中国中央病院 産婦人科病棟 2015 年 8 月号 VOL ・ 208 8 月に入り、暑さも本格的になってきました。皆様、体調はいかがですか? 近年、喫煙人口は公共の場での完全禁煙エリアの拡大やたばこの大幅増税、健康に対する意識の高まりなど で、厚生労働省の調べで20.9%と減少傾向ですが、妊娠、出産、育児の時期にあたる20~30歳代の女性では、 10~13%で推移しており、すでに先進国並みの喫煙率になっていると言われています。 「妊婦はたばこを吸ってはいけない」と言われていますが、それはなぜなのでしょうか?わかってはいるけ どやめられないという人もいらっしゃるかもしれません。 そこで、今月は「妊娠とたばこについて」一緒に考えてみましょう。 妊娠中にたばこを吸うとどうなるの 赤 ち ゃ ん へ の 影 響 ・妊娠中に喫煙していると、低出生体重児が生まれてくることがよく知られています。それは、たばこに含 まれるニコチンが原因で子宮血管が収縮し、胎児への血液供給が阻害されます。非喫煙者に比べて、 赤ちゃんは約 200 g小さく生まれるといわれています。また、出生体重の小さい赤ちゃん程、将来肥満に なりやすく、高血圧や糖尿病などの成人病を発症しやすくなります。 ・喫煙者に比べて、流産の頻度が 1.5 倍も高くなり、早産の確率も喫煙本数に比例して高くなるといわれて います。また、赤ちゃんが生まれる前に胎盤が剥がれてしまうこと(常位胎盤早期剥離)が起こりやすく なり、これは母子共に危険な状態になります。 ・赤ちゃんが何の前触れもなく突然死亡してしまうこと(乳幼児突然死症候群: SIDS) の大きな要因のひと つも喫煙であり母親が吸ったたばこの中のニコチンは、母乳に分泌されます。 その母乳を飲んだ赤ちゃんが不機嫌、不眠、嘔吐、下痢などのニコチン中毒症状が現れることも報告され ています。 た ば こ が も た ら す < < 不 幸 の 連 鎖 > > 妊娠中に喫煙すると・・・ 「生まれてきた子供の知能が低下する」「落ち着きのない子になりやすい」 「問題行動をおこしやすい」などのデータが出ています。 こういう子どもは、育児困難から虐待を受けやすいといわれています。 よく「子どもの体にたばこの火を押し付けて虐待した」というニュースを聞きますが、それは偶然ではな く、たばこと虐待の間には深い関係があり、子どもを虐待する親の多くは喫煙者だといわれています。 母 体 へ の 影 響 ・非喫煙者に比べて 4.2 倍の割合で肺癌になりやすく、また子宮癌を発症する確率も 2 倍と高くなっていま す。たばこを吸うと、体内の細胞を傷つけ、加齢変化を促す「体内活性酵素」が発生し、シワやしみの増加 や、くすみなどの肌トラブルを起こします。 今 か ら で も 遅 く は あ り ま せ ん ! ・禁煙は本人の「絶対にやめよう」という意志が大切です。妊娠を機に是非、禁煙を成功させましょう。ライタ ーや灰皿などたばこに関係するものは捨てましょう。 ・禁煙生活では一緒に禁煙する仲間を作ると励みになります。妊婦仲間やご主人と協力して一緒に禁煙をしまし ょう。 ・たばこを吸う代わりにガムを噛んだり、散歩をしたり、音楽を聴くなどのストレス解消法を見つけましょう。 ・禁煙を始めると、体内からニコチンが減っていき、体がニコチンを要求し始めます。それに勝つには、 例えば 編集担当:信岡 赤ちゃんの超音波写真を持ち歩くなどして、常に赤ちゃんをイメージしながら、上手に気分転換を図りましょ う。 母 親 学 級 の お 知 ら せ 8 月 5 日(前期)12日・26日(後期) 9 月 2 日(前期) 9 日・16日(後期) 講堂 AB:13 時30分~ 予約は不要です。 編集担当:信岡 ←祝日の関係で第 3 水曜日です。
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