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破壊力学
上智大学
末益博志
2015年9月28日(月)
1
破壊力学
「破壊力学」秋学期月曜日3限(機航3年)
第1回(9月29日) 破壊力学の基礎 (ガイダンス,破壊の事例)
末益博志
第2回(10月6日) 破壊力学の基礎 (損傷許容設計)
末益博志
第3回(10月13日)破壊力学の基礎(弾性論の基礎)
末益博志
第4回(10月20日)破壊力学の基礎(クラック先端付近の弾性変形1) 末益博志
第5回(10月27日)破壊力学の基礎(クラック先端付近の弾性変形2)末益博志
第6回(11月3日) 破壊力学の基礎(変形とエネルギ1)
末益博志
第7回(11月10日)破壊力学の基礎(変形とエネルギ2)
末益博志
第8回(11月17日)破壊力学の基礎(まとめ・演習)
末益博志
第9回(11月24日) 破壊力学の基礎(亀裂先端塑性域,小規模降伏) 川田宏之
第11回(12月1日) 破壊力学の基礎(弾塑性破壊力学)
川田宏之
第12回(12月8日) 破壊力学の基礎(確率論的破壊力学)
川田宏之
第13回(12月15日) 破壊力学と材料の強度(材料の強さ,疲労破壊) 増田千利・細井厚志
第14回(12月22日) 破壊力学と材料の強度(き裂進展,高温強度など)増田千利・細井厚志
第15回(1月19日)破壊力学のケーススタデイ2(航空機構造の設計・保守) 増田千利・細井厚志
第15回(1月26日) 期末学力考査および解説
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破壊力学
第1章 序論
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破壊力学
強さとは?
棒に力が加わった場合
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応力で比較すると強
さの比較ができる
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材料の破壊までの挙動
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破壊力学
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破壊力学
脆性材料の引張試験
延性材料の引張試験
応力
応力
破断
耐力
破断
0
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0.2%
ひずみ
0
ひずみ
6
壊れる力は
(A)
2015年9月28日(月)
破壊力学
(B)
(C)
(D)
7
破壊力学
ガラスや陶器のような材料を考えてみ
る.
破壊応力は?
(A)
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(B)
(C)
(D)
8
構造物の大型化
高強度(低靭性)材料の開発・使用
熔接構造の発達
クラック様の欠陥からの破壊
材料力学的な手法の限界
破壊力学的な考慮の必要性が認識
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破壊力学
先端半径 0 の切り欠き
(クラック)先端での応力集
中係数は,(弾性の仮定で
解くと)無限大となり,設計
に役立たない. 破壊力学
は、この部分の応力状態の
厳しさを単純なパラメータに
落としこんで、取り扱うこと
が出来るようにした理論で
ある。
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破壊力学
破壊力学と相似則
σ
σ
σmax=ασ
d
σmax=ασ
nd
b
nb
σ
σ
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破壊力学
航空機の設計基準
損傷許容設計 (damage tolerance design)
構造疲労に対する強度の証明に損傷許容の考え方が
導入された(連邦航空規則の改定).
〈1〉基本構造はフェールセーフとし,フェールセーフが非現実的
な場合のみ安全寿命設計を適用してよい。ただし容易に点検ができ
ないような部位にフェイルセーフ設計を適用するのは適当でない。
1978年12月1日
フェールセーフ設計:構造の一部に損傷が生じても、ある限ら
れた期間は安全に使用でき、致命的な破壊に至るまでに、点
検・検査でこの損傷を見出し、修理あるいは交換などの対策
を実施して、構造の安全性を確保する設計方法
安全寿命設計:目標とする運用期間中に構造が疲労亀裂を生じ
ることなく安全に耐えるような構造設計方法
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破壊力学
〈2〉損傷許容設計の考え方を導入し,疲労クラックの進行速度,
発生箇所および点検方法を検討する。具体的には,多重荷重伝
達の場合はもちろん,単一荷重伝達の場合に対してもクラック
進行を遅くするか,もしくはクラック進行をとどめ,点検によ
り発見されるまではクラックがあっても残存強度が十分あるよ
うに設計する。
〈3〉通常の構造疲労破壊によらない損傷(例:鳥衝突,プロペ
ラまたはファンブレードの切断)が生じた場合でも,その飛行
を続行できる残存強度を有すること。
〈4〉損傷許容を評価するための検討には,疲労,腐食または突
発事象により起こり得る損傷箇所とモードの特定を含んでいな
ければならない。さらに,この特定は実験結果に基づく解析,
および可能ならば運航経験に基づいて行われなければならない。
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破壊力学
損傷許容設計による構造強度の経年変化
通常の運航荷重 < フェイルセーフ荷重
• 耐荷能力は,検知されない損傷があると経年劣化する.
• 損傷をある期間内に検知し修復すれば,鋸歯状カーブのパターン
で維持される。
破壊力学的なパ
ラメターを用い
るとよく推定で
きる
クラック
サイズ
許容荷重で
破壊が発生
するクラッ
クサイズ
残留強度
検査で感知
できる最小
クラックサ
イズ
フェイルセーフ荷重
最大許容荷重
標準荷重
設計強度
破壊の可能性
定期検査
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繰り返し数
時間
クラック検知・修理
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フェールセーフ(fail safe)
破壊力学
なんらかの装置、システムにおいて、誤操作、誤動作によ
る障害が発生した場合、常に安全側に制御すること。または
そうなるような設計手法で信頼性設計のひとつ。これは装置
やシステムは必ず故障する、あるいはユーザは必ず誤操作を
するということを前提にしたものである。
冗長性設計
機械は普通、多くの部品から成り立っており、そのうちの
ひとつが壊れても機械全体が連鎖的に停止してしまう場合が
ある。このようなことが起きないためには部品が故障しても
他の部品により機能を代替できるようにするなど、故障を予
め考慮した設計のことである。このように故障時の代替機能
を果たす機能を「冗長系」という。冗長系を有するような設
計(冗長性設計)を行い、信頼度を高めることができる。
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信頼性設計
破壊力学
工学分野において、システム・装置または部品が使用開始
から寿命を迎えるまでの期間を通して、予め期待した機能を
果たせるように、すなわち故障や性能の劣化が発生しないよ
うに考慮して設計する手法のこと。
確率的または統計的なばらつきと破壊
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破壊力学
許容応力と安全率(safety factor)
構造物は、使用状態で様々な荷重を受けるが、それ
らの中で破壊せずに機能しなければならない。使用材
料に許される最大の応力を許容応力(allowable stress)
という。この許容応力は材料の基準強さより低い値に
設定される。基準強さと許容応力の比を
安全率=
材料の基準強さ
許容応力
航空機では一般に
1.5 を 用 い る 。 た だ
し非常に重要な部分
には、1.5×1.2=1.8
を用いる。
常用運用状態において予想される荷重より大きな荷重の生じる可
能性と、材料及び設計上の不確定性に備えて用いる設計係数
制限荷重(limit load)------常用運用状態で予想される最大の荷重
終局荷重(ultimate load)=制限荷重×安全率
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構造設計の例(設計荷重の設定)
航空機の性能と運動包囲線図
破壊力学
L
制 限荷 重倍 数
3g
P
T
D
W
n
0
Vmin
Vmax 対気速度
V
−1g
~1g
航空機に生じる荷重の推定
1
L = C L (迎え角) ρV 2 S
2
1
D = C D (迎え角) ρV 2 S
2
1
M = C M (迎え角) ρV 2 S
2
1
P = C P (迎え角) ρV 2 S e
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2
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設計許容値の設定
破壊力学
材料強度などの材料許容値は試験データを統計処理して
設定
i)
ii)
引張り・圧縮強度,耐圧強さなどの強度特性
A値(母集団の99%の値が95%の信頼水準で入る値)
またはB値(母集団の90%の値が95%の信頼水準で入
る値)を統計処理により決定して許容値を設定する.
弾性率
平均値などの代表値が用いられる
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破壊力学
第2章 弾性論の基礎
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破壊力学
2.1 応力
(1) 応力の定義
物体は釣り
合い状態
仮想の断面S
V
−P
S上の微小断面= ∆S
∆ S上に働く力= ∆P
P
S
V1
P
応力ベクトル
∆P1 ∆P
V2
内力
φ
∆S ∆P2
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∆P
p = lim
∆S →0 ∆S
内力の強さ(intensity)を表す量
P ーP
ーP
S上の内力の合計=P
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破壊力学
面に働く力
ζ
∆P3
η
ξ
∆S
力はベクトル⇒大きさと方向
三次元空間では3つの成分で
表わされる
∆P
∆Pz
∆P2
∆P
∆S
∆Py
∆Px
∆P1
z
y
x
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破壊力学
直交デカルト座標系での応力の定義
σz
dx
C
微小要素
τ zx
τ xz
σx
dz
τ xy
O
τ yz
P
τ yx
σy
B
z
z
y
A
y
x
τ zy
x
dy
応力の正の方向
外向き法線の方向が座標軸と反対の面では反対方向
を正とする。
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破壊力学
(2)
平衡方程式
∂ σ x ∂ τ yx ∂ τ zx
+
+
+X =0
∂x ∂y
∂z
∂ τ xy ∂ σ y ∂ τ zy
+
+
+Y = 0
∂x ∂y
∂z
∂ τ xz ∂ τ yz ∂ σ z
+
+
+Z =0
∂x
∂y ∂z
τ zx +
∂τ zx
dz
∂z
σz +
dx
C
∂τ
τ xz + xz dx
∂x
∂σ z
dz τ + ∂τ zy dz
zy
∂z
∂z
τ yz +
P
dz
z
x
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B
O
∂σ
σ x + x dx
∂x
A
∂τ yz
σy +
τ yx +
τ xy +
∂τ xy
∂x
∂y
∂σ y
dy
∂y
dy
∂y
dy
∂τ yx
dx
dy
y
23
(3)任意断面での応力
∆ABCの外向き法線
破壊力学
ν=(l,m,n)
z
C
微小四面体の力の平衡
pνdS
-pxldS
pν = pν (Xν ,Yν , Zν)
px = px (σx, τxy , τxz)
py = py (τyx , σy ,τyz)
pz = pz (τzx , τzy , σz)
y
B
-pymdS
ν
z
n
O
m
A
-pzndS
力の釣り合いから
pν = pν (σx, σy, σz, τzy, τyz, τxz, τzx, τyx, τxy | l, m, n)
y
l
x
x
 Xν  σ x τ yx τ zx   l 
  
