エマージング債券運用 Q&A ポートフォリオ・マネジャー ローレンティアス

機関投資家向け資料
エマージング債券運用
Q&A
ポートフォリオ・マネジャー
ローレンティアス・ハラー
2015年8月
本書では、エマージング債券の見通しについて、ポートフォリオ・マ
ネジャーの1人であるローレンティアス・ハラーの見解をご紹介いたし
ます。
エマージング債券について、今後の動向を
どのように見ていますか。
ローレンティアス・ハラー/
Laurentius Harrer
ポートフォリオ・マネジャー
経験年数:26年
在籍年数:21年
ロサンゼルス・オフィス
「現在では、多くの新興国が米国
金利の上昇の影響を乗り切るこ
とができるだけの良好な状態に
あることも認識しておくべきだと
思います」
エマージング債券市場は過去2年ほど厳し
い状況が続いてきました。最も影響したの
は、米国の利上げ観測の高まりを背景とす
る米ドル高とそれに伴うエマージング市場
からの資金流出、そして最近では資源価
格の下落でしょう。ただし、資源価格が回
復し、米ドルの強気相場が終了するようで
あれば、この傾向が逆転するきっかけとな
ります。私はそろそろそうした時期に近づ
いているのではないかと見ています。
ていた時期とは異なり、現在のエマージン
グ債券のバリュエーションは、個別国のフ
ァンダメンタルズをより反映した状態にあ
ると見ています。
資源価格についてはどのように予想して
いますか。
資源価格については、原油を除けば、先
行きは中国次第と考えています。中国は
原油以外の殆どの資源の世界最大の消費
国であり、同国経済の低迷が最近の資源
価格の下落に大きく影響したと考えられ
るからです。しかし、中国当局は景気減速
想定される米国の利上げがエマージング を懸念しており、今や金融緩和に加え、最
債券に及ぼす影響について、どのように予 近では財政面の景気 刺激 策も再び打ち
出しています。弊社グループの中国担当エ
想していますか。
コノミストは、同国経済が現在底入れし、
間もなく回復すると見ています。もはや8
米国金利が急上昇すれば、一部の新興国
(特に大幅な経常赤字を抱え、その赤字を ~10%の高い経済成長率を期待すること
埋めるため海外からの資金流入に依存し はできませんが、5~6%の成長率であって
ている国)に悪影響を及ぼす可能性があり も、原油以外の資源価格の支援要因にな
ます。しかし、米国の景気回復がそれほど りうると考えられます。したがって、原油
力強いものではないことから、FRB(米連 以外の資源価格は現在、転換点に差し掛
邦準備制度理事会)の利上げペースは、よ かりつつあると思われます。
り緩やかなものとなると予想しており、影
為替に関する見通しを教えてください。ま
響もかなり小さくなると見ています。
た、ポートフォリオでは、その見通しを踏
現在では、多くの新興国が米国金利の上 まえてどのような戦略を採っていますか。
昇の影響を乗り切ることができるだけの
良好な状態にあることも認識しておくべき バリュエーション面では、現在の米ドルは
だと思います。例えば、エネルギーの純輸 割高となりつつあり、米ドルの強気相場
入国で経常赤字が削減されるなど、既に は終盤に差し掛かっていると考えていま
かなりの経済面の不均衡の是正が進んで す。当然ながら、相場の転換は、それが実
際に起こるまで分かりませんが、米国の
います。また、一部の新興国では、中央銀
行が利上げから金融緩和に転じ、株式や 金融政策の経路が主な決定要因となる可
債券などの資産価格や経済成長を下支え 能性が最も高いと思われます。私が予想
ることが可能となっていますし、
「イールド・ するように、FRBの利上げが市場に織り込
ハンティング」
(高利回り資産選好)により、 まれているよりも緩やかなものとなれば、
あらゆるエマージング債券に資金が向かっ 米ドルの強気相場終了の契機となりえま
thecapitalgroup.co.jp
当資料は顧客への情報提供を目的として作成された資料であり、特定の有価証券等の勧誘を目的として作成されたものではありません。
当資料は当社が信頼できると判断した情報により作成されておりますが、 1
その正確性、完全性について当社が保証するものではありません。
また上記の運用実績及びデータ等は過去のものであり、将来の成果を保証するものではありません。
当資料中に示された予測や見通しにつき
ましては、資料作成日現在における当社及び当社グループの見解であり、今後につきましては経済及び市場の変動に伴う変化が予想されますため、予告なく変更される可能性がありますことをご了承ください。
