一 一 一一 一. 一 一 一 ・ .一 一一 一 一 一 ・ 一 ・ 一一 一 一 一一 ● . ・ KEY WORDS>マ ゴッ ト療法 難治性潰瘍 創内持続陰圧洗浄療法 ン トで 120 mmHg,後 方 コ ンパ ー トメ ン ト は じめ:こ で 110 mmHgと 著 明 な上昇 を認 め た。 右 下 腿 コンパー トメ ン ト症候群 と診断 され,救 急 近年 ,難 治性 の創傷 に対す る治療手段 の 1 つ として,医 療用無菌 ウジを用 い たマ ゴ ッ ト 部 にて直 ちに減張切 開が 行 われた。 また,造 影 CTと 血 管造影 で右 の膝高動脈 の途絶 を認 療法が注 目されて い る。 今回 われわれは,創 め右 膝省動脈損傷 と診断 されたため,同 時 に 1)の を行 って も治癒 し得 内持続 陰圧洗浄療 法 なかった コンパー トメ ン ト症候群後 に伴 う極 血 行再建術が行 われた。これ らの処置 に よ り めて難治性 の下腿皮膚潰瘍 に対 し,マ ゴ ッ ト 右下腿 の血 行 は再開 したが,受 傷 よ り約 8時 療 法 (maggot debridement therapy)を 行 間が経過 して い た。その後 ,し ば らくは救急 うことで治癒 させ ることがで きた ので,若 干 部 にお い て洗浄処置 な どが 行 われて い たが の文献的考察 を加 え報告す る。 倉1部 の状態が不良なため,受 傷 よ り 9日 目に 口 症 例 患者 :19歳 ′男性 主訴 :右 下腿腫脹 ・疼痛 既往歴 。家族歴 :特 記事項 な し 現病歴 :ト ラ ック同士 の正面衝突で変形 し た フ ロ ン ト部 に右下腿 を挟 まれ ,約 20分 後 に救急 隊 にて救 出 された。救 出中,右 下腿 の 当院血管外科 によって大 伏在静脈移植 に よる , , 当科 に紹介 された。 現症 :当 科初診時,下 腿 の 内側 と外側お よ び後面 の 3カ 所 にすで に減張切 開が行 われて い た。特 に外側 の創部 には,壊 死 した筋組織 を広 範囲 に認 めた (図 1)。 治療経過 :全 身麻酔下 にデブ リー ドマ ンを 行 い,明 らか に壊死 した筋組織 (前 肛 骨 筋 , 誹骨筋群 ,リ ト 腹筋 な ど)を 除去 した。その後 3カ 所 す べ ての創 に対 して創 内持続 陰圧 洗浄 , 高度 の 腫 脹 と右 足背 動 脈触 知不 能 の 所 見 よ り, コンパー トメ ン ト症候群 が疑 われた。救 療法 を開始 した。 出後 は,す ぐに ドクターヘ リにて当院救 命救 急 セ ンターヘ 搬入 された。 内持続 陰圧洗浄療法 に よ り良性 肉芽 の増生が 認め られ,計 3回 のデブ リー ドマ ンと 2回 の 搬入後 の右下腿 内圧 は,前 方 コンパー トメ 分層植皮術 を行 うことで創治癒 を得 る ことが 12013年 5月 31日 受領 2013年 9月 3日 掲載決定 *久 留米大学医学部形成外科 ・顎顔面外科 形 成 外 科 ■ 57(1):77∼ 81, 2014 下腿後面の減張切 開部 の創 にお い ては,創 で きた。下腿 内側 の創 にお い て も,同 様 に良 性 肉芽 の増生 を認め,計 2回 のデブ リー ドマ ン と 1回 の分層植皮術 で,創 治癒 を得 る こと (b)`朴 佃」 (a)内 側と後面 図 1 当科初診時の所見 図 2 下腿外側減張切開部の所見 3回 目のデブリー ドマン施行後 3週 の所見。胆骨後面とアキレス腱に及ぶポケッ トの 形成と不良肉芽の増生を認める (矢 印)。 マ ゴ ッ トの提供 を依頼 した。下腿外側胆骨後 がで きた。 しか し,下 腿外側 の減張切 開創 で は,約 2 カ月間に及 ぶ創 内持続 陰圧洗浄療法 と 3回 の デプ リー ドマ ン施行後 も,創 の 末梢 部分 に胆 面 のポケ ッ ト部分 に 125匹 のマ ゴ ッ トを使用 した。方法 としては,マ ゴ ッ トを置 い たガー ゼ をその ままポケ ッ ト内部 に挿入 し,大 きな 骨後面 とアキ レス腱 に及ぶ深 い ポケ ッ トの残 ガーゼで創部全体 を覆 った後 ,マ ゴ ッ トが逃 この げ な い よ う に付 属 の ス トッキ ング を足 に被 せ ,粘 着 テ ー プで 固定 した (図 3)。 