「母親の養育態度が自尊心および親和動機に与える影響について」猪田茉莉花１．目的本研究の目的は、母親の養育態度と自尊感情、および親和動機の関連を明らかにすることであった。今日までの研究から、母親の養育態度が養護的であれば子どもの親和傾向が高まり、過保護的であれば拒否不安が高まるということが考えられる。今日までの研究から、本研究では、①母親の養護的養育態度は子どもの自尊心を高める、②母親の過保護的養育態度は子どもの自尊心を低める、③母親の養護的養育態度は子どもの親和傾向を高める、④母親の過保護的養育態度は子どもの親和傾向を低める、⑤母親の養護的養育態度は子どもの拒否不安を低める、⑥母親の過保護的養育態度は子どもの拒否不安を高める、という 6 つの仮説を立てて研究を行った。 2．方法参加者は、大学生 205 名 (回答不備のあった 8 名を除く )で、その内訳は男性 148 名の女性 57 名であった。 PBI 質問紙、自尊感情尺度、親和動機尺度の 3 つの尺度を用いて質 1 問紙調査を行った。３．結果１）母親の養育態度と、自尊感情、および親和動機との関連性母親の養育態度 (養護・過保護 )と、自尊感情、および親和動機 (親和傾向・拒否不安 )のそれぞれの間で相関分析を行ったところ、養護的養育態度と自尊感情、養護的養育態度と親和傾向の間で有意な正の相関がみられた。また、過保護的養育態度と自尊感情、過保護的養育態度と親和傾向の間で有意な負の相関がみられた。２）自尊感情、および親和動機に対する養護態度の影響相関分析の結果をふまえて、単回帰分析を行ったところ、養護的養育態度と自尊感情の間に有意な正の影響、養護的養育態度と親和傾向の間に有意な正の影響がみられた。また、過保護的養育態度と自尊感情の間に有意な負の影響、過保護的養育態度と親和傾向の間に有意な負の影響がみられた。養護的養育態度は、子どもの自尊感情、親和動機を高めることがわかった。また、過保護的養護態度は、子どもの自尊感情、親和動機を低めることがわかった。４．考察結果から、①母親の養護的養育態度は子どもの自尊心を高める、② 2 母親の過保護的養育態度は子どもの自尊心を低める、③母親の養護的養育態度は子どもの親和傾向を高める、④母親の過保護的養育態度は子どもの親和傾向を低める、は成立した。このことから、養護的養育態度は子どもにポジティブな影響を与え、過保護的養育態度はネガティブな影響を与えるということが考えられる。よりよい子どもの成長を育むためには、過保護にならずに、子どもにさまざまな経験をできる環境を整えてあげることが大切であると考えられる。そして、その経験を積み重ねることによって、子どもは自分自身に価値を見出し、また、対人関係も積極的なものになるだろう。つまり、自尊感情、親和傾向の高まりにつながると考えられる。 3