本文 - J

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Vol.
50, No.6
(1994)
P-377
技術展望
IV 繊維素材(機 能素材)
制 電 ・導 電 性 素 材
村
.
瀬
る こ とが う かが え る。 さ ら に最 近 の4年
は じめ に
と,表4の
合 成繊 維 は,優 れ た物 理 的 特 徴 を 有 して い る た め,極
めて 多 方 面 に か つ種 々 の分 野 に使 用 され て い る こ とは,
繁
満
間 の分 類 をみ る
よ うに なり,導 電 関 係 が 全体 の7割 を 占め て
お り,制 電関 係 よ り も各 社,力
を入れていることがわか
る。
周 知 の 通 りで あ る。 しか し,ポ リエ ス テ ル に代 表 され る
こ こ で現 在 市 販 して い る と考 え られ る導 電 性 繊 維 を表
よ うに,吸 湿 性 が 乏 し く,そ れ が 原 因 して 静 電 気 を帯 び
5に 記 す。 こ れ は,IC年 前 に制 電 ・導 電 性 素 材 が 紹 介 さ
やす い とい う大 きな 欠 点 が あ り,様 々 な 障 害 と して 発 生
れ て い る1)が,そ
す る。 例 え ば衣服 を脱 着 す る と き,体 に ま とわ りつ く,
した もの で あ る 。以 前 は 各社 が ナ イ ロ ン繊 維 あ る い は ポ
あ るい はド ア の 取 っ手 に 触 った と き,自 動 車 のド ア を開
リエ ス テ ル繊 維 等,単
け る 際 な ど,静 電 気 の 発 生 に び っ く りす る とい う こ と
多 種 の繊 維 に拡 張 し,銘 柄 を増 や して い る こ と,ま た従
は,kGが
日常 的 に経 験 して い る こ とで あ る。 さ ら に 近
年,制 電 性 能 だ け で は な く,病 院 関 係 は もち ろ ん,医
れ を基 に そ の 後 の 新 た な製 品 等 を追 加
一素 材 に 限定 さ れ て い た もの を,
来 は 導電 性 カ ー ボ ンブ ラ ッ クの練 り込 み が 中心 で あ り,
黒 っ ぽ い 色 で あ っ た の を,白 色 の 導 電性 粒 子 を用 い,色
薬,電 子,精 密 機 器,化 学 工 業 等 の 関 係 で,無 塵,無 菌
表1特
な ど,従 来 に はな い ク リ ー ン化 の た め,導 電 性 能 の 付 与
許検索キ ーワー ド
も大 きな課 題 とな って い る。
こ の静 電 気 を除 去 す る た め,制 電 性,あ
るい は導 電 性
を繊 維 に付 与 す る研 究 開 発 が 長 年 にわ た りな され て きて
い るが,本 稿 で は,こ
こ数 年 の 制 電 性,導 電 性 繊 維,布
帛
,紡 糸 等 に関 す る特 許 の 動 向 を中 心 に述 べ る。
2.
調 を改 良 して い るこ とが わ か る 。 これ らは 筆 者 が 知 る 範
囲 内 で あ る た め,漏 れ 落 ち が あ る と思 うが,こ の10年 間
を比 較 して も,大 きな素 材 の違 い,あ る い は機 能 の違 い
最 近 の特 許 動 向
とい う もの は 見受 け ら れ な い。 また特 許 の 内容 か ら判 断
こ の10年 程 の制 電.導 電 性 を有 す る繊 維,あ
るい は そ
し,当 時1)と 大 き く変 わ って い ない と思 わ れ る。
の紡 糸 方 法 等 の開 発 動 向 を調 査 す るた め,特 許 調 査 を行
った。
内 部 へ 制 電 性 化 合 物 を含 有 させ た 制 電 性 モ ノ フ ィラ メ ン
特 許 調 査 は,PATOLISの
許 分 類(IC),広
フ リー キ ー ワ ー ド(FK),特
域 分 類(RC)で,調
査期 間は公開 制度の
始 まっ た1971年 以 降,1993年11月30日
表1に
そ こで 衣 料 用 途 を別 と し,産 業 資 材 用 途 と して,繊 維
まで で あ る。
検 索 を 行 っ た 各 種 フリー キー ワ ー ド等 を 記 す
が,[制 電or制
電 性]と 〔導 電or導
れ① 紡 糸関 係,② 繊 維 関 係,③
電 性 〕のFKと
それぞ
モ ノ フ ィ ラ メ ン ト(MF)
ト,あ るい は 導 電 粒 子 の 練 り込 み に よ る導 電 姓 モ ノ フ ィ
ラ メ ン トの 動向に つ い て,平 成 元 年以 降 公 開 され た 各社
の 特 許 を参 考 に 述 べ る 。
3.
