TELECOM FRONTIER NO.74 2012 WINTER CONTENTS 光で観る半導体単一量子ドットでの核スピン分極とその操作 足立 智 北海道大学大学院工学研究院教授 半導体量子ドットは、伝導電子が数ナノメートルの空間に閉じ込められており、原子 に類似した離散的なエネルギー準位を実現している。電子がナノメートル領域に安定し て局在することで、電子と原子核の間のスピン交換相互作用が増強される。そのため電 子エネルギー準位は大きくシフトし、ついには分光スペクトル上にゼーマン分裂を相殺 するほどの核磁場シフトが現れる。ここでは量子ドットにおける核磁場の双安定特性と 制御関する最近の研究を励起偏光依存性を軸に詳しく紹介する。 高度情報社会に向けたZnO 系高輝度ナノ固体光源の研究 天明 二郎 静岡大学電子工学研究所教授 酸化亜鉛(ZnO) 系半導体結晶成長の研究を行い、ラジカルを積極に利用する非平衡度 の高いリモートプラズマ励起有機金属金属気相堆積法を開発した。最近、赤、緑、青色 の ZnO 系薄膜ダブルヘテロ接合から電流注入により室温エレクトロルミネッセンスを 実現した。 LSI チップ間ワイヤレス接続技術の研究 吉川 公磨 広島大学ナノデバイス・システム研究センター教授 半導体集積回路(LSI) 間のデータ伝送を実現するワイヤレス接続技術を開発した。マ イクロアンテナを搭載した無線超広帯域 CMOS 送受信回路として、180nmCMOS 送信 受信回路を開発し、中心周波数 3GHz、データレート 1Gb/s のインパルス信号をオンチ ップアンテナから送信することに成功し、受信回路はデータレート 200Mb/s で変調され た信号をデジタルデータに復調した。課題である低抵抗シリコン基板に集積化したアン テナの低い伝送利得は高誘電率インターポーザー導波路を開発することで改善できるこ とを明らかにした。 RFID の防災応用 滝澤 修 独立行政法人情報通信研究機構社会還元促進部門技術移転推進室マネージャ 細川 直史 総務省消防庁消防大学校消防研究センター地震等災害研究室長 柴山 明寛 東北大学大学院工学研究科付属災害制御研究センター助教 ユビキタスデバイスの 1 つである RFID は、技術の進歩により 21 世紀に入り急速に 普及した。本稿では、筆者らが 2001 年から取り組んできた、RFID の防災応用に関する 研究開発について述べる。 但し、2004 年度までの研究開発成果については情報通信研 究機構季報等で既に報告したため、本稿では 2005 年度以降の研究開発成果を中心に研 究開発成果を中心に述べる。 1
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