======================================== 2015 年、飛躍と試練の年を迎えた、健康関連食品市場 ======================================== 2014 年は、4 月からの消費増税の影響で、消費者の購買意欲が後退し、健康食品市場は、3 年ぶりに 前年実績を下回った。そして、特別用途食品、特定保健用食品、栄養機能食品、健康志向食品は、前年実 績を上回ったが、伸長率は鈍化した。 2015 年10 月に予定されていた消費再増税は、2017 年4 月に延期されたが、消費者の生活防衛意識 は、いまだに高く、商品選択基準は、厳しさを増している。 2015 年は、「機能性表示食品制度」が、4 月1 日より施行され、保健機能食品制度も改正されること から、消費者の健康関連食品に対する関心が、急速に高まる可能性がある。 但し、新制度については、活用するための条件が厳しく、また、新制度の導入に伴い、行政による規制 が強化されるため、2015 年は、健康関連食品業界にとっては、試練の年になると予想される。 ■健康関連食品5 分野の市場規模(出荷額ベース)は以下のとおり。 単位:百万円 2013 年 次 分 野 健康食品 販売高 2014(見込) 対前年比 販売高 2015(予測) 対前年比 販売高 対前年比 841,710 103.6% 819,030 97.3% 984,600 120.2% 29,969 102.4% 30,631 102.2% 31,239 102.0% 特定保健用食品 393,100 107.5% 417,500 106.2% 435,200 104.2% 栄養機能食品 464,900 106.2% 474,000 102.0% 502,500 106.0% 健康志向食品 3,404,500 105.8% 3,483,900 102.3% 3,937,350 113.0% 特別用途食品 ※ 生鮮食品は、除く。 ■2014 年の健康食品市場は、1 月から3 月は、前年からのプラスの勢いに加えて、消費増税前の駆け込 み需要により、多数の企業が増収となった。しかし、4 月の消費増税後は(5%⇒8%)、実績低下が予想 以上に長引く企業が増加したため、通年では、マイナスに転じたと見込まれる(前年比2.7%減)。 2015 年は、4 月1 日施行の「食品の新たな機能性表示制度」である「機能性表示食品制度」をはじめ とした、改正・保健機能食品制度(特定保健用食品、栄養機能食品)が開始される。 健康食品市場に参入する多くの企業が、新制度への対応を前向きに進めており、行政やマスコミも消費 者への情報提供を積極的に行っていることから、消費者の健康食品への関心やセルフメディケーションに 対する意識が、急速に高まると予想される。そして、“機能性表示”により、健康食品の消費が、再び喚起 される可能性は高いが、2015 年の市場全体での伸び率は、“急騰”とはいえないと考えられる。 健康食品素材65 品目別の販売高に関して、2013 年から2015 年の販売高が3 年連続成長すると予 想されるのは25 品目(青汁、グルコサミン、酵素、DHA、ブルーベリーエキスなど)。 逆に、3 年連続マイナス成長と予想されるのは6 品目である(プロポリス、メシマコブなど)。 健康食品のセールスポイント29 項目別(有用成分に期待される機能性)の販売高に関して、2013 年 から2015 年の販売高が3 年連続成長すると予想されるのは13 項目(関節症予防・改善、脳機能活性・ 認知症予防、アイケア、中性脂肪低下など)。 逆に、3 年連続マイナス成長と予想される項目はない。 健康食品のチャネルに関しては、7 割を超える無店舗ルート(通信販売、訪問販売など)が市場を牽引 する状況が、今後も続くと予想される。 但し、2015 年に、「機能性表示食品制度」が開始されることを契機に、チャネルの多様化が加速すると 考えられる。特に、店舗ルートでは、ドラッグストアをはじめ、百貨店や健康・自然食品店、量販店、CVS、 化粧品店など幅広いチャネルで、健康食品の売場の拡大が見込まれることから、店舗ルートの構成比が伸 張していく可能性がある。 ■特別用途食品の表示許可取得商品の件数は、新制度施行開始の2009 年4 月1 日時点では累計88 件 で、経過措置期間が終了した2011 年6 月23 日時点では累計37 件だったが、2014 年4 月21 日時 点では累計52 件と15 件増加している(病者用食品・低たんぱく質食品1 件、病者用食品〔個別評価型〕 2 件、乳児用調製粉乳2 件、えん下困難者用食品10 件)。 