2015 1.経済活動と国際収支 (1)国際収支の見方・とらえ方 ・一国の家計簿 →財・サービスの輸出入,金融商品の売買,資産の所 有権移転 ・国際収支表:( )の国家間取引の一覧表 →経常収支,資本移転等収支,金融収支,誤差脱漏 第10講 (テキスト第13章) 経済発展と債務・通貨危機 先進国の国際収支の特徴 ・経常収支の黒字:ハイテク 産業と金融分野に強い ・ 金融収支も黒字:国内の富 が外国へ投資される 途上国の国際収支の特徴 ・経常収支の赤字:工業と サービスに弱い ・金融収支の赤字:資本不足 を補うための資金受け入れ 2 1 1.経済活動と 国際収支 表 国際収支( IMF国際収支マニュアル第6版) 項 目 金額(US百万ドル) 1.経常収支 財・サービスの輸出 +35 財・サービスの輸入 -50 (2)対外債務を負うことの意味 <資本の必要性と資本不足> 一次産品依存型経済構造には脆さがある。 →それからの転換が必要である=( ) ⇓ インフラ整備:電力,交通網,港湾施設など ⇓ 投資の原資は国内( ) →開発プロジェクトをまかなうのに十分か ⇓ 外国から( )を受け入れる(開発援助資金,民間資金) +1 投資収益 債務返済額 -15 +2 純送金 経常収支残高 -27 2.資本収支 (対外)直接投資 +3 外国借款(公的貸付,民間貸付,間接投資) +7 居住者資本の流出 -8 資本収支残高 +2 経常・資本収支残高 +25 3.現金収支 準備通貨額 +25 生産関数:Y = ƒ (K, L, T) マクロ式:Y=C+I, Y=C+S ⇒ S=I (sY = S) →国民所得の一部が貯蓄に回り,そ れが投資に充当される。 3 1.経済活動と国際収支 4 2.累積債務問題と構造調整政策 <資本輸入と返済義務> 開発プロジェクトの必要額に対して国内貯蓄が不足する。 ⇓ 資本(開発援助資金)を( )する。 →( ):社会開発などは無償資金協力や技術協力が中心 ( ):経済開発プロジェクトは融資による資金援助 ⇓ 経済開発の推進に対外債務を負うことは( )ない。 援助資金でも借款である場合には( )義務が生じる。 →返済が滞るとどうなるか。 5 (1)危機に至る過程 ラテンアメリカ諸国:1980年代に累積債務問題を引き起こす。 ・1970年初頭以前 債権者は先進国政府や国際機関 →融資条件は( )的(長い償還期間,低い金利,固定金利など) ・1960年代末から70年代前半 経済成長により輸入が拡大(資本財,中間財,燃料,食料など) 拡大する資金需要を民間融資でまかなうことに方針転換する →融資条件は( )的 ⇓ なぜ民間融資を開発資金に充てることが可能であったのか。 6 1 2015 2.累積債務問題と構造調整政策 2.累積債務問題と構造調整政策 <2つのカギ> 譲許的融資は( )が厳しい。 非譲許的融資は比較的( )に融資が決定された。 ①石油危機の勃発 1バレル3.01ドル(勃発前) 同11.65ドル(1973年) 同24ドル(1979年末) ⇓ ( )が欧米の商業銀行を介してラ米政 府へ環流した。 OPEC(石油輸出国機構)のオイルダラーが還流。 欧米商業銀行(バンク・オブ・アメリカ,シティバンク,チェ ース・マンハッタンなど)が発展途上国(特にラ米)へ大規 模な借款を展開。 商業ベースの条件 ・償還期間が短い ・市場金利 ・変動金利 →( )が高い資金 7 2.累積債務問題と構造調整政策 変動金利債務(商業銀行からの借り入れ)が1970年代 以降,急激に上昇した。 8 2.累積債務問題と構造調整政策 結果として,ラ米政府は比較的安易に多額の資金を獲得。 →資金は,公共部門の運営,所得再分配,財政赤字の 補填などに費やされた。 =( )用途に当てられた。 債務返済のために新規借り入れすることさえ可能。 ⇓ しばらく持ちこたえられたのは( )が低下したこと。 ②欧米商業銀行の幻想 欧米の商業銀行は大量の預け入れを抱える。 →信頼できる貸付先探しに困る。 ⇓ ( )貸付を大規模展開する。 →政府,政府系機関に対する貸し付け 政府保証付きの民間企業向け貸し付け ⇓ なぜか。 →「政府は( )することはない」と思い込んだ。 9 2.累積債務問題と構造調整政策 <状況の大転換> 1978年末の第2次石油危機の勃発が, ①先進国景気を( )させる。 ②先進国の景気低迷が( )の需要縮小及び価格 下落を引き起こす。 →途上国の外貨収入を難しくする。 ③インフレ対策として( )政策を先進国が実施する。 →途上国の債務負担(金利支払い増)を増大させる。 ⇓ ラ米経済の先行きに対する不安が増す。 11 →1981年に大規模な( )を引き起こす。 年次 1968 -77 1978 1979 1980 1981 1982 1983 金利 (%) -6.8 6.2 -16.8 -23.5 12.6 18.8 16.8 (出所)河合,村瀬(1992)『発展途上国の累積債務問題』三菱経済研究所, p.4 10 2.累積債務問題と構造調整政策 ・資本逃避とは 目的:資産保有者が自国内の資産価値の減少を防ぐこと。 方法:自国資産から外国資産へ乗り換える。 →外国で銀行口座を開設 外国で有価証券・不動産を購入 ⇓ こうした取引は通常の経済活動を超えた規模で行われる。 さらに,取引が未報告である場合が多い。 12 2 2015 2.累積債務問題と構造調整政策 2.累積債務問題と構造調整政策 資金フローが逆転 →元利支払額が新規融資額を上回るようになる。 ⇓ 債務返済のリスケジュールを諸国が相次ぐ。 1982年、メキシコ,ブラジル,アルゼンチンがデフォルト ( )を宣言。 35カ国が債務返済を滞らせる。 (2)危機の原因 ①債務危機が1982年に勃発した直接の引き金 石油危機が先進国に景気後退(stagnation)とインフレ (inflation)を引き起こす。 →景気後退化のインフレを( )と呼ぶ。 ⇓ 1980年代に入って,欧米で高金利政策を実施する。 ⇓ ソブリン貸付の金利が著しく上昇,デフォルトに陥る。 表 重債務国に認定された15ヵ国 ラテンアメリカ メキシコ,コロンビア,エクアドル,ボリビア,ベネズエラ,ペ ルー,ブラジル,チリ,アルゼンチン,ウルグアイ アフリカ 欧州・アジア コートジボワール,モロッコ,ナイジェリア ユーゴスラビア,フィリピン 13 2.累積債務問題と構造調整政策 ②対外債務を負って返済不能に陥った債務危機の根本 的原因 <多額の資本輸入> 1960年代の援助ブーム ⇓ ( )を欠く開発プロジェク トに多額の資金が導入さ れる。 ⇓ 公的資金でも借款である限り 返済義務が生じる。 <輸入代替戦略の失敗> 輸入代替戦略の推進 ⇓ ( )製品の国産化から着手 ⇓ 下請け産業がないため部品の輸 入に依存する。 国営企業の非効率な操業に対し て財政支援を継続する。 ⇓ 15 輸入代替が( )しない。 2.累積債務問題と構造調整政策 ・対外債務が既に過大である。 ・その半分以上が民間債務である。 ・ISI戦略が失敗し,財政・経常収支赤字を引き起こす。 ・新規融資が生産的な用途に回らない。 ・双子の赤字を新規融資でまかなうという禁じ手に訴え る。 ⇓ こうして,対外債務が累積していった。 ⇓ ラ米経済の破綻は( )の問題であった。 17 14 2.累積債務問題と構造調整政策 <赤字補填等への流用> オイルダラーの使途 ⇓ 赤字国営企業の財政支援 政府の赤字補填 所得再分配の財源 ⇓ 非生産的用途への使用は返 済のための( )の獲得 につながらない。 <交易条件の悪化> 石油危機による世界経済の停滞 ⇓ 一次産品需要の減退 ⇓ 一次産品の( )の悪化 ⇓ 外貨獲得が困難になる。 16 2.累積債務問題と 構造調整政策 (3)危機の対応策 <対応の基本方針と方法> ・国際金融システムの危機を回避すること →多くのアメリカの商業銀行が関与していたから ・デフォルトに陥った諸国の返済能力を向上させること →厳しい条件の下で新規融資を供与する(IMF,世界銀行) 「( )調整プログラム」 ①( )政策(財政・金融引き締め) ②国内( )率の引き上げ ③( )相場の切り下げ ④( )指向型経済への転換 ⑤国内( )の対外開放 18 3 2015 2.累積債務問題と構造調整政策 2.累積債務問題と構造調整政策 表 債務転換による債務削減の規模 →先進国による救済策 「( )構想」 ・1984年,世銀・IMF総会:「持続的成 長のための計画」を発表する。 ・新規融資の拡大による債務国の経 済成長の促進を目論む。 「( )構想」 ・1989年のブレトンウッズ委員会:債 務国の債務自体の削減を通じた債務 負担の軽減を目論む。 ・非譲許的融資の棒引き,金利減免, 償還期間の延長から選択する。 30.6 メキシコ 15.7 ブラジル 9.4 アルゼンチン 3.6 20 2.累積債務問題と構造調整政策 <結果> ・国際金融システムの危機は回避できたか。 ⇓ 構造調整プログラム等により新規資金の供給が再開された。 →返済の再開・継続が確保された。 ・ 債務返済はどうなったか。 ⇓ 1992年4月にアルゼンチン,同年7月にブラジルがブレイ ディ構想を締結した。 →債務危機の( )宣言が発表された。 B銀行 買い取り 買い取り A国の自然を購 入,自然保護 42.3 チリ 19 不良債権化 額面価格で 自国通貨で 買い取る(債 務の処理)。 通常は,自 然保護基金 の積み立て, 債券の発行。 ボリビア (出所)河合,村瀬(1992)『発展途上国の累積債務問題』三菱経済研究所, p.75. →その他の方法: 図 債務と自然のスワップ(debt for nature swap) 不良債権を額 面より割り引い て購入(不良債 権処理)。 債務削減額/債務全体(1984年末) (%) (注)民間銀行債務のうち,債務転換で処理された割合。 2.累積債務問題と構造調整政策 A国政府 国名 自然保護団体 21 22 2.累積債務問題と構造調整政策 3.アジア通貨危機と構造調整政策 債務国は負った債務をどうしたか。 ⇓ 軽減措置等の支援を得ながら( )を継続した。 ( )の転換を推進した。 ⇓ ( )が最優先とされた。 債務国の( )は一層厳しくなった。 →1982年からの1992年の10年間のラ米経済: =「( )はしたが( )はしなかった」 (1)危機至る過程 ・1997年7月にタイで通貨が大暴落したことに端を発する。 ・近隣諸国を巻き込むが,特にタイ,インドネシア,韓国が IMFの支援を受けた。 ・1997年以前 経済成長が顕著。( )の経済構造。 経常収支赤字は( )。財政収支は異なる。 債務は( )債務が中心。( )比率は一桁台。 ⇓ ( )状況は極めて良好であった。 23 24 4 2015 3.アジア通貨危機と構造調整政策 <バブルの発生> ・1990年代半ば ポートフォリオ投資の割合が上昇 →( )・マネー ⇓ 不動産投資などへ向かう =非生産的用途 ⇓ 外貨獲得につながらない。 →( )の悪化 3.アジア通貨危機と構造調整政策 タイ政府は( )引き締め政策を実施する。 ⇓ ( )経済が崩壊する。 →タイの金融機関が大量の( )を抱える。 ⇓ 投資先としてのタイの( )が減じる。 ⇓ 外国投資家がタイから資金を一斉に引き揚げる。 タイ・バーツの対ドル為替相場の大暴落が始まる。 25 3.アジア通貨危機と構造調整政策 <ヘッジファンドとアジア通貨危機> ・タイ・バーツの対米ドル相場 →25バーツ/$に( )されていた。 ・1990年代に入り( )自由化を推進 →国内金融機関の対外取引を認める その頃のタイの金利は米ドル金利より5%以上高かった。 ⇓ 外国資金が( )のリスクがないタイへ大量に流入。 →タイで不動産バブルが発生する。 27 26 3.アジア通貨危機と構造調整政策 ・1990年代半ば以降,タイ経済は弱体化する。 →1994年に株式市場がピークに達する。 1996年に不動産バブルが崩壊する。 ⇓ 実態との( )に目をつけたヘッジファンドが空売りを企てる。 ⇓ バーツ売りが始まる(1996年12月頃から始まる)。 →1997年5月,通貨売りアタックが最大化。 ⇓ タイ中央銀行は( )介入。しかし,外貨準備が枯渇。 →( )相場制への移行を決意(1997年7月2日)。 28 ヘッジファンドによるバーツ売りのメカニズム 安いレートでドルを売ってバーツを買って, 高いレートでバーツを売ってドルを買い戻す。 バーツ/米ドル 先物契約 (1ドル=25バーツ)) 25 利益:1ドル当たり10バーツ 30 35 数ヶ月後の現実の相場 (1ドル=35バーツ)) 40 45 1997年5月 数ヶ月後 3.アジア通貨危機と構造調整政策 (2)危機の原因 <直接の引き金> ・タイにおけるバブル経済の発生とその崩壊。 ・変動相場制への移行によるタイ・バーツの大暴落。 <構造的要素> ・金融システムが( )で,金融セクター監督やフィナンシャ ル・リスク審査が( )であったこと。 ・( )の欠如が官民癒着を招き,( )を 果たすことが出来なかったこと。 →クローニー資本主義(縁故資本主義) 30 5 2015 3.アジア通貨危機と構造調整政策 3.アジア通貨危機と構造調整政策 ①金融システムが脆弱で,金融セクター監督やフィナンシャ ル・リスク審査が不十分であったこと。 ②ガバナンスの欠如が官民癒着を招き,アカウンタビリティ を果たすことが出来なかったこと。 人治主義 →政治家の取り巻き,既得権益層が優遇される。 