風 のかたち No.24 安田小学校長 新田 哲之 2016 年 2 月 8 日 子どもを見つめる目 あいさつ運動を始めて 6 年になりました。当時のパパ倶楽部の代表の方が、朝子どもたちを あいさつで迎えよう、なにも準備はいりません、笑顔だけあれば十分ですと声をかけられて始 まりました。今は当たり前のことのようにあいさつを子どもはしていますが、当時は、照れく さい様子の子どもが多くいましたし、6年生は、恥ずかしくて下を向いてしまうこともあった と記憶しています。早朝からのことであり、また、仕事時間を削ってまで駆けつけてくださる お父さんもいると知り、毎月やったのでは長続きしないのではと思いましたが、あれから 6 年 がたちました。このあいさつ運動に初回から欠かさず来てくださっている方がいらっしゃいま す。この 2 月も参加され、お子さんが卒業するので 3 月で最後になります。立つ場所はいつも 工兵橋。日が差さず寒風にさらされるところで、子どもを見つめる目は温かく、見守ってくだ さっています。 教師は学校にいて、子どもを見つめ、子どもの成長に関わっています。子どもを毎日見てい るのですが、子どものことを分かっていないことがあります。その場だけを捉えて子どものこ とを分かったつもりでいることがありました。あいさつ運動でお父さんに、お子さんが最近早 く登校していることを伝えると、お父さんは笑顔で答えてくださいました。大好きな友達がい て、その子どもさんが早起きだと聞いて我が子も早起きをするようになったこと、起きてから 読書や勉強をしていることを話されました。そして、学校・仲間という良い環境に恵まれてい ることの喜びを感じておられるようでした。早く登校している子どもとしか捉えていなかった のですが、見えないところで子どもの変容や思いがあるのです。お父さんたちの目は、出来事 から少し距離を置いて見ておられるので、見えないものが見えてきます。 教室にはいろいろな子どもがいます。羽目をはずして教師から