対ジンバブエ共和国 国別援助方針(案)

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対ジンバブエ共和国 国別援助方針(案)
2016 年 3 月
1. 援助の意義
ジンバブエは、2000 年以降、土地改革に端を発した極度の経済混乱が生じ、食料・
物資の深刻な不足等により国民生活は悪化した。その後、2009 年に複数外貨制が導
入され、政治・経済状況は一定の落ち着きを見せているものの、引き続き国家財政は
低迷し、行政サービスも低水準のままとなっている。
一方、同国は、地政学的に南部アフリカ地域の中心部に位置し、交通及び送電等の
要所であるとともに、豊富な鉱物資源や教育レベルの高い人的資源等に恵まれ、また、
かつては「アフリカの穀倉庫」とも呼ばれたほどの広大かつ肥沃な平地を有し、農業開
発の潜在力も高いことから、同国に対する日本企業の関心は高まっている。
2013 年に、同国政府は、
「ジンバブエ持続的な社会経済移行指針(Zimbabwe Agenda
for Sustainable Socio-Economic Transformation: ZIMASSET)」を策定し、国内の経済
社会開発に取り組んでいる。また、SADC(南部アフリカ開発共同体)の枠組みで南
部アフリカ地域の経済統合が進められている中で、ジンバブエは同地域の地理的要衝
に位置することから、同国の流通やインフラ整備の停滞が SADC 地域経済に与える影
響の大きさに鑑み、同国が同指針に基づき持続可能な開発を実現することは、南部ア
フリカ地域が安定的で均衡ある発展をするために不可欠である。かかる観点から、こ
うした同国の取組を支援することは、二国間関係の強化のみならず、南部アフリカ地
域全体の安定と繁栄に向けて、援助の意義は大きい。
2. 援助の基本方針(大目標):ZIMASSET に資する持続可能な開発
ジンバブエは、2013 年に策定した ZIMASSET に基づき、持続的な社会経済への移
行を目指し、インフラ整備、人的資源・天然資源開発、食料安全保障及び貧困削減に
取り組んでいる。我が国は、同指針に基づき、同国が持続可能な開発を達成できるよ
う、以下の分野への支援を重点的に展開していく。
3. 重点分野(中目標)
(1) 南部アフリカ地域経済への統合の円滑化
ジンバブエを含め南部アフリカ地域の経済統合が進められている中、内陸国の多い
当該地域が安定的に均衡ある発展を達成するには、同国の有する鉱物資源や農産物等
の地域資源の円滑な供給等に向けて、域内の流通促進と広域インフラ整備が喫緊の課
題となっている。同国と周辺国を結ぶ流通の円滑化や広域インフラの整備等の推進を
支援し、当該地域経済の統合を阻害する様々な要因の改善を支援していく。
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(2) 豊富な資源の有効活用
ジンバブエは、クロム鉱、プラチナ、石炭など多くの恵まれた鉱物資源のほか、世
界有数の観光地であるビクトリアの滝などの観光資源、農業に適した広大な台地や肥
沃な土壌、高い教育レベルの人的資源を豊富に有しており、これらを有効に活用する
ことができれば、経済成長を図ることが期待できる。かかる観点から、同国の豊富な
資源を有効活用できるよう、民間セクター開発分野での人材育成を行うとともに、農
業・農村振興、コミュニティベースの観光開発等を支援していく。
(3) 貧困層住民に対する人間の安全保障の確保に向けた支援
持続可能な開発を達成するためには、2000 年以降の経済混乱等で悪化した国民の
生活水準の早期回復を含め、貧困層住民も経済的利益を享受できるような健全かつ平
等な社会が構成される必要がある。我が国としては、人間の安全保障の観点から、妊
