校長だより 9号

校長だより9
校長
桑原
克夫
この文書を書いている10月4日は、二学期中間考査の3日目です。テストが終わって
急ぎ足の生徒に理由を聞くと『今から自主練習です』と元気に体育館へ向かっていきまし
た。できる限り一日1回は、テストを受けている教室を回るようにしていますが、ほとん
どの生徒が一生懸命にテストと向かい合ってくれていました。その中間考査も残すところ
後一日となりました。
9月 26 日(木)、1年生全員が春田植えをし
たイネ『きぬむすめ』の稲刈りを行いました。
その次日 27 日(金)には、乃木小学校5年生全
員が同様に稲刈り体験を行いました。私の若
いころは、稲刈りは大変つらい作業という思
い出しかありませんでした。稲わらでよりを
なって、それを使って刈った稲わらをからん
で一束一束つくり、それを稲はでに掛け、2
~3週間乾かした後脱穀作業と、今のようにコンバインで一度に終わるというものではあ
りませんでした。今の本校生徒は、正味1時間ほどではありましたが、楽しそうに稲刈り
をしている姿わ見ながら時代を思うと同時に、こうした経験をすること自体少なくなりつ
つあることを寂しく思いました。
27 日には、乃木小学校の5年生の番でした。
天気が悪ければ、体験せずに終わるところで
したが、天気にも恵まれ実施することができ
ました。今年は、同じ5年生が田植え体験を
した後、本校の生物生産科3年の農業機械コ
ースの生徒が乃木小学校へ出かけ話をしてく
れていたお陰で、昨年以上に熱心に取り組ん
でくれていたように感じました。私が、落ち
ている稲穂を拾っていると、何名かの子どもたちも一緒に拾ってくれました。事実かどう
かわかり
ませんが、
昔の人は、
片手いっ
ぱい持て
る稲穂が
ご飯一杯
分だと教
わったことがあるように記憶しています。少し前に「もったいない」という言葉が流行っ
たことがありますが、一緒に拾ってくれた子供たちの心の中には、こうした気持ちが根付
いているものと思いました。ほんのわずかですが、出来上がったお米を乃木小学校5年生
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にも試食してもらおうと思っています。これからも、食べ物の大切さがわかる人に
同じ 26 日には、総合学科1年生の授業『産業社会と人間』で、金崎孝一さんと三原通
弘さんのふたりにお話しを伺いました。
お話をいただくきっかけは、島根県社会福祉協議会の主催で行われている『くにびき学
園』を卒業され、何かの形で地域貢献したいという思いを伺い、今回の講話が実現しまし
た。金崎さんからは、『社会に出るにあたって』、三原さんからは 、『私の産業人論』と題
してお話いただきました。私も生徒と一緒に拝聴しましたので、メモしたことを頼りに少
しその内容をお伝えします。
金崎さんは、長く銀行マンとして活躍された方です。
学校とは違って社会は、面倒見の悪い組織であり、他人を干渉しない組織でもある。学
校での勉強や俗にいうよい大学を卒業した
からといって、必ずしも会社にとって重要
なポストに就けるとは限らない。与えられ
た仕事をやりこなす力、誠実な態度、謙虚
さ、協調性(みんなから可愛がられる存在)
を持って仕事をすることが大切である。社
会人としての自覚を持った態度と行動する
ことが大切である。また、他人に対して自
分の考えをきちんと述べられる力も必要で
ある。そのためにはどれだけたくさんの話
題を持つあわせているのかが問題であると同時に会話の中にもきちんとしたマナー(相手
を不快な気持ちにしない)を持つことも必要である。
今、自分がここにいることへの「ありがたく」思う心、お互いに支え合う存在であると
思うやさしい心を持つことが大切である。
三原さんは、地元の機械メーカーに就職され、特に開発を中心に手掛けて来られた方で、
専門の知識と技術を乞われ高専でも教鞭をとられた方です。
人は働かなければ食べていけない。そのためには楽しくない仕事をすることもある。多
くの若者が3~5年で「仕事が面白くない」
と言ってやめていく。やめていく多くの若
者をみると、与えられた仕事ができない者
が多い。就職決めるということはひとつの
人生の大きな分かれ目である。自分の意志
で業種を選ぶことはできても、入社した会
社の方針で職種は決められてしまうものだ。
与えられた仕事に対して責任感、使命感を
持ち自分のこととして受け止め、目標を持
って仕事に取組むことが大切である。就職
するということは、会社組織の一員となることである。会社は、20 代から 60 代の年齢の
幅や役職によって仕事が決まる縦の社会である。仕事を進める上では、協調性や与えられ
た仕事に責任を持ってやり遂げることが大切であるとともに、組織の一員としてホウレン
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ソウ(報告・連絡・相談)に努めることが求められる。仕事のできる人は、理論と経験と行
動のバランスがとれており、評価される人は、仕事の処理能力が高く、仕事に向かう姿勢
があり、組織人としての常識を備えている者である。現在評価の高い会社でも 10 年後、
どうなっているのかわからない不透明な時代である。ひとつの商品を開発すれば 30 年は
心配がなかった時代もあったが、今はすぐによりよい商品が開発されるという時代である。
自分の経験からすると、3年で初歩的な仕事ができ、5年で一通りのことが任せられ、す
べて仕事を任すことができるには、10 年は必要である。10 年間は、謙虚な気持ちで、前
向きな態度を忘れず、愚直に努力する姿勢が必要である。 10 年努力すれば将来が見えて
くる。
以上、私にとっても様々な経験に裏付けられたお話をお聴きすることができありがたく
思いました。後日、生徒の感想の一部を読みましたが、それぞれの生徒の心の中に残る話
であったと思いました。高校生活をしっかり過ごすことが、実社会に出た時にも生かせる
力になると感じてくれたものと思いました。
9月 16 日(月)から就職試験が始まりました。就職希望者全員を面接し、励まし送り出
していますが、
「内定をいただいた」と報告に来てくれる生徒のうれしそうな顔を見ると、
残りの高校生活もしっかり頑張って卒業してくれるものと思います。AO 試験で合格して
いる生徒以外の進学希望者は、これから試験に臨むところです。校長室へ受験願を持って
くる生徒に、進学先でどんなキャリアを積んで将来どのような職業に就いて聞き送り出し
ているところです。すべての生徒に夢が少しでも実現してほしいものです。
追
伸
校長室から見える中庭の石組み周辺の整
備を環境土木科3年生の課題研究で取り組
んでいるところです。企業の方の協力を得
ながら、石組み周辺を草の生えにくくする
ようです。仕上がるのを楽しみにしている
ところです。 10 月8日(火)から4日間、2
年生のインターンシップが始まります。将
来就きたい仕事を考えながら職場を選んだ
生徒も沢山いますが、すべての生徒が将来
の自己実現に向けて意識を持ちながら職場体験してほしいと願っています。
最後に、生徒指導部へ電話がありました。その内容は、交差点で倒れていたお年寄りの
方を本校生徒2名がその対応をしていたということでした。その話を聞いた一日は大変心
嬉しい日となりました。二学期の始業式で生徒に「ホスピタリティーの心」を持ってほし
い旨の話をしました。困っている人に対して自然に手を差し伸べてくれた2名の生徒は確
実にこの心を育ててくれていると思いました。
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