Investment Insights 最終局面を迎える米ドル高

機関投資家向け資料
Investment Insights
通貨の見通し
2016年3月
最終局面を
迎える
米ドル高
概要
マーク・ブレット / Mark Brett
債券ポートフォリオ・マネジャー
経験年数:37年
在籍年数:22年
ロンドン・オフィス
⿠⿠5年間続いたユーロや円などの主要通貨に対する米ドルの強気相場は、終わりに近
づいていると思われます。
⿠⿠株式に影響を及ぼしてきた米ドル高の逆風は、弱まると考えられます。
⿠⿠金利差と為替レートは、常に連動するものではないため、米連邦準備制度理事会
(FRB)の利上げは、必ずしも米ドルの先行きを決定する要因とはいえません。
⿠⿠中国当局が人民元の切り下げを継続すると明白に表明しているため、アジアやその
他複数の新興国通貨にとり、不利な状況が継続すると予想されます。
⿠⿠世界経済の鈍化や、中国の経済減速、資源消費の減少に新興国経済が直面してい
るなか、一部の通貨はさらに下落すると思われる一方、明るい材料も見られます。
図表1:新興国および先進国のエネルギー純輸出国は、2014年半ば以降の米ドル高に直面
主要通貨の対米ドル騰落率:2014年6月30日~2015年12月31日
先進国
新興国
英ポンド
–14%
日本円
ユーロ
エネルギー純輸出国
–16%
–21%
中国人民元
–4%
インド・ルピー
–9%
メキシコ・ペソ
オーストラリア・ドル
–23%
ブラジル・レアル
カナダ・ドル
–23%
ロシア・ルーブル
–25%
–44%
–53%
出所:MSCI、キャピタル・グループ
thecapitalgroup.co.jp
当資料に記載されている運用・調査に関わる人員は、必ずしもキャピタル・インターナショナル株式会社の所属ではあ
りませんが、キャピタル・グループ傘下の関係会社に所属しております。
当資料は、キャピタル・グループ全体ではなく、個人の意見や見解を含みます。
当資料は顧客への情報提供を目的として作成された資料であり、特定の有価証券等の勧誘を目的として作成されたものではありません。
当資料は当社が信頼できると判断した情報により作成されておりますが、
その正確性、完全性について当社が保証するものではありません。
また上記の運用実績及びデータ等は過去のものであり、将来の成果を保証するものではありません。
当資料中に示された予測や見通しにつき 1
ましては、資料作成日現在における当社及び当社グループの見解であり、今後につきましては経済及び市場の変動に伴う変化が予想されますため、予告なく変更される可能性がありますことをご了承ください。
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Investment Insights
通貨の見通し
2016年3月
ユーロと円に対する米ドル高は終わり
つつあると見込まれる
「株式運用に対する米ドル高の逆
風は弱まり、加速した米ドル高
は、2016年末までに終了すると
考えられます」
2015年は、米ドルに対してほぼすべての
通貨が下落し、その多くが二桁の下落率
を記録しました。その結果、米ドルベース
のグローバル株式やグローバル債券運
用の収益に対し、この為替変動は総じて
マイナス寄与する結果となりました。しか
し、FRBが昨年12月に、2006年以降で初
めての利上げを行ったため、多くの投資
家が、今後の米ドルの動向を注視していま
す。
過去の例に従えば、ユーロ圏や日本、その
他多くの国の中央銀行が金融緩和を継続
している中、米国の金利上昇は、より高い
金利を得られる通貨の経済に資金を流入
させます。従って、米ドル高を長期化させ
る要因となります。
1980年代の米ドル高を引き合いに出して
も、その要因を分析することが可能です。
当時は、堅調な米国経済に対して他の地
域の経済が減速するという、典型的な「経
済の二極化」という状況でした。その他の
要因として、米国以外のインフレ率が相対
的に高かったことから、米国の競争力をあ
まり阻害することなく、米ドル高が進む余
地が生じました。
図表2:米ドルの価値は10年来の高水準
一方、現在は過去の例と極めて異なる状況
といえます。世界の経済や市場に対する中
国経済の影響は遥かに強まり、米国を含
む世界各国でインフレ率が総じて低く、既
に多くの通貨が米ドルに対して大幅に下落
しているなど、各国経済の関連性が高まっ
ているといえます。
このような背景から、株式運用に対する米
ドル高の逆風は弱まると考えられます。ま
ず、2011年に始まり、2014年半ばに加速
した米ドル高は、2016年末までに終了す
ると考えられる背景を検証してみます。
過去を見ると、金利上昇は必ずしもその
通貨の上昇に繋がるとはいえません。FRB
が利上げを継続した場合でも、米ドル高
が避けられないわけではありません。む
しろ、為替には企業の設備投資がより大
きな影響を及ぼす可能性があるといえま
す。例えば2011年に、米ドル相場が弱気
から強気に転じた一因は、米国企業が製
造拠点や営業拠点を国内に戻したことで
す。
一方、ユーロ圏と日本には、通貨安をもた
らす二つの要因であるインフレと貿易・経