 m 
Y
τ
σ
τ
=
 ν   xy
y
zy   
 Z  τ
 
ν
 xz τ yz σ z   n 
応力状態を表現するには9つの成分が必要
注)微小要素のモーメントの釣り合いから
τzy=τyz, τxz=τzx, τyx=τxy
2015年9月28日(月)
であるので実際には6個の成分が独立
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(4) 主応力
垂直応力
破壊力学
σ =σxl2+σym2 +σzn2 + 2(τyzmn +τzxnl +τxy lm)
σが極値となる条件:
σ x −σ
τ yx
τ zx
τ xy
σ y −σ
τ zy = 0
τ xz
τ yz
σ z −σ
固有値
: 主応力 (Principal stress)
固有ベクトル : 応力の主軸 (Principal axis)
上式はσの3次方程式:係数は座標軸によらない量
⇒ 応力の不変量
J1=σx+σy +σz
J2=−(σyσz+σz σx+σxσy) +τyz2+τzx2+τxy2)
J3=σxσyσz −σxτyz2−σy τzx2− σzτxy2
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破壊力学
2.2 ひずみ
(1) ひずみの定義
変形の強さを表す量
垂直ひずみ (Normal strain)
剪断ひずみ (shear strain)
D'
C'
D
dz dy C
z
y
dy
2
A'
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A' B '− AB
εx =
AB
− γ xy
B'
A
A dx B
x
π
γ xy =
π
2
dx
A’
− ∠B ' A' C '
26
破壊力学
(2)ひずみと変位の関係
物体内の各点の変位 u(x,y,z) を用いてひずみを表す
u(x+dx,y+dy,z+dz)
u(x,y,z)
D
z
dz
y
P’
D’
P
∂u
∂y
C’
A’
dy C
A dx B
γxy
π
2
B’
− γ xy
u(x+dx,y,z)
∂v
∂x
A’
x
∂u
∂v
∂w
εx = , εy = , εz =
∂y
∂z
∂x
∂v ∂u
∂w ∂v
∂u ∂w
+ , γ zx = +
γ xy = + , γ yz =
∂x ∂y
∂y ∂z
∂z ∂x
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有限の変位の場合
破壊力学
2
2
2
∂u 1  ∂u   ∂v   ∂w  
ε x = +   +   +   
∂x 2  ∂x   ∂x   ∂x  
2
2
2

∂v 1  ∂u   ∂v   ∂w  
ε y = +   +   +   
∂y 2  ∂y   ∂y   ∂y  
2
2
2
∂w 1  ∂u   ∂v   ∂w  
εz =
+   +   +   
∂z 2  ∂z   ∂z   ∂z  
∂v ∂u ∂u ∂u ∂v ∂v ∂w ∂w
γ xy = + +
+
+
∂x ∂y ∂x ∂y ∂x ∂y ∂x ∂y
∂w ∂v ∂u ∂u ∂v ∂v ∂w ∂w
γ yz =
+
+
+ +
∂y ∂z ∂y ∂z ∂y ∂z ∂y ∂z
∂u ∂w ∂u ∂u ∂v ∂v ∂w ∂w
γ zx = + +
+
+
∂z ∂x ∂z ∂x ∂z ∂x ∂z ∂x
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適合方程式
変位の連続条件
2
2
∂ 2ε x ∂ ε y ∂ γ xy
+
=
2
2
∂x∂y
∂y
∂x
∂ 2ε y
∂z 2
破壊力学
2
∂ 2ε z ∂ γ yz
+
=
2
∂y∂z
∂y
∂ 2u
∂ 2u
=
∂x∂y ∂y∂x
∂ 2v
∂ 2v
=
∂x∂y ∂y∂x
∂ 2ε z ∂ 2ε x ∂ 2γ zx
+
=
2
2
∂z∂x
∂x
∂z
∂ 2ε x ∂  ∂γ yz ∂γ zx ∂γ xy 

=  −
+
+
2
∂y∂z ∂x  ∂x
∂y
∂z 
∂ 2ε y ∂  ∂γ yz ∂γ zx ∂γ xy 

= 
−
+
2
∂z∂x ∂y  ∂x
∂y
∂z 
∂ 2u
∂  ∂u  ∂ε x
=  =
∂y∂x ∂y  ∂x  ∂y
∂ 2ε z ∂  ∂γ yz ∂γ zx ∂γ xy 

= 
+
−
2
∂x∂y ∂z  ∂x
∂y
∂z 
∂ 2v
∂  ∂v 
=  
∂y∂x ∂y  ∂x 
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∂ 2u
∂  ∂u 
=  
∂x∂y ∂x  ∂y 
∂ 2v
∂  ∂v  ∂ε y
=  =
∂x∂y ∂x  ∂y  ∂x
29
(3)
一般化したHookeの法則と弾性定数
破壊力学
Hookeの法則
「応力の値が材料によって定まるある値を超えない
とき、応力とひずみは比例する。」
一般にHookeの法則が成り立つ材料を弾性体と言い、比例
係数を弾性率という。
σ x  C11
σ  C
 y   21
σ z  C31
 =
τ yz  C41
τ zx  C51
  
τ xy  C61
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C12
C22
C13 C14
C23 C24
C32
C33
C42
C52
C43 C44
C53 C54
C62
C63
C34
C64
C15
C25
C35
C45
C55
C65
C16   ε x 
C26   ε y 
 
C36   ε z 
 
C46  γ yz 

C56  γ zx 
 
C66  γ xy 
30
三次元等方性弾性体では
1
ε x = {σ x −ν (σ y + σ z )}
E
1
ε y = {σ y −ν (σ z + σ x )}
E
1
ε z = {σ z −ν (σ x + σ y )}
E
γ yz =
γ zx =
γ xy =
τ yz
破壊力学
Generalized
Hooke’s law
G
τ zx
G
τ xy
G
応力をひずみで表すと
E 
ν