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エマージング債券運用
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ポートフォリオ・マネジャー
ローレンティアス・ハラー
2015年8月
「私が予想するように、FRBの利
上げが市場に織り込まれている
よりも緩やかなものとなれば、米
ドルの強気相場終了の契機とな
りえます」
す。逆に、FRBが今後1年~1年半にわたり
積極的に利上げを行うようであれば、米ド
ルの強気相場は続くことでしょう。弊社グ
ループの米国のマクロ経済や金利担当の
エコノミストは前者を予想しています。
一方で、米ドルに対する新興国通貨の多少
の下落局面は現在も続いていますが、新
興国通貨全般はかなり調整が進み、割安
と感じられる通貨も増えてきたと判断して
います。前述のように、米ドルが今後反落
する可能性への備えに加え、ヘッジコスト
の高止まりが続いていることから、私はポ
ートフォリオで保有する現地通貨建て債
券のヘッジを解消し始めました。
エマージング市場では、現地通貨建て債
券の利回りが、短期金利よりは低くても、
絶対水準としてはそれなりに魅力的な水
準の国も多いですから、仮に多少の為替
損失が発生しても、債券利回りで十分に
補うことができるとも考えています。
アジアでは特にインドとインドネシアの現
地通貨建て国債をかなり保有しています。
これらの市場と通貨の魅力を教えてくだ
さい。
両国とも、約1年前に改革派の新政権が
誕生したという共通点があります。それに
加え、インドの場合、金融政策の改善から
高い確信を得ています。インド準備銀行
今後利上げが予想されるとはいえ、今のと は、2013年に信頼に足る新しい総裁が任
ころ政策金利が実質ゼロ水準にとどまっ 命され、2014年初めからはインフレ・ター
ている米国に対し、エマージング市場では、 ゲット政策を実施し始めました。これによ
インフレなどに対応して2010年以降に利 り、2年前は前年比10%に迫っていたインフ
マイナスだった債券の
上げを進めた結果、短期金利が高止まり レ率の低下が続き、
している国が多く、米ドルと現地通貨の短 実質利回りはプラスに転換し、銀行システ
期金利差であるヘッジコストも同様に高 ムの流動性も改善しています。通貨も概ね
水準となっています。高いヘッジコストを 適正に評価されていると考えられ、仮に短
払ってもそれ以上の収益が期待できれば 期的にわずかな為替損失が生じたとしても、
よいのですが、実際には、ヘッジ後の収益 約8%と高い名目金利によって十分に穴埋
がマイナスに落ち込むことの方が多くなっ めが可能と考えています。
ています。なぜなら、現在、イールドカーブ
が順イールド(期間が長いほど金利水準 インドネシアも政権交代から恩恵を受けて
が高い状態)となっている新興国は少なく、 います。輸出主導から国内のインフラ投資
大半の国が平坦か右肩下がり(短期金利 主導の成長へと経済の牽引役の転換が進
よりも長期金利の方が低い状態)となって もうとしています。景気は減速していますが、
いるからです。例えば、ブラジルの場合、ヘ この成長率の鈍化が、6%近辺で推移して
ッジコスト水準を大きく左右する同国の きたインフレの沈静化に役立つと考えられ
短期の政策金利は、中央銀行が13.75%に ます。そうすれば、利下げも可能となり、イ
引き上げたばかりです。一方の長期金利は ンドと同様に8%近辺の現地通貨建て国債
12.5%前後であるため、ヘッジによってイン の利回りにも、さらなる低下余地が生まれ
カム・ゲインが相殺されてしまう計算とな ると見ています。また、インドネシアの場合、
通貨もこれまでにかなり売られてきており、
ります。
割安な水準にあると見ています。
このように、大半の新興国通貨について、
今後予想される為替損失は、ヘッジコス (2015年6月末のインタビューに基づく)
トほど大きくはないと考えています。また、
Laurentius Harrer/ローレンティアス・ハラー
キャピタル・グループのポートフォリオ・マネジャー。運用経験年数26年、在籍年数21
年。ポートフォリオ・マネジャーを務める前は、債券アナリストとしてエマージング市場を
担当。キャピタル・グループ入社以前は、Metzler Investmentでグローバル債券及び為
替の運用、Bayerische Vereinsbankで法人営業に従事。ドイツのランドシャット大学で
経営管理の学士を取得。ロサンゼルス・オフィス在籍。
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