済の大幅な不均衡が存在しません。購買
力平価(PPP)の考え方は、通貨の価値が妥
当か否かを見定める上で有益です。
米ドルの価値の推移:1981年1月~2015年12月(2010年を100として指数化)
160
140
2015年末の米ドルは、
過去25年間の平均を上回り、
10年来の高水準
120
100
47ヵ国の通貨に対するインフレ調整後為替レートで構
成されるJPモルガン・ブロード貿易加重実質為替レー
ト指数(米ドル)の月央データ。投資家は指数に直接投
資することはできません。
出所:JPMorgan
80
1981
当資料は、キャピタル・グループ全体ではなく、個人の意見や見解を含みます。
1986
1991
1996
2001
2006
2011
2016
(年)
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当資料中に示された予測や見通しにつき 2
ましては、資料作成日現在における当社及び当社グループの見解であり、今後につきましては経済及び市場の変動に伴う変化が予想されますため、予告なく変更される可能性がありますことをご了承ください。
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通貨の見通し
2016年3月
「ユーロと円が米ドルに対して持
続的かつ大幅に下落する可能性
は低いと思われます」
PPPの考え方では、2ヵ国間で購買力が
同じになるように為替レートが決まりま
す。2016年に入り、ユーロの米ドルに対す
る価値は、PPPから想定される水準を約
15%下回っており、円の価値は25%近く過
小評価されています。これらの為替レート
がいずれ妥当な水準に近づくと想定する
のは、正当な考えといえます。従って、ユー
ロと円が米ドルに対して持続的かつ大幅に
下落する可能性は低いと思われます。ただ
し、円については、
マイナス金利がさらに引
き下げられる(マイナス幅が拡大する)場合
や、日本政府が為替市場に介入する場合、
一時的に円安に振れる可能性があります。
中国の構造転換や通貨切り下げが影を落
とす
中国が投資主導の経済成長から、消費主
導の経済構造への転換を進めるなか、一
部の国は痛みを伴う経済の調整局面に直
面しています。程度は異なるものの、オース
トラリアやブラジル、インドネシア、南アフ
リカなど資源純輸出国の経済と通貨は、中
国の需要減少により、直接的および間接的
な影響を受けています。
中国の金融と為替政策も変化しており、一
図表3:人民元切り下げの中で、中国は通貨
安定のために外貨準備を取り崩し
人民元の価値(左軸)
部の政策が問題の根源といっても過言で
ない状況です。中国が2016年1月に行った
通貨切り下げがひとつの例といえます。人
民元の切り下げは、中国が輸出競争力を
高めるために通貨戦争の可能性を高め、
金融市場に打撃を与えると非難されてい
ます。
しかし、こうした政策は、それほど驚きで
はないとの見方もあります。中国は、過去
2年間で4回、通貨を切り下げています。
また、自国通貨を安定させるために、繰り
返し外貨準備を取り崩しています。中国当
局は、通貨切り下げ競争を仕掛けている
のではなく、2008年以降に積み上がった
15兆米ドルの債務に対応するための手段
の一つとして、通貨切り下げを活用してい
ると考えることも可能です。切り下げに加
え、金利と預金準備率の引き下げによる
金融緩和は、インフレ率を押し上げ、それ
によって債務の実質コストを軽減するこ
とが目的といえます。これは、インフレに
よる債務軽減として知られる、過剰債務
に取り組む教科書的な方法です。人民元
は、過去2年間にわたり、米ドルに対して
6%以上も下落していますが、まだ約10%
~15%過大評価されている見方もありま
す。
外貨準備高(右軸)
外貨準備高
(兆米ドル)
3.9
人民元の
米ドルベースでの価値
0.163
新人民元か
2015年12月、
中国人民銀行は、
通貨バ
スケットを参照して人民元の価値を示
す方針を発表しました。中国外国為替
取引システムによる人民元指数は、貿
易加重の通貨バスケットに対する人民
元の価値を示すもので、実効為替レー
トの事実上の基準として導入されまし
た。
0.156
0.150
出所:MSCI、キャピタル・グループ
3.6
2015年12月末現在、中国の総外貨準備高は3.3兆米ドルまで縮小
-12ヵ月前を15%下回り、2014年6月のピークを20%下回る水準
2014/12
当資料は、キャピタル・グループ全体ではなく、個人の意見や見解を含みます。
2015/3
2015/6
2015/9
3.3
2015/12
(年/月)
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通貨の見通し
2016年3月
主なポイント
⿠米ドルは、
⿠
ユーロと円に対して大き
く上昇することはないと予想され、
ユーロ圏や日本へ米ドルベースの投
資において、為替効果がまもなくプ
ラスに転じる可能性があります。
⿠一部の新興国通貨は、
⿠
米ドルや他
の主要通貨に対してさらに下落する
恐れがあります。
⿠グローバル債券運用において、