(
)
+
+
+
ε
ε
ε
ε
 x
x
y
z 
1 +ν 
1 − 2ν

E 
ν

(
)
+
+
+
ε
ε
ε
σy =
ε
 y
x
y
z 
1 +ν 
1 − 2ν

E 
ν

(
)
+
+
+
ε
ε
ε
σz =
ε
 z
x
y
z 
1 +ν 
1 − 2ν

σx =
2015年9月28日(月)
τ yz = Gγ yz
τ zx = Gγ zx
τ xy = Gγ xy
31
破壊力学
一般に丸棒の引張試験を行って荷重と軸方向のひずみと直角方向
のひずみを測ることにより、材料のヤング率とポアッソン比を同
時に知ることができる。したがって等方性体の弾性特性は、引っ
張り試験で完全に分かることになる。
応力
−εT
耐力
破断
曲率
断面積 A
P
l
標点間距離
(gage length)
0
2015年9月28日(月)
0.2%
つかみ部
ひずみ
0
εL
32
(4) ひずみエネルギー (Strain Energy)
破壊力学
弾性体で、外力のなす仕事δWは
δW = ∫∫∫ δϕ dxdydz
V
ここで、
ϕ= ϕ (εx, εy, εz, γyz, γzx, γxy)
をひずみエネルギー関数という
∂ϕ
∂ϕ
∂ϕ
σx =
, σy =
, σz =
∂ε x
∂ε y
∂ε x
τ yz =
2015年9月28日(月)
∂ϕ
∂ϕ
∂ϕ
, τ zx =
, τ xy =
∂γ xy
∂γ zx
∂γ yz
33
破壊力学
2.4
二次元応力問題
(1)平面応力と平面ひずみ
平面応力 弾性体内の主応力のひとつが0の場合
σz = τzx= τyz = 0
τ xy
1
1
ε x = (σ x −νσ y ), ε y = (σ y −νσ x ), γ xy =
E
E
G
平面ひずみ 弾性体内の主ひずみのひとつが0の場合
εz=0
τ xy
1
1
ε x = (σ x −ν 'σ y ), ε y = (σ y −ν 'σ x ), γ xy =
E'
E'
G
E' =
E
1 −ν
, ν '=
2
ν
1 −ν
弾性係数の関係が異なるだけ
2015年9月28日(月)
34
(2) Airyの応力関数
破壊力学
体積力のない場合の平衡方程式
∂τ xy ∂σ y
∂σ x ∂τ xy
+
= 0,
+
=0
∂x
∂y
∂x
∂y
適合条件式
2
2
∂ 2ε x ∂ ε y ∂ γ xy
+
=
2
2
∂x∂y
∂y
∂x
連続関数 χ(x, y)
∂2χ
∂2χ
∂2χ
σ x = 2 , σ y = 2 , τ xy = −
∂x∂y
∂x
∂y
対応するひずみが適合条件式を満たす.
∂4χ
∂4χ
∂4χ
4
+
2
+
=
∇
χ =0
4
2
2
4
∂x
∂x ∂y
∂y
χ は、重調和関数
2015年9月28日(月)
35
破壊力学
3次以下の多項式は重ラプラス方程式を満たす許容応力場
例1 χ =
ay2 +
bxy +
cx2
2c
のとき
y
∂ χ
σ x = 2 = 2a
∂y
2
∂2χ
σ y = 2 = 2c
∂x
∂2χ
= −c
τ xy = −
∂x∂y
2a
σx = 2a, σy = 2c, τxy = −b
2015年9月28日(月)
-b
2a
x
-b
2c
36
破壊力学
例2
F=ay3のとき
∂2χ
σ x = 2 = 6ay
∂y
6ay
∂2χ
σy = 2 =0
∂x
∂2χ
=0
τ xy = −
∂x∂y
σx = 6ay,
2015年9月28日(月)
y
6ay
x
σy = τxy = 0
37
極座標による表示
破壊力学
半径方向変位ur、周方向変位uθ
σy
y
ur + iuθ = e−iθ (u + iv)
応力成分に関して
σx
σr + σθ = σx + σy
σθ − σr + 2iτ rθ = e2iθ (σy − σx + 2iτxy )
極座標でのAiryの応力関数 χ(r,θ )
2
O
y
2
∂
1∂ 1 ∂ 
∇ χ =  2 +
+ 2 2  χ = 0
r ∂r r ∂θ 
 ∂r
∂2χ
1 ∂χ 1 ∂ 2 χ
+ 2 2 , σθ = 2
σr =
r ∂r r ∂θ
∂r
2
2015年9月28日(月)
x
σθ
τrθ
σr
ur
uθ
4
τ rθ
τxy
r
O
θ
x
∂  1 ∂χ 
1 ∂χ 1 ∂ 2 χ
= 2
−
=− 

∂
∂
∂
∂
∂
θ
r
r
θ
r
r
θ
r


38
破壊力学
軸対称問題
軸対称な変形(変形がθの変化によらない)
∂( )/∂θ=0
Airyの応力関数の満たす方程式は
d 3χ
d 2 χ dχ
+r 2 −
=0
r
3
dr
dr
dr
2
Euler型の微分方程式
dχ/dr=rλ を代入する
λ(λ−1)rλ+ λrλ−rλ =0
(λ2−1) rλ =0
λ=±1
よって
dχ A
= + Br
dr r
応力とAiryの応力関数との関係式
∂ 2χ
1∂ χ
σr =
, σθ =
, τ rθ = 0
2
r ∂r
∂r
2015年9月28日(月)
σr =
A
A
+
B
,
σ
=
−
+B
θ
2
2
r
r
39
破壊力学
例4
外圧を受ける円管
境界条件
σr=0
at r=a
σr=−p
at r=b
境界条件を満たす係数を探す
b2 p  a2 
1 − 
σr = − 2
2
b − a  r 2 
a
b
p
b
p
b2 p  a2 
1 + 
σθ = − 2
2
b − a  r 2 
例5 外圧を受ける円柱
境界条件
σr は有限 at r=0
σr=−p
at r=b
よって
σr = σθ = − p
2015年9月28日(月)
40
例題 6
円孔を有する無限板の応力分布
破壊力学
x方向に一様な引張り、
σx=X, σy=τxy=0
at r=∞
極座標では
σ r   X cos 2 θ   X / 2  ( X / 2 ) cos 2θ 

  
 
 
2
(
)
X
X
+
−
X
σ
=
sin
θ
=
/
2
/
2
cos
2
θ

 θ 
 
 
τ  − X sin θ cos θ   0   − ( X / 2 ) sin 2θ 
 rθ  

(本問題の解)=(第1項に対応する解)+(第2項に対応する解)
第1項の問題(θ に無関係な項)
σr = τrθ = 0
at r = a
σr = X/2, τrθ = 0 at r = b (= ∞)
(σ r )1
(σ θ )1
2015年9月28日(月)
 a2 
1 − ,
 r2 


X  a2 
= 1 + 2 
2 r 
X
=
2
y
r
θ
σ∞
O
a
σ∞
x
41
破壊力学
第2の問題
σr=τrθ=0 at r=a
X
X
cos 2θ , τ rθ = − sin 2θ
2
2
したがって χ2(r, θ ) = f(r)cos2θ
σr =
at r =b(=∞)
∆∆ χ2=0 に代入
 ∂2 1 ∂
4  ∂ 2 f 1 ∂ f 4 
∆∆χ 2 =  2 +
− 2  2 +
− 2 f  = 0
r ∂ r r  ∂ r
r ∂r r
∂ r

f = rλとおくと特性方程式の解は λ=0, ±2, 4 となる
f = C1+ C2r2 + C3r4 + C4r−2
(σ r )2
6C 4 
1 ∂ χ 1 ∂ 2χ
 4C1
=
+ 2
=
−
+
+
C
2
cos 2θ
 2
2
2
4 
r ∂ r r ∂θ
r 
 r
∂ 2χ 
(σ θ )2 = 2 =  2C2 + 12C3 r 2 + 6C44  cos 2θ
r 
∂r

2015年9月28日(月)
(τ rθ )2 = − ∂  1 ∂χ  =  − 2C21 + 2C2 + 6C3 r 2 − 6C44  sin 2θ
∂ r r ∂θ  
r
r

42
r = b (=∞)の条件より –2C2=X/2,C3=0
r =a の条件より
6C 
 4C
−  21 + 2C 2 + 44  = 0
a 
 a
6C 
 2C1
2
 − 2 + 2C 2 + 6C3 a − 44  = 0
a 
 a
破壊力学
したがって
,
 2 r 2 a4 
 cos 2θ
a − −
2

2 2r 

2
4
X 
a
a  


(σ r )2 = 1 − 4  + 3   cos 2θ
2 
r
 r  
2
X 
 a  
(σ θ )2 = − 1 + 3   cos 2θ
2 
 r  
2
4
X 
a
a
(τ rθ )2 = − 1 + 2  − 3   sin 2θ
2 
r
 r  
X
χ2 =
2
2015年9月28日(月)
43
破壊力学
よって本問題の解は1と2の解を足すことにより得られ
2
4
  a  2 

a  
a

σ r = (σ r )1 + (σ r )2
1 −   + 1 − 4  + 3   cos 2θ 
r
 r  
  r  

2
2

X   a  
 a  
σ θ = (σ θ )1 + (σ θ )2 = 1 +   − 1 + 3   cos 2θ 
2   r  
 r  

2
4
X 
a
 a  
τ rθ = (τ rθ )1 + (τ rθ )2 = − 1 + 2  − 3   sin 2θ
2 
r
 r  
X
=
2
y
円孔周辺での応力分布は(r =aを代入して)
σθ =X (1−2cos2θ)
y 軸に沿った応力分布
σ0
σ x = (σ θ )θ =π / 2
 1  a  3  a 
= X 1 +   +  
 2  y  2  y 
2
2015年9月28日(月)
3



