特別講義 河口教授担当、7 月 8 日実施分レポート 「桑原邦夫:流れのシミュレーションとその可視化」 システム創成学科シミュレーションコース 30777 梅城 崇師 流れを記述する方程式は、ナビエ・ストークス(Navier-Stokes)方程式というもので、 この方程式は非線形を持つため、解析的な厳密解を得ることが殆どの場合で不可能である。 よって、方程式を離散化するなどして近似的に解を求めるしかない。 流れを考える上で、圧力や流速などの様々な変数があるが、その中でも重要なものが粘 性を表すレイノルズ数である。これは慣性と粘性の比を表す無次元数であり、流れがゆっ くりしているときレイノルズ数は低い値になり、高速になると数百万という値になる。ま たこの値から層流と乱流を区別することもでき、1000 程度の値になると層流が不安定にな ってくる。 また、普段は聞きなれない渦度という量も計算結果として重要である。これは、微視的 に渦を見たとき流体の局所部分が、どの程度回転しているかを表現しているものであり、 無限に小さな粒子を流体中に入れたとき、その粒子の回転の速さに相当する。渦の運動は レイノルズ数の高い流れでは、その中の粒子の軌跡と一致し、物体の表面では流体の速度 がゼロであるので、流体の速度は物体表面付近で摩擦力によるブレーキをかけられること になり、物体の表面のごく薄い部分で「渦度」が発生する。 円柱まわりの流れを考えるとき、流れの剥離を考えることができる。これは、特に速い 流れにおいて顕著で、表面に沿っていた流れがあるところで突然表面から離れてしまうよ うな流れである。逆に飛行機の翼のまわりの流れのような流れは、物体に沿ってきれいに 後端まで流れる。このように、剥離が起こるか起こらないかは、物体の形状と流れの速さ によって決まる。飛行機の翼も風を受ける角度によって、剥離が起こるかどうかが変わっ てくることになり、角度が並行からずれてきてある一定の角度に達すると、飛行機の翼の まわりでも流れの剥離がおこってしまう。こうなるとそれによる空気抵抗が極端に大きく なり、失速してしまうのである。 また、流れには定常なものとそうでないものがある。流れが遅いような場合では、流れ のパターンが時間とともに変化するようなことは殆どない。また、飛行機の翼のように剥 離した渦のない流れもパターンが変化せず、このような流れは定常流れと呼ばれる。これ に対して剥離した流れは、非定常な流れを形成し、時間の経過とともに流れパターンが発 展するような経過をたどる。定常な流れではそれほど面白い現象はなく、流れの多様性と いうものは、この非定常流れによって生じるといっても過言ではないほど、流れの解析を する上でこの複雑さは重要な現象である。
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