対インド国別援助方針(案) 平成28年3月 1 援助の意義 インドは若年

対インド国別援助方針(案)
平成28年3月
1
援助の意義
インドは若年人口が人口の半数を占める,世界最大の民主主義国家である。
技術を身につけ,雇用を生み出す必要のある生産人口が,毎年1500万人増
加するとされている。同時に,依然として多数の貧困人口が存在し,中間層は
より高い生活水準を求めて拡大し続けている。これらの課題や需要に応えるた
め,包摂的かつ安定的な高度経済成長の実現が必要とされている。こうした中
で,継続的な投資と高度成長を確保する上で必要な重要インフラを整備するた
め,また,急速な経済成長と都市化の結果生じた社会的・環境上の課題に対処
し,貧困削減と包摂的成長を実現するため,今後も我が国の ODA が大きな役割
を果たすことが期待されている。
我が国にとって最も古く,また,最も重要な開発パートナーの一つであるイ
ンドの発展に対する我が国の貢献は,民主主義や人権,市場経済といった両国
共通の価値観に基づくものであり,資金的,技術的,人的資源の不足を埋め,
お互いの強みを生かす相互補完の考え方を基礎とする。両国間の開発協力は,
「日インド特別戦略的グローバル・パートナーシップ」の重要な構成要素でも
ある。
2 援助の基本方針(大目標)
:日印共通の価値観を基礎とした「より早く,よ
り包摂的で,持続可能な成長」の実現に向けた協力
これまでの日印二国間協力の成果を踏まえ,インドが第 12 次五か年計画(2
012~2017年)でも目標としている「より早く,より包摂的で,持続可
能な成長」の実現を支えるため,民主主義や人権,市場経済といった日印間の
共通の価値観を基礎として開発協力を推進する。
3 重点分野(中目標)
(1)連結性の強化
投資と成長に対するインフラ面でのボトルネックを解消することを念頭
に,インド国内の主要産業都市・経済圏内及び地域間の連結性の強化が図
られるよう,鉄道(高速鉄道,メトロを含む),国道(高速道路を含む),
電力,その他の分野について,輸送のハブ及びネットワークとなる運輸イ
ンフラや電力インフラ等の整備を支援する。また,デリー・ムンバイ間産
業大動脈(DMIC)構想やチェンナイ・ベンガルール間産業回廊(CBIC)構
想といった,広域の経済開発構想の具体化を進める。さらに,日印首脳間
で確認されている北東部等の地域の連結性の促進に向けた協力を推進する。
(2)産業競争力の強化
産業競争力の強化,特に製造業分野の強化は,インドの経済成長をより
安定的にするための鍵である。製造業は,若い生産人口のための新たな雇
用を生み,経済の技術的基盤を強化し,生産性を向上させる。このような
視点に立ち,インドの製造業を始めとする産業の競争力の強化に資するよ
うな,発電・送配電・エネルギー効率化,高規格道路,港湾,上下水道等
といった重要なインフラの整備を支援する。また,インドに対する海外直
接投資の促進や,経営,高等教育や実践的技術力といった分野での産業人
材育成に資するような支援を行う。
(3)持続的で包摂的な成長への支援
経済の高度成長は不可欠の要請であるが,同時に,この成長が持続的な
ものとなり,また,その恩恵が社会にあまねく衡平に共有され享受される
必要がある。このために,我が国として基礎的社会サービス(保健,衛生,
上下水道を含む。)の整備や,都市化に対応したインフラ整備,貧困層の収
入増のためのプログラム(小規模インフラの改善や農業の生産性の強化,
フードバリューチェーンの構築を含む。)といった貧困削減・社会セクター
開発に資するような支援に取り組む。また,上下水道・森林・防災等の環
境・気候変動問題への対処に向けた協力を推進する。
4 留意事項
(1)
「日インド特別戦略的グローバル・パートナーシップ」の下で,ODA の分
野での協力においても,日印が単に援助国と被援助国という立場にとどまるの
ではなく,ウィンウィンの互恵的な成果を目指す対等のパートナーシップを実
現することに留意する。
(2)原則としてタイド援助を受け入れず,調達政策において国際競争入札の
採用を必須とするインド政府の方針に留意する必要がある。同時に,開発協力
の事業やプログラムを通じて,他に類を見ない日本の技術や専門知識のインド
への導入を促進すべく取り組んでいく。
(3)緊密で継続的な政策対話を通じて政策マトリクスに相互に合意し,モニ
タリングとレビューを実施し,この進捗を根拠として支援を行うプログラム・
アプローチに基づく支援については,これにより事業の管理に一層の柔軟性が
もたらされ,さらに被援助国のオーナーシップが高められることになり,また,
量的目標・具体的工程・成果のアカウンタビリティーを確保することにもつな
がることから,その漸進的な推進に留意していく。
(4)経済協力を通じた様々な分野での緊密な人的交流の促進にも留意する。
(5)平等で包摂的な社会の達成のため,日印両国は案件形成にあたってはジ
ェンダー平等に留意する。
(了)
別紙: 事業展開計画
国別援助方針 別紙
対インド国 事業展開計画(案)
2016年 3月 現在
基本方針
(大目標)
重点分野1
(中目標)
開発課題1-1
(小目標)
地域総合開発
日印の共通の価値観を基礎とした「より早く,より包摂的で,持続可能な成長」の実現に向けた協力
連結性の強化
【現状と課題】
【開発課題への対応方針】
インド国内の主要産業都市では,都市内及び都市間のインフラ整備が遅れており,投資誘致及び更なる経済成長のボトルネックとなっている デリー・ムンバイ間産業大動脈(DMIC)及びチェンナイ・バンガロール間産業回廊(CBIC)構想実現に向けた資
ことから,その解消及び産業集積の高度化に向けた産業都市間の地域回廊開発が必要とされている。
金・技術協力を進める。
2006年の日印首脳会談において,首都デリーと最大の商業都市ムンバイを結ぶ地域に工業団地,物流基地,発電所,道路,港湾,住居,商業
施設などのインフラを民間投資主体で整備する,日印共同の地域開発構想であるデリー・ムンバイ間産業大動脈(DMIC)構想及びその背骨とな
る貨物専用鉄道(DFC)建設計画推進について合意され,その後も累次,首脳レベルで構想実現へ向けた取り組みを続けていくことが確認さ