σθ= 3σ0
σθ=-σ0
r
a
o
θ
a
σ0
x
σx= 3σ0
σx=σ0
44
破壊力学
第3章 クラック先端
付近の弾性変形
2015年9月28日(月)
45
破壊力学
3.1
複素関数と応力関数
直角座標 x, y → 複素数 z=x+iy
極座標
r, θ → 複素数 z=eiθ
f(z)=α (z) +iβ(z) が解析関数 (zで微分可能な関数)なら、
Cauchy-Riemannの微分方程式が成り立つ。
∂β
∂α ∂β ∂α
,
=−
=
∂x
∂y
∂x ∂y
ここでα(z), β(z)ともにx, yに関する実関数である。
このとき、
∂2β ∂2β
∂ 2α ∂ 2α
+ 2 =0
+ 2 = 0,
2
2
∂y
∂ x ∂ y
∂x
α(x, y), β(x, y)はともに調和関数となる。共役調和関数という
2015年9月28日(月)
46
破壊力学
ψ(x,y)が調和関数とする
xψ(x,y)を考える
 ∂2 ∂2 
 ∂ 2ψ ∂ 2ψ
 2 + 2 ( xψ ) = x 2 + 2
∂y
 ∂x ∂y 
 ∂x
ところで,ψが調和関数なので
∂
∂  ∂ψ
 2 + 2 
 ∂x ∂y  ∂x
2
2

=0


∂ψ
∂ψ
 + 2
=2
∂x
∂x

=0
よって、
2
 ∂2 ∂2 
 2 + 2  ( xψ ) = 0
 ∂x ∂y 
xψ(x,y)は重調和関数, 同様に r2ψ(x,y), yψ(x,y), ψ(x,y)はともに重調和
関数
2015年9月28日(月)
47
破壊力学
任意の重調和関数は,解析関数 ϕ(z), ψ(z) を用いて、
φ(x,y)=Re[(x−iy)ϕ(z) +ψ (z) ]
と表わされる。
Airyの応力関数χは、互いに共役な任意の調和関数ϕ1, ϕ2と
任意の調和関数ψ1を用いて 以下の様に表される。
χ(x,y) =xϕ1(x,y)+yϕ2(x,y)+ψ1(x,y)
問題 上の2つの関数が
ϕ(z) = ϕ1(z) + iϕ2(z),
ψ(z) = ψ1(z) + iψ2(z)
とおくと同じ式であることを証明せよ
2015年9月28日(月)
48
Goursatの応力関数
破壊力学
正則関数 ϕ(z)=ϕ1(x,y)+iϕ2(x,y), ψ(z)=ψ1(x,y)+iψ2(x,y)
χ(x, y) =Re[zϕ (z)+ψ (z)]
1
[zϕ ( z ) +ψ ( z ) + zϕ ( z ) +ψ ( z )]
2
1
= [z ϕ ( z ) + zϕ ( z ) + ψ ( z ) + ψ ( z )]
2
=
ϕ(z), ψ(z):Goursatの応力関数
∂χ
∂χ
+i
∂x
∂y

1 ϕ ( z ) + z ϕ ′( z ) + ϕ ( z ) + zϕ ′( z ) + ψ ′( z ) + ψ ′( z )
= 

2 + i[− iϕ ( z ) + iz ϕ ′( z ) + iϕ ( z ) − iz ϕ ′( z ) + iψ ′( z ) − iψ ′( z )]
= ϕ ( z ) + z ϕ ′( z ) + ψ ′( z )
2015年9月28日(月)
49
破壊力学
∂2χ
= ϕ ′( z ) + ϕ ′( z ) + z ϕ ′( z ) + ψ ′′( z )(= σ y − iτ xy )
+i
2
∂x∂y
∂x
(1)
∂2χ
∂2χ
+ i 2 = iϕ ′( z ) + i ϕ ′( z ) − izϕ ′′( z ) − iψ ′′( z )(= −τ xy + iσ x )
∂x∂y
∂y
(2)
∂2χ
(1)−i×(2)
σ x + σ y = 2{ϕ ′( z ) + ϕ ′( z )} = 4 Re[ϕ ′( z )]
(1)+i×(2)
σ y − σ x + 2iτ xy = 2{z ϕ ′′( z ) + ψ ′′( z )}
変位
3 −ν
ϕ ( z ) − zϕ ′( z ) −ψ ′( z )
1 +ν
2G (u + iv ) = (3 − 4ν )ϕ ( z ) − zϕ ′( z ) −ψ ′( z )
2G (u + iv ) =
2015年9月28日(月)
(平面応力の場合)
(平面ひずみの場合)
50
破壊力学
σσy∞∞
3.2 楕円孔と応力集中
曲線座標 α, β → p=α+iβ
直角座標 x, y → z=x+iy
z=c cosh p
b
O
整理すると
a
ρ
x +iy = c (coshα cosβ + i sinhα sin β)
すなわち, x = c coshα cosβ, y = c sinhα sin β
βを消去すると, cos2β+sin2β = 1
x2
y2
+ 2
=1
2
2
2
c cosh α c sinh α
σσy∞∞
α =一定の線は楕円を表す
αを消去すると cosh2α−sinh2α = 1
x2
y2
− 2 2 =1
2
2
c cos β c sin β
2015年9月28日(月)
β =一定の線は双曲線を表す
51
破壊力学
楕円座標系
4
β=0.6π
β=0.7π
β=0.5π
β=0.4π
β=0.3π
α=1
3
β=0.8π
β=0.2π
α=0.75
y2
β=0.15π
α=0.5
β=0.9π
1
β=0.1π
α=0.34657
α=0.2
-5
β=0
α=0
β=π
0
β=0.05π
-4
-3
-2
-1
0
1
2
3
4
5
x
2015年9月28日(月)
52
破壊力学
x軸とα=const.の外向き法線方向のなす角θ (反時計方向を正)
β
σββ
α
y
θ
σαα
ταβ
α=α+dα
β=β+dβ
β= β
α=α
x
σββ
σαα
θ 回転した座標系の応力の関係式
σαα +σββ = σx +σy
σ ββ − σαα + 2iταβ = e2iθ(σy − σx + 2iτ xy )
Goursatの応力関数で表すと、
σαα +σββ = 4Re[ϕ' (z)]
σ ββ − σαα + 2iταβ = 2e2iθ [zϕ'' (z)+ψ ''(z)]
β一定
α一定
破壊力学
式の導出
応力に関する座標変換の式
1
(σ x + σ y ) + 1 (σ x − σ y )cos 2θ + τ xy sin 2θ
2
2
1
1
σ ββ = (σ x + σ y ) − (σ x − σ y )cos 2θ − τ xy sin 2θ
2
2
1
τ αβ = (σ y − σ x )sin 2θ + τ xy cos 2θ
2
σ αα =
σαα +σββ = σx +σy
σ ββ − σαα + 2iταβ = (σy − σx )(cos2θ +i sin2θ) + 2iτ xy(cos2θ +i sin2θ)
= e2iθ(σy − σx + 2iτ xy )
2015年9月28日(月)
54
楕円孔のある場合の境界条件は、
σββ = σ∞, σαα = ταβ = 0
σαα = ταβ = 0
破壊力学
At infinity (y=∞)
At α=α0 (楕円孔縁で)
Goursatの応力関数で表すと、
無限遠(y=∞)で
4 Re[ϕ ' ( z )] = σ ∞
2[z ϕ ' ' ( z ) + ψ ' ' ( z )] = σ ∞
At α=α0 (楕円孔縁で)
4 Re[ϕ ′( z )] − 2e iθ [z ϕ ′′( z ) + ψ ′′( z )] = 2σ αα − 2iτ αβ = 0
at z = c cosh (α 0 + iβ ) = c(cosh α 0 cos β + i sinh α 0 sin β )
α, β → p=α+iβ
曲線座標
直角座標
x, y → z=x+iy
z=c cosh p
2015年9月28日(月)
55
破壊力学
境界条件を見たす解は(Inglis, 1913)
[(
)
]
4ϕ ( z ) = σ ∞ c 1 + e 0 sinh p − e 0 cosh p
1 2α
π 


4ψ ( z ) = −σ ∞ c (cosh 2α 0 − cosh π ) + e 0 − cosh 2 p − α 0 − i 
2
2 


2α
2α
楕円孔周りの応力分布σββは、(孔縁部で σαα=0 なので)
(σ ββ )α =α
0
sinh 2α 0 − 1 + e 2α 0 cos 2 β
= 4 Re[ϕ ′( z )] = σ ∞
cosh 2α 0 − cos 2 β
dϕ ( p ) dp
dp dz
1
2α
2α
= σ ∞c
1 + e 0 cosh p − e 0 sinh p
c sinh p

