月次県内経済

月次県内経済
概 況
横這い圏内ながら持ち直しの動き
〈9月〉生産面では大手・中堅造船は既往受注により概ね高めの操業を維持、重電機械も堅
調、電子部品は持ち直しの動き続く。需要面では、公共工事(請負金額)
、新設住宅着工戸
数とも前年割れ。個人消費では大型小売店販売額が前年を上回り、乗用車(登録車)販売台
数がプラスに転じた。観光面は、世界遺産やクルーズ寄港増もあって主要施設の入場者数・
宿泊者数とも増勢。雇用面では有効求人倍率の上昇が足踏みも0.9倍台での推移。企業業倒
産件数は低水準続く。10月入り後も、観光消費面に追い風続く。
造 船
大手・中堅、地場中小とも高めの操業を維持
大手・中堅造船では、バルク船の新造需要は市況を反映して低調、一方でタンカーやガス運搬
船などの受注がみられる。生産面では客船やガ
ス運搬船、省エネ船など高付加価値船を中心に
受注残高を確保していることもあり、高めの操
業を維持している。
地場中小造船でも、既往の受注を背景に高め
の操業を続けているほか、更新需要もあって貨
物船や漁船、官庁船などの受注を確保している。
機 械
重電機械は堅調、電子部品は持ち直しの動きが続く
重電機械では、原動機(タービン、ボイラー、エネルギー関連等)は新興国の需要を背景とし
た海外プラント関連に加え、国内でも一定の受
注を確保。電動機(大型、中小型モーター)は
やや弱めの生産。列車空調装置は受注持ち直し
の傾向。
電子部品では、海外との競争など厳しい環境
が続くも、需要回復から生産持ち直しの動きが
続いている。
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月次県内経済
小売商況
概ね横這い圏内の動き
小売商況をみると、9月の県内大型小売店販売額が前年を上回り、乗用車販売では登録車が下
げ止まり、サービス消費面の旅行取扱高は小幅前年割れ続く。なお、10月度の大型店売上げも比
較的堅調に推移。
9月の大型小売店販売額(百貨店・スーパー36店、九州経済産業局調べ)は83億円、前年同月
比1.3%増(同一店舗比較)と3カ月連続のプラス。品目別では、衣料品は主力の婦人服等が0.3%
増、紳士服洋品も5.0%増ながら、身回り品が7.3%減となり、全体では0.7%減となったが、飲食
料品が1.9%増、雑貨・家庭用品等も2.1%増といずれも堅調で6カ月連続のプラス。このうち百
貨店は、衣料品が前年割れも食料品、雑貨等が堅調で、催事や外国人客消費も一部底上げ。一方、
スーパー・大型店等でも食料品が堅調に推移。なお、10月度も、百貨店・大型店等では前年を上
回って推移している。
乗用車販売では、9月の新規登録台数は2,020台、前年同月比6.8%増と昨年8月以来のプラス
となった。このうち、普通車は945台、7.4%増、小型車も1,075台、6.2%増となった。一方、軽
乗用車は税負担増もあって1,845台、31.5%減(10
月、27.5%減)と大幅減が続く。また、軽を含
む総販売台数では3,865台、15.7%減となり、軽
の比率も50%割れ続く。
サービス消費面では、9月の県内主要旅行業
者の旅行取扱高が2.7%減と小幅減続く。国内
旅行が4.5%減となったが、海外旅行は1.9%増
と10カ月振りにプラスに転じた。
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水 産
取扱量、金額ともに増加
9月の県内3魚市と県漁連の取扱い状況をみると、取扱量が2.2万トン、前年同月比13.9%増、
取扱金額も54億円、同11.0%増となった。
また、魚種別の水揚げ(日本遠洋旋網漁業協
同組合調べ)をみると、アジは数量が前年同月
比4倍超となり、単価が44.1%下落したものの、
金額は2.3倍となった。一方、サバは数量が82.0
%増加し、単価が20.4%下落したものの、金額
は44.9%増加した。
観 光
主要施設の入場者数、宿泊客数ともに増加
9月の県内観光をみると、6年振りのシルバーウィークもあって、主要観光施設の入場者数、
主要宿泊施設の宿泊客数ともに増加した。
主要観光施設等(13施設)の入場者は618千人、前年同月比23.7%増加した。地区別にみると、
県南地区の長崎市では世界文化遺産があるグラバー園(38.3%増)が9月としては17年振りの月
間10万人超えとなり、長崎原爆資料館(7.1%増)も好伸、開館以来の入館者数が1,500万人に達
したが、長崎歴史文化博物館(7.8%減)は減少した。一方、島原半島では島原城(26.5%増)が
増加に転じ、雲仙仁田道(0.3%増)も微増となったものの、雲仙岳災害記念館(4.7%減)は減