産婦及び乳幼児の死亡率の低下等に向けた保健分野での取組に加え、安全な水へのア
クセスや衛生環境の改善、近年の気候変動による影響の緩和による食料安全保障の確
保に向けた取組を支援していく。さらに、ジンバブエ・モザンビーク国境付近に住む
住民の生命や生活に対して大きな脅威となっている地雷の除去にも引き続き取り組
む。
4. 留意事項
二国間経済協力を本格的に再開するに当たっては、ジンバブエにおけるガバナンス
の向上、民主化の進展、基本的人権の尊重等に留意するとともに、ジンバブエ政府の
財政状況を勘案しつつ、その実施・維持管理体制の強化も併せて慎重に検討していく。
(了)
別紙
事業展開計画
国別援助方針 別紙
対ジンバブエ共和国 事業展開計画(案)
2016年 3月 現在
基本方針
(大目標)
重点分野1
(中目標)
ZIMASSET(ジンバブエ持続的な社会経済移行指針)に資する持続可能な開発
南部アフリカ地域経済への統合の円滑化
【現状と課題】
ジンバブエは2008年のハイパーインフレによる極度の経済混乱の後,状況は一定の落ち着きを見せているものの依
然として政府財政は低迷しており,インフラの維持管理は困難な状況である。南部アフリカ地域の経済統合が進めら
れている中,同地域の地理的中心に位置する同国の流通やインフラ整備の停滞は,同国の持続可能な開発が阻害され
るだけにとどまらず,南部アフリカ全体の円滑な発展をも阻害している。
開発課題
(小目標)
南部アフリカ地域
経済への統合の促
進
【開発課題への対応方針】
南部アフリカの中心に位置するジンバブエを当該地域経済に円滑に統合させることを主目
的とし,同国と周辺地域を結ぶ流通の円滑化や広域インフラの整備等南部アフリカ地域経済
の統合を阻害する様々な要因の改善に取り組む。
実施期間
協力プログラム名
流通の円滑化
広域インフラ整備
協力プログラム概要
案件名
国境のOSBP化や南北回廊等のイン
フラ整備の支援により,南部アフリカ チルンド橋梁建設計画フォローアップ協力
地域の流通の円滑化を図る。
TICADVフォローアップの一つで 南部アフリカパワープール情報収集確認調査
ある広域マスタープラン「南部アフリ
カ地域電力網整備」等広域インフラ整
ODAアドバイザー
備に係る支援を行う。
スキーム
2014
年度
以前
2015
年度
2016
年度
2017
年度
支援額
2018
年度
2019
年度
備考
(億円)
F/U
開発調査
個別専門家
南部アフリカ広域案
件
重点分野2
(中目標)
豊富な資源の有効活用
【現状と課題】
【開発課題への対応方針】
ジンバブエには鉱物資源のほか,世界有数の観光地であるビクトリアの滝などの観光資源,農業に適した広大な台 官民連携も視野に入れながら,同国の有する豊富な資源を有効活用できる産業を可能な限
地・肥沃な土壌といった土地資源,高い教育レベルの人的資源を豊富に有しており,これらを有効に活用することが り振興させていくことに資する支援に取り組む。
できれば,限られたリソースで極めて効果の高い経済成長を図ることができるはずであるが,しかるべき資源の有効
活用ができないために経済状況は益々悪化している。
実施期間
協力プログラム名
開発課題
(小目標)
協力プログラム概要
案件名
灌漑開発管理アドバイザー
高いポテンシャルを有する農業資源を
農業資源の有効活用 有効活用するため,灌漑整備及び市場 ニャコンバ灌漑開発計画
各種資源の有効活
対応型農業の促進等を支援する。
用のための産業振
興
SHEP研修
ABEイニシアティブ
高い教育レベルを有する人的資源を有
官民連携を視野に入
効活用するため,官民連携を視野に課 民間セクター開発分野の課題別研修他
れた人的資源の有効
題別研修,青年海外協力隊等による支
活用
援を行う。
産業(KAIZEN)等の分野における青年海外協力隊及びシニア海外ボランティア