2α cosh p
2α 
= σ ∞  1+ e 0
−e 0 
sinh p


4ϕ ′( z ) = 4
(
[(
)
)
]
56
破壊力学
eα 0 + iβ − e −α −iβ
= sinh α 0 cos β + i cosh α 0 sin β
sinh p =
2
eα 0 +iβ + e −α 0 −iβ
= cosh α 0 cos β + i sinh α 0 sin β
cosh p =
2
cosh p (sinh α 0 cos β − i cosh α 0 sin β )(cosh α 0 cos β + i sinh α 0 sin β )
=
sinh p
sinh 2 α 0 cos 2 β + cosh 2 α 0 sin 2 β
=2
sinh α 0 cosh α 0 − i cos β sin β
cosh 2α 0 − cos 2 β
sinh 2α 0 − i sin 2 β
=
cosh 2α 0 − cos 2 β
2015年9月28日(月)
57
破壊力学
σββの最大値はβ = 0またはπ(楕円の主軸端)で現れ
(σ ββ )max
sinh 2α 0 − 1 + e 2α
= σ∞
cosh 2α 0 − 1
σσ∞y∞
0

a
a


= σ ∞ 1 + 2  = σ ∞ 1 + 2
b
ρ


2ab
sinh 2α 0 = 2
c
a2 + b2
cosh 2α 0 =
c2
y
O'' F
2b
O
x
r
ρ
O'
a-c
a
σσ∞y∞
2015年9月28日(月)
58
σσy∞∞
楕円孔端での最大応力
σ max
y

a
a

 = σ ∞ 1 + 2 
= σ ∞ 1 + 2
b
ρ


ρ→0 で σmax→∞
y = 0 の面上での応力分布は
破壊力学
2b
O
σy
x
O''
O'
ρ
F
c
σx
r
a
0 ≤ r << a, ρ << a の範囲で
(σ y )y =0
(σ x ) y =0
2015年9月28日(月)

ρ 
ρ  σσ∞y∞
a 
= σ∞
1 +
+

+
+
+
2
2
2
ρ
ρ
ρ
r
r
r




a 
ρ 
= σ∞
1 −

2r + ρ  2r + ρ 
59
破壊力学
切り欠き先端が鋭くなると(ρ→0)、先端近傍の応力分布は
(σ y )y =0 = (σ x ) y =0 = σ ∞
a
2r
ρ ≤ r << a
• 与えられた応力σ∞と a に比例する
• r−1/2の特異性をもつ
ここで K = σ ∞ πa とおくとクラック先端部の応力分布は
(σ y )y =0 = σ ∞
a
2r
1 

=
K


2
π
r


Kの値がクラック先端部の応力分布の強さを表している
2015年9月28日(月)
60
σ∞
σ∞
σ∞
σy
σY
σY
σy
σy
σY
7σ∞
6σ∞
σ∞
3σ∞
破壊力学
σy∞
σ∞
a/b=3
σ∞
2015年9月28日(月)
σ∞
σ∞
61
破壊力学
無限遠点で一様引張りを受けるクラック問題
σ∞
y
x
2a
σ∞
2015年9月28日(月)
62
3.3 Muskhelishviliの応力関数
破壊力学
Goursatの応力関数との関係
φ(z)=ϕ'(z)
Ω(z)=ϕ'(z) +zϕ''(z) +ψ''(z)
または
∫
∫
ϕ ( z ) = φ ( z )dz , ψ ′( z ) = Ω( z )dz − zφ ( z )
Muskhelishviliの応力関数と応力の関係
σ x = Re[3φ ( z ) − Ω ( z )] − 2 y Im[φ ′( z )]
σ y = Re[φ ( z ) + Ω ( z )] + 2 y Im[φ ′( z )]
τ xy = Im[− φ ( z ) + Ω ( z )] − 2 y Re[φ ′( z )]
または
σ x + σ y = 2[φ ( z ) + φ ( z )]
σ y − σ x + 2iτ xy = 2[( z − z )φ ′( z ) − φ ( z ) + Ω ( z )]
σ y + iτ xy = ( z − z )φ ′( z ) + φ ( z ) + Ω ( z )
2015年9月28日(月)
63
破壊力学
変位との関係
∫
∫
2G (u − iv ) = κ φ ( z )dz − Ω ( z )dz + ( z − z )φ ( z )
合力との関係
∫
∫
Py + iPx = − φ ( z )dz − Ω ( z )dz + ( z − z )φ ( z )
ここで
Px =
∫A (σ x dy − τ xy dx )
Py =
∫A (τ xy dy − σ y dx )
B
B
Goursatの応力関数 ϕ(z), ψ(z)
χ(x,y) =Re[zϕ (z)+ψ (z)]
σx +σy = 4Re[ϕ' (z)]
σy − σx + 2iτ xy = 2[zϕ'' (z)+ψ ''(z)]
2015年9月28日(月)
64
破壊力学
Muskhelishviliの応力関数
x 軸に関して対称な応力分布をもつ時
せん断応力 τxy=0 at y=0
σ x = Re[3φ ( z ) − Ω ( z )] − 2 y Im[φ ′( z )]
σ y = Re[φ ( z ) + Ω ( z )] + 2 y Im[φ ′( z )]
Im[− φ ( z ) + Ω ( z )] = 0 at y = 0
τ xy = Im[− φ ( z ) + Ω ( z )] − 2 y Re[φ ′( z )]
Ω ( z ) = φ ( z ) + f1 ( z )
f1(z) は実軸上で実数となるような関数
y
この時,2φ = Z1と書くと,
σ x = Re[Z1 ( z )] − y Im[Z1′ ( z )] − Re[ f1 ( z )]
σ y = Re[Z1 ( z )] + y Im[Z1′ ( z )] + Re[ f1 ( z )]
O
τ xy = −2 y Re[Z1′ ( z )] + Im[ f1 ( z )]
∫
∫
∫
4G (u − iv ) = κ Z1 ( z )dz − Z1 ( z )dz + ( z − z )Z1 ( z ) − 2 f1 ( z )dz
x
破壊力学
(クラックの境界条件を満たす解)
Westergaardの解
亀裂を有する無限板の応力
境界条件
σx= σy= σ, τxy= 0 |z|= ∞
σy = τxy = 0
y= 0, − a ≤ x ≤ a
σ
y
Westergaardの関数
Z1 = σ
z
z −a
2
2
,
f1 ( z ) = 0
σ
σ
O
2a
σ
x
破壊力学
この関数と境界条件は
lim Z1′ = 0
lim Z1 = σ ,
z →∞
z →∞
無限遠の応力条件を満たす
y= 0 and |x|<a のとき,Z1は純虚数
⇒ σy=τxy= 0 at y=0 and |x|<a

i
σ
2
2

a −x
Z1 = 
x
σ

x2 − a2
x
x2 < a2
x >a
2
2
σ x = Re[Z1 ( z )] − y Im[Z1′ ( z )]
σ y = Re[Z1 ( z )] + y Im[Z1′ ( z )]
τ xy = −2 y Re[Z1′ ( z )]
z
Z1 = σ
z2 − a2
(
Z1′ = σ  z z 2 − a 2

= −σ
a2
z2 − a
−1 2 ′
)


2
2 −1 2
(
)
−
z
a
2
Z1は,すべての応力に関する境界条件を満たす!
2015年9月28日(月)
67
破壊力学
無限遠で一様引張が与えられた時の解
σ
σ
y
y
y
O
2a
σ
x
x
O
−σ
−σ
x
O
2a
2a
σ
σ
Westergaardの関数
Z1 = σ
x 軸上の応力
(σ y )y =0 = σ
(σ x ) y =0
2015年9月28日(月)
σ
σx= −σ
z
z −a
2
より,
2
τ xy = −2 y Re[Z1′ ( z )]
x
x2 − a2


x


=σ
− 1
2
2
 x −a

σ x = Re[Z1 ( z )] − y Im[Z1′ ( z )]
σ y = Re[Z1 ( z )] + y Im[Z1′ ( z )]
x > a,
y=0
68
破壊力学
x=a+rとおいて,r/a<1で級数展開すると
(σ y )y =0 = σ
(σ x ) y =0

= σ 

3


a+r
 a 3 2r 5  2r 
=σ
+
− 
 + 
2

 2r 4 a 32  a 
2ra + r
3



3 2r 5  2r 
a+r
a

− 1 = σ 
−1+
− 
 + 
2
4 a 32  a 

 2r
2ra + r

上記の展開の説明
(σ y )y =0 = σ
a
f (ρ )
2r
f ( ρ ) = f (0) + f ′(0)ρ +
f (ρ ) =
1  3
5 2
1