対象品目は、8 品目で、病者用食品〔許可基準型〕4 品目(低たんぱく質食品、アレルゲン除去食品、 無乳糖食品、総合栄養食品)、病者用食品〔個別評価型〕、妊産婦・授乳婦用粉乳、乳児用調製粉乳、えん 下困難者用食品。 2011 年から、新制度による特別用途食品の市場形成が本格的に始まり、翌2012 年と2013 年は、 新制度に該当する8 品目のすべてが、前年実績を上回った。そして、2014 年もプラス基調で推移したと 見込まれる(前年比2.2%増)。 また、2015 年4 月1 日施行の「機能性表示食品制度」により、社会的にセルフメディケーションへの 意識が高まることで、特別用途商品に対する評価・認知度が向上する可能性は高い。 ■特定保健用食品(以下、特保)は、2015 年2 月18 日時点で、表示許可1,143 品、表示承認1 品、 合計1,144 品(195 社)。内、特保554 品、条件付特保1 品(中性脂肪上昇抑制)、規格基準型特保112 品(整腸作用:74 品/血糖調節:38 品)、疾病リスク低減表示特保14 品(骨の健康)、再許可等特保 463 品。 2014 年の特保市場は、消費増税以降、消費者の間で価格志向や節約志向が再燃し、実績が減少した商 品も少なくなかったが、消費者の健康志向の高まりを背景に、サントリー食品インターナショナルやコカ・ コーラシステム、花王などをはじめ、多くの参入企業が拡販活動を積極的に展開したことから、市場全体 では、伸張したと見込まれる(前年比6.2%増)。 2015 年4 月の新制度施行以降、特保が実績を拡大していくためには、特保と「機能性表示食品」の棲 み分けを明確にし、特保の特性・必要性・優位点(制度、自社製品)を消費者へわかりやすく伝える活動 が、必要不可欠になっている。 特保の7 保健用途で、2013 年から2015 年の3 年連続でプラス成長が予想されるのは2 保健用途で、 「整腸作用」「中性脂肪・体脂肪の上昇抑制・低減」。 逆に、3 年連続でマイナス成長が予想される保健用途はない。 尚、新規の保健用途の候補としては、資生堂「素肌ウォーター」が申請している「肌の乾燥しがちな方 に適する」などがある。 ■栄養機能食品市場は、2014 年は、4 月からの消費増税による駆け込み需要やその反動はあったが、一 般食品、ドリンク、健康食品とも拡大基調を示した(前年比2.0%増)。分野別の構成比の推移は、2013 年「一般食品:ドリンク:健康食品≒28:29:43」、2014 年見込「29:29:42」、2015 年予測「30: 29:41」。 2015 年は、4 月1 日より、栄養機能を表示できる対象成分が3 つ追加される(n-3 系脂肪酸、ビタ ミンK、カリウム)。 特定保健用食品制度の緩和や「機能性表示食品制度」の施行によって、栄養機能食品から特定保健用食 品や「機能性表示食品」にシフトするケースも、大型商品や大手企業の商品を中心に、登場すると予想さ れる。しかし、特定保健用食品のみならず、「機能性表示食品」も、表示のための条件が厳しいことから(安 全性の証明、表示に必要なエビデンスの取得、消費者庁長官への事前届出など)、差別化訴求のために機能 性表示を行う場合は、栄養機能食品制度を活用するケースが、これまで以上に増加する可能性もある。 ■健康志向食品市場は、厳しい状況下、2014 年は、伸長率は鈍化したが、消費者の健康・安全志向を背 景に、堅調に拡大した(前年比2.3%増)。そして、2015 年は、好調なペースで需要を伸ばしていくと予 想される。 その大きな要因は、安倍内閣が2013 年6 月に決定した「規制改革実施計画」によって、特定保健用食 品制度および栄養機能食品制度が緩和され、さらに、2015 年4 月1 日から、新たに「機能性表示食品制 度」が開始されることにある。 これらの保健機能食品制度の改革により(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品)、差別化訴 求のために食品の機能性表示に取り組む企業は、急増すると予想される。そして、新制度の浸透を図る行 政や業界、マスコミ、消費者団体などが、食品と健康に関する情報を積極的に提供することによって、一 般消費者の健康志向食品に対する関心が高まるとともに、需要も拡大していくと考えられる。
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