れている。
また,2011年には日印首脳が,日系企業の集積が進む南部のチェンナイとバンガロール間の地域においても,チェンナイ・バンガロール間産
業回廊(CBIC)構想の実現に向けて日印が協力を進めることを決定したところ,我が国の技術協力により,2015年7月にはマスタープランが完
成した。今後,同プランに盛り込まれたインフラ及び開発拠点整備の具体的実施を進めることが首脳レベルで同意されている。
実施期間
支援額
協力プログラム名
協力プログラム概要
案件名
スキーム
地域回廊開発プログ デリー・ムンバイ間の幹線貨物鉄道の
ラム(DMIC・CBIC) 整備を含め,DMIC開発を支援する。ま インフラ開発・投資促進アドバイザー
た,CBICの開発を支援する。
個別専門家
インフラ開発・投資促進アドバイザー
個別専門家
投資促進アドバイザー
個別専門家
2014
年度
以前
2015
年度
2016
年度
2017
年度
2018
年度
2019
年度
備考
(億円)
貨物専用鉄道建設計画(フェーズ1)
有償
26.06
貨物専用鉄道建設計画(フェーズ1)(第二期)
有償
902.62
貨物専用鉄道建設計画(フェーズ1)(第三期)
有償
1036.64
貨物専用鉄道建設計画(フェーズ2)
有償
16.16
貨物専用鉄道建設計画(フェーズ2)(第二期)
有償
1361.00
貨物専用鉄道運営・維持管理支援プロジェクト
技プロ
南部インフラ開発マスタープラン策定準備調査
協準
タミル・ナド州投資促進プログラム
有償
130.00
グルガオン・バワル間都市鉄道整備計画準備調査
ベンガルール及びマイソール都市圏ITSマスタープラン策定プロジェクト
協準
開発計画
ベンガルール都市圏ITS機器供与計画準備調査
協準
ベンガルール上下水道整備計画(フェーズ3)準備調査
協準
チェンナイ周辺環状道路整備計画準備調査
協準
チェンナイ海水淡水化プラント建設計画準備調査
協準
チェンナイ周辺環状道路建設計画準備調査
協準
開発課題1-2
(小目標)
地域ネットワーク
の整備
【現状と課題】
[交通幹線ネットワーク]
インド政府は,第12次5か年計画(2012年4月~2017年3月)や国家道路交通政策等において,全国的にバランスの取れた道路網開発を掲げて
おり,新規道路建設,既存道路拡幅・補強,橋梁架け替え,PPPによる案件形成,安全・エネルギー効率・社会環境保全の重視等の必要性に
言及するとともに,空港や港湾等へのアクセス向上による円滑な一貫輸送の実現を課題としている。特に,国道開発計画Ⅲ~Ⅵ及び北東州と
バングラデシュ・ミャンマーを結ぶ国境周辺道路の整備を推進している。鉄道に関しては,幹線鉄道の旅客・貨物の大量輸送を可能にする路
線整備,設備・技術の近代化・高度化を通じた安全性・信頼性の向上,適切な料金政策の必要性について言及している。
[地域連結性ネットワーク]
北東州をはじめとする国境地域については,交通インフラ整備が整っておらず,国内外他地域との連結性が十分でないため,インド国内の他
地域と比較しても経済開発が遅れている形となっている。そのような状況を受けて,インド政府は第12次5か年計画(2012年4月~2017年3
月)において,特に北東州開発を重視しており,国道整備の特別プログラムへの予算措置等の対策を取っている。また,国境に近い立地を活
かして,ハード・ソフト両面によるクロスボーダー交通の円滑化を進めることが,同地域の経済発展の鍵ともなっている。
【開発課題への対応方針】
[交通幹線ネットワーク]
インド国内6大都市圏や産業集積地域を中心に,インドの大都市間基幹交通ネットワークの持続可能な整備,ボト
ルネックの解消,物流拠点の整備等を通じて,旅客貨物輸送の効率化を支援し,同国の経済社会開発支援を行
う。
[地域連結性ネットワーク]
南アジア地域内及び南アジア地域とASEAN地域との連結性向上による経済発展促進の観点から,地域連結性ネット
ワークに対する支援を積極的に検討する。具体的には,短期的には北東州地域と近隣国を結ぶ国境周辺道路網の
整備,中長期的には同地域以外の道路網や鉄道路線の整備及び国境間物流における税関やトランジット円滑化に
係るソフト支援等を進める。
実施期間
協力プログラム名
協力プログラム概要
案件名
交通ネットワーク整 インドの大都市間基幹交通ネットワー
備プログラム
クの持続可能な整備・ボトルネックの ビシャカパトナム港拡張計画
解消・物流拠点の整備を通じて,同国
の経済社会開発支援を行う。
高速道路運営維持管理の組織能力向上プロジェクト
有償
2014
年度
以前
2015
年度
2016
年度
2017
年度
支援額
2018
年度
2019
年度
備考
(億円)
41.29
技プロ
高速鉄道開発計画プロジェクト
技プロ
5.32
高速鉄道に係る制度整備支援プロジェクト
技プロ
4.79
「チェンナイ港運営管理改善計画」に係る技術支援
個別専門家
ビハール州国道整備計画
有償
229.03
ビハール州国道整備計画(フェーズ2)
有償
214.26
ムンバイ湾横断道路建設計画準備調査
協準
持続可能な山岳道路開発のための能力向上プロジェクト
地域連結性ネット
ワークプログラム
スキーム
技プロ
国道55号線斜面災害対策計画準備調査
協準
マハトマガンジー橋補修計画準備調査
協準
日本の技術を生かした斜面対策計画(国道55号線改良計画)準備調査
協準
ツチコリン港拡張計画準備調査
協準
南アジア地域内及び南アジア地域と
ASEAN地域との連結性向上による経済
北東州道路網連結性改善計画準備調査
発展促進の観点から,インドの大都市
間及び近隣諸国との基幹交通ネット
ワークの持続可能な整備・ボトルネッ
クの解消・物流拠点の整備を通じて,
旅客貨物輸送の効率化を支援し,開発 北東州道路網連結性改善計画(フェーズ1)(第一期)
の遅れている国境地域の経済社会開発
支援を行う。
協準
協準
4.91
重点分野2
(中目標)
開発課題2-1
(小目標)
エネルギーの安定
供給
産業競争力の強化
【現状と課題】
インドの電力セクターは,供給能力増と効率化の両立,電源の多様化,地域格差の解消という3つの課題を抱えている。
