々は高アミロース米を原料として、「生理的機能性の向上」、「殺菌と品質悪化の原因と なる酵素の失活 J、「製粉性の向上」、「米粉のバラエティ増」の 4点を目的とした加工処理 について研究を行っています。現在行っている加工処理としては部分糊化 ・老化処理、湿 熱処理の 2方法です。デンプンは、十分量の水共存下で加熱すると糊化し、まったく水が ない状態で加熱すると炭化し燃焼してしまいます。湿熱処理と部分糊化処理は、この中間 に位置し糊化に不十分な条件下での水蒸気加熱処理のことです。これらの加工処理には、 水蒸気のみを利用するため、非常に安全性が高いと考えられます。 2 9 3 高アミロース米の機能性と加工処理による影響 前述のように高アミロース米は、粘りが少ないまずい米です。外国産の長粒種(インデ イカ米)に近いと考えていただきたい。炊きたてでも粘りが少なく、すぐにデンプンが老 化して冷や飯になりやすい性質があります。ところがこの冷や飯状態のデンプンには、体 によい性質があります。 高アミロース米のデンプンは、食べると消化速度が遅いため吸収も遅く、長時間になり ます。これがメタボリック症候群予防機能につながります。消化 ・吸収速度が速いとどう なるか ・・-。多量のグノレコースが短時間に小腸から吸収されて、血液中に入るため急激 に食後血糖値が上がります。ところが消化・吸収速度が遅いとどうなるか・ ・ ・ 。比較的 少量のグノレコースが長時間にわたり小腸から 高G I食 低G I食 吸収されて、血液中に入るため血糖値はゆっく り上がります。血糖値が上がると、勝臓からイ ンスリンという血糖値を下げるホノレモンが血 口醒・岨鴫 液中に出されます。インスリンは、肝臓と筋肉 の細胞にこの上昇した分の血糠を強制的に取 り込ませる働きを持っていて、その結果として 血糖値が低下するわけです。では、強制l 的にグ ノレコースを取り込んだ、肝臓と筋肉の細胞はど うなるでしょうか?いい迷惑なわけで必要以 上に取り込んだグノレコースを盛んに分解し、エ * ・ 冊 闘 ネノレギーが発生します。必要以上にエネルギー ができると、グノレコースの分解ができなくなり インスリン分泌 少 多 ます。次に細胞内のグノレコースを低下させるた めに、グ‘ノレコースからグリコゲンを作り、細胞 肝・臨細胞の鑓取り込み 少 多 内に蓄えます。細胞内のグリコゲンキャパシテ 脂肪合成 ィは決まっていますので、すぐに満タンになっ てしまいます。グリコゲンの次は・ ・ ・ 。余剰 脂肪細胞の脂肪置繍 少 多 グノレコースを原料として盛んに脂肪を作りま す。この余剰脂肪は、細胞内に蓄えることがで きないので、脂肪細胞という脂肪を替える細胞 鳳剛健の恒化具 メタポリ ツクシンドロームへの遺 に運ばれ、貯蔵されます。 脂肪細胞は、脂肪が少ない状態では血管を保護したりする多くの良い物質を作っていま すが、 H 旨!的が多くなってくると豹変して血管を痛めたりする多くの有害な物質を作り始め ます。善玉脂肪細胞が、脂肪がたまることによって恐玉脂肪細胞に変わるわけです。これ がメタボリック症候群です。 したがってメタボの原因は何かつ急激な食後血糖値の上昇で あり、多量に出されるインスリンです。 この食後血糖値の上がりやすさの指標として、グ リセミックインデックス ( G I値)というものがあります。低 G I食品は、食後血糖値の上昇 が穏やかな食品のことです。 高アミロース米は、他の良食味米に比べて低 G Iであり、我々の加工処理によって、より 低 GI化され、最初に示した 4つの目的を達成することが可能です。また、難消化性のデン プンができるため、腸内の環境を改善する機能も持っています。この加工処理技術により 日本の食紐自給率向上と新潟県の米作農業の発展に寄与できればと、喜F を見つつ高専の優 れた学生諸君とともに研究に溢進しております。 同 ( 5 附 ~ ~ ~b * . . 4 技術開発上の課題 これらの加工処理が実験室レベルなため処理量が少なく、加工による食品物性への影響 や生理的機能性の実験動物を用いた大規模な確認試験ができないため、もう少し処理担;を 増やす設備が必要になっています。 3 0
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