見てグラフに表す比例教材の開発とその実践

見てグラフに表す比例教材の開発とその実践
~仲間とともに創り上げる算数をめざして~
三重大学教育学部附属小学校
服部 真一
1.授業のねらい
第 1 時では,あふれ出る水を見てグラフを作成し
問題解決型の授業の際,その多くは課題が提示さ
た.あふれ出ている水を見ながら
れ,自力解決をし,集団で練り上げて課題を解決し
も,ほとんどの子どもは,一直線
ていく.自力解決の中で,問題や気づきが生まれ,
の比例のグラフを書いた.しかし,
それを全体へ表出させ,集団で練り上げ深めていく.
あふれ出ている表し方に疑問をも
子どもの表現を追いながら,「伝え合う」子どもが,
つ子が現れ,その気づきがクラス
互いに影響し合い授業を創り上げていくことを「仲
に広がっていき,最終的に,変域
間とともに創り上げる算数」とし,検証する.
を意識して比例のグラフを書き理
2.内容
【自作装置】
解を深めた.第2時では,水槽の中に立方体のコン
(1)授業の視点
クリートを沈め,グラフを書かせていった.今回は
算数では高学年になるに従って,現実世界と算
前時とは異なり,装置は準備してはいるが,実際に
数の隔たりが大きくなってくることがある.しか
水を入れずに,まず,だいたいどのような形をした
し,より生活に近い問題を取り上げることで,子
グラフになるのか書きながら考えさせていった.そ
どもたちは表現しやすくなり,
練り上げによって,
の後,実際に現象を観察し,図1のようなグラフを
仲間とともに授業を創り上げていけると考える.
書き上げ理解を深めていった.第3時では小さい水
東京書籍「新しい算数 6 年生下」P,2 の問題.
直方体の形をした水槽に,1 分間に 4 ㎝の割合で
水が入る.このときの水を入れる時間を x 分,水
の深さを y ㎝とする.これを表やグラフに表せ.
槽をもとの水槽の中に固定し,第2時と同じように
進めていった.水位が変わらない時間帯があること
になかなか気が付かなかった子もいたが,実際に現
象を見ることで理解できた子が多かった.
この問題で表を完成させ比例の式を学習し,比
例関係を理解した後,グラフを作成するという流
れで学習は進む.しかし,水を入れ続ければいつ
かは水槽から水があふれ出す.しかし,誰一人と
して子どもたちは気が付かない.子どもたちの中
で,現実の世界と算数の世界がだんだん離れてい
ることに気が付かされた1つの事例であった.こ
の教材を視覚的に提示することで,再び小学校算
数を現実世界とのつながりを感じ,生活からイメ
ージできることを通して,仲間とともに創り上げ
る算数を実感させたいと考え,実践を行った.
(2)授業の実際
図1:第2時のグラ
図2:第3時の感想
3.まとめ
算数は現実世界と数学世界の橋渡しであると考
比例の単元を学習した後,発展問題として視覚
える.高学年の算数になるに従って,現実世界と
的に提示しながら,
グラフをかく学習を計画した.
算数の隔たりが大きくなってくるが,
今回の場合,
高さ 20 ㎝の水槽に,8 秒で 1 ㎝の深さになるよう
あふれる水槽を実際に見せ,グラフに表したこと
に水を入れていく.水位が 20 ㎝を超えたら水が
で,比例の学習をさらに深くすることができたと
あふれ出だす.そのために次のような装置を自作
思う.またこの学習が,子どもたちの表現によっ
し実際に見せながら,時間をx秒,水の深さをy
て進められていったことも成果であろう.なお,
㎝とし,グラフに表す学習を進めていった.
本実戦は第9回関西算数授業研究会でも実践した.