月次県内経済

月次県内経済
概 況
横這い圏内ながら持ち直しの動き
〈15年12月〉生産面では大手・中堅造船は既往受注により概ね高めの操業を維持、重電機
械も堅調、電子部品は弱めの動きも。需要面では、公共工事請負金額が減少傾向ながら、新
設住宅着工戸数は3カ月連続増。個人消費では大型小売店販売額が前年を下回り、乗用車(登
録車)販売台数はマイナス幅縮小。観光面は世界遺産やクルーズ寄港増もあって主要施設の
入場者数・宿泊者数とも堅調。雇用面では有効求人倍率が1.0倍台が続き、県内企業では人
手不足の状況。企業倒産件数は引き続き低水準。1月入り後は、天候不順もあって消費低調
も、観光消費面は追い風続く。
造 船
大手・中堅、地場中小とも高めの操業を維持
大手・中堅造船では、バルク船の新造需要は市況を反映して低調、一方でタンカーやガス運搬
船などの受注がみられる。生産面では客船やガ
ス運搬船、省エネ船など高付加価値船を中心に
受注残高を確保していることもあり、高めの操
業を維持している。
地場中小造船でも、既往の受注を背景に高め
の操業を続けているほか、更新需要もあって貨
物船や漁船、官庁船などの受注を確保している。
機 械
重電機械は堅調、電子部品は弱めの動きも
重電機械では、原動機(タービン、ボイラー、
エネルギー関連等)は新興国の需要を背景とし
た海外プラント関連に加え、国内でも一定の受
注を確保。電動機(大型、中小型モーター)
、
列車空調装置は受注持ち直しの傾向。
電子部品では、海外との競争など厳しい環境
のなか、一部最終製品需要の動向から、やや弱
めの動きもみられる。
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小売商況
概ね横這い圏内の動き
小売商況をみると、15年12月の県内大型小売店販売額は前年を割り込み、乗用車販売もマイナ
ス、サービス消費面の旅行取扱高は前年を上回った。なお、16年1月度の大型店売上げについて
も、天候不順もあって低調に推移。
12月の大型小売店販売額(百貨店・スーパー36店、九州経済産業局調べ)は123億円、前年同
月比1.2%減(同一店舗比較)と2カ月連続のマイナスとなった。品目別では、飲食料品が0.2%増、
雑貨・家庭用品等は1.3%増となったが、気温高め推移により季節商材が低迷した衣料品は7.8%減、
うち主力の婦人服等が4.8%減、紳士服洋品6.5%減、身回り品15.6%減。このうち百貨店は、食
料品が比較的堅調で、歳暮ギフトも前年を上回ったものの、主力の婦人衣料が振るわず、外国人
客消費も頭打ち。一方、スーパー・大型店等でも食料品が堅調なから、衣料品等の動きが鈍く低
調。なお、1月度は、低温・降雪など天候不順もあって、百貨店・大型店等では前年をやや下回
る状況。
乗用車販売では、12月の新規登録台数は1,492台、前年同月比4.5%減と引き続きマイナスも比
較的小幅減。このうち、普通車は724台、10.5%増と3カ月振りにプラスとなったが、小型車が
768台、15.3%減と振るわず。一方、軽乗用車
は1,489台、38.6%減(1月、21.7%減)と大幅
減が続く。また、軽を含む総販売台数では2,981
台、25.3%減となり、軽の比率も50%割れ。
サービス消費面では、12月の県内主要旅行業
者の旅行取扱高が7.0%増とプラスに転じた。
このうち海外が33.3%増となり、国内旅行もマ
イナス幅が1.8%にとどまった。
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水 産
取扱量、金額ともに増加
12月の県内3魚市と県漁連の取扱い状況をみると、取扱量が3.5万トン、前年同月比32.9%増、
取扱金額も77億円、同13.1%増となった。
また、魚種別の水揚げ(日本遠洋旋網漁業協
同組合調べ)をみると、アジは数量が前年同月
比40.8%増加し、単価も5.8%上昇したことから、
金額は49.0%増加した。一方、サバは数量が
47.6%増加し、単価が9.7%下落したものの、金
額は33.3%増加した。
観 光
主要施設の入場者数は微増、宿泊客数は増加
12月の県内観光をみると、主要観光施設の入場者数は微増となり、主要宿泊施設の宿泊客数も
増加した。
主要観光施設等(13施設)の入場者は594千人、前年同月比0.4%の微増となった。地区別にみ
ると、県南地区の長崎市では、国際会議の開催などからグラバー園(7.6%増)と長崎原爆資料
館(22.5%増)はともに増加したものの、昨年同時期開催の「アニメサザエさん展」の反動によ
り長崎歴史文化博物館(37.0%減)は減少した。また、島原半島では冬の風物詩「霧氷」の発生