制 電 性 ・導 電 性 モ ノ フ ィ ラ メ ン トの 開 発 動 向
産 業資 材 用 で 導 電性 モ ノフ ィ ラ メ ン トが 要 望 され る 分
関係 の 各 キ ー ワ ー ドの 掛 け合 わせ で 行 っ た。 そ の結 果 の
野 は,ド ラ イ ヤ ー キ ャ ンバ ス,特 に抄 紙用 途,あ る い は
特 許件 数 を表2に 示 す が,こ の20年 余 りの 間,繊 維 関 係
ス ク リー ン印 刷 用 紗 で あ る。 ドラ イ ヤ ー キ ャ ンバ ス は
が 大部 分 を 占め て お り,次 いで 紡 糸 関 係 で あ り,モ ノフ
抄 紙 機 に お い て,湿
,
っ た 紙 を 押 しつ け て,乾 燥 シ リ ン
ィ ラ メ ン ト関 係 の 出 願 特 許 は 極 め て 少 な い 。 こ れ ら
ダ ーへ 運 搬 す るた め に用 い ら れ る織 物 であ り,性 能 と し
1,174件 の 年 代 別 特 許 件 数 は表3の
て,抗 張 力,耐 熱 性,耐 蒸 熱 性,耐 摩 耗 性 な どの 耐 久性
通 りで あり,1979年
以 降,数 年 間 ず つ の 特 許 公 開 件 数 は,ほ
ぼ 同 じ数 で あ
り,各 社 新 た な制 電 性.導 電 性 繊 維 の 開発 を継 続 して い
が 優 れ,紙 の 品 質 を よ くす るた め ,表 面 が 平 滑 で あ り,
乾燥 を良 くす る た め の 通 気 性 が 要 求 され る9さ ら に使 用
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SEN-I
表2
GAKKAISHI(繊
公開特許件数
表3
年代 別出願推移
表4
最 近4年 間 の 内 訳
維 と 工 業)
表5
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各社の導電性繊 維
を付 与 した モ ノ フ ィ ラ メ ン トが要 求 され て い る。
時 に 発 生 す る静 電 気 に よ って ゴ ミが 付 着 す る な ど の 問題
具 体 的 に特 許 を見 て み る と,制 電 性 モ ノ フ ィラ メ ン ト
が あ り,こ の た め 静 電 気 の 発 生 を防 止 す る制 電 性 を付 与
と して は,次 の2件 が 該 当 す る。 す な わ ち芯 鞘 型 複 合 モ
した モ ノ フ ィ ラ メ ン トが 要 求 さ れて い る。
ノ フ ィ ラ メ ント2) ,あ
る い は 多 層(具 体 的 に は3層 で あ
また ス ク リー ン印 刷 用 紗 は枠 に張 っ た ス ク リー ン紗 の
る が)複 合 モ ノ フ ィ ラ メ ン ト3)で あ る。 い ず れ もポ リエ
上 に パ ター ン版 膜 を作 り,イ ンク を版 膜 で被 覆 され て い
ス テ ル 系 で あ り,一 成 分 が ポ リエ チ レ ン テ レ フ タ レー
な い部 分 の ス ク リー ン紗 の 網 目 を通 して 被 印 刷 物 に転 写
ト,他 成 分 が ポ リエ チ レ ン グ リ コ ー ル に代 表 され るポ リ
す る一 種 の孔 版 印刷 で あ る 。 性 能 と して は,抗 張 力,寸
ア ル キ レ ンー
エ ー テ ル を含 有 した ポ リマ ーが 使 用 され て い
法 安 定 性,耐
久性,イ
ン クの 通 過 性,版 材 と の接 着 性,
耐 溶 剤 性,精度
が要 求 され るが,ド
ラ イ ヤ ー キ ャ ンバ ス
用 途 と 同様,ゴ
ミが付 着 して は な ら ない 。 さ ら に紗 に帯
る 。 電気 的 性 能 を特 許 の 実 施 例 か ら引 用 す る と,前 者 の
芯 鞘 型 複 合 モ ノ フ ィ ラ メ ン トか ら な る 摩 擦 帯 電 圧 は0.7
∼1 .8kVで あ る。 ま た 後 者 は 摩 擦 帯 電 圧 が0
.5∼
電 した 静 電 気 に よ り印刷 時 に 印刷 イ ンキ が 反 発 して飛 び
1.0kV,摩
散 り,印 刷 欠 点 が生 じな い よ う,制 電 あ る い は導 電 性 能
も衣 料 用 で 使 用 され て い る制 電 性 繊 維 の レベ ル とほ ぼ 同
擦 帯 電 圧 の 半 減期 が20∼50秒 で あ る 。 いず れ
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イ ロ ン,ア ク リル 等 に 限 った もの で はな い 。 こ こで は無
機 繊 維 あ る い は 金 属 に よる 被 覆,ポ
リマ ーへ の 導 電 粒 子
等 の ブ レ ン ドを除 き,.導 電 性 ポ リマ ー か ら な る繊 維 に
関 して,紹 介 す る。
導 電性 ポ リマ ーの 考 え方 と して は,次 の3つ が 挙 げ ら
れ る5)。 π共役 鎖 を長 くす る,平 面 状 の π電 子 系 分 子 を
積 み 重 ね る,電 荷 移 動 相 互 作 用 を利 用 す る,で あ る。 ポ
リマ ー の 具 体 例 と して は,ポ
リアセ チ レ ン,ポ
リパ ラ フ
ェニ レ ン,ポ リ ピ ロ ー ル,ポ
リチ オ フ ェ ン,ポ
リアニ リ
ン,ポ
図1ナ
イ ロ ン46導 電 モ ノ フ ィラ メ ン トの 断面 写 真
程度 の性 能 を有 して い る。
一方
,導 電性 モ ノフ ィラ メ ン トに 関 して は,ナ
46を 使 用 した もの4)で あ り,や は り芯 鞘,あ
イロ ン
るいは海島
タイ プの 複 合 モ ノ フ ィ ラ メ ン トで あ る。 導 電性 物 質 と し
リ(ρ-フ ェ ニ レ ン ビニ レ ン)等 で あ り,こ の 数 年
間 に これ らの ポ リマ ーか ら な る繊 維 と して,次 の よ う な
特 許 が 出 願 され て い る。 例 え ば,ポ
リアニ リン,あ る い
は そ の 誘 導 体 か ら な る繊 維67),有
機合成繊 維が主体で
あ るが,ア ニ リ ン,チ オ フ ェ ン,ピ ロ ー ル等 を繊 維 表 面
にエ ピ タ キ シ ャル成 長 させ た繊 維8等 で あ る 。
て は,導 電 性 カ ー ボ ン ブ ラ ッ ク,酸 化 チ タ ン,酸 化 亜
5.
