松本 榮次 - 法と教育学会

法と教育学会
第 6 回学術大会
第 8 分科会-⑤
「席替えにおけるルールの学習」
―特別支援学級における席替えの学習から-
松
本 榮
次(西宮市立上ケ原南小学校)
特別支援学校や特別支援学級での法教育の取り組みは少ないと思われる。一人ひとりの現状に
あわせて、学習や活動の計画をたてることも多いからである。個別指導での学習が多く、話し合
い活動等、クラス全体で話し合う活動は取り組みにくい場合もある。特に特別支援学級のクラス
によっては、相手に自分の意思を伝えることが苦手な児童もいる。
そこで、特別支援学級における「法教育」に取り組んでみた。児童にとって身近な、自分の学
習する場所の問題を課題とした。身近な課題の方が児童にとって考えやすいと考えたからである。
通常席替えする場合は、様々な方法が考えられる。
① 教師が決める方法
② くじびきで決める方法
③ 児童の希望による方法
教師が決める方法は、学習のしやすさや、指導のしやすさ等を考慮に入れてできる。しかし、
「自由の相互承認の感度を上げる立場」からは、児童の意思を尊重することができにくい。くじ
びきの方法は、席を決めることを偶然にゆだね、どのような席になってもそれを受け入れること
を学んでいる。児童による希望を尊重する方法は、意思と意思のぶつかりあいを招き、それをど
のように解決するのかという新たな問題が発生し、それを上手に解決することが、お互いに一緒
によりよく生活することになることを学んでいる。
このように、どの方法であっても、それぞれのメリットがあると思われる。すなわち、どのよ
うな方法を用いるかは、教師にまかせられており、教師が総合的に考えて席替えを行っている。
今回の学習では、それぞれの方法について、児童が良い面と良くない面を考えた。実際に席替
えを行う上で、それぞれのルールについて考えていったのである。
自分たちが決めた方法で、問題が発生した場合にどのように解決するかを自分たちで考えた。
その結果、それぞれの方法のよさと問題点に気付くことができた。
今回は、年度後半の 12 月・2 月・3 月の 3 回にわたって行った。クラスの人数が比較的少なく
回を重ねるうちに、話し合いが進みやすくなってきた。
くじびきの方法では、自分の希望したところに行けないことに気付いたり、希望が重なった場
合は、じゃんけんを用いる方法や相手にゆずる方法もあることも学んでいったりした。
法教育のポイントの1つは、集団で生活する場合には、ルール(法)が必要であることに気付
いたり、ルールをどのようによりよく運用していったりするのかという点である。
今回の取り組みでは、児童は、自分たちの希望を実現させるために、どのような方法を用いる
のがよいのかを模索した。気持ちの良い生活を実現するために必要なことを学ぶことができたと
考える。ただ、人数が比較的少ないため、人数が多いときはどうなるのかという課題は残った。
報告では、具体的にどのような考えを出し合ったかを中心に発表し、今回の取り組みついて、
成果と課題について発表する。