慢性化する電力供給不足に対して,省エネ推進の他,発電の主力である火力発電の効率化(高効率石炭火力発電設備の導入促進,老朽化した
施設のリハビリやリプレイス等のハード面,及び効率的な運転方法などのソフト面とも)への支援ニーズが大きい。ただし,この課題に対し
ては民間企業による電源開発が急速に進められており,UMPP(大規模火力プロジェクト)などの効率的な大規模電源の開発も開始されている。
他方,設備の老朽化や盗電等に起因する送配電ロス率は2011年度で全国平均21.14%となっており,中国(5.73%) ,インドネシア(9.14%)と
いった他の途上国と比べても極めて高い。そのため,施設の更新や効率的な送配電技術の導入による送配電のロス低減の余地は大きく,資金
協力を中心に積極的に支援すべき分野といえる。
電力の安定供給のためには,供給能力を増強するだけでなく,電源を多様化させる必要がある。特にインド政府が政策的に進めている再生可
能エネルギーの利用はCO2排出削減の観点からも重要性が高い。
地方での電力供給については,インド政府の定義による農村電化率は2012年度末で92.6%であるが,貧困ライン以下の世帯電化率は70.6%と
も言われている。格差是正の観点からも地方電化は最も大きな課題の一つであり,貧困州や人口の多い地域における配電能力強化に関する
ニーズは高い。
上記の課題の解決に向けて,インドの第12次5か年計画においては,約118,537MWの新規電源開発(うち30,000MWを再生可能エネルギー)及び
中央送電公社による地域間基幹送電線(220kV以上)の容量の38,650MWから75,750MWまでの増加の計画が立てられている。また,地方電化の
推進に向けては,2014年11月に立ち上げられた新世帯電化促進プログラム(DUGJY:Deendayal Upadhyaya Gram Jyoti Yojana)に基づき,全世
帯の電力アクセス確保を目標に,世帯電化に必要な配電線や変電設備等の新設・増強の支援,及び,貧困層に対する電気の利用に必要な設備
の無償提供を実施してきている。
【開発課題への対応方針】
環境負荷の低い技術を適用しながら,高効率な電力供給施設(超超臨界・超臨界)の整備による電力供給能力と
送配電能力(高圧電線・低ロス電線・スマートグリッド等)の強化を行う。また,省エネルギー及び再生可能エ
ネルギーの促進を通じて,エネルギーの効率的な利用及び電源の多様化に貢献する。さらに,DMIC・CBIC等の重
点地域の産業発展に資するスマートグリッド事業などの電力施設整備を検討する。資源分野については,長期研
修を含む政府人材育成(開発計画・法制度整備,鉱物資源管理,鉱山環境・保安対策)を行う。
実施期間
協力プログラム名
協力プログラム概要
案件名
エネルギー供給・効 エネルギー需要の拡大するインドにお
率化プログラム
いて,電力供給能力と送配電能力を強 プルリア揚水発電所建設計画
化するべく,高効率電力供給施設(発
電所,送配電網)の整備,既存施設の バンガロール配電網設備高度化計画
効率改善,送配電ロスの低減を継続的
に支援するとともに,気候変動対策の
観点から,新・再生可能エネルギー開 ハイデラバード都市圏送電網整備計画
発への支援及び需要側の省エネルギー
促進を行う。
スキーム
2014
年度以前
2015
年度
2016
年度
2017
年度
支援額
2018
年度
2019
年度
備考
(億円)
有償
179.63
有償
106.43
有償
236.97
ハリヤナ州送変電網整備計画
有償
209.02
中小零細企業・省エネ支援計画(フェーズ3)
有償
300.00
省エネルギー技術(産業分野)
国別研修
アンドラ・プラデシュ州高圧配電網整備計画
有償
185.90
新・再生可能エネルギー支援計画(フェーズ2)
有償
300.00
ビハール州バラウニ超臨界発電所建設計画準備調査
協準
マディヤ・プラデシュ州送電網整備計画
有償
184.75
マディヤ・プラデシュ州送電網増強計画
有償
154.57
タミル・ナド州送電網整備計画
有償
607.40
ハリヤナ州配電設備改善計画
有償
268.00
グジャラート州運河上太陽光発電プラント建設計画準備調査
協準
オディッシャ州送電網整備計画
有償
アンダマン・ニコバル諸島電力供給能力向上計画準備調査
協準
217.87
開発課題2-2
(小目標)
都市交通
【現状と課題】
インドの大都市では,道路交通需要の増加に伴う交通渋滞による経済損失及び大気汚染・騒音等の自動車公害による健康被害が重大な問題と
なっており,都市開発計画を踏まえた大規模な公共交通インフラの拡充が必要となっている。2006年に策定された国家都市交通政策では,急
増する都市人口とその移動ニーズに対応するために,安全,安価,高速,快適で信頼度の高い,持続可能な交通手段を提供することが目標と
して掲げられている。第12次5ヶ年計画(2012年4月~2017年3月)において,インド政府は公共交通システムの整備に重点を置き,鉄道事業
に対して5年間で1兆3千億ルピーの投資を計画している。
都市交通プログラム 急速に都市化が進むインドの6大都市
(デリー,ムンバイ,コルカタ,チェ
ンナイ,ベンガルール及びハイデラ
バード)及びメトロを必要とする中規
模都市を中心に,渋滞の緩和・旅客貨
物輸送の効率化・都市環境の改善等を
目的として,地下鉄や外環道路等の建
設による大都市圏の交通網の整備や実
施機関の能力向上を支援し,同国の経
済社会開発支援を行う。
【開発課題への対応方針】
急速に都市化が進むインドの6大都市(デリー,ムンバイ,コルカタ,チェンナイ,ベンガルール,ハイデラバード)及びメトロ
を必要とする中規模都市を中心に,を中心に,渋滞の緩和・旅客貨物輸送の効率化・都市環境の改善等を目的として,地
下鉄や外環道路等の建設による大都市圏の交通網の整備や実施機関の能力向上を支援し,都市の産業競争力強化や
ビジネス環境改善に資する基盤整備を行う。
デリー高速輸送システム建設計画フェーズ3
有償
1279.00
デリー高速輸送システム建設計画フェーズ3(第二期)
