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応用理工学類 応用数学 I Quiz 12 解説
問 長方形の領域 0 ≤ x ≤ a, 0 ≤ y ≤ b における 2 次元ラプラス方程式
uxx + uyy = 0
を、以下の境界条件
ux (0, y) = ux (a, y) = 0,
および次の条件
{
u(x, 0) =
uy (x, b) = 0
x
0 ≤ x ≤ a/2
a − x a/2 ≤ x ≤ a
のもとで、フーリエ級数を用いて解け。
これは y = 0 の線上での温度分布が固定されていて、他の3辺では熱の出入りを遮断
されている長方形の金属板上での、全ての位置での定常温度分布を求める問題である。
教科書5−4の例とどこがどう違うか を指摘しながら解答せよ。
●処方箋に従って変数分離型解 u(x, y) = X(x)Y (y) を仮定すると
X ′′ (x)Y (y) + Y ′′ (y)X(x) = 0 つまり Y ′′ (y)
X ′′ (x)
=−
X(x)
Y (y)
これをみると旨い具合に、変数が両辺に分離している。そこで例によって x にも y にもよ
らない定数(未定)を λ とおけば
X ′′ (x) = λX(x),
Y ′′ (y) = −λY (y)
となるはず。(ここまでは教科書の例となんら変わるところはない。)
●ここで境界条件を考察する。境界条件の一つは X ′ (0) = X ′ (a) = 0 である(ここが教科
書の例では X(0) = X(a) = 0 である) が、それで上の方程式を満たす解がありうるか。
λ > 0 であっては一般解は
√
X(x) = Ae
λx
√
+ Be−
λx
√
√
または X(x) = A cosh( λx) + B sinh( λx)
となるが、これではどう頑張っても両端 x = 0, a での境界条件を同時に満たせない。た
とえば2番目の表式で X ′ (0) = 0 とするには B = 0 でなければならないが、そうすると
√
√
X ′ (a) = A λ sinh( λa) となり、これは A = 0 とするのでなければ、どうしてもゼロに
できない。(教科書の例では境界条件は X(0) = 0 であるが、そうするには A = 0 が要求
√
されてしまい、X(a) = B sinh( λa) となるがこれは B = 0 とするのでなければこれはゼ
ロにならない。) そこで λ は正でないとして λ = −k 2 とすると、今回はゼロも含めて飛
び飛びの値 kn = nπ
a のときに Xn (x) = cos(kn x) として境界条件を満たすことができる。
(教科書の例の場合はゼロは含まず、飛び飛びの値 kn = nπ
a のときに Xn (x) = sin(kn x) と
して境界条件を満たすことができる。) つまり固有値問題である。
n = 0, 1, 2, · · · に対して、固有値:λn = −
( nπ )2
固有関数:Xn (x) = cos(kn x)
a
( nπ )2
教科書の例では、n = 1, 2, · · · に対して、固有値:λn = −
固有関数:Xn (x) = sin(kn x)
a
なお n がゼロの場合にも解 X0 (x) = 1 があることに注意。 (教科書の例では n がゼロの
場合には解がない。)
●それぞれの固有値 λn = −kn2 に対して、Xn (x) に対応する Yn (y) はどうなるか。
Yn′′ (y) = kn2 Yn (y) と境界条件 Yn′ (b) = 0
から Yn (y) = cosh{kn (b − y)} と決まる。(教科書の例では Yn (b) = 0 より Yn (y) =
sinh{kn (b − y)} となる。) y 方向の振る舞いからは kn の値に何の制限もつかないことに
も注意。とびとびの固有値がどこから発生したか、よく理解してください。また教科書の
例では n = 0 のときには解がない が、今回は n = 0 のときにも、れっきとした解がある
ことにも注意。
●こうして一連の変数分離型特解が見つかった。これも固有値問題と見れる。つまり、
n = 0, 1, 2, · · · に対して固有値:λn = −kn2 固有関数:un (x, y) = cos(kn x) cosh{kn (b − y)}
教科書の例では n = 1, 2, · · · に対して固有値:λn = −kn2 固有関数:un (x, y) = sin(kn x) sinh{kn (b − y)}
これで可能な変数分離型解は全部求まったことにも注意。ここで処方箋に従い、微分方
程式と境界条件が 線形であることを確認 しつつ、求まった特解の和として 一般解を構築
する:
{
}
∞
{ nπx }
∑
nπ(b − y)
u(x, y) =
cosh
Cn cos
a
a
n=0
教科書の例ではここは
u(x, y) =
∞
∑
Cn sin
{ nπx }
n=1
a
{
sinh
nπ(b − y)
a
}
●残る仕事は係数 Cn を決めることである。これには最後の条件を使えばよい。
{
(
)]
∞ [
( nπx )
∑
nπb
x
for 0 ≤ x ≤ a/2
u(x, 0) =
Cn cosh
cos
=
a
a
a − x for a/2 ≤ x ≤ a
n=0
教科書の例ではここは
u(x, 0) =
∞ [
∑
n=1
(
Cn sinh
nπb
a
)]
sin
( nπx )
a
{
=
x
for 0 ≤ x ≤ a/2
a − x for a/2 ≤ x ≤ a
これを 0 < x < a における右辺のフーリエ余弦展開と見て、
{∫ a
}
∫ a
2
1
n = 0 のときだけ C0 =
xdx +
(a − x)dx それ以外では
a
a
0
2
{∫ a
}
(
)
∫ a
(
)
( nπx )
2
nπb
2
nπx
Cn cosh
=
x cos
dx +
(a − x) cos
dx
a
a
a
a
a
0
2
これを丁寧に計算すれば、


n = 0 のときは
a/4

/{
( )}
Cn =
n = 2 × (奇数) のときは −8a n2 π 2 cosh nπb
a


それ以外では
0
教科書の例の場合はフーリエ正弦展開とみなして、
{∫ a
}
)
(
∫ a
( nπ )
( nπx )
( nπx )
2
2
4a
nπb
=
dx +
dx = 2 2 sin
Cn sinh
x sin
(a − x) sin
a
a
a
a
a
n π
2
0
2
まとめれば
u(x, y) =
a 2a
−
4 π2
∑
m=正の奇数
1
cos
m2
(
{
}

) cosh 2mπ(b−y)
a
2mπ
( 2mπb ) 
x 
a
cosh a
教科書の境界条件の場合には
u(x, y) =
2a
π2
∑
m=正の奇数
1
sin
m2
(
{
}

2mπ(b−y)
)
(
)
sinh
a
2mπ
mπ 
( 2mπb ) 
x sin
a
2
sinh a
●教科書5−4の例ではフーリエ正弦展開で sin 関数や sinh 関数が現れるのに、ここでは
フーリエ余弦展開になって cos 関数や cosh 関数が現れることになるわけ をしっかり理解
してください。自分で判断して使い分けられる必要があります。