材物(無機材料系)午後

1.図 1-1 は酸化物の標準生成ギブズエネルギーfG (kJ mol1)と温度 (K)の関係を示したものである.
これに関連して,下の問1~4に答えよ.
問1.勾配の異なる線 a, b, c は,下記のいずれの反応に対応するかを答えよ.また,そのように判断
した理由を簡潔に述べよ.
(i) C + O2 = CO2
(ii) 2C + O2 = 2CO
(iii) 2CO + O2 = 2CO2
問2.d, e, f の反応において,同一の温度における平衡酸素分圧の大小の関係を答えよ.また d, e, f の
反応において,温度が増大したときに平衡酸素分圧がどう変化するかを答えよ.
問3.e の反応の平衡定数を K,平衡酸素分圧を peO2 (atm)として,図中のfGから 2000 K における
log K と log peO2 の値を有効数字 2 桁で求めよ.この際,気体定数 R = 8.3 (J mol1 K1),ln 10 = 2.3
として,計算の過程も示せ.
問4.TiO2 を還元して純粋な Ti を得るために,SiO2 製および Al2O3 製のルツボが適しているかどうか
を判断し,その理由を反応のギブズエネルギー変化の観点から簡潔に述べよ.
-200
(a)
-300
(b)
fG° / kJ mol–1
-400
(c)
-500
-600
(d
-700
-800
O2
) Si +
i + O2
(e) T
3 Al
/
4
)
(f
-900
1400
= SiO 2
= TiO 2
+ O2
1600
O3
3 Al 2
/
2
=
1800
2000
温度 / K
図 1-1
2200
2400
2.結晶の対称操作に関する下の問1~3に答えよ.
問1.表 21 の①~⑩に最も適する用語あるいは数値を下の枠の中から選んで答えなさい.
回映, 180,対称心,平行,180/n,2 回回転軸,鏡映,映進,6 回回転軸,並進,
結晶端面,恒等,360,らせん,回転, 360/n,垂直,4 回回転軸,反転
問2.図 21(a)の物体の対称操作を図 21(b)に図形記号で示す.図 22 と図 23 を解答用紙に書き写
し,それらの全ての対称操作を,図 21(b)を参考にして図形記号で答えなさい.ただし,図 22
は正三角錐,図 23 は立方体と二つの同一な正四角錐からなる物体である.
問3.図 21(b)の対称操作のステレオ投影図を図 21(c)に示す.これを参考にして図 22 と図 23 の
物体の対称操作をステレオ投影図で示しなさい.
表 21
対称操作
シェーン
①
操作
E
②
操作
Cn
③
操作
i
④
⑤
(a)
操作
操作
説
フリース記号
⑥
度だけ回転する.
ある軸の周りに,分子または結晶を
分子または結晶を,
⑧
で
④
面が主軸に
v
④
面は主軸を含む.
d
主軸に
Sn
よる
図 21
記号
分子または結晶を全く回転させない.ある任意の軸の周りに
h
(b)
図形
明
⑦
⑨
⑨
な 2 本の
⑦
③
させる.
で原点を通る.
⑩
のなす角を 2 等分する.
度だけ回転した後,その軸に
④
度回転する.
⑨
な水平面に
操作を行う.
(c)
図 22
図 23
なし
3.物質の電気伝導に関する下の問1~4に答えよ.
問1.ある物質を各辺の長さが a, b, c (cm)の 直方体に成形し,a と b を辺とする一対の面に電極をつ
け,電圧 V (V)をかけたところ電流 I (A)が流れた.この物質の電気伝導率を式で表し,その単
位を答えよ.ただし、この物質の電気伝導はオームの法則に従うものとする.
問2.銅の電気伝導率は温度の上昇とともに低下するが,シリコンの電気伝導率は温度とともに上昇
する.両者の差をキャリアー濃度,キャリアー移動度,エネルギーバンドという語彙を用いて説
明せよ.
問3.銅の電気伝導率は純度が低くなると低下するが,シリコンの電気伝導率はドナー,アクセプタ
ーとなる元素の添加により上昇する.両者の違いが生じる原因を説明せよ.
問4.一般に可視光領域で透明である物質は電気的に絶縁体である.この理由をエネルギーギャップ
の大きさから説明せよ.ただし,可視光はおよそ 380~760 nm の波長範囲であり, 光子の持つエ
ネルギーE (eV)は E = hで表される.ここで h はプランク定数(4.136x10
振動数,光速はx108 m s-1 である.

-15
eVs),s-1)は光の
4.Al(OH)3 粉末と Co3O4 粉末を原料とした焼結体の作製に関する下の問1~2に答えよ.ただし,各
元素の原子量は H = 1,O = 16,Al = 27,Co = 59 とし,アボガドロ定数は 6.02×1023 /mol とする.
問1.適切な仮焼温度を把握するため,原料に用いる Al(OH)3 粉末の示差熱重量測定(DTA-TG)を行
ったところ,図 41 のような結果が得られた.①の吸熱ピークは,Al(OH)3 粉末の吸着水の脱離
に対応している.②,③の吸熱ピーク付近で Al(OH)3 粉末がどのように変化するか述べよ.
DTA
-10
-15
③
①
-20
吸熱
重量変化 / %
-5
発熱
0
-25
-30
TG
②
-35
100 200 300 400 500 600 700 800
温度 / oC
図 41
問2.Al(OH)3 と Co3O4 の混合粉末を仮焼した後,成形して焼結した.焼結体は,化学量論組成の CoO
と CoAl2O4 の結晶相のみからなり,
焼結体中の Al 含有量を分析したところ 1.08 mass%であった.
この焼結体の理論密度を求めよ.解答には計算の過程も示すこと.ただし,CoO と CoAl2O4 の
構造,結晶系,単位格子中の式量 Z,格子定数,格子体積を表 4-1 に示す.また理論密度は,気
孔のない理想的な焼結体の密度である.
表 41
格子体積
化合物
構造,結晶系
単位格子中の式量 Z
格子定数 (nm)
CoO
岩塩構造,立方
4
0.420
0.0741
CoAl2O4
スピネル構造,立方
8
0.810
0.531
(nm3)
5.次の文章を読み,ZnO の欠陥に関する下の問1~3に答えよ.
表面を研摩した Zn ブロックの表面に Pt マーカーを網状に蒸着し(図
5-1(a)),電気炉を用いて酸素中で加熱したところ,Zn ブロックの表面
Pt
Zn
Zn
Pt
ZnO O2
¥
に ZnO が生成した.断面を SEM で観察したところ,マーカーは Zn と
ZnO の界面付近にあった(図 5-1(b))
.
界
面
問1. ZnO 層の成長はどのような欠陥種の拡散によって支配されて
いるか答えよ.解答用紙に図 5-1(b)を書き写して,Kröger & Vink
の表記法で表した欠陥種を,その拡散方向を表す矢印とともに
(a)
表
面
(b)
図 5-1
示せ.
問2. ZnO 層の表面および Zn/ZnO 界面のそれぞれで起きている反応を,Kröger & Vink の表記法を用
いた反応式で示せ.また,生成した ZnO は p 型,n 型のいずれの半導体になるか.
問3. 問2で答えた ZnO 層表面での反応式に質量作用の法則および電気的中性条件を考慮して,キ
ャリア濃度が酸素分圧にどのように依存するか示せ.ただし,計算の過程も示すこと.