7月全校集会 校長講話 - 新潟県立津南中等教育学校

7月全校集会
校長講話
平成27年7月24日
津南中等教育学校長
遠間
春彦
みなさん、こんにちは。
梅雨も明け、いよいよ夏本番です。
明日からは夏季休業に入ります。とはいっても、チャレンジ学習や部活動で今まで通
り登校する人が大半で、「本当に夏休みなの?」と思っている人も多いのではないで
しょうか。
それでもこの1か月間は、普段はできないことに何か1つはチャレンジしてみてくだ
さい。それが勉強であっても、読書であっても、部活動であってもいいと思います。
ところで、4月の始業式でお話しました選挙権年齢を18歳からとする改正公職選挙
法が6月17日に参議院で可決、成立しました。施行は1年後で、国政選挙では来年夏
の参議院議員選挙から、現在の6年生は全員、5年生も投票日までに誕生日が来た人は
主権者として選挙権が行使できることになりました。
現在国会では、いろいろな重要法案が審議されています。そして国会での審議の内容
が大きく報道されています。
皆さんは、新聞やテレビ・ラジオでこうしたニュースを読んだり見たりしていますか。
また、皆さんはそれぞれの法案に賛成ですか、反対ですか。これまで多くの高校生は選
挙権がなく、20歳までまだ時間があるということで、ことさら関心を持たなくても,
あまり問題はありませんでした。しかし、これからはそうはいきません。
民主主義における物事の決定は、議会において議論を重ね、いろいろな意見の調整を
経た上で、最終的には多数決で行われます。すなわち多数派の意思が実現されるのです。
その決定がより正統性を持つためには、主権者である私達が投票し、その意思が議会
の議席に反映される必要があります。そして私たちは、投票するためには、いろいろな
政策について関心をもって情報を集め、自分の考えに近い政党や候補者を決めなければ
ならないのです。
これは5、6年生だけの問題ではありません。1年生から4年生も18歳になった日
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から選挙権を行使できるのですから、今から政治について関心をもっておくことが大切
です。
ところで、民主主義だからといって、すべてのことを多数決で決めることができるの
か、あるいは多数決で決めて良いのかという問題があります。
例えば、クラスで文化祭の出し物を決めるとき、議論に議論を重ねた結果、どうして
も2つの案が残ったような場合、最後には多数決で決めるでしょう。
しかし、例えば、つぎのような場合はどうでしょうか。
40 人のクラスで、30 人のグループが 10 人のグループに嫌がらせをしようというルー
ルを多数決で決めてよいのでしょうか。そんなことはできないですね。なぜでしょう。
それは、クラスの 40 人には、一人一人に「嫌がらせをされない権利」があるからです。
この権利のことを「基本的人権」と言います。
先ほど、クラスの 40 人には、一人一人に「嫌がらせをされない権利」があると言いま
した。しかし、多数派である 30 人のグループの基本的人権は、独裁者でも現れない限り、
多数決によって守られるのです。ところが、少数派である 10 人のグループは多数決では
いつも不利な立場に置かれ続けます。時には多数決によって 10 人の基本的人権を侵害す
るようなルールが決められてしまう場合もあります。
もしも、10 人のグループに嫌がらせをしようというルールが多数決で決まってしまっ
たら、どうしたらよいでしょうか。
このような場合に 10 人の少数派が取り得る手段は、裁判所を通じて基本的人権を主張
していくことです。そして裁判所は日本国憲法で保障された基本的人権を侵害するよう
な法律は、たとえ国会の多数決で成立した法律であっても、憲法違反であり無効である
とする権能を有しているのです。このことを違憲立法審査権といいます。
このように、民主主義がうまく機能するためには、国民主権による多数決原理ととも
に、少数派(力の弱い側)の基本的人権を守るということが必要不可欠なのです。
今日は、選挙権年齢が18歳からになることが決まったことから、民主主義におけ
る、多数決原理と基本的人権との関係についてお話しました。
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