少した。県北地区では、「秋の花と光と音楽の王国」を展開し、新アトラクション施設「I.S.ラビ
リンス」を設置するなどしたハウステンボスが好調を維持、九十九島パールシーリゾート(15.1%
増)と平戸城(50.6%増)も増加した。離島地区では堂崎天主堂(58.9%増)
、入館者数が60万人
を突破した一支国博物館(12.3%増)が増加、万松院(0.6%減)は微減となった。
県内主要宿泊施設(44社、日本銀行長崎支店
調べ)の宿泊客数は、前年同月比17.5%増加し
た。このうち、県南地区13.5%増、県北地区
22.4%増といずれも2桁増。雲仙・小浜の各観
光協会の調べによると雲仙地区の宿泊客数も28
千人、17.2%増、小浜地区も12千人、44.7%増と、
それぞれ好天にも恵まれたシルバーウィークの
恩恵を受けた形となった。
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公共工事
請負金額の前年割れ続く
9月の県内公共工事(西日本建設業保証取扱分)をみると、請負件数は446件、前年同月比1.6%
増と2カ月振りのプラス、請負金額は161億円、同14.0%減と2カ月連続で前年を下回った。
主要発注者別の請負金額では、
「県」(80億円、22.5%増)が前年を上回ったものの、
「国」(9億
円、35.5%減)と「市町」(49億円、45.1%減)は前年割れとなった。
また、地区別の請負金額をみると、前年を上回ったのは、諫早地区(36億円、4.7%増)
、島原
地区(20億円、25.3%増)
、田平地区(14億円、1.3%増)など5地区。一方、長崎地区(34億円、
40.4%減)
、県北地区(22億円、17.6%減)など
5地区では前年を下回った。
同月の主な大型工事は、長崎市発注の新西工
場建設工事(54億円)、長崎県発注の長崎県庁舎
行政棟新築工事(26億円)
、大村市発注の市立
大村市民病院改築工事(16億円)
、長崎県発注
の長崎県警察本部庁舎新築工事(15億円)など。
住宅建設
3カ月連続の前年割れ
9月の新設住宅着工戸数は366戸、前年同月比37.4%減と3カ月連続で前年を下回った。
利用区分別にみると、持家(245戸、2.0%減)は小幅減にとどまったものの、貸家(94戸、
69.3%減)が大幅減となり、分譲(26戸<うち
マンションは0戸>、10.3%減)、も前年を割
り込んだ。
主な市郡別(県建築課調べ)では、長崎市
(87戸、56.1 % 減 )
、 佐 世 保 市(74戸、41.7 %
減)、大村市(65戸、36.9%減)、諫早市(33戸、
31.3%減)いずれも前年を大きく下回った。
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雇 用
緩やかな改善傾向が続く
9月の県内の有効求人倍率(季節調整済)は前月を0.01ポイント下回る0.96倍。また、全国の
有効求人倍率は前月を0.01ポイント上回る1.24倍となった。
新規求人数は9.5千人、前年同月比5.2%増となり、10カ月連続のプラスとなった。形態別では、
一般求人が8.0%増と5カ月連続のプラス、パート求人も1.4%増となり、9カ月連続の増加。主
な業種別にみると、製造業(29.9%増)が大幅増となり、サービス業(19.7%増)、運輸業(15.3%
増)でも2桁増、建設業(3.7%増)も前年を上回ったが、飲食店・宿泊業(8.2%減)
、卸売・小
売業(6.4%減)、医療、福祉(2.3%減)は前年を下回った。一方、新規求職者数は6.8千人、前
年同月比8.3%減と25カ月連続の減少。形態別では、一般求職者が8.6%減、パート求職者が7.8%
減となった。
また、有効求人数は25.3千人、前年同月比6.7%増と9カ月連続のプラス、有効求職者数は25.7
千人、前年同月比5.0%減と25カ月連続の減少。
就職件数については、2.7千件、前年同月比
3.1%減と5カ月連続の減少。また、雇用保険
受給者実人員は6.0千人、前年同月比9.1%減と
なり32カ月連続で減少した。
県内の雇用データをみると、緩やかな改善傾
向が続いている。
企業倒産
件数、金額とも低水準
10月の県内の企業倒産件数(東京商工リサー
チ調べ)は3件、前年同月比では7件の減少。
一方、負債総額は前年同月比99.4%減の0.6億円
となり、前年を大幅に下回った。
倒産件数を業種別にみると、サービス業が2
件、建設業が1件。また、倒産原因は3件とも
「販売不振」。
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