4日 後 存 と不 良 肉芽 の 増 生 を認 め た (図 2)。 ため,ポ ケ ッ ト内の壊 死組織 の 残存 を疑 い , 鋭 匙 に よるデ ブ リー ドマ ン を頻 回 に行 った が ,ポ ケ ッ トが歴骨後面の深部 に及 んで い た ため,明 視下 でのデプ リー ドマ ンを行 うこと にガー ゼ を取 り外 し,マ ゴ ッ トの洗浄除去 を 行 った。 わず か 4日 間のマ ゴ ッ ト療法 を 1回 施行 し は不可能 で あ った。 ただけで,肛 骨後面 のポケ ッ トはほぼ消失 し そ こでわ れわれは,壊 死組織 除去能力 だけ でな く肉芽増進や抗菌作用 を併せ もつ こ とで 良性 肉芽 で 覆 われ て いた (図 近年注 目されて い るマ ゴ ッ ト療法 を試み るこ ととした。 患者か らイ ンフォーム ドコンセ ン の増悪や ポケ ッ トの再発 も認めなか った。 こ のため,マ ゴ ッ ト療法終了後 9日 目に分層植 トを得 た後 ,バ イオ セ ラ ピー メデ ィカル社 に 皮術 を施行 した。植皮片 も生着 し上皮化 した 78 4)。 そ の後 8 日間,軟 膏処置 にて経過観察 したが ,創 感染 形成外科 ■57巻 1号 2014年 1月 (a)マ ゴットを置いたガーゼをポケット部に挿入 (b)付 属のス トッキングにて被覆 図 3 マゴッ ト療法施行時の所見 険や食品医薬品局 に認可 されて い る治療 法 で あ るが 9,わ が 国で は まだ薬事 承認 を受 け る には至 っていない。 現在 ,世 界 中 で 医療用 として使用 されて い るマ ゴ ッ トは,ほ とん どが クロバエ科 に属す る ヒロズ キ ンバエ の幼虫 である。 日本で も在 来 の ヒロズ キ ンバエ を繁殖 ・無菌化 し,そ の ‐ 盤澱選顧 ■静ギ■千r・ ´ ■ : 図 4 マ ゴ ッ ト療法施行後 9日 目のポケ ッ ト部の所見 ポケッ トは消失 し良性肉芽で覆われている。 ため,植 皮術後 25日 には リハ ビ リテ ー シ ョ ン施設へ 転 院 した。 二 齢幼虫 が用 い られて い る。 治療 は幼 虫 の食 欲 旺盛 な時期 と治療 時期 を一 致 させ て 行 わ れ,1ク ー ルの 治療 を 3∼ 4日 間 で 行 う。 ま た治 療 には,創 面積 lcm2ぁ た り 5∼ 8匹 の マ ゴ ッ トを使用す る°。 マゴ ッ ト療法の有効性 のメカニズム として 退院後 3カ 月 で 当科外来 を受診 したが,潰 は,① 壊死組織除去効果 (幼 虫の分泌す るタ ンパ ク分解酵素 によ り壊死組織 の融解 を行 瘍 の再 発 や 感染 の 再燃 もな く,経 過 良好 で い,そ れを吸 い上げることで創の壊死組織 だ あ った (図 けを除去す る),② 抗菌効果 (日 か らの分泌 物にザ ルコ トキシ ンなどの抗菌ペ プチ ドを含 5)。 回 考 察 マゴ ッ ト療法 は,そ の効能が数千年前か ら 知 られ ていた創 傷 治療 法 で あ り,1931年 に Bear〕 が慢性骨髄炎 に対 して用 い たのが最初 の文献的報告である。抗菌薬 の普及や手術手 技 の発達 によって次 第 に廃 れて い ったが ,近 年多剤耐性菌 の 出現や糖尿病 ・動脈硬化 な ど による難治性潰瘍 の増加 で再 び脚光 を浴 びる よ うになった゛。 欧米 で はす で に 国民健康 保 形成外科 ■57巻 1号 2014年 1月 み,ま たさまざまな病原菌を含 んだ融解組織 を吸 い上 げ自身 の消化管内で殺菌す る),③ 創傷治癒 の促進効果 (幼 虫が創面 を這 い 回る ことによる機械的刺激や,幼 虫の分泌物 に含 まれ る EGFや IL-6な どのサ イ トカイ ンの もつ 血 管新生作用お よび線維芽細胞刺激作 用 )な どが挙げ られて い る9。 その有効性 に ついては,糖 尿病性潰瘍 ・壊疸 ,虚 血や うっ 血性疾患 などによる下腿潰瘍,褥 塘 ,骨 髄炎 , MRSA感 染 な どの難治性感染症,熱 傷 や外 79 図 5 退院後 3カ 月の所見 傷 な どに よる難治性創傷 といった数多 くの疾 患ですで に報告 されてお り,広 く適応 を もつ °∼2)。 治療法 で ある 癒 させ ることがで きる。 