有償
1488.87
コルカタ東西地下鉄建設計画
有償
64.37
コルカタ東西地下鉄建設計画(第二期)
有償
234.02
バンガロール・メトロ建設計画
有償
447.04
バンガロール・メトロ建設計画(第二期)
有償
198.32
チェンナイ・メトロ建設計画
有償
217.51
チェンナイ・メトロ建設計画(第二期)
有償
598.51
チェンナイ・メトロ建設計画(第三期)
有償
486.91
チェンナイ・メトロ建設計画(第四期)
有償
199.81
ムンバイメトロ3号線建設計画
有償
710.00
ハイデラバード外環道路建設計画(フェーズ1)
有償
418.53
ハイデラバード外環道路建設計画(フェーズ2)
有償
420.27
アーメダバード・メトロ計画(第一期)
有償
628.07
開発課題2-3
(小目標)
人的資源開発・
人材交流促進
【現状と課題】
[産業人材育成]
インドでは,1990年以来20年間で人口が約3億5千万人増加しており,特に労働力人口は人口増加率を上回るペースで急速に増加している。今
後,インドの人口構成が所謂「人口ボーナス」を享受する時期を迎え,更に労働力人口が増加し,2022年までに7億人に達する見込みである
が,そのうち5億人は技術・技能向上のため,何らかの訓練を必要とすると見込まれている。一方,現在労働力人口の10%しか技能訓練を受
けていないのが実情であり,近年の継続的な経済成長により産業界が求めるようになっている高い技能・技術を備えた人材が絶対的に不足す
る状況となっている。セクター別で雇用を見ると,就労人口の5割以上を占める農業セクターの雇用伸び率は年率1%未満となっており,また
インドの近年の経済成長を牽引してきたIT関連を中心とするサービス産業の今後の雇用面での貢献は限定的である。GDPに占める製造業の割
合は中国やタイ等の東南アジア諸国と比較して低く15%程度であり,また,製造業が雇用に占める割合は10%強に留まっている。
近年の緊縮財政政策で公的セクターが徐々に縮小する傾向にある中,民間セクターの振興とこれを通じた雇用の吸収が期待されているとこ
ろ,製造業は雇用の受け皿として大きく期待されている。第12次5か年計画(2012年4月~2017年3月)は,急速な人口増加に対応する雇用創
出を重要な課題と位置づけており,非農業部門において約5千万人の雇用創出が可能として,特に労働集約的な製造業の振興を優先課題とし
ている。また,国家製造業政策(2011年)においては,2022年までに製造業において1億人の新規雇用創出を行うことを方針として掲げてい
る。
[高等教育]
第11次5か年計画(2007年4月~2012年3月)では,8つのインド工科大学(IITs)を含む51大学が新設され,高等教育機関への就学率は17.9%
(2011-2012年)となったが,未だ20%を下回っている。第12次5か年計画(2012年4月~2017年3月)では,同就学率を2017年に25.2%まで引
き上げることを目標としている。理工学系高等教育はインドの産業を支える人材育成の重要な機能を担っており,中でもIITsは,工学及び科
学技術分野の大学及び大学院から成り,産業分野の急激な変化に対応するための国際レベルの教育と研究の機会を提供している。
【開発課題への対応方針】
[産業人材育成]
民間セクターと連携した製造業の経営幹部や技術者の育成,訓練機関・大学の強化・拡大支援,及び産業人材育
成支援機関への技術協力・資金支援等を通じ,技術者の育成や雇用創出に繋がる支援を行う。
[高等教育]
累次の首脳会談で支援が合意されているインド工科大学ハイデラバード校(IIT-H)支援は,日印関係強化の観点
からも,また,日印の産学ネットワークを強化する観点からも,意義が高い。具体的には,キャンパス整備(円
借款,技術協力),研究・人材交流促進と教育・研究面での日印ネットワークの形成,地球規模問題科学技術協
力(SATREPS)などを有機的に組み合わせて展開する。日印のトップレベルの大学・研究機関間の交流を促進し,
中長期的には大学間・本邦企業とIITHとの直接の協力に軸足を移していく。
実施期間
協力プログラム名
協力プログラム概要
案件名
高度・産業人材育成 産業競争力向上の鍵となる製造業を牽
プログラム
引していく人材や適切な技術力を持つ 包括的成長のための製造業経営幹部育成支援プロジェクト
人材の供給基盤を強化すべく,製造業
振興に係る人材育成やビジネス環境整
【有償専門家派遣】タミル・ナド州製造業人材育成
備の支援を行う。
新設IITのうちハイデラバード校
(IIT-H)への支援を日本が担うことに
関する日印の首脳合意を踏まえ,日本
側は支援コンソーシアムを設置し産官
学で協働している。ODAポーションを
担う本プログラムにおいては,キャン
パス施設の整備,共同研究の促進,研
究者の交流,研修員の受入れといった
ソフト・ハード両面のスキーム横断的
な重層的支援を展開し,IIT-Hの環境
整備と能力向上を行う。これを通じ,
わが国の大学・産業界とIIT-Hとの間
で産学の研究ネットワークを形成し,
将来にわたる日印連携体制を構築す
る。
社会・産業インフラとしての法定計量
スキーム
技プロ
2014
年度
以前
支援額
備考
2015
年度
2016
年度
2017
年度
2018
年度
2019
年度
(億円)
4.66
個別専門家
国別研修
学際的研究交流を通じたインド工科大学ハイデラバード校キャンパスデザイン支援プ
ロジェクト
技プロ
学際的研究交流を通じたインド工科大学ハイデラバード校キャンパスデザイン支援プ
ロジェクトフォローアップ
技プロ
6.46
インド工科大学ハイデラバード校整備計画
有償
53.32
インド工科大学ハイデラバード校整備計画(フェーズ2)
有償
177.03
技プロ
11.96
インド工科大学ハイデラバード校日印産学研究ネットワーク構築支援プロジェクト
ポートブレア産業訓練研修所改善アドバイザー
自然災害の減災と復旧のための情報ネットワーク構築に関する研究
個別専門家
科学技術
人的交流や日印理解の促進 (日本語教育, スポーツ分野)
JOCV
人的交流や日印理解の促進(青少年活動)
