減圧と捕集を同時スタートできるため、到達圧力 になるまでに揮発する成分も含めて捕集すること 減 圧および 加熱 条件下で が可能である。 発 生する有 機ガ スの分析 有機分析化学研究部 矢野 寛子 発生ガス分析とは 1. 工 業 材 料 の 開 発・製 造・加 工・保 管・使 用・廃 棄にいたる様々な過程において発生したガスは、 図1 臭気や可燃性ガスの飛散など周辺環境への悪影 響 、腐 食 や 付 着 物 な ど 成 型 機 の 不 具 合 、腐 食 ・ 変 減圧下のガス捕集システム構成と対応 可能な条件 色 な ど 製 品 の 不 具 合 な ど 、ト ラ ブ ル を 引 き 起 こ す 場 合 が あ る 。発 生 ガ ス 分 析 は 、こ れ ら の ト ラ ブ ル が 生 じ た と き 原 因 物 質 を 特 定 し 対 策 に 繋 げ る 、あ るいは事前調査を実施して予防策を講じ未然に トラブルを防ぐなどに有用である。 2.2 吸着管捕集効率 減圧下における吸着管の捕集効率を検討した。 既 知 濃 度 の ア ル カ ン 標 準 品 ( 炭 素 数 C6~ 18) に つ い て 、吸 着 管 に 直 接 滴 下 あ る い は 減 圧 下( 約 発 生 ガ ス 分 析 に お け る 、ガ ス の サ ン プ リ ン グ は 1Pa or 6000Pa ) に て 吸 着 管 捕 集 し 、 熱 脱 離 大きく現場サンプリングとモデル試験の 2 つに GC/MS 測 定 し た 。 な お こ こ で は 、 吸 着 管 と ロ ー 分 類 さ れ る 。現 場 サ ン プ リ ン グ は 、直 接 ガ ス を 採 タ リ ー ポ ン プ 間 に 圧 力 計 を 設 置 し て 、圧 力 を 計 測 取 す る も の で 、主 に 排 気 ガ ス 、作 業 環 境 な ど に 好 し た 。得 ら れ た ピ ー ク 面 積 値 に つ い て 、直 接 注 入 適 で あ る が 、時 間 的 、空 間 的 な 制 約 に よ り ガ ス 採 し た も の を 100% と し 、減 圧 下 に て 捕 集 し た も の 取 が 困 難 な 場 合 も あ る 。一 方 、モ デ ル 試 験 は 、ラ の比率を捕集効率として図 2 に示した。 ボにてガス発生状況を再現してサンプリングす 約 6000Pa の 減 圧 下 に お い て は 、捕 集 効 率 は ほ る も の で 、室 温 ~ 1000℃ 以 上 の 幅 広 い 温 度 域 で 実 ぼ 100% で あ っ た 。 一 方 、 1Pa で は C8 以 下 の 炭 施 で き る た め 、 揮 発 性 有 機 化 合 物 ( VOC)、 残 存 素 数 で 捕 集 効 率 が 低 下 す る 結 果 が 得 ら れ た 。 1Pa 溶 媒 、樹 脂 成 型 時 、燃 焼 時 の 発 生 ガ ス な ど 様 々 な の 減 圧 下 で は 分 子 の 揮 発 性 が 高 く な る た め 、吸 着 目 的 に 用 い ら れ 、温 度 、雰 囲 気 ガ ス の 流 量 を 制 御 剤への保持力が低下すると考察された。 す る こ と に よ り 、再 現 性 の 高 い 試 験 が 可 能 で あ る 。 モデル試験においては、温度、湿度、雰囲気、 数 Pa 程 度 の 減 圧 下 で の 発 生 ガ ス 分 析 に お い て 、 本手法を適用する場合には捕集効率が良好な範 圧 力 、時 間 な ど 、実 状 に 合 わ せ た 系 を 組 む こ と が 囲 が C8~ と な り 、 低 沸 点 成 分 ( ヘ キ サ ン や 酢 酸 重 要 で あ る 。こ こ で は 、圧 力( 減 圧 あ る い は 大 気 エ チ ル 等 の 溶 媒 な ど )の 捕 集 効 率 が 低 く な る 点 に 圧 )の 違 い に よ り 発 生 ガ ス に ど の 様 な 違 い が 生 じ 注意が必要である。 る か を 、 熱 脱 離 -GC/MS 法 を 用 い 、有 機 成 分 に 着 目し分析した事例を紹介する。 減圧・加熱条件下での発生ガス分析方法 2. 2.1 システム構成 減圧下で発生するガスを捕集するシステムの模 式図と対応可能な条件を図 1 に示した。試料を加 熱 可 能 な チ ャ ン バ ー に 入 れ 、吸 着 管( 吸 着 剤 Tenax など)とロータリーポンプを接続し、減圧しなが ら発生したガスを吸着管に捕集する。ガスを捕集 し た 吸 着 管 を 熱 脱 離 GC/MS 法 な ど に て 測 定 し 、 有機成分の定性と定量を行う。