Ⅳ 「変貌する市街地」の危険空間

Ⅳ 「変貌する市街地」の危険空間
商店は、かつて地域の子どもたちを見守り育ててきました。地域の商店は、重要な一
翼をしめていました。それは、子どもの生育環境としての「地域の教育力」でもありまし
た。 しかし、最近郊外に大規模小売店の建設ラッシュと過当競争により、商店は大き
く変貌しました。こうした商店の変貌により、かつては子どもたちを見守ってきた地域の
商店が、子どもたちにとっては、危険な存在にかわっています。こうした地域の子どもた
ちに、楽しい生活の空間をつくらなくてはならないと考えます。
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変化する業種
「変貌する市街地」の危険空間で記述したように、商店は地域の子どもたちを見守り、
子どもたちと商店の方々とコミュニケーションが図られ、商店が交番の役割も果たして
いました。
商店は子どもたちの安全な空間でした。業種の変化によって、商店が危険な空間に
なっています。郊外に大型ストアーができ、地元商店街の活力がなくなってきていま
す。
また、店の構造(駐車スペース)が、道路から内部が見えないようになっています。昔
は、道路に対してオープンだったので、犯罪が発生しにくい状態にありました。こうした
商店の変化が生じると、犯罪の危険は一層高くなり、危険空間がうまれてしまいます。
人影も少ない
商店街
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変貌する商店街
町の商店街は、地域の住民の活力を象徴するものです。地域の住民と商店の方々の
元気な言葉が飛び交う商店街は、子どもたちにとっては、楽しい生活の空間でありまし
た。こうした地域の商店街が大きく変貌しつつあります。
こうした変貌によって子どもたちにとって大変危険な空間に様変わりしています。写真
は典型例の一つです。ここの商店の変貌は、三つの面から子どもたちにとって危険な
空間になっています。
一つ目は、商店街のあちこちで空家・空地が出現しています。この地域では、五軒の
商店が廃業によって空家になっています。昼間からシャッターが閉められたままです。
二つ目は、商店の業種が昼型から夜型にかわっています。昼間は店を閉めています。
昼間店を閉めていることは、子どもたちにとっては、廃業による空家ではありませんが、
危険空間になっています。
三つ目は、業種の変化があげられます。街(道路)に対して開放的な業種から閉鎖的
な業種への変化が増加しています。
この商店街はこうした三つの変化が重なり、子どもたちには危険な空間を生みだして
います。
地域の商店街の活性化は、大きい課題になっていますが、子どもの生活空間という
視点からみても地域活性化は、重要な意味をもっています。地域の商店は商品の売買
の場であると同時に、広く地域の教育・文化を育て子どもたちを育くむコミュニティーが
成り立つ空間でもあるからです。
また、住民は大型ストアーの便利さだけを求めるのでなく、地域の商店街を見直して
いく必要があるようです。地産・地消もそのひとつです。そのことによって大人の顔が見
え、子どもの安全が守られるのです。
かつての賑わいを取戻せるか、良案は……。
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地上げによる空家・空地
バブル経済は、日本を大きく変えました。そして、バブル経済は終焉し、地上げされ
た多くの土地は、空家のまま放置されたり空地になったりしています。こうした空間の
周辺で子どもたちが、犯罪に遭遇するのです。
住宅の密集地での空家は、家と家の壁でそこに閉ざされた空間ができ、犯罪につ
ながります。空地も同様です。さらにこうした空地が駐車場になると、排気ガス・騒音
対策のためブロック塀ができ、閉鎖的なきわめて不安定な空間になります。
空地・空家の改善を進めていくまちづくりがもとめられています。
「空家・空地」
左手が子ど
もセンター