JOCV
技能評価システム移転促進事業
厚生労働省技協
4.42
重点分野3
(中目標)
開発課題3-1
(小目標)
農村における経済
開発と生計向上
持続的で包摂的な成長への支援
【現状と課題】
インド農業部門のGDPに占める割合は長期減少傾向にあり,1950年代には約50%を占めていたのが2001~02年には24%に,2009~10年には
14.7%にまで低下している。しかし,依然として人口の約7割が農村部に居住し,就業人口の約6割が農業に従事していることから,農業・農
村開発はインドの社会経済発展に不可欠と考えられる。
インドにおける農業は,近年は農業技術革新(単収)及び灌漑施設等のインフラ整備が滞る中,成長率は著しく鈍化しており,第10次及び第
11次5か年計画期間を通じて平均2.9%となっている。また,低い灌漑率(35%)及び高い天水依存のため,南西モンスーンの影響を受けやす
く,生産量は気候による変動を大きく受けている。加えて,近年の国際的な食糧不足,食糧価格高騰を受け,国内では食料安全保障に対する
関心が高まっている。
インド政府は第12次5か年計画(2012年4月~2017年3月)において,農業部門の平均成長率の目標を4%に設定し,農業部門の成長が包摂的な
成長には重要であるとして,特に小規模農家の農業経営に焦点をおいている。同政府は,農業・農村開発のために2005年以降
MGNREGA(Mahatma Gandhi National Rural Employment Gurantee Act) による農村への雇用機会の提供,様々な政府スキームによる住居の確
保,全天候型道路整備,安全水の供給,灌漑施設整備等,農村の環境改善・インフラ整備を積極的に進めている。また,同計画期間中に第11
次5か年計画で策定された米,小麦及び豆の増産を目的とした国家食料安全保障ミッションと農業及び農業関連部門への資金配賦の政府ス
キームであるRKVY(Rakshtriya Krishi Vikas Yojana)を統合し,主要作物の種類及び生産量を増加させることを目指している。
農業部門の改善に向けた課題としては,水資源不足の解消及び農村インフラの整備,農業技術の研究開発投資と普及,農業生産性の向上及び
農作物の高付加価値化・多様化の推進,農村の生計向上及び雇用機会の創出などがある。
【開発課題への対応方針】
農村環境や農村インフラ整備を通じた農村部における農業生産量の安定化,及び,農業生産性向上や収入多角化
を通じた農村の所得向上を推進することを目的とする。具体的には,「農村環境・インフラの整備」の観点で
は,天水農業地域などの開発の遅れた農村部において灌漑施設やアクセス農道などの生産基盤を整備するととも
に,灌漑効率の高いマイクロ灌漑の導入や水利組合の設立・育成など農業用水水利用の効率化に資する活動を支
援し,天候に左右されない安定した農業生産量の確保を図る。また,「農村の所得向上」の観点では,野菜や果
物などの小さな農地から高い所得が期待できる高付加価値農産物の生産拡大,畜産や農産加工など農業の多角化
を推進するため,貧困農家向けの低コスト適正栽培技術の開発,農業その他生計手段の多角化に向けた営農改
善・技術普及,貧困層向けのマイクロファイナンス等を支援し,農家所得の増大を図る。
実施期間
協力プログラム概要
案件名
農業・農村開発プロ 農業の生産性を向上させ,かつ,旱魃
グラム
などの天候に左右されず安定した農業 アンドラ・プラデシュ州灌漑・生計改善計画
生産量を確保するため,灌漑施設等の
農業生産基盤の整備及び農業用水利用
の効率化を支援していく。また,都市 レンガリ灌漑計画(フェーズ2)
部との格差・不均衡是正という観点か
ら,貧困層が多く居住する農村部の生
活環境改善に資する基礎インフラの整 ミゾラム州持続可能な農業のための土地・水資源開発計画プロジェクト
備への支援も行っていく。
食料安全保障に留意しつつ,基幹農産 マディヤ・プラデシュ州大豆増産プロジェクト
物の安定供給と高付加価値農産物生産
へ向けた技術開発,農業多角化に向け
た営農改善,及び,これらの普及を支 ヒマーチャル・プラデシュ州作物多様化推進計画
援する。また,地域特性に応じ比較優
位を最大化する,きめ細かい生産性向
上計画を作成することで,農村におけ ヒマーチャル・プラデシュ州作物多様化推進プロジェクト
る生計向上の支援を行う。
農村部での非農業部門の振興への支援 ヒマーチャル・プラデシュ州作物多様化推進プロジェクト(フェーズ2)
を通じ,所得の低い農業労働者の非農
業部門への自発的な移行を促し,農村
地域全体の底上げを支援する。
ジャルカンド州点滴灌漑による園芸作物促進計画準備調査
スキーム
支援額
2018
年度
2019
年度
備考
(億円)
339.59
開発計画
2.74
技プロ
4.80
有償
50.01
技プロ
6.34
技プロ
7.60
協準
協準
コミュニティー開発分野の青年海外協力隊派遣
2017
年度
有償
ラジャスタン水資源セクター・生計向上計画準備調査
農業分野の草の根技術協力
2016
年度
239.74
有償
二化性養蚕技術実用化促進計画
2015
年度
有償
ジャルカンド州点滴灌漑による園芸作物促進計画
中央・州政府水資源開発エンジニア向け研修
2014
年度
以前
個別研修
F/U
草の根技協
JOCV
46.52
有機農業推進の基盤整備事業
開発課題3-2
(小目標)
基礎的社会サービ
スの向上
0.15
日本NGO
【現状と課題】
「乳幼児死亡率の削減」,「妊産婦の健康の改善」,「HIV/エイズ,マラリア,その他の疾病の蔓延の防止」というミレニアム開発目標
(MDGs)達成のためには,世界の貧困人口の約3分の1が居住するインドにおける健康指標の改善が不可欠である。しかし,5歳未満児死亡率
が56(出生千対)(WHO, 2012),妊産婦死亡率が190(出生10万対)(WHO, 2012)と,依然として厳しい状況である。
インド政府は第12次5か年計画(2012年4月~2017年3月)においても保健医療分野の改善を重点分野として定めている。同計画では,保健医
