最期の 日 記 深夜に部屋の書棚を整理していたところ、以前つきあっていたひとの 日記が出てきた。この日記は、いろんないきさつを経て、最終的に僕が 持っておくことになったものである。 あとへあとへと読んでいくと、だんだん生々しい話になってくる。注 射を何本打っただとか、今日は気絶したとか、そして血が長いこと止ま らなかったとか。 最後の日記は五月中旬の日付だった。この日に好物のケーキを少しだ け食べることができたと書かれていた。 僕は暇があればこの日記を読んでいる。まるで他人事のように流し読 みすることもあれば、読んでいていろんな想い出がこみあげてきて、自 分自身の脆さに気づくこともある。 なぜか? それは、どこにも僕のことが書かれていなかったからだ。
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