f ′′(0 )ρ 2 +  =
1 + ρ − ρ + 
32
2!
2 4

1+ ρ
2+ ρ
1
(1 + ρ )(2 + ρ )−3 2
2
3
1
1
f ′′( ρ ) = − (2 + ρ )−3 2 − (2 + ρ )−3 2 − (1 + ρ )(2 + ρ )−5 2
4
2
2
f ′( ρ ) = (2 + ρ )−1 2 −
1
2
1
1
3
f ′(0 ) =
−
=
2 4 2 4 2
1
3
5
f ′′(0 ) = −
+
=−
2 2 16 2
16 2
f (0 ) =
破壊力学
r/a<<1で
(σ y )y =0
(σ x ) y =0
a
=σ
2r
a
=σ
2r
楕円孔で
(ρ→0)の
解に一致
70
x 軸に関して逆対称な応力分布をもつ時
垂直応力 σy=0 at y=0
Re[φ ( z ) + Ω ( z )] = 0 at y = 0
Ω ( z ) = −φ ( z ) + if 2 ( z )
破壊力学
破壊力学
σ x = Re[3φ ( z ) − Ω ( z )] − 2 y Im[φ ′( z )]
σ y = Re[φ ( z ) + Ω ( z )] + 2 y Im[φ ′( z )]
τ xy = Im[− φ ( z ) + Ω ( z )] − 2 y Re[φ ′( z )]
f2(z) は実軸上で実数となるような関数
y
この時,2iφ = Z2と書くと,
σ x = 2 Im[Z 2 ( z )] + y Re[Z 2′ ( z )] + Im[ f 2 ( z )]
σ y = − y Re[Z 2′ ( z )] − Im[ f 2 ( z )]
O
τ xy = Re[Z 2 ( z )] − y Im[Z 2′ ( z )] + Re[ f 2 ( z )]
[∫
∫
∫
4G (u − iv ) = i κ Z 2 ( z )dz + Z 2 ( z )dz + ( z − z )Z 2 ( z ) − 2i f 2 ( z )dz
x
]
破壊力学
亀裂を有する無限板の応力
境界条件
σx= σy= 0, τxy= τ |z|= ∞
σy = τxy = 0
y= 0, − a ≤ x ≤ a
Westergaardの解
Z2 = τ
z
z −a
2
2
,
τ
y
f 2 (z ) = 0
τ
τ
O
2a
τ
2015年9月28日(月)
x
破壊力学
この関数と境界条件は
lim Z 2 = τ ,
z →∞
lim Z 2′ = 0
z →∞
無限遠の応力条件を満たす
σ x = 2 Im[Z 2 ( z )] + y Re[Z 2′ ( z )] + Im[ f 2 ( z )]
σ y = − y Re[Z 2′ ( z )] − Im[ f 2 ( z )]
τ xy = Re[Z 2 ( z )] − y Im[Z 2′ ( z )] + Re[ f 2 ( z )]
y= 0 and |x|<a のとき,Z2は純虚数
⇒ σy=τxy= 0 at y=0 and |x|<a
x

τ
i

2
2

Z2 =  a − x
x
τ

x2 − a2
x2 < a2
x2 > a2
Z2は,すべての応力に関する境界条件を満たす!
2015年9月28日(月)
73
2倍の長さのクラックがあ
るときに同じ応力が無限
遠で加えられた場合
同じ長さのクラックがある
破壊力学
ときに√2 倍の応力が無限遠
で加えられた場合
σ
σ
y=0上の応力
y=0上の応力
相似な解
2a
2a
応力の大
きい領域が2
倍大きくな
る。
σy∞
σ
σ
2σ y∞
応力の大き
さは同じ
y=0上の応力
y=0上の応力
4a
σ
√2 倍の力
をかけると
応力は√2
倍になる
クラック端か
ら同じ距離に
ある応力が 2
倍になる
2a
2σ y∞
2 倍はなれた点
の応力は等しい。
(応力は1/√rに比
例するから、2倍
離れれば1/√2)
74
3.4
クラック先端近傍の独立な3つの変形形式 破壊力学
クラック先端部の微小な領域を考えると二次元的な変位場となる。
この変位場は3つの成分に分けられる
2015年9月28日(月)
モード I
モード II
モード III
(開口型)
(面内せん断型)
(面外せん断型)
75
クラック先端近傍の応力
破壊力学
モードI(開口型変形)
3θ 
θ

−
1
sin
sin

2
2
σ x 
KI
3θ 
θ 
θ
 
cos 1 + sin sin 
σ y  =
2
2
2
2πr
τ 
 xy 
 sin θ cos 3θ 

2 
2
 θ
2 θ 
−
+
cos
κ
1
2
sin


u  K I r 
2
2


 θ

 =
θ


v
2
G
2
π
 
sin  κ + 1 − 2 cos 2 
 2 
2 
ここで
2015年9月28日(月)
3 − 4ν
κ =  3 −ν
 1 + ν
(平面ひずみ状態)
(平面応力状態)
76
破壊力学
σ x = Re[Z1 ( z )] − y Im[Z1′ ( z )]
σ y = Re[Z1 ( z )] + y Im[Z1′ ( z )]
応力関数がわかっているので,
応力分布は数学的に求められる
Z1 = σ
τ xy = −2 y Re[Z1′ ( z )]
z
z2 − a2
z = a + re iθ を代入する
1 + ρe iθ
Z1 = σ
r/a<1
=σ
1 − 12 iθ 1 + ρe iθ
≈σ
e
iθ
1
2ρ
1 + 2 ρe
(1 + ρe ) − 1

a2
2
2 −1 2

(
)
−
≈
−
z
a
Z1′ = −σ 2
2
iθ 2
σ y = Re[Z1 ( z )] + y Im[Z1′ ( z )] = σ
=σ
3
1  σ − 32 iθ

e
a
2
ρ


z −a
=σ
1 − 12 iθ
e
2ρ
1
σ

cos 12 θ + aρ sin θ  sin 32 θ 
2ρ
a

3




1
σ 1
3
1
 sin 2 θ 
cos 2 θ + aρ sin θ  
2ρ
 a  2 ρ 

1
cos 12 θ 1 + sin 12 θ sin 32 θ
先の解に一致
2ρ
2015年9月28日(月)
[
]
77
破壊力学
長さ2aのクラックが無限空間にあり、無限遠でσy= σを受け
ているときの応力拡大係数は
σ
K I = σ πa
2a
σ
長さaのクラックが半無限空間の縁にあり、無限遠でσy= σ
を受けているときの応力拡大係数は
σ
K I = 1.1215σ πa
a
2015年9月28日(月)
σ
78
破壊力学
長さ2aのクラックの中央に集中荷重Pを受けているときの応
力拡大係数は、
P
2a
KI =
P
πa
P
長さ2aのクラックの任意の点に集中荷重Pを受けているとき
の応力拡大係数は、
b P
2a
2015年9月28日(月)
P
P a±b
KI =
πa a  b
79
破壊力学
クラック内面に、σy = σ∞を受けるときの応力拡大係数は
σ∞
σ∞
2a
2a
σy
σ∞
2a
σ∞
KI = 0
K I = σ ∞ πa
σ∞
半径aの円形クラックが無限空間にあり、無限遠でσz= σz∞を
受けているときの応力拡大係数は、
σ∞
a
2
K I = σ ∞ πa
π
2015年9月28日(月)
σ∞
80
破壊力学
モードII(面内せん断型変形)
3θ 
θ
θ

− sin 2  2 + cos 2 cos 2 
σ x 

3θ
θ
θ
  K II 
sin cos cos


σ y  =
2πr 
2
2
2
τ xy 

θ
θ
θ
3
 


 cos 1 − sin sin  

2
2
2  
u  K II
 =
v  2G
θ

2θ  
sin
1
2
cos
κ
+
+


r 
2
2  


2π − cos θ  κ − 1 − 2 sin 2 θ 



2
2 
ここで
2015年9月28日(月)
3 − 4ν
κ =  3 −ν
 1 + ν
(平面ひずみ状態)
(平面応力状態)
81
長さ2aのクラックが無限空間にあり、無限遠でτxy= τxy∞破壊力学
を受
けているときの応力拡大係数は
τxy∞
K II = τ xy∞ πa
2a
τ xy
∞
長さ2aのクラックの任意の点に集中荷重Pを受けているとき
の応力拡大係数は、
b
P
2a
2015年9月28日(月)
P
P a±b
K II =
πa a  b
82
破壊力学
モードIII(面外せん断型変形)
− θ 
τ xz  K III  sin 2 


 =
θ
τ
π
r
2
 yz 
 cos 

2
2 K III
{w} =
G
2015年9月28日(月)
θ
r
sin
2π
2
83
長さ2aのクラックが無限空間にあり、無限遠でτy= τy∞を受
破壊力学
けているときの応力拡大係数は
τyz∞
K III = τ yz∞ πa
2a
τyz∞
長さ2aのクラックの任意の点に集中荷重Pを受けているとき
の応力拡大係数は、
b
P
K III
2a
P a±b
=
πa a  b
P
2015年9月28日(月)
84
クラック先端近傍の応力
[
破壊力学
] ( )
1
K I f ijI (θ ) + K II f ijII (θ ) + K III f ijIII (θ ) + O r 0
σ ij =
2πr
KI, KII, KIIIが与えられれば、応力はその和で表される。
クラック面上(y=0)の応力
σ x 
0
0
1
σ 
0
0
1
y
 
 
 
