図書館の RFID︵IC タグ︶ 直樹 吉田 東京都立中央図書館 に装着するのに百円かかる。これでは流 何よりも価格が高い。タグを資料一点 待って何十年に一度の機会を見送るわけ 館建設である。となれば、規格の制定を RFID導入の契機で最も多いのは新 りに時間はかかる。 通商品にはつけられない。繰り返して使 にはいかない。こうした事情も各国同じ は揺籃期なのだ。 わなければ、とても割に合わない。流通 日本では出版界がタグを装着して刊行 する声は海外からも聞こえてくる。 眼が鋭く光る。これが数回繰り返された め数が出ない。というわけで図書館の出 することを考えている。諸外国では、ま であるのか、規格に寄らない導入を危惧 六月、出版・倉庫業界がRFID視察 後、男は店を出る。その男に近づき、前 番である。図書館では個品単位で繰り返 われるが、個品︵一冊一冊︶ではないた 団をヨーロッパに送った。その報告映像 に立つ警備員。 緊迫した一瞬の間を置き、 業界でも反復利用されるコンテナ類に使 の中にRFIDを導入して棚卸を行う書 と っ て は 実 に あ り が た い 企 画 で あ る が、 だこうした計画は耳にしない。図書館に 現時点のRFIDの実力でも図書館な こ れ も ま た 実 現 を 待 つ わ け に は 行 か ず、 しの流通が行われる。 ら恩恵を受けられる。例えば、自動貸出 独自導入は進む。ちなみに分母を定めや 警 備 員 は 手 に し た 紙 を 差 し 出 し て 言 う。 レジを通ることなく決済が済んでいる 機を設置した図書館で、それによる貸出 ﹁お客様、レシートをお忘れです。﹂ こ と を 示 す 宣 伝 だ。﹁ 紙 ﹂ の レ シ ー ト で す い 公 共 図 書 館 で の 導 入 状 況 を 示 す と、 こうした夢物語を実現するための基盤 RFIDの先端業界に踊り出ている。 光栄なことだが、これから発展する技 術を実務で使用するとなると、気になる のが規格の未整備だ。 だ。したがって、図書館のタグに、どの 入状況は、どこの国でも似たりよったり 先進諸国における図書館のRFID導 いだろうから、物の管理は続く。RFI べての資料が媒体なしの形態にもならな * ISO / TC46 国際標準化機構/情報とドキュメンテーション技術 委員会。現在﹁図書館における RFID﹂作業部会 が相互運用技術分科会 SC4 内に設置され検討が進 められている。 ︵サービス部情報サービス課︶ 図のようである。 こ れ を ウ ォ ー ク ・ ス ル ー と 言 う。 ご 易ではないが、将来を見すえたインフラ 割合が五十%を超えるという図書館がい ちゃごちゃと手続きすることなく、ただ と考えれば許容できるだろう。 くつも出てきた。完全にペイするのは容 通り抜けると処理が済んでしまうことを 落とすところが笑える。 店がある。説明にあたった店長らしき男 性が、手にしたハンディ・ターミナルを 書棚の本の背にそって滑らせていく。 この映像に違和感を持った。ハイテク と読み取りの人手による処理がそぐわな み取り機を走らせれば、自動化できるで 示す。図書館では書棚から借りたい本を い。これなら書棚にレールを設置し、読 はないか。しかし、レールがあると書棚 となるのがRFID技術である。図書館 こ の よ う な 理 由 か ら、 図 書 館 は 現 在、 から本を取り出すお客様の邪魔になる? 黙って持ち出し、黙って返しておけば手 棚くらいの高さでしたら、床面を自走す 続き完了だ。 るロボットのはしごを上下させるだけで 資料の電子化が進んでいるとはいえ、す レールなんて必要ないんですよ、 いや、 と同席していたメーカーの人は言う。書 上の棚から下の棚まで順次読み取らせる なるほど。図書館でも閉館後、ロボッ 情報をどのように収録するか、という議 ことができます。 Dは物と情報の間を、バーコードよりも マーシャル風に作られていた。 されているものか知らないが、テレビコ 伝映像を見せていただいた。実際に放映 二年前、ある会合で外国のRFID宣 れを防ぐために冊数を手入力する、薄い 一段を読み取れない、貸出資料の読み漏 棚に何回もアンテナを差し込まなければ 界を制覇しているだろう。実際には、書 どの実力があれば、すでに物品管理の世 さて現在のRFIDに、先に書いたほ TC46の場での検討は昨年暮れから精 題になってくる。すなわちISOである。 こうした情勢では国際的な通用性が問 ている。 もほぼ確定。もちろん、日本でも検討し フィンランドで規格制定済み。アメリカ オランダ、デンマーク、オーストラリア、 RFID特集にて続きを掲載予定です。 復 刊 丸 善 ラ イ ブ ラ リ ー ニ ュ ー ス・ 論も各国同じように盛んである。 すでに、 男がコンビニ風の店内で、さりげなく 本 は バ ー コ ー ド で 読 ん だ 方 が 早 い、 と 力的に進められているが、やはりそれな 効果的に結びつける核となる。 トが書棚の間を走り回って、図書の所在 を確認する。明かりは必要ない。暗闇の 左右を見わたし、棚から商品をとって内 いった現実がある。まだまだ製品として 中で黙々と働いて回る。 ポケットにしまう。入口にいる警備員の 丸善ライブラリーニュース 号外 3 2010年 2009年 2008年 2007年 2006年 2005年 2004年 2003年
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