⿠
一部
の新興国通貨は、バリュエーション
が魅力的な水準に近づいていると
見られ、特に現地通貨建て債券運
用から長期的な収益が見込まれま
す。
⿠米ドルベースの投資において、
⿠
グロ
ーバル株式やグローバル債券運用
の収益に対する為替効果は、
最近の
マイナスから、
まもなく中立またはプ
ラスに転じる可能性があります。
人民元の切り下げにより、中国国内投資
家の信頼が揺らぎ、中国居住者が資金を
海外に移したため、株式市場の変動と資
本の国外流出に至りました。こうした事態
は、中国政策当局の実に難しい課題とな
っており、当局の最善の努力にもかかわ
らず、中国の株式市場は今後数年間にわ
たり極めて不安定となる可能性がありま
す。
中国は引き続き、資源純輸出国の通貨に
対してのみならず、世界経済に幅広く影響
を及ぼすことが予想されます。例えば、中
国の需要から恩恵を受けている、
または中
国の輸出企業の競合相手国など、特に中
国経済と密接な関係にあるアジア諸国の
通貨は、米ドルに対して下落するリスクが
高いといえます。
更には、
米国にも影響を及
ぼす可能性があります。過去10年間にわた
り、米国企業の利益成長に占める中国需
要の割合が、大幅に上昇しています。中国
経済の減速によって米国企業の利益成長
率が低下した場合、米国経済への影響か
ら、FRBは現在予想されている利上げやそ
のペースを変更する可能性もあります。そ
の場合、FRBが利下げや債券購入(量的緩
和)を行う可能性さえ高まり、
米ドル高基調
を終わらせる可能性がさらに高まるともい
えます。
新興国通貨:全般に厳しい状況のなか
にも明るい材料
多くの新興国経済は、まだ厳しい調整局
面にあるといえます。残念ながら、より大
掛かりな構造改革が実施されるまで、通
貨安と変動性の高まりは避けられない状
況といえます。
しかし、新興国経済がすべて同じではない
ことにも留意する必要があります。
ブラジル
などの経済は、資源輸出における中国への
依存度が高いことから、
中国需要の影響を
大きく受けます。一方で、米国経済とより密
接な関係にあるメキシコなどの国も存在し
ます。
インドでは、健全な経済成長とインフ
レが見込まれますが、
ロシア経済は暗い見
通しといえます。
ブラジルやロシア、南アフリカは、高インフ
レと同時に、経済・貿易の様々な不均衡に
直面しています。
また、
これらの国の政治状
況では、経済を立て直すことができるよう
な構造改革もほとんど見込まれません。
そ
のため、
ブラジル・レアルやロシア・ルーブ
ル、南アフリカ・ランドは、2016年に入り、
米ドルに対して適切とみなされる通貨価値
の水準を25%以上も下回っていましたが、
いずれもさらに下落する可能性が高いと思
われます。
一方、
ハンガリー・フォリントやメキシコ・ペ
ソ、
ポーランド・ズロティの3通貨は、
ともに
自国経済に大規模な不均衡やインフレ圧
力がないため、2016年に入り、米ドルに対
して過小評価されていると考えられます。
こ
れらの通貨は、新興国通貨全般が広く売ら
れる中で現状下落しており、現地通貨建て
債券は、
エマージング債券運用やグローバ
ル債券運用に魅力的な収益をもたらすと
見込まれます。
短期的には、通貨安がインフレ率を押し
上げ、経済を悪化させる可能性があるもの
の、長期的には、競争力の向上や、願わくは
経済改革など、多くの明るい材料もありま
す。
従って、
多くの新興国通貨が、
米ドル・ペ
ッグ制ではなく、変動相場制であることは、
いずれプラスに作用すると考えられます。
さ
らに、米ドルの上昇ペースは低下していま
す。
あまり遠くない将来に米ドルが安定す
れば、(一般的に米ドル建てで取引される)
商品価格の安定化に役立ち、多くの新興
国通貨が反転する土台を築く可能性があ
ります。
※時点の記載がない場合は2016年2月23日現在の情報または見解です。また、当資料は、キャピタル・グループ全体ではなく、個人の意見や見解を含みます。
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商号
関東財務局長(金商)
第 317 号
キャピタル・インターナショナル株式会社
代表取締役社長
トーマス・クワントリル
東京都千代田区丸の内二丁目 1 番 1 号 明治安田生命ビル
TEL : 03-6366-1050 (営業部代表)
加入協会
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等に投資するものであり、組入有価証券の価格の下落や、組入有価証券の発行者の業績悪化や倒
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い変動、外国への送金規制、税制等)、低格付け債券のリスク(デフォルト、金利変動に対する価
格変動等)等があります。
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 外国籍投資信託を用いた運用の場合:投資信託に係る運用報酬、投資一任契約に係る報酬
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