筋 膜

基礎編
Ⅳ.筋肉・筋膜の構造と役割
開放系のエネルギーを取り入れながら恒常性を維持すること、そのために、意志を持っ
欠如した深層筋に引かれてずれてしまうことになる。
そのように関節が正常な位置から逸脱すると、周囲の筋にも影響が広がり、筋の萎縮、
て動作するための筋肉があるということ(脳と神経だけでは動けない)、ここに生命体と
可動域制限が起こる。しかも、スペースが狭小化するため(伸ばされたり、潰されたりし
して人間を存続させるシステムが完成されている。すでに述べたように何層にも分かれた
た筋膜の周囲も同様)組織液の流れが阻害され、筋膜間の摩擦が増大して炎症を引き起こ
構造を持つ人間の身体は、前項で解説した皮膚の生理的機能を包含した上で、その境目を
す結果となる。
膜で覆って、お互いの組織を守り合っている。
また、この深層筋が筋肉トレーニングのしすぎで肥大化すると、関節が圧迫を受け、関
そのため、人体は実に多くの膜に包まれ、膜に仕切られている。人間の体表を包み、総
節の圧が異常に高くなったり、関節が変形する結果を招来する。逆に深層筋が弱くなって
面積 1.5 ㎡にも及ぶ皮膚。鼻や口、内臓の内壁を覆う粘膜、骨を包む骨膜、関節を包む線
線維化すると、靭帯に過分な負担がかかり、関節のズレを引き起こす。靭帯は牽引に耐え
維膜と滑膜、筋肉を覆う筋膜、さらに微小な単位でいえば、細胞を包む半透性の細胞膜も
る強靭な力があるが、限度を超えると伸びきったゴム紐のような状態になるからである。
そうである。この境目に侵害刺激を余分に加えることなく、機能を損ねることなく、自然
治癒を促して行くための有効手段の模索が、自然療法家として最重要であることを認識し
中層筋(安定筋)
浅層筋
運動筋
異常:皮下のリンパ液および血
管循環との関係、皮膚感覚異常、
筋力低下、関節可動域障害
潤滑ポンプ 表層筋と深層筋のサポート、 深部リンパ液循環と関係、表層筋の過剰な
動きを抑制、深部への熱の遮断
異常:肥大による内蔵圧迫、オーバーユー
スによる内圧上昇、隣接した筋膜への影響
たい。
筋 膜
浅筋膜と深筋膜との間に 3 つの筋肉
深層筋(インナーマッスル)
関節のサポート(靭帯の代役)
異常:オーバーユースによる関節の
狭小化、ズレの発生、関節の変形
表皮
表皮
浅層筋(表層筋)
真皮
真皮
中層筋
感覚受容器
の存在
浅筋膜
リンパ液(組織液)循環
のための筋膜間スペース
深筋膜
3層の筋肉の役割と異常があるときの影響
筋力トレーニングの盲点
深層筋(深部筋)
正常な状態では筋膜間は組織液で満たされ、筋と筋の摩擦、筋と
筋膜の摩擦を軽減し、それらの摩擦による熱を運び去る
筋膜の多面的な役割
このように、表層から深層にいたる3層の筋肉が、それぞれ異なる機能を有しているに
もかかわらず、おしなべて筋肉を鍛えればいいと考えているところに、現在の日本のスポー
筋膜は筋肉の表面を覆う薄い膜(結合組織)で、筋線維が解けないようにするとともに、
ツ界の筋力トレーニングの問題点がある。試合中の接触プレーのような瞬間的な障害を引
筋と筋の摩擦を防いでいる。また筋肉の過剰な動きを抑制し、それによって身体の過剰な
き起こすことはないが、長い目で見れば重大なスポーツ障害を引き起こすことになりかね
動きを制御しているのである。
ないからである。ここに自然療法における刺激と反応において、正確な方法と目的の確立
が急務であることを訴え、そして提案すべき時期だと実感するのだ。
筋膜は浅筋膜と深筋膜とに分かれ、体表から表皮→真皮→浅筋膜→深筋膜の順に層を成
している。さらに筋肉を含めていえば、表皮→真皮→浅筋膜→深筋膜→浅層筋(表層筋)
→中層筋→深層筋(深部筋)の順で層を成しているのである。そして、正常な状態にある
ときは、筋膜間は組織液に満たされている。この組織液が潤滑油となって筋と筋との摩擦、
注目したい筋膜の重要な働き
筋と筋膜との摩擦を軽減すると同時に、摩擦によって生じる熱を運び去る役割をも担って
いるのである。
外部環境に適応していくための、人体の生理は実に巧緻を極めたもので、一般的認識よ
り遥かに巧妙に機能している。
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Dr. KASE THERAPY
このように皮膚と筋膜の下層の狭いスペースに、3層の筋肉が収まっているため、筋の
肥大化などで、さらにスペースが狭小化すると、組織液やリンパ液の流れが阻害され、筋
Dr. KASE THERAPY
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