県内企業と韓国とを結ぶ長崎県ソウル事務所

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県内企業と韓国とを結ぶ長崎県ソウル事務所
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県内企業と韓国とを結ぶ長崎県ソウル事務所
長崎県ソウル事務所
長崎県は、海外事務所を中国・上海と韓国・ソウルの
2カ所に構えている。このうち、2013年5月に開設され
た長崎県ソウル事務所(鈴木史朗所長、現地スタッフ2
人)は、韓国の首都ソウルの光化門(クァンファムン)
近くという利便性のよい場所にあり、「人的ネットワー
鈴木所長(右)と現地スタッフ
クの構築」、「観光客の誘致」、「県産品の輸出促進」、「県
内企業の海外展開支援」などの業務を行っている。
ここでは、長崎県ソウル事務所の主要業務の1つ「県
内企業の海外展開支援」に焦点を当ててみた。
韓国における県内企業の活動をサポート
ソウル事務所では、県内企業から「韓国企業と取引したいので紹介してほしい」、「韓国企業と
の間を取り持ってほしい」などの相談があった場合、自ら選定した韓国企業やジェトロ(日本貿
易振興機構)が推薦する韓国の企業を紹介することができる。また、交渉が軌道に乗るまでの間
は、スタッフが随時同行するなどの初動サポートも行う。他にも、韓国の法律や会計、貿易に関
する相談については、それらに精通している韓国企業3社と提携しており、対応することができる。
ソウル事務所を活用した県内企業
ソウル事務所を通じて韓国との間にビジネスチャンスを広げた県内企業として、日本耐蝕㈱(本
社:平戸市)とエビスマリン㈱(同:長崎市)の事例が挙げられる。日本耐蝕㈱は、韓国企業
「WOOJIN I&S社」に対して自社保有技術の移転(供与)を行っており、また、エビスマリン㈱は、
韓国政府関係研究機関「韓国科学技術研究院(KIST)
」との共同事業によりアオコ発生防止装置
の実証実験で一定の成果を挙げている。
このうち、日本耐蝕㈱のケースをみると、韓国におけるビジネスチャンスを広げるべく、2014
ながさき経済 2016.4
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年にまず、工場建設のための土地探しを長崎県ソウル事務所に依頼した。この工場用地について
は価格面で折り合いがつかなかった。そこで、次に同社が有する特殊ライニング技術“ロトフロ
(注)
の技術供与での韓国進出に方針転換を図り、県ソウル事務所のネットワークを通じて紹介
ン”
された韓国企業WOOJIN I&S社と15年に技術供与の契約を締結、WOOJIN I&S社が新たに工場
を建設するに至った。また、日本耐蝕の技術は、韓国半導体大手2社の品質規格にも合格した。
これについて、同社の川島祐二社長は「これでアジアへの事業展開のスタートを切ることがで
きた。近い将来の海外他地域への進出も見据えて、事業全体の伸展を見ながら、アセアンからイ
ンドに至るまでのロトフロン技術取得のニーズに応えたい」としている。
注)大型タンクや配管類の内面に継ぎ目なしのフッ素樹脂皮膜を焼付けた製品の総称。近年、原発の汚染水処理用機
器類や外国航路船のバラストタンク、新エネルギー関連機器類と、その用途の裾野が広がっている。
ソウル事務所の利活用
ソウル事務所を利活用した県内企業は、これまでのところ数社にとどまっている。そこで、同
事務所の鈴木所長は、自ら県内各地の商工会や商工会連合会などの経済団体、韓国と関係のある
ビジネスを行っている県内企業などに対して、同事務所の利用を呼びかけている。
鈴木所長は、「県内企業からソウル事務所への問い合わせはまだ少なく、長崎県には海外進出
を計画する企業は非常に少ないとの印象がある」と語っており、「ソウル事務所の方から韓国の
ビジネス情報を発信するなどして、県内企業の需要を喚起していきたい」としている。
おわりに
長崎県には、この2つの海外拠点以外にも中国ビジネスサポートデスク(北京市、上海市、大
連市および青島市)と東南アジアビジネスサポートデスク(ベトナム、インドネシア、ミャンマー
およびカンボジア)があり、中国と東南アジアにおける県内企業への支援体制を整えている。
一般的に、長崎県内企業がビジネスチャンスを広げたい場合、行政の支援組織を通じて交渉に
臨むことで、相手からの信頼も増すと思われる。今後、長崎県が整備している海外支援体制を活
用して、海外とのビジネスに積極的にチャレンジする県内企業が増えることを期待したい。
■韓国への事業展開における疑問相談等は
長崎県ソウル事務所
または長崎県国際課
電話 010-82-2-733-7398
電話 095-895-2081
HP http://seoul-nagasaki.com/ja/
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ながさき経済 2016.4
HP https://www.pref.nagasaki.jp/section/kokusai