海外危機管理における三現主義と三原則 三菱電機株式会社 海外安全対策センター長 本田博史 Honda, Hiroshi 企業の海外事業展開の拡大に伴い、新たな地 環境で活動し、そこにどんなリスクがあるか、 域での活動が増加する一方で、IS に代表され 実際どんなことに困っているかをこの目で、耳 るイスラム過激派組織によるテロの脅威は、従 で、肌で確認し、現地と一緒に問題解決を図っ 来比較的安全と言われていた地域にも影響が及 ている。また、現地で何かが発生した場合も、 び、様々なかたちでリスクが高まっている。こ 一度でもそこを訪問したことがあれば具体的な のような状況下、当社はこれまで以上に海外勤 イメージが湧き理解が早いため、現地との情報 務者、出張者の安全確保に日々努めている。そ 共有や事案への対応もスムーズに行える。 の活動の一端をご紹介したい。 最初の頃はリスクコンサルタントの専門家に 同行してもらい、確認すべきポイントや改善点、 「三現主義」で20カ国60拠点を訪問 アドバイスの仕方などを学び、これをベースに 自分なりの方法を模索してきた。これまでに現 当社は海外 35 の国と地域に 150 余りの拠点 地調査をしたところは、比較的リスクが高い地 や事務所を持ち、多くの駐在者および出張者を 域を中心に 20カ国・60 拠点になるが、新たに 派遣している。彼らに現地で安心して活動して 進出する地域もあり、現地の状況も変化するた もらうべく安全を確保し、健康を維持するため め、今後も継続していく予定である。 の支援を行うことが現在の私の役割だが、以前 現地では拠点責任者と面談し、リスクマネジ は長く生産技術関係の職務を担当し、その中で メント活動の状況をヒアリングするとともに、 「三現主義」を徹底的に教え込まれてきた。こ 情報・意見交換を行い、改善点や本邦側で必要 れは、ものづくりの世界で、 ①「現場」に足を運び、場を確認する 労働組合や産業医、子女教育相談の担当者に同 ②「現物」を手に取り、物を確認する 行してもらうこともある。それぞれの視点で現 ③「現実」をこの目で見て、事実を知る 地を見てもらいながら、駐在者との面談も行い、 すなわち、現場に赴き、現物を確認し、現実を 貴重なアドバイスを得ている。また、現地の在 認識した上で問題解決を図るという考えである。 外公館や病院、学校などを訪問し、駐在者が生 これを危機管理活動にも取り込み、可能な限 り現地を訪問して駐在者や出張者がどのような 28 な支援内容の確認などを行う。地域によっては 2015年12月号 活している地域の治安状況や、生活環境、衛生・ 医療環境、教育環境などの情報収集も行う。
© Copyright 2024 ExpyDoc