本システムでは、 図 2 東レリサーチセンター アルカンの吸着管捕集効率 ( 炭 素 数 C6~ 18) The TRC Journal 2015 年 9 月号 ・1 3. 表 1 に 示 す 通 り 、2 水 準 と も に 含 窒 素 化 合 物 が 多 分析適用事例 く 検 出 さ れ た 。こ れ ら の 成 分 は ゴ ム 試 料 中 に 含 ま ニ ト リ ル ゴ ム パ ッ キ ン 試 料 に つ い て 、圧 力( 減 圧 あ る い は 大 気 圧 )に よ り 発 生 ガ ス に 差 が 見 ら れ れた残存溶媒、酸化防止剤などの添加剤 が揮 発して検出されたと考えられた。 No.5 ま で の 検 出 時 間 で は 、 成 分 お よ び そ の 検 る か 、 2.1 の シ ス テ ム お よ び 熱 脱 離 GC/MS を 用 いて評価した。前処理条件を以下に示した。 1) 出 量 に 大 き な 差 は な か っ た が 、減 圧 下 の 方 が 高 い 傾 向 が 見 ら れ た 。 ま た 、 No.5 以 降 の 高 沸 点 側 で ・ 試 料 量 : 100mg は、減圧下においてヘキシルジフェニルアミン ・ 加 熱 温 度 : 120℃ (No.6) や オ ク チ ル ジ フ ェ ニ ル ア ミ ン (No.7) な ・加熱時間:4 時間 ど 高 沸 点 成 分 が 顕 著 に 検 出 さ れ た が 、大 気 圧 下 で ・ 圧 力 : 水 準 1( 減 圧 50Pa) 水 準 2( 大 気 圧 は定量下限未満であった。これらの差により、 10 5 Pa) トータル発生量は減圧下>大気圧下となった。 減 圧 下 で は 成 分( 特 に 高 沸 点 成 分 )の 揮 発 性 が ※大気圧での前処理は、窒素気流下で行った。 高 く な る こ と で 、発 生 量 が 大 き く な っ た と 推 察 さ れた。 得 ら れ た GC/MS ト ー タ ル イ オ ン カ レ ン ト ク ロ マ ト グ ラ ム ( TICC) を 図 3 に 、 定 性 ・ 定 量 結 果 まとめ 4. を表 1 に示した。 発 生 ガ ス の モ デ ル 試 験 で は 、温 度 、湿 度 、雰 囲 気 、圧 力 、時 間 な ど 、ガ ス の 発 生 す る 実 状 に 合 わ せて系を組むことが重要である。 今 回 、圧 力 を フ ァ ク タ ー と し て 、大 気 圧 と 減 圧 下の 2 水準にてモデル試験を行った。その結果、 減 圧 下 の 方 が 高 沸 点 成 分 の 発 生 量 が 多 く 、発 生 ガ スのトータル量も減圧下の方が多い傾向が認め られた。 紹 介 し た 手 法 で は 、 数 千 Pa 程 度 ( ダ イ ヤ フ ラ ム ポ ン プ レ ベ ル ) あ る い は 数 十 Pa 程 度 ( ロ ー タ リ ー ポ ン プ レ ベ ル )の 分 析 が 可 能 で あ る 。た だ し 、 分 析 対 象 成 分 は 、 数 千 Pa 程 度 の 場 合 ア ル カ ン 換 図3 GC/MS-TICC(ニトリルゴムの加熱発生ガス) 算 C6 か ら 、数 十 Pa 程 度 で は C7 あ る い は C8 か らとなる。 表 1 分析結果(ニトリルゴムの加熱発生ガス) No. 成分名 試料からの発生量 (μg/g) 弊 社 で は 、こ の 手 法 で 分 析 が 難 し い 水 や 二 酸 化 炭 素 な ど の 無 機 ガ ス 、低 沸 点 成 分 の 分 析 に つ い て 、 減圧下 大気圧下 高 分 解 能 FT-IR な ど 、別 手 法 で の 検 討 も 実 施 し て お り 、分 析 目 的 成 分 に 応 じ た 手 法 を 提 案 で き る よ う 、 1 Alcohol 53 32 2 Cyclohexylisothiocyanate 110 120 3 Amine compound 34 10 5. 4 3-Benzylpyridine +Diniphenylnitrosamine 130 78 1) 5 Naphthylamide + α 21 8.9 6 Hexyldiphenylamine 25 <2 7 Octyldiphenylamine 28 <2 TOTAL 750 450 体制を整えている。 参考文献 増補プラスチックおよびゴム用添加剤実用便覧 化学工業社 1987 氏名 矢野 寛子(やの 有機分析化学研究部 ひろこ) 有機分析化学第 2 研究室 好きな動物:猫 東レリサーチセンター The TRC Journal 2015 年 9 月号 ・2
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