療サービスの強化を目的として,国家都市保健ミッション(NUHM, National Urban Health Mission)を実施し,特に都市部のスラム地域など
の貧困層への保健サービスを提供することを目標としている。また,第10次5か年計画において策定した国家農村保健ミッション(NRHM,
National Rural Health Mission)を,国家保健ミッション(NHM, National Health Mission)へ統合し,全ての国民に保健サービスへのアクセ
スを確保するとともに,必要な時に負担可能な費用で保健サービスを受けられるというユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC, Universal
Health Coverage)の実現を目指している。
当該分野の改善に向けた課題は,医療施設の整備・拡充の必要性のみならず,貧困層が利用する保健医療施設における質の高い医師・医療技
術者の絶対数の不足,住民の保健医療に関する意識の薄さ,衛生面・栄養面の改善及び地方行政組織の能力強化など多岐に亘る。
【開発課題への対応方針】
インドのMDGsにおける乳幼児・妊産婦の死亡率等の保健指標が南アジア諸国の中でも悪いことを踏まえ,乳幼児
の主要な死因である感染症対策の強化及び幅広く貧困層に直接裨益する保健医療サービスへのアクセスの向上を
重点に支援を行う。具体的には,インド政府が進める国家農村保健ミッションや都市部の貧困層を対象とする国
家保健ミッションの推進・連携を行いつつ,医療施設・機材整備と医療人材育成を組み合わせた医療インフラの
確立,保健・衛生分野での人材育成,及びトイレ整備支援等を通じたジェンダー主流化のための女性の地位向上
に資する支援を行う。
実施期間
協力プログラム名
協力プログラム概要
案件名
基礎的社会サービス MDGs達成のための乳幼児・妊産婦の死
向上プログラム
亡率改善への貢献を念頭に,以下に重 ポリオ撲滅計画(ユニセフ連携)
点を置いた支援を行う。
1. 乳幼児の主要な死因である感染症
チェンナイ小児病院改善計画
対策の強化。
2. 貧困層に幅広く,直接裨益する保
健医療サービスへのアクセスの向上。
タミル・ナド州都市保健強化計画
スキーム
2014
年度
以前
支援額
備考
2015
年度
2016
年度
2017
年度
2018
年度
2019
年度
(億円)
無償
1.20
無償
14.95
有償
255.37
病院経営・財務管理
国別研修
院内感染管理指導者養成研修
国別研修
アジア地域におけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ達成のための社会保険制度強
化
国別研修
適正な医薬品の供給・品質管理・使用に向けた薬事行政及び薬剤師の役割
国別研修
母子保健分野の草の根技術協力
草の根技協
保健分野の青年海外協力隊派遣
JOCV
障害者支援分野の草の根技術協力
草の根技協
保健衛生・教育訓練分野の草の根・人間の安全保障無償資金協力
草の根無償
5.00
日本NGO
0.53
ラジャスタン州における乳幼児の総合的栄養改善事業
開発課題3-3
(小目標)
環境問題・気候変
動への対応
【現状と課題】
[森林資源管理]
インドは,20世紀初頭には,国土の約40%程度が森林であったが,昨今は森林被覆率が23.8%(2011年)と世界平均の31%(2010年)よりも
低い。貧困層を含む多くの人々が,家畜飼料,燃料,収入等を森林に依存しているが,近年の人口増加により森林への負荷が高まっており,
森林の劣化が進行している。
これにより,森林資源の減少に加え,森林の水土保全機能の低下による農業用水・飲料用水の不足等の影響が生じ,森林に生活を依存する貧
困層の生活を圧迫し,森林への負荷を加速するという悪循環に陥っている。また,インドの森林の疎林率は41.6%(2011年)と高く,森林に
期待される役割を十分果たしていないため,森林の質の向上は,森林面積の拡大と併せて重要な課題である。かかる状況に対応するため,イ
ンド政府は,第12次5か年計画(2012年4月~2017年3月)終了時点までに500万ヘクタールの緑化の実施を目標としている。加えて,同計画に
おいて,共同森林管理委員会の森林資源管理能力の強化,森林管理モニタリング体制の確立,森林資源依存者の代替生計手段の確立支援,情
報管理システムの強化及び人材開発の推進に重点が置かれている。
[上下水道・衛生改善・公害防止対策(廃棄物管理,大気汚染改善)]
インドでは,人口増加や経済成長により環境への負荷が増大し,都市部において廃棄物問題,大気汚染,生活環境の悪化,河川・湖沼の水質
汚濁等,多岐に亘る開発課題が生じている。
また,都市を中心に,安全な飲料水の確保及び下水処理等が喫緊かつ将来に亘る重要な課題となっている。具体的には,上水道については,
各戸給水栓と公共栓を合わせた上水道普及率が都市部人口の64%に留まる等,急速な都市化に伴う需給ギャップ拡大に伴い十分な水質・水
量・給水時間が確保されていないこと,下水道については,都市部の下水管接続率が3割以下に留まっており,下水処理能力を超過した汚水
が排出されることにより,地域住民の衛生・生活環境が脅かされていること等が,課題となっている。
これを受けてインド政府は,第12次5か年計画において都市部全人口への上水供給及び下水・衛生施設の提供を政策目標として掲げている。
特に,上水道については人口増加による需要増大に対して水源が限られていることに鑑み,無収水対策や再生利用水の活用等による効率的な
水利用を,下水道については全ての都市部上水道施設に対応した下水処理施設の整備を,政策目標として掲げている。また,各州・自治体に
対し包括的な都市開発計画を策定し,国家都市再生ミッション(AMRUT)等による支援を活用しつつ目標の達成を図るよう求めている。
河川・湖沼の水質汚濁については,主に自然浄化能力を超える量の未処理排水の流入が原因であるところ,これまで国家河川保全計画
(NRCP)及び国家湖沼保全計画(NLCP)を策定し,下水処理場の建設等の対策を進めてきた。第12次5か年計画においては,未処理排水を防