したが って現時点 で 今 回の症 例 にお い ては,創 内持続 陰圧洗浄 療法 と頻 回 のデブ リー ドマ ンを 2カ 月間繰 り ると考え られる。 また,創 力'そ の ように極め て治療抵抗性 になる状況 としては,① 壊死 の 範囲が明確 に同定できない場合,② 壊死組織 返 し行 ったが ,創 の一 部 にまった く改善傾 向 を認めな い部位が あ った。 この 部位 には深 い は,今 回の症例 の よ うにそれ らを行 って も治 癒 し得 ない症例が,マ ゴ ッ ト療法 の適応 にな 療 に極 めて抵抗 した。 その原 因 としては,肛 が明視下にで きない部位 に存在 し確実なデブ リー ドマ ンを行えない場合,③ 血流障害や膠 原病などの基礎疾患があ り外科的デプリー ド 骨後面 に及 ぶポ ケ ッ トの深部 を切 開 によって マ ンによってさらに壊死が進行す る場合,な 明視下 にお くことがで きず ,そ こに壊死組織 どが考 えられる。 このような状況 にある創で は,治 療 の早 い段階で積極的 にマゴ ッ ト療法 ポケ ッ トの残存 と不 良肉芽 の増生 を認め,治 が残 存 して い る可能性 が最 も考 え られた。そ のため ,壊 死組織 除去効果 を期待 し,マ ゴ ッ ト療法 を選択 した。 われわれの施設では今 回 の症例が第 1例 目であ ったが ,そ の効果 は壊 死組織 除去 のみ に留 ま らなか った。2カ 月間 を適応 し, より早期 の創治癒 を図る ことが望 ましいと考え られる。 まとめ 治癒 させ ることので きなか った深 い ポケ ッ ト 芽 の増生効果 も有 してお り,そ の有効性 はわ 今回われわれは,外 科 的デ プ リー ドマ ン と 創 内持続 陰圧洗 浄療 法 だ け で は治癒 し得 な れわれが想 像 して い た以上 の もので あ った。 かった難治性創傷 を経験 し,マ ゴ ッ ト療法 を 一 方 ,わ が国では,マ ゴ ッ ト療法 が い まだ 薬事承認 されて い な い ため,本 法 を行 うにあ たっては入 院費 な どを含 むす べ ての 医療 費が 行 った。わずか 1ク ールの 4日 間で創 の状態 は著 しく改善 し,そ の後,分 層植皮術 を行 う ことで容易 に創治癒 を得ることがで きた。 マ 自費 になる とい う問題点 があ る。 また,実 際 ゴ ット療法 は,現 存す る治療法 に対 して強 く にわれわれ形成外科 医が難治性創傷 を治療す る場合 ,外 科 的 または化学 的デ プ リー ドマ ン 抵抗す る創 に対 し, よ り早期 の創治癒 を期待 で きる治療法 と考え られる。 を,わ ずか 4日 間 で消失 させ るほ どの良性 肉 を行 った後 に創 内持続 陰圧洗浄療法や局所 陰 圧 閉鎖療法 を行 う ことで,ほ とん どの創 を治 80 本論文 につ いて他者 との利益相 反 はない。 形成外科 ■57巻 1号 2014年 1月 y A review of the therapeutic applications of■ 引用文献》 《 larvae in human medicine,especially for treat― 1)Kiyokawa K,Takahashi N,Rikimaru H,et al: New continuous negative― pressure and irriga― tion treatment for infected wounds and intrac‐ table ulcers.Plast]Reconstr Surg 120: 1257- 1265,2007 ing osteomyelitis.Med Vet iEntomo1 2:225230, 1988 12)Namias N,Varela E,Varas RP,et al:BiOdeb― ridement:A case report of maggot therapy fOr limb salvage after fourth‐ degree burns.J 2)清 川兼輔 ,高 橋 長 弘 :持 続 洗 浄 を併 用 した局所 Burn Care]Rehabi1 21:254-257,2000 陰圧 閉鎖療 法 ;創 内持続 陰圧 洗 浄療 法 .