 
σ z 
K I 2ν  K II 0 K III 0
=
 
 +
 +
 
τ
0
0
2
2
2
r
r
r
π
π
π
1
 
 
 yz 
0
0
0
τ zx 
 
 
 
  y =0
τ
1
0
0
 
 
 xy  or
(θ = 0 )
KI, KII, KIIIを応力拡大係数(Stress Intensity Factor)という
2015年9月28日(月)
単位:[応力]×[長さ]1/2
85
破壊力学
例題 図のような長さ2aのクラックが無限空間にあり、無限
遠でσy= σy∞を受けているときの応力拡大係数を求めよ
σy∞
σy∞
θ
2a
σy∞
θ
Y
X
2a
σy∞
2
略解) σ Y∞ = σ y∞ cos θ , τ XY∞ = σ y∞ cosθ sin θ
K I = σ ∞ πa cos 2 θ
K II = σ ∞ πa cosθ sin θ
2015年9月28日(月)
86
破壊力学
3.5
応力集中と応力拡大係数
切り欠きの先端の曲率半径ρが切り欠き長さに比
べて小さいとき、クラック近傍の応力場が応力拡
大係数とρで近似的に与えられる。また切り欠き
底の応力の値とρでρ→0のときの応力拡大係数を
知ることができる。
ρ
2a
ρ<<a
2015年9月28日(月)
87
破壊力学
切欠底の曲率半径が切り欠き長さに比べて小さい場合
放物線
ρ
≤ r ′ < ρ , θ << 1
2
2015年9月28日(月)
88
ρ
楕円孔まわりの応力解から ≤ r ' < ρ , θ << 1として解を近似
モードI(開口型変形) 2
3θ ′ 
−
1 − sin θ ′ sin 3θ ′ 
cos


2 
2
2 
σ x 
3θ ′ 
θ ′ 
θ ′ 3θ ′ 
K I ρ 
KI
 
cos 1 + sin sin
σ y  =
 cos
+
 +
′
′
2
2
'
2
2
2
2
2
π
π
r
r
r
τ 



′
′
′
3
3
θ
θ
θ
 xy 
 − sin

 sin cos




2 
2
2 

モードII(面内せん断型変形)
θ′
θ′
3θ ′ 

3θ ′ 

sin
2
cos
cos
−
+


sin



2
2
2


2
σ x 


3θ ′
K II ρ 
θ′ θ′
3θ ′  K II 
 
sin cos cos
σ y  =
 − sin
 +
+

′
′
′
π
2
r
r
r
π
2
2
2
2
2
2
τ 




′
′
′
′
θ
3
3
θ
θ
θ


 xy 
− cos 
 cos 1 − sin sin
 



2 
2  
2
2
モードIII(面外せん断型変形)
− θ ′ 
τ xz  K III  sin 2 


 =
′
θ
τ
′
π
r
2
 yz 
 cos 
2015年9月28日(月)

2 
89
破壊力学
応力集中係数は
モードI:
σ max
2K I
a
= 2 , σ max =
σ y0
ρ
πρ
2
σ max
ρ
a
K II 
ρ
モードII:
=
1 +
 , σ max =
1 +

τ xy 0
ρ
a
a
πρ 
τ max
a
K III
, τ max =
=
モードIII:
τ yz 0
ρ
πρ
応力拡大係数は
σ max
πρ
モードI:
KI =
モードII:
K II = σ max πρ
モードIII:
K III = τ max πρ
2015年9月28日(月)
2
2
θ ≠0の点の接線応
力が最大
90
破壊力学
例題 図(a)のように無限板中の楕円孔の中央に単位長
さあたりP(N/mm)の力を受けるとき、最大応力は長軸端
に生じ、
2P
2P
(σ y )max = =
πb π ρa
である。この結果を用いて図(b)に示すクラックの応力
拡大係数を求めよ。
P
a
a
P
a
a
2b
ρ
P
(a)
2015年9月28日(月)
P
(b)
91
破壊力学
解答)
荷重方法から
KII = KIII = 0
また開口モードの場合の最大応力とKIの関係から
(σ y )max = 2 K I
πρ
上式に
(σ y )max =
KI =
2015年9月28日(月)
2P
π ρa
1
K I = (σ y )max πρ
2
の関係を代入して
1
(σ y )max πρ = 2 P πρ = P
2
2π ρa
πa
92
破壊力学
第4章 変形とエネルギー
2015年9月28日(月)
93
破壊力学
Griffithの理論
クラックを進展させる力はクラックが進展するこ
とによって解放させるエネルギーと新しい表面を
生成するのに必要なエネルギーの差である.
2015年9月28日(月)
94
4.1
破壊力学
ポテンシャルエネルギー
クラック
面積 A
P=P(u|A)
A
クラックを有する弾性体
とこれに加わる荷重
A+dA
V
V
P
u
P’
u’
クラック面積 A
クラック面積 A+dA
P
蓄えられるひずみエネルギー
クラック面積 Aのとき
U = ∫ P(u | A)du
u
UU’
0
クラック面積 A+dA のとき
u
2015年9月28日(月)
物体に加える力と変位の関係
u
∫0
U ′ = P(u | A + dA)du
95
破壊力学
外力が変位 u の関数 P=P*(u) として与えられるときこの力を保存力と
いい、ある関数 Π* を用いて次式で与えられる
dΠ *
P=−
du
もし、おもりが吊り下げられたような場合、(P=一定)
Π * = − Pu
外力の系を含めた系全体の力学的エネルギーをポテンシャ
ルエネルギーといい
Π(u|A) = U(u|A)+ Π*(u|A)
系が釣り合い状態にあるとき
∂Π (u | A)
=0
∂u
2015年9月28日(月)
96
破壊力学
クラックの進展によるポテンシャルエネルギーの解放
4.2
P
P
P+δP
外力の変位と力の関係
P=P*(u)
物体に加える力と変位の関係
u
u+δu
クラック面積Aの弾性体が荷重P、変位uの状態からクラッ
ク面積が δ A増加したとする。このとき物体は図のように
P=P(u|A+δA) 上で釣り合う。このとき系のポテンシャルエ
ネルギーが斜線部ほど減少する。
解放されるエネルギーは
2015年9月28日(月)
δΠ (u | A) |δA = −(斜線部の面積 )
97
破壊力学
線形弾性体のときのポテンシャルエネルギーの変化
クラック進展時に、
荷重点の変位一定
荷
重
P
P+δP
δP
荷重一定
荷
重
a
P
c’
一般の場合
荷
重
a
δP
a
c''
GδA
c
c’
GδA
c’
解放される
エネルギー
GδA
b
b
O
u
O
u u+δu
b
O
u u+δu
クラック進展時の荷重が同じ場合、荷重のかかり方に
よらず、 δAを小さくしていくとすべての場合の解放エ
ネルギーδΠは同じ値に収束する
2015年9月28日(月)
98
破壊力学
クラックが単位面積進展する際に解放されるエネルギーG
G=−
∂Π
∂A
をエネルギー解放率という。
この量をクラックを進展させようとする一般化力と考えて
クラック進展力と呼ぶこともある。
力P一定のとき系のコンプライアンスをλと記すと、
1 2
Π = −U = − λP
2
よって
クラックが進展
∂Π 1 2 dλ
= P
G=−
∂A 2 dA
2015年9月28日(月)
すると変形しや
すくなるのでλ
は大きくなる
99
4.3 エネルギー解放率と応力拡大係数
破壊力学
(a)からクラックがδA進展し、(b)に
なったとする。このときGδAのエネ
ルギーが解放される。
(b)のδAの部分に(a)のδAの部分に発
生していた応力σy(y)を(c)のように
与える。クラック面で(a)の場合の
応力分布になり,(a)と同じにク
ラック部分がちょうど閉じた状態
になる。すなわち、系全体で(a)の
状態と同じ応力分布になる。
(a)
(b)
δA
σy(y)
(c)
この(b)から(c)になるとき,応力σ(x)によってv(x)ほど δA部
分が変位する。σ(x)のする仕事は単位幅あたり
Gδa =
ところで
δa 1
∫
0
σ y (x ) =
2
σ y ( x )v( x )dx
K I ( A)
κ +1
δa − x
K I ( A + δA)
, v( x ) = ±
2πx
2G
2π
100
破壊力学
したがって
Gδa =
δa 1
∫0
σ y ( x )v( x )dx
2
δa 1 K ( A)
κ +1
δa − x
I
=
⋅2
K I ( A + δA)
dx
0 2
2πx
2G
2π
δa δa − x
κ +1
=
K I ( A)K I ( A + δA)
dx
0
4πG
x
κ +1
=
K I ( A)K I ( A + δA)δa
8G
∫
∫
ところで、
δa (1 − sin 2 θ )
2δa sin θ cos θdθ
dx = ∫
2
0
x
δa sin θ
π 2
π
= 2δa ∫ cos 2 θdθ = δa
δa
∫
0
δa − x
0
π 2
2
101
破壊力学
よって
G=
κ +1
8G
{K I ( A)}2 = 1 K I 2
E′
ここで
E
平面応力