お わ りに
鉛,酸 化 錫,沃 化 第 一 銅 等 の 微 粉 末 が 使 用 され,そ れ ら
をナ イ ロ ン46よ りも融 点 の 低 いポ リマ ー,例 え ば ナ イ ロ
以 上,公 開 特 許 検 索 を 中心 に こ の数 年 間 の 開発 動 向 に
イ ロ ン610等 に分 散 し,そ れ を鞘
つ い て の概 略 を述 べ た が,高 付 加 価 値 製 品 の 開 発 の必 要
成 分 あ る い は 島成 分 に使 用 し,ナ イ ロ ン46で 被 覆 して い
性 と同時 に,繊 維 に要 求 さ れ る特 性 は年 を 追 っ て 高 い も
る。 この モ ノフ ィラ メ ン トの導 電 性 能 は電 気 抵 抗 値 と し
の とな っ て い る。 現 在 の制 電 性 あ る い は 導 電性 素 材 は い
て,1.5×107∼3.4×108で
ン6,ナ
イ ロ ン66,ナ
あ る。 そ して,導 電 性 能 な
ず れ もポ リマ ー 改 質,あ る い は 導 電性 粒 子 の ブ レ ン ドが
らび に ナ イ ロ ン46の 特 性 で あ る 耐 熱 性 は もち ろ ん の こ
主 体 で あ り,そ の繊 維 の導 電 性 能 は 無機 繊 維 と比 較 して
と,こ れ に 原 因 し,湿 熱 処 理 を行 った 後 で も直線 及 び 引
遙 か に 及 ば な い もの で あ る 。 今 後 は さ らに 高 度 な 導 電性
掛 強 力 の 保 持 率 が 高 く,か つ 耐加 水 分解 性 に も優 れ た特
能 が要 求 され て くる と予 想 され る が,最 後 に 述 べ た 導 電
徴 を有 す る もの で あ る。 代 表 的 な ナ イ ロ ン46か らな る 導
性 ポ リマ ー か らな る繊 維 の 開 発 が 求 め られ よ う。
電性 モ ノ フ ィラメ ン トの 断 面 写 真 を図1に 示 す が,現 在
さ らに 改 良 を重 ね,105オ
参考 文献
ー ダ ーの 導 電 性 モ ノフ ィ ラ メ
ン トが得 ら れて お り,従 来 の 衣 料 用 で 導 電 糸 と呼 ば れ て
1)
い る 繊 維 よ りも は るか に 電 気 抵 抗 値 が 低 い こ とが わ か
2) 特 開 平2-289119.
奈 良:繊 学 誌, 40, p-333,
る。 こ れ は,ナ イ ロ ン46成 分 が 鞘 成 分 に 使 用 され て い る
3) 特 開 平5-25709.
た め,延 伸 時 に高 温 で 行 う必 要 が あ り,そ の た め 鞘 成 分
4) 特 開 平1-201520.
(1984).
よ り も融 点 の 低 い 芯 成 分 の 流 動 性 が 高 くな り,導 電 粒 子
5)
緒 方 直 哉 編 「導 電 性 高 分 子 」(株)講
談 社1990年
の流 動 性 が ポ リマ ー 内 で の 流 動性 も上 が り,均 一 に 分散
6)
特 開 平3-45707.
され るた め と考 え られ る 。
7)
特 開 平5-9294.
8)
特 開 平3-163709.
4.
導 電 性 ポ リ マ ー か ら な る繊 維 の 開 発
上 記 特 許 検 索 は,合 成 繊 維,例
えば ポ リエ ステ ル,ナ
(平成6年2月28日
発 行.
受 理)