形 成外 科 53:293-300,2010 《ABSTRACT》 3)Bear WS:The treatment of chronic osteomy‐ elitis with the maggot.J BOne JOint Surg 13: A⊂ ase of Successfu!Mag9ot Therapy against 438-475, 1931 a Refractory Leg Skin U:cer Fo‖ 4)高 瀬仁志 :医 療用 ウジ治療 (MDT)の 歴 史 と世 界 の現状 .Pharma Med 24:170-176,2006 :我 が国 にお けるマ ゴ ッ トセ ラ 5)宮 本正章,高 木元 ピーの 有用性 と問題 点 .日 本 臨床 70:481-492, 2012 owing Compartment Syndrome jgθ Morttα gα Shaya Ucた j,ル 角 D中 ,ス レ ,"ホ jra Mθ bjθ λ , だんjsα ,MDtt α ご』 4s“ ル メ (1ソ θ 滋″α,MD* “ G′ A leg skin ulcer subsequent to relaxation incision 6)Sherman RA:Maggot vs conservat市 e debri‐ surgery in a patient with right leg compartlnent dement therapy for the treatment of plessure syndrome was treated with debridement and intra‐ ulcerso Wound]Repair Regen 10:208-214,2002 7)Sherman RA:Maggot therapy for treating di¨ wound continuous negative pressure irrigation for two months without improvement.However,a sin‐ abetic foot ulcers unresponsive to conventional gle course of lnaggot therapy (over four days)re― therapy.lDiabetes Care 26:446-451,2003 sulted in a significant improvement in the wound 8)M[uncuOglu KY,Ingber A,Gilead L,et al: area,and the use of a split― thickness skin graft fa― Maggot therapy for the treatment of diabetic cilitated complete healing。 foot ulcerso E)iabetes Care 21:2030-2031, 1998 thought to be el:ective in accelerating the healing 9)大 西早百合 ,福 田智 ,井 口有子 ほか :糖 尿病性足 of wounds in cases in which the wound is resistant 壊 疸 に 対 す る maggot debridement therapy (MDT)の 1例 .形 成外科 51:583-588,2008 10)宮 本正章,高 木元 ,水 野博 司 ほか :重 症難治性 潰 瘍 に 対 す る 医 療 用 ウ ジ 治 療 と血 管 再 生 療 法 Pharma Med 23:41-47,2005 . 1唖 aggot therapy is to contemporary treatHlent lnethods. *D"α jソ r″ ′げ PJas′ jε α4グ R`cθ 4s′ ″θ″ θS“ rg`ヮ α4グ “`“ 「αχ Jり jソ rsj″ ル 物εJα ′S“ rg`り ,κ r“ θ α , F“ た θた “ “`び “ “ 8Jθ ― θθff J′ 11)Sherman RA,Pechter EA:Maggot therapy; 形成外科 ■57巻 1号 2014年 1月 81
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