法務省“ 社会を明るくする運動 ”中央推進委員会主催第６４回“社会を明るくする運動”作文コンテスト全国保護司連盟理事長賞笑顔の花が満開に岐阜県・大垣市立興文中学校２年たまこし玉腰 E A A E けいすけ E A A E 啓裕 E A A E E 僕は、小学五年生の時に転校しました。最初は、友だちができるか、新しい学校になじむことができるか不安で、転校することを嫌がっていました。でも、教室で自己紹介し、決められた席に座ると、すぐ、前後左右の子がニッコリと笑ってくれました。そして、休み時間には、男の子だけでなく、女の子も僕の席にやって来て、いろいろと話してくれました。僕は、何を話したら良いか分からず、黙って聞くことしかできなかったけれど、それでも、みんな嬉しそうに話してくれたり、まだ先のことを丁寧に教えてくれました。僕は、恥ずかしくて、しばらく殻にこもっていたけれど、仲間の温かい言葉が、心を閉ざしていた僕をゆっくりと、ときほぐしてくれました。これは、仲間がただ僕と友達になりたくて、無意識にした行為が、僕に「笑顔」という花を咲かせてくれました。友だち一人一人の声のかけ方や話してくれたことは違います。でも、僕に元気と勇気、自信と希望を与えてくれました。そして、友だち自身も笑顔の花が咲き乱れていました。僕は、転校してから、あいさつ運動を積極的にやりました。学校だけでなく、地域の人にも自分からあいさつをして、笑顔の種をまきました。しかし、中学生になると、なぜか恥ずかしいという気持ちが先走り、あいさつができなくなりました。「おはよう」「ありがとう」「ごめんね」どの言葉も、とても簡単な言葉で、大切な言葉なのに、素直に言えなくなりました。特に、一番、身近な家族に言えなくなってしまいました。母は、そんな僕に、「相手に聞こえるようにあいさつしなさい」「気持ちを込めてあいさつしなさい」と言いました。でも、僕は、「面倒くさいな」「みんなも、あいさつしていないのに」と思っていました。小学生の頃、咲きほこっていた笑顔の花は、いつしか枯れてしまいました。しかし、地域の人がいつも、笑顔であいさつをしてくださる様子から、部活動で、先生や仲間と、しっかりあいさつするようになり、いつのまにか、自分から明るく元気にあいさつができるようになりました。それは、きっと、僕の中で眠っていた笑顔の種が、芽生え始めたからだと思います。だけど、僕には弱さがあり、家族に元気よく明るくあいさつができません。外の世界で、開花する笑顔の花は、家に帰ると、しぼんでしまいます。それは、笑顔の花が、しっかりと根づいていないからです。母は、思春期の僕に、あいさつについて、強く言わなくなりました。きっと、それは、いつか、僕の笑顔の花が開花すると信じているからだと思います。また、昔の僕を知っているから、笑顔の種があると安心しているからだと思います。僕が、大分県の図書館に行ったとき、今までに経験したことのない静けさを体験しました。話し声はもちろんのこと、せきやくしゃみもなく、歩く足音、本を取り出す音が、かすかに館内に聞こえるだけでした。図書館を利用する上でのマナーが、小さい子から大人までしっかり守られていました。そして、本も、とても大切に扱われていました。「自分くらい、話してもいい」「少しくらい、本を汚しても大丈夫」と思う人は、誰一人おらず、利用者誰もが、静寂した雰囲気の中で本を楽しんでいました。また、本も、美しく並べられていました。ルールを守ることは、とても大切だけど、きゅうくつに感じることもあります。誰も見ていなかったり、急いでいたりしたら、少しくらい、ルールを守らなくていいと思ってしまいます。しかし、その気持ちをもった人ばかりの社会になってしまったら、友だちや地域の人にあいさつすることはありません。また、騒がしい図書館で傷んだ本を読むことになります。最近、ニュースで恐ろしい犯罪や悲しい事件が流れます。社会のルールを無視した人たちの報道です。この人たちに、笑顔の種が一粒でもあれば、犯罪者にならなかったと思います。僕は、明るい社会とは、多くの人に笑顔の花が咲いている社会だと思います。忙しかったり、疲れていたりすると、僕の笑顔の花は、すぐにしぼんでしまいます。でも、友だちや家族に、温かい言葉をかけてもらうと、また、笑顔の花が咲き始めます。僕の力はとても小さいけれど、僕の笑顔の種を社会にまいて、一人でも多くの人が笑顔になれるよう、社会に目を向けていきたいです。