E′ = 
2  E 1 −ν 平面ひずみ
(
2015年9月28日(月)
)
102
3つの変形様式が同時に存在する場合
1
G = lim
δa →0 δa
破壊力学
∫0 2 {σ y (x )∆v(x ) + τ xy (x )∆u(x ) + τ yz (x )∆w(x )}dx
δa 1
クラック先端部近傍の変位および応力分布を代入すると
G=
(
)
1
1
K I 2 + K II 2 +
K III 2
E'
2G
モードごとの成分の和として表せる。
G = GI + GII + GIII
2015年9月28日(月)
103
破壊力学
Gは荷重の2次の関数なのでKのように重ね合わせの
原理は成立しない
力が独立に与えられたときの解がGI1,GI2,・・・であ
るとき
GI = ( GI 1 + GI 2 + )
2
GII = ( GII 1 + GII 2 + )
2
GIII = ( GIII 1 + GIII 2 + )
2
2015年9月28日(月)
104
破壊力学
4.4 J積分
表面Sで囲まれる弾性体 V
Vに蓄えられたひずみエネ
ルギーUは、ひずみエネル
ギー密度をϕとすると、
U = ∫∫∫ ϕdxdydz
弾性体
T
V
V
dS
S上の微小要素dSに外から作用する分布力ベクトル
をTdSその点の変位ベクトルをuとすると、変位が0
からuまで変化する間に外力のなす仕事dWは
dW =
u
∫0 T ⋅ dudS
したがって V のポテンシャルは
u

Π = U − W = ∫∫∫ ϕdxdydz − ∫∫  ∫ T ⋅ du dS
S 0
V

2015年9月28日(月)
105
Tとuの関係はAに
破壊力学
よらない
クラックがδA増加したとき
∫∫∫
∂ϕ
dxdydz −
V ∂A
∫∫∫
∂  u

d
T
u
⋅

dS

S  ∂A  0

∂u
dS
T
S ∂A
∫∫
∫
∫
∫∫
P
P
P+δP
クラックを含まない任意の閉曲面S0と内
部領域V0とすると、ポテンシャルΠ0は
Π0 =
u
dS

d
⋅
T
u
ϕdxdydz −


V0
S0  0

∫∫∫
∫∫ ∫
P
P( =P(u
u|A
|A)
+
A)
=
∂ϕ
dxdydz −
V ∂A
δ
P=
∂Π
=
∂A
∂  u
∂u

(
)
 T ⋅ du  = T u
∂A  0
∂A

クラック面積の変δAに対し
∂Π 0
=
∂A
∂ϕ
dxdydz −
V0 ∂A
∫∫∫
2015年9月28日(月)
u+δu
弾性体
A
∂  u
dS = 0
T
u
d
⋅


V
S0 ∂A  0

∫∫
u
∫
表面 S
V0
表面 S0
106
V中のV0を除く領域をV1とすると
弾性体
Π = Π 0 + Π1
A
したがって
∂Π ∂Π1
=
∂A
∂A
∂ϕ
=
dxdydz −
V1 ∂A
∂ϕ
=
dxdydz −
V1 ∂A
破壊力学
V0
V
表面 S1
∂  u

表面 S0
 T ⋅ du dS
S1 ∂A  0

∂u
共通の表面
T
dS
S1 ∂A
表面積分の寄与は
打ち消しあう
クラックAを含む任意の領域をV1に対し
て∂Π/∂Aは一定である。
2015年9月28日(月)
∫∫∫
∫∫
∫∫∫
∫∫
∫
107
一般の三次元問題でもクラック近傍の領域に
破壊力学
限れば二次元変位場と考えることができる
二次元領域で考える
変位場 u=u(x,y)
クラックと平行にx軸をとり、
曲線Γで囲まれた厚さdzの領域
をV1とする。クラック面には力
が作用していないとする。ク
ラック長さの微小増加をδaとす
るとδA=dz δaとなる。
∂Π1
=
∂a
∂u
∂ϕ
dxdy − T ⋅ dc
Σ ∂a
Γ
∂a
∫∫
∫
cは経路Γに沿った
座標である
第一項は図の面積に関する面積分
第二項はΓに沿った一周積分
ΓをΓ`に変えても∂Π/∂aの値は換わらない
2015年9月28日(月)
108
クラックの微小進展δaの前後の状態を比較する 破壊力学
(x−δa,y,z)
δa
(x,y,z)
y
δa
O
x
Γ
Γ'
Γ
(x,y,z)
y
Γ
δa
O
上図のΓに囲
まれた領域と
下図のΓ'に囲
まれた領域の
変位分布は等
しい。
δa
x
δa進展後の任意点(x,y,z)の変位は、進展
前の(x- δa,y,z)の点の変位の値に等しい
2015年9月28日(月)
∂u
∂u
=−
∂a
∂x
109
yU
x*
∂ϕ
∂ϕ
dxdy = −
dxdy
Σ ∂a
Σ ∂x
yU  x** ∂ϕ
dx dy
=− 
y L  x* ∂x

∫∫
∫∫
y
∫ ∫
yU
[ϕ ]xx*** dy
∫y
= − ∫ ϕdy
Γ
=−
破壊力学
x**
O
x
yL
xについて積分すると
L
したがって
−
∂Π1
=J=
∂a
 ϕdy − T ⋅ ∂u dc 


Γ
∂x 
∫
この径路Γに独立な積分をJ積分と呼んでいる
2015年9月28日(月)
110
ところで
破壊力学
τ xy 
Tx 
σ x 
 
 
 
Ty dc = τ xy dy − σ y dx
Tz 
τ xz 
τ yz 
 
J積分をさらに整理すると
J=
∂w 
∂w  
∂v
∂v
  ∂u
 ∂u
ϕ
σ
τ
τ
τ
σ
τ
+
+
+
+
−
+
dx 
dy






x
xy
xz
xy
y
yz

Γ 
∂x 
∂x  
∂x
∂x
 ∂x
 ∂x
∫
2015年9月28日(月)
111
破壊力学
J積分の特性
•径路Γに囲まれる領域が弾性体である場合、
J=G
•径路Γに囲まれる領域がポテンシャルエネルギーを定
義できない物体の場合、Jはエネルギー解放率の意味
を持たないが、 ΓとΓ'で囲まれる領域が弾性体ならば、
Jは径路に独立な積分である
2015年9月28日(月)
112
破壊力学
例題
無限に長い高さ2Hの帯板に半無限クラックがある。この
帯板を上下にv0変位させた場合のエネルギー解放率をJ積
分で求めよ。
v0
v0
剛体
v=一定
τxy=τyz=0
2H
剛体
v0
2015年9月28日(月)
v0
113
v0
図のように座標軸と径
路ABCDEFを考える
∂u 

J =  ϕdy − T ⋅ dc 
Γ
∂x 
∫
v
破壊力学0
剛体
E
H
F
A
H
B
y
D
Γ'
x
2H
C
剛体
v0
BCおよびDE上で
y=一定 ⇒ dy=0 ⇒ 第1項=0
∂v/∂x=0, τxy=τyz=0 ⇒ 第2項=0
ABおよびEF上で 応力は0になるので第1項=第2項=0
CD上で クラック先端から十分離れているので
∂u/∂x=0 ⇒
第2項=0
σy以外の応力成分はすべて0なので
v0
2
よって
2015年9月28日(月)
1
1  v0 
2
ϕ = Eε y = E  
2
2 H 
2
2
Ev0
1  v0 
J = E  × 2H =
2 H 
H
114
破壊力学
第5章 破壊靭性の測定
2015年9月28日(月)
115
5.1
破壊力学
有限幅の薄肉板の試験
幅W の平面応力
πa 


K = σ W tan 
 W 

12
5.2 板厚による破壊靭性の変動
板厚が減ると破壊靭性値が上がる
2a
破面の状況
W
2015年9月28日(月)
116
破壊力学
5.3 平面ひずみ破壊靭性(Kic)測定試験
破壊時の破壊靭性の下限値
曲げ試験片
P
B=W/2
W
a=W/2
P/2
2W
P/2
1/ 2
3/ 2
5/ 2
7/2
9/ 2
3PL 
a
a
a
a 
a
K=
1.93  − 3.07  + 14.53  − 25.11  + 25.80  
3/ 2 
W 
W 
W 
W 
 W  
BW

a/Wの増加に伴って大きくなる関数
2015年9月28日(月)
117
コンパクトテンション(CT)試験片
W
h2
r
W− a
a=W/2
h1
K=
P
BW
1/ 2
破壊力学
W = 2B
a=B
W− a = B
h1= 0.65B
R = 0.25B
h2 = 0.30B
1/ 2
3/ 2
5/ 2
7/2
9/2

a
a
a
a
a 
29.6  − 185.5  + 655.7  − 1017  + 638.9  
W 
W 
W 
W 
 W  

a/Wの増加に伴って大きくなる関数
2015年9月28日(月)
118
例題
破壊力学
P
DCB試験片の荷重
h
クラック部分の根元では変形
が小さいとして片持ちはりが
2つあると考えてポテンシャ
ルエネルギーを求める。
a
層間剥離先端
P
2h
w
1
Π = 2× Pw
2
a
P
3
4
Pa
材料力学の計算により w =
なので
Ebh3
1
4 Pa 3 4 P 2 a 3
Π = 2× P ×
=
3
2
Ebh
Ebh3
したがって
1 ∂Π 12 P 2 a 2
GI =
=
b ∂a
Eb 2 h 3
2015年9月28日(月)
近似解
119