スキーム
2014
年度
以前
2015
年度
個別専門家
無償
課題別研修他
国別研修
課題別研修他
JOCV/SV
豊富な観光資源を有効活用するため,
観光資源の有効活用 コミュニティベースの観光開発を支援 貧困削減に資するコミュニティ・ベースド・ツーリスト計画
する。
開発調査
2016
年度
2017
年度
支援額
2018
年度
2019
年度
備考
(億円)
重点分野3
(中目標)
貧困層住民に対する「人間の安全保障」の確保に向けた支援
【現状と課題】
真に持続可能的な開発経済成長を達成するためには貧困層を含めて国民一人ひとりがその経済的利益を享受できる
ような健全かつ平等な社会を構成する必要があるが,そのためにも,まずは,2000年以降の経済混乱等で悪化し
た国民の生活水準を早期に回復させる必要がある。また,1970年代の独立闘争時に当時の白人政権が埋設した多
くの地雷がモザンビークとの国境付近に残っており,これが付近の住民の生命や生活に対する大きな脅威となってい
る。
【開発課題への対応方針】
同国の緊急課題である妊産婦及び乳幼児の死亡率の低下への取組に加え,安全な水へのア
クセスや衛生環境の改善を目指した地方部での給水や都市部での下水処理の改善を中心とし
た取組,さらには食料安全保障を確保すべく近年の異常気象が国内農業生産に及ぼす影響を
緩和するための取組を積極的に支援する。また,地雷の除去に向けた取組を支援する。
実施期間
協力プログラム名
開発課題
(小目標)
「人間の安全保
障」の確保
協力プログラム概要
案件名
母子栄養管理強化
同国の経済混乱等で悪化した国民の生
活水準を早期に回復させるため,保
保健,水・衛生面 健,水・衛生など「人間の安全保障」 HIV/エイズ対策のモニタリング評価システムと実施の強化
を確保するために必要な支援を実施す
の改善
る。
ビンガ地区地方給水計画フォローアップ協力
教育環境の整備
人道援助
特に農村部における劣悪な教育環境を 草の根・人間の安全保障無償資金協力及び草の根文化無償資金協力
改善するための支援を行う。
災害等によって劣悪な環境にある貧困 アフリカ災害対策等人道支援(平成26年度補正予算)
層住民に対して支援を行う。また,モ
ザンビークとの国境付近に埋設された
地雷の除去に向けた取組を支援する。 草の根・人間の安全保障無償資金協力
スキーム
2014
年度
以前
2015
年度
2016
年度
2017
年度
支援額
2018
年度
2019
年度
備考
(億円)
個別専門家
南部アフリカ広域案
件
個別専門家
F/U
草の根無償及び草の
根文化無償
マルチ
2.50
UNICEF,WFP
草の根無償
【凡例】 「協準」(=全ての協力準備調査)、「詳細設計」(=詳細設計)、「技プロ」(=技術協力プロジェクト)、「開発計画」(=開発計画調査型技術協力)、「個別専門家」、「個別機材」、「国別研修」、「課題別研修他」(=課題別研修及び青年研修)、「JOCV」(=青年海
外協力隊)、「SV」(=シニア海外ボランティア)、「第三国専門家」、「第三国研修」、「現地国内研修」、「科学技術」(=科学技術協力(技プロ型及び個別専門家型))、「草の根技協」(=草の根技術協力)、「○○省技協」(=外務省・JICA以外の省庁及び独立行政法人等が実
施している技術協力)、「民間提案型技協」(=開発途上国の社会・経済開発のための民間技術普及促進事業)、「無償」(=無償資金協力)、「有償」(=円借款、海外投融資)、「マルチ」(=国際機関等を通じた多国間協力スキーム)、「中小企業支援」(=中小企業海外展開支援事業
「ニーズ調査」、「案件化調査」及び「普及・実証事業」、並びに中小企業連携促進基礎調査)、「F/U」(=フォローアップ協力)、実線「―――」(=実施期間)、破線「- - - -」(=実施予定期間)