生体触媒科学に基づく創薬/環境手法の開発

平成27年度ベンチャー・ビジネス研究活動報告書
研究開発課題代表者
(所属・職名・氏名)
ナノマテリアルテクノロジーセンター・助教・島原秀登
研究開発課題名
生体触媒科学に基づく創薬/環境手法の開発
(研究開発期間)
(平成27年度~29年度)
1. 研究開発課題の概要
近年、生命現象を解き明かすために、生体高分子をあらゆる角度から総合的に解析す
る様々な手法が確立されてきた。そこでは、ある一つの手法が他の手法の不足を補う又
は相補することによって、これまでおぼろげにしか捉えることが出来なかった対象をよ
り詳細に特徴づけることが出来るようになった。中でも、酵素蛋白質をはじめとする生
体触媒に注目すると、その活性部位において行われる反応が手にとるようにわかるよう
になり、現在、工学的に利用しうる段階にある。
本研究は、分子生物学的手法、生物化学的手法、及び生物物理学的手法(NMR法・QM
法を含む)を用いた生体触媒に関する解析とその機能の抽出・模倣による応用開発を中
心として行う。その中で触媒機能の担い手としてはたらくヒスチジンの挙動(下図)に
関する研究応用を念頭に進める。ここに「化学」が適切に導入されるならば、より詳細
に解明される触媒機構を
His94
用いて蛋白質工学/創薬/
H2 N
環境手法の開発に応用す
H
Glu117
ることが可能となる。特
に , そ の 基 盤 技 術を強 化
O
す る た め に ,無 機化学 分
O
N
H
O
N
目 し ,そ れ らが 効果的 に
Nε2-H
tautomer
纏めら
れるこ
とで形
成され
る触媒
B +
H
N
N
H
H
O
w2
O
H
His64
“in”
H
Imidazolium
O
ZnO
2+
Zn
(a)
応募者のこれまでの実験科学
B +
H
N
+
N
H
O
H
w1a
O
H
His64
“in”
N
H
O
Asn244
backbone
His96
H
w2
O
HN
H
H
w1a
H
His119
金属イオン触媒
と ヒスチジン
H
Zn
N
ーといった素反応にも着
N
2+
N
野において枢要な金属イ
オン触媒や水素結合リレ
Gln92
H
H
Nδ1-H
tautomer
_
O
ZnO
2+
Zn
+
BH +
水素結合リレーとヒスチジン
反応を詳細に記述すること,かつそこで確立する手法を様々な
系に適用すること,そしてそれらの手法を礎として開発を行う。
O
H
w1a
H
w2
O
H
_
O
ZnO
H
(b)
に基づく研究成果 (Shimaharaら,JBC 2007,282,9646;AIPConfProc 2013,1518,610)
N
N
H
H
H
B +
(c)
His64
“in”
Imidazolium
N
+
H N
His64
“out”
H
H
O
H
w1a
H
w2
2+
Zn
O
H
O
ZnO
H
at low pH
2+
Zn
(d)
2. 研究成果(途中年度の場合は進捗状況)
本年度、代表者は、イノベーションアワード2016優秀賞を獲得した本学主催北陸
発の産学官金連携マッチングイベント「Matching HUB2015」において、北日本紡績株式
会社と、環境分野開発に関して双方一致する方向性を見出す話し合いを行うことが出来
た。その結果、「特殊パウダーを含む高分子材の機能発現に係る機構解析とその高性能
化研究に関する技術提供と共同開発」という題目を冠する共同研究に発展した。現在、
注目するその材によって引き起こされる現象の機構解析を中心とする研究を行い、今後
、生体触媒科学に関する知見に基づいてその高性能化を目指す。
一方、本研究で行う解析・開発の基礎となる生物化学的手法による適用を行うことが
可能な実験系の構築が急務であり、本年度、分光学的手法による触媒活性系の構築、溶
存ガス濃度測定系の確立、高度な生物化学的解析を可能とする高速液体クロマトグラフ
ィー(HPLC)法の確立等に取り組み、それぞれにおいて使用する装置の本格的稼働に至
っている。ここでは、博士前期課程副テーマ学生神崎晃悠君の貢献が大きい。
(作成に当たっての注意)
・ 研究開発課題の概要及び研究成果については、産学官連携総合推進センターのホームページに掲載予定のため公
表可能な範囲で記入すること。
・ 2ページ以上4ページ以下(図表、写真等を含む)にまとめること。
・ 特許の出願番号、発明の名称等、実用化・製品化されたものがある場合は、その名称を挙げること。
・ 起業化まで進んだ場合は、その旨記載すること。