ぐためには上水道施設整備のスピードに合わせて下水処理施設を建設する必要があると強調されており,全ての都市排水を処理した上で河川
に放流すること,及び,全ての主要河川の水質を指定利用水質まで改善することを政策目標としている。
地下水については,過剰揚水による地下水位の低下や,砒素,フッ素汚染等の水質問題が顕在化しており,過剰揚水の防止や節水技術の普及
等が課題として,国家環境政策2006において具体的な行動指針が設定されている。
公害防止対策については,都市部を中心に廃棄物処理や大気汚染等の公害防止が課題となっており,第12次5か年計画(2012年4月~2017年3
月)において,廃棄物については,市民の意識向上,組織立った回収及び処理,最適なリサイクル及び処理方法の選択等が,また,大気汚染
については,すべての大都市で大気質を米国大気環境基準(NAAQS)に改善することが,それぞれ政策目標として設定されている。
[防災]
インドは地理気候的に洪水,サイクロン,干ばつ,地滑り・斜面崩壊,地震・津波,など様々な自然災害が多発しているが,近年は地球温暖
化の影響でこれらの災害が甚大化する傾向にある。ビハール州,アッサム州,西ベンガル州や北東諸州においては,毎年モンスーン時期に発
生する洪水や土砂崩れにより甚大な被害が発生している。加えて,北部ヒマラヤ地域はインドプレートとユーラシアプレートの収束境界に位
置しており,中~大規模な地震活動が活発な地域である。また,これらの災害多発地域は貧困層が多い地域と概ね合致しており,災害による
被害が貧困層のさらなる困窮に拍車をかけている。
かかる状況を受け,インド政府は2004年に国家レベルの防災枠組みを策定したほか,2005年に防災法を制定し,各州に防災計画の策定を義務
付けた。2007年には州防災計画作成のためのガイドラインも策定されている。組織面では,防災政策・計画・ガイドラインの策定およびそれ
らの実施を調整する機関として首相を議長とする国家防災委員会(NDMA)が設置されているほか,各州に州防災委員会(SDMAs)が設置され
ている。また,NDMAのもと,災害軽減および緊急対応のための人材育成を促進する機関として,国家防災協会(NIDM),迅速な災害対策を行
う機関として国家災害対応部隊(NDRF)が設置されている。
これらの取り組みの一方で,これまでのところ政府の対策は被害者の救出や支援などの事後応急対策にとどまっており,災害の予測,被害の
軽減のための対策,中長期的な復興計画策定等の知見や技術の蓄積は乏しいのが現状である。
【開発課題への対応方針】
[森林資源管理]
住民参加型による持続可能な森林資源管理及び森林資源に依存する貧困層の生計向上と安定化を目指し,参加型
手法による森林資源管理及び生物多様性保全,持続可能な生計向上活動支援,及び治山を軸とする植生回復によ
る災害対策・防災支援を行う。また,インド第12次5か年計画において言及されているREDD+との関連を認識し,
案件形成を図る。具体的には,インドで長年実施されているJFM (Joint Forest Management)を支援すると共
に,GIS等を活用した森林モニタリングに対する支援を実施し,森林保全事業において実施される小規模インフラ
整備や副林産物を活用した小規模ビジネス等の活性化し,関連するマーケティング及び運営管理支援を実施す
る。これらの森林資源管理事業を通して,適宜対象州,対象地域における生物多様性保護を検証し,地域住民に
負担を掛けすぎない生物多様性保全計画策定・遂行を支援する。
[上下水道・衛生改善・公害防止対策(廃棄物管理,大気汚染改善)]
インドの主要都市における生活環境の改善を図ることを目的に,上下水道・衛生施設の絶対的な不足状態へ対応
すべく,都市圏を中心としたインフラ開発,事業運営機関の財務持続性の確保,事業運営機関の能力向上,貧困
層(スラム)への衛生改善を始めとする公共サービスの拡大,市民参加の促進と住民の啓発に取り組む。特に
DMIC・CBIC地域や民間投資を促進し得る都市や地域での事業を優先的に行う。他方で,貧困削減の観点からは,
水源の質が悪くフッ素症等健康被害を及ぼしている地域等の他,環境保護や水資源の保全の観点から,重要度の
高い川や湖の浄化事業に対しても選択的に支援を行う。支援にあたっては,組織強化や財務持続性に関して明確
なアクションプランを有していること,具体的且つ詳細な人材育成計画を有していること,用地取得やF/S等の事
前準備が十分になされていることを満たす事業を支援対象とする。また,無収水対策,再生利用水のための高度
処理,海水淡水化技術等の日本企業・自治体の知見,経験,及び先進的技術を積極的に活用する。従来の円借款
資金による支援に加え,民間資金を活用したPPP事業に対する支援も行う。
また,人口増大や経済発展に伴う都市部を中心とした公害対策として,廃棄物対策や大気汚染等の対策に資する
インフラ整備・実施機関のキャパシティービルディングに係る案件形成を行う。
[防災]
山間部における災害対策として,類似した環境が多い我が国の砂防技術や斜面対策技術が活用できる可能性が高
く,先方政府からも我が国の技術への期待感が示されている。今後の対応として,2013年に洪水・土砂災害によ
り甚大な被害を受けたウッタラカンド州において,森林防災および土砂災害・斜面対策,防災能力向上の支援を
検討するほか,主に山岳州や洪水多発地域を対象として基礎情報収集・確認調査を実施し,同地域における自然
災害や必要となる対策等に関してより詳細な情報を収集して案件形成を図る。
他方,インド国内では,2013年にウッタラカンド州で発生した洪水災害以降,地震や洪水などを対象にした災害
リスクファイナンスに対する注目が高まっていることから,他ドナー機関や我が国の保険会社,損保会社との連
携も視野に入れて案件形成の可能性を検討する。
実施期間
協力プログラム名
協力プログラム概要
案件名
森林資源管理プログ インド全土において,荒廃林の復元に
ラム
よる森林の量的・質的改善,土壌劣化 ハリヤナ州森林資源管理・貧困削減計画
の防止,水土保全機能低下の防止,生
物多様性保全等,多岐にわたる支援を
地域の実情に応じ,柔軟に行う。森林 タミル・ナド州植林計画(フェーズ 2)