非生産的プロジェクト(不動産,株式,利益が出る目途 がない投資)に融資が行われる。 ⇓ 融資の焦げ付きが発生する。 →誰も( )を取らない。 ・タイのみならず当時のアジアの通貨の多くが事実上,ドルに ペッグ(peg)(=固定相場制)していた。 →タイでは1984年11月から管理フロート制を採用していた。 しかし,通貨バスケットの8割が米ドルであった。 ⇓ ペッグということは( )リスクがないことを意味する。 →外国との金融取引に関するシステム(例えば,為替変動 のリスクヘッジ)が健全に整備されない。 31 32 3.アジア通貨危機と構造調整政策 3.アジア通貨危機と構造調整政策 (3)危機の対応策 タイ,マレーシア,インドネシア,韓国は主に2つの対応策を採 用。 ①構造調整融資の要請 →マクロ経済の安定,為替暴落・インフレ対策 条件:緊縮政策,経済自由化,国内市場の対外開放など ②金融市場の整備と為替制度の安定化 →銀行の健全性の確保(国際スタンダードに準拠した規則・ 制度の整備,金融機関の資本増強など) 固定相場制の回避 ③その他の支援体制の強化 IMFによる支援に加えて,それを補完する支援体制の構築 33 3.アジア通貨危機と構造調整政策 <マレーシアのケース> ・当初はIMFへ支援を要請したが,その後支援を断った。 →なぜか。 1997年10月,マレーシアはIMF型緊縮政策を実施した。 →予算削減,大型プロジェクト凍結,金利引き上げ ⇓ しかし,実体経済を( )(=投資減少,景気停滞,失業拡 大)させる恐れがある。 →緊縮政策の効果を疑問視 ⇓ 1998年9月,独自路線への転換を決定した。 35 「チェンマイ・イニシアティブ」 短期流動性の欠如による危機に陥った際の相互支援 「アジア・ボンド・マーケット」 通貨危機による資金調達難から逃れる最良の方法は企業自らが長 期資金を調達すること。銀行融資に依存しない資金調達を促す。 「アジア共通通貨構想」 域内で共通通貨が使用されることによって,資本取引や貿易が活発 になる。これによって,域内の経済発展が見込まれる。 34 3.アジア通貨危機と構造調整政策 ・1998年9月,マレーシアは資本取引を( )する方向へ 政策転換する。 →取得後1年未満の株式の売却禁止, 海外送金の禁止, 固定相場制の導入(3.8リンギット/$):これまでは2.50 ~2.55リンギット/$にペッグされていた。 ⇓ 独自路線のマレーシアの方が早く回復を遂げた。 なぜか。 ①外貨準備が枯渇していなかった。 ②銀行や民間企業の外国からの借り入れが少なかった。 ③不良債権は国内問題に留まった。 ⇓ 2005年7月,管理変動相場制へ移行した。 36 6 2015 4.債務危機と通貨危機への対応の 比較分析 4.債務危機と通貨危機への対応の 比較分析 国際金融危機に対するIMF・世界銀行の処方箋 ⇓ 構造調整融資を供与することで対応してきた。 <対ラテンアメリカ> 慢性的な財政収支赤字 慢性的な経常収支赤字 借入依存型経済運営(新規借り入れで赤字補填) →結果として,マクロ経済事情が深刻な状態:典型的 な「( )型危機」 ⇓ 緊縮政策以外に対策はない。 <対東アジア> 財政収支はほぼ黒字(赤字があっても一時的) 経常収支は常に赤字 輸出主導型経済運営 →結果として,マクロ経済事情は良好な中で危機が勃 発:従来とは異なる「( )型危機」 ⇓ これまでとは異なる対策を講じなければならない。 しかし,従来型の処方箋を与えた。 →緊縮政策,規制緩和,民営化,国内市場の対外開放 37 38 4.債務危機と通貨危機への対応の 比較分析 4.債務危機と通貨危機への対応の 比較分析 <緊縮政策が機能するケース> 財政・金融収支赤字が慢性的で,債務が累積している。 ハイパーインフレーションが進行している。 外貨獲得の手立てがない。 ⇓ ラテンアメリカ諸国ではそうした状況が該当した。 ⇕ 東アジア諸国では,マクロ経済事情が良好な中で緊縮政策 が実施された。 ⇓ 景気後退による一層の悪化を引き起こした。 39 <IMFは対応を誤ったのか> ・ジェフリー・サックス 若干( )的な金融財政政策を実施すべきだった。 ・ジョセフ・スティグリッツ ( )・コンセンサスは実態を悪化させただけ。 ⇓ 2002年12月,IMFは資本( )策の実効性を公式に認めた。 40 7
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