もあり雲仙仁田道(53.2%増)が大幅増、島原城(30.5%増)と雲仙岳災害記念館(1.8%増)も
増加した。一方、県北地区をみると6年目を迎えた冬期恒例のイベント「光の王国」を開催中の
ハウステンボスが一服、九十九島パールシーリゾート(5.7%減)も減少した。なお、平戸城の増
加は耐震工事のため前年同時期に全館休館していたことによる。離島地区では特別企画展「ルー
ヴル美術館の銅版画展」を開催した一支国博物館(44.7%増)が大幅に増加し、堂崎天主堂(25.4%
増)と万松院(11.7%増)もそれぞれ増加した。
県内主要宿泊施設(44社、日本銀行長崎支店調
べ)の宿泊客数は2.3%増加した。このうち、県
南地区は世界遺産と夜景観光の好調に加え、客船
建造に従事する職員増から11.7%増加したが、県
北地区は5.7%減少した。また、雲仙・小浜の各
観光協会の調べによると雲仙地区の宿泊客数は31
千人、12.7%増加し、小浜地区も12千人、28.3%
増加した。
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公共工事
件数、請負金額とも減少
12月の県内公共工事(西日本建設業保証取扱分)をみると、請負件数は397件、前年同月比9.6%
減と2カ月振りのマイナス、請負金額は80億円、同10.0%減と2カ月振りに前年を下回った。
主要発注者別の請負金額では、「国」
(12億円、4.0倍増)が前年を上回ったものの、
「県」(25
億円、8.1%減)と「市町」(41億円、27.0%減)は前年割れとなった。
また、地区別の請負金額をみると、前年を上回ったのは、県北地区(20億円、10.6%増)など
3地区。一方、長崎地区(19億円、14.8%減)
、
対馬地区(6億円、24.5%減)、島原地区(6億
円、42.8%減)など7地区では前年を下回った。
同月の主な大型工事は、九州防衛局発注の相
浦訓練場新設建築追加工事(4億円)
、長崎県
長崎振興局発注の一般国道499号道路改良工事
(1億円)、長崎市発注の尾上町ほか汚水管推進
工事(1億円)など。
住宅建設
持ち直しの動き
12月の新設住宅着工戸数は493戸、前年同月比10.8%増と3カ月連続で前年を上回った。
利用区分別にみると、分譲(51戸<うちマン
ションは18>、37.0%減)が前年を割り込んだ
ものの、持家(248戸、23.4%増)と貸家(193戸、
18.4%増)では前年を上回った。
主な市郡別(県建築課調べ)では、佐世保市
(136戸、49.5%増)、大村市(61戸、5.2%増)、
西彼杵郡(31戸、6.2倍増)などで前年を上回り、
長崎市(126戸、6.0%減)では前年を割り込んだ。
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雇 用
緩やかな改善傾向が続く
12月の県内の有効求人倍率(季節調整済)は前月と同水準の1.01倍。また、全国の有効求人倍
率は前月を0.02ポイント上回る1.27倍となった。
新規求人数は7.6千人、前年同月比2.6%増となり、13カ月連続のプラスとなった。形態別では、
一般求人が4.9%増と8カ月連続のプラス、パート求人は1.1%減となり、12カ月振りの減少。主
な業種別にみると、運輸業(21.4%増)、製造業(13.6%増)で2桁増となり、サービス業(9.0%
増)、医療・福祉(6.8%増)なども前年を上回った。もっとも、飲食店・宿泊業(24.8%減)
、卸
売・小売業(7.7%減)
、建設業(2.3%減)は前年を下回った。一方、新規求職者数は4.7千人、前
年同月比9.7%減と2カ月振りの減少。形態別では、一般求職者が13.8%減、パート求職者が1.3%
増となった。
また、有効求人数は24.4千人、前年同月比11.8%増と12カ月連続のプラス、有効求職者数は22.3
千人、前年同月比5.4%減と28カ月連続の減少。
就職件数については、2.1千件、前年同月比
2.6%減と8カ月連続の減少。また、雇用保険
受給者実人員は5.0千人、前年同月比9.2%減と
なり35カ月連続で減少した。
県内の雇用データをみると、緩やかな改善傾
向が続いている。
企業倒産
低水準続く
1月の県内の企業倒産件数(東京商工リサーチ調べ)は4件、前年同月比では2件の減少。一
方、負債総額は宿泊業の大型倒産が発生したこ
とから、同7.9倍増の24億円となり、前年同月
を大幅に上回った。なお、負債金額が1億円以
上の倒産は1件。
倒産件数を業種別にみると、建設業、小売業、
サービス業、運輸業がそれぞれ1件。また、倒
産原因は「販売不振」 が3件、「投資過大」が
1件。
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