管理の持続性確保のため,インド政府
の共同森林管理(Joint Forest
カルナタカ州持続的森林資源管理・生物多様性保全計画
Management:JFM)にかかる取り組みを
支援し,住民の生計向上や,ステーク
ホルダーの能力向上等様々な取組を推 オリッサ州森林セクター開発計画
進する。また,森林局職員の能力開発
を重視し,これを支える中央政府・州
政府の研修機能の強化を支援する。
トリプラ州森林環境改善・貧困削減計画
グジャラート州森林開発計画(フェーズ2)
スキーム
2014
年度
以前
支援額
備考
2015
年度
2016
年度
2017
年度
2018
年度
2019
年度
(億円)
有償
62.80
有償
98.18
有償
152.09
有償
139.37
有償
77.25
有償
175.21
ウッタル・プラデシュ州参加型森林資源管理・貧困削減計画
有償
133.45
森林管理能力強化・人材育成計画
有償
52.41
スワン川総合流域保全計画
有償
34.93
シッキム州生物多様性保全・森林管理計画支援
有償
53.84
タミル・ナド州生物多様性保全・植林計画
有償
88.29
ラジャスタン州植林・生物多様性保全計画(フェーズ2)
有償
157.49
西ベンガル州森林・生物多様性保全計画
有償
63.71
ウッタラカンド州森林資源管理計画
有償
113.90
有償
35.84
上下水道・衛生改
上下水道関連施設等整備,事業運営機
善・公害防止対策プ 関の財務持続性の確保と能力向上,貧 コルカタ廃棄物管理改善計画
ログラム
困層(スラム)への公共サービスの拡
大,廃棄物対策や大気汚染等の対策等
の公害対策,市民参加の促進と住民の コルカタ廃棄物管理改善プロジェクト
啓発に取り組む。その際,効率性向上
のため民間参入の促進に努める。
技プロ
111.84
ガンジス川流域都市衛生環境改善計画(バラナシ)
有償
ガンジス川浄化計画準備調査
協準
フセイン・サガール湖流域改善計画
有償
77.29
バンガロール上下水道整備計画(フェーズ2)
有償
703.55
ベンガルール上下水道整備計画(フェーズ3)準備調査
協準
ゴア州無収水対策プロジェクト
技プロ
5.11
ゴア州無収水対策プロジェクトフェーズ2
技プロ
5.57
有償
228.06
技プロ
4.08
ホゲナカル上水道整備・フッ素症対策計画
有償
223.87
ホゲナカル上水道整備・フッ素症対策計画(フェーズ2)
有償
170.95
ラジャスタン州地方給水・フッ素症対策計画
有償
375.98
ケララ州上水道整備計画(フェーズ3)
有償
127.27
ゴア州上下水道整備計画
ジャイプール無収水対策プロジェクト
アグラ上水道整備計画
有償
248.22
アムリトサール下水道整備計画
有償
69.61
オリッサ州総合衛生改善計画
有償
190.61
オディッシャ州総合衛生改善計画(第二期)
有償
257.96
タミルナドゥ州都市インフラ整備計画
有償
85.51
デリー上水道改善計画
有償
289.75
技プロ
4.30
グワハティ上水道整備計画
有償
294.53
グワハティ下水道整備計画
有償
156.20
ヤムナ川流域諸都市下水等整備計画(フェーズ3)
有償
325.71
西ベンガル州上水道整備計画
有償
144.25
インパール上水道改善計画準備調査
協準
チェンナイ海水淡水化プラント建設計画準備調査
協準
ランチ下水道整備計画準備調査
協準
デリー上水道運営・維持管理能力強化円借款附帯プロジェクト
エネルギー消費最小型下水処理技術の開発プロジェクト
下水道セクター技術政策アドバイザー
協準
プネ市ムラ・ムタ川汚染緩和計画
有償
ネロール上下水道整備計画
協準
山間地域等における砂防,斜面対策を
含むインフラ整備および防災管理能力 ウッタラカンド州森林資源管理計画
向上,災害多発州・地域における災害
リスクファイナンスに関する支援を行
ウッタラカンド州山地災害対策プロジェクト
う。
3.97
個別専門家
プネ市ムラ・ムタ川汚染緩和計画準備調査
分散型汚水処理と浄化槽技術
防災プログラム
科学技術
190.64
個別研修
有償
113.90
技プロ
3.00
北東州道路網連結性改善計画準備調査
協準
国道55号線斜面災害対策計画準備調査
協準
日本NGO
0.26
官民連携インフラファイナンス計画(IIFCL)
有償
500.00
アジャンタ・エローラ遺跡保護・観光基盤整備計画(フェーズ2)
有償
73.31
シップリサイクルヤード改善計画準備調査
協準
バラナシ市における参加型コミュニティ防災推進支援事業
その他
その他
個別の案件
その他分野の草の根技術協力
草の根技協
【凡例】 「協準」(=全ての協力準備調査)、「詳細設計」(=詳細設計)、「技プロ」(=技術協力プロジェクト)、「開発計画」(=開発計画調査型技術協力)、「個別専門家」、「個別機材」、「国別研修」、「課題別研修他」(=課題別研修及び青年研修)、「JOCV」(=青年海外協力
隊)、「SV」(=シニア海外ボランティア)、「第三国専門家」、「第三国研修」、「現地国内研修」、「科学技術」(=科学技術協力(技プロ型及び個別専門家型))、「草の根技協」(=草の根技術協力)、「○○省技協」(=外務省・JICA以外の省庁及び独立行政法人等が実施している技術
協力)、「民間提案型技協」(=開発途上国の社会・経済開発のための民間技術普及促進事業)、「無償」(=以下に特記するサブ・スキームを除く全ての無償資金協力)、「水産無償」(=水産無償資金協力)、「食糧援助」(=食糧援助)、「一般文化」(=一般文化無償資金協力)、「草の根文
化」(=草の根文化無償資金協力)、「緊急無償」(=緊急無償資金協力)、「日本NGO」(=日本NGO連携無償資金協力)、「草の根無償」(=草の根・人間の安全保障無償資金協力)、「有償」(=円借款、海外投融資)、「マルチ」(=国際機関等を通じた多国間協力スキーム)、「中小企業
支援」(=中小企業海外展開支援事業「基礎調査」、「案件化調査」及び「普及・実証事業」、並びに中小企業連携促進基礎調査)、実線「―――」(=実施期間)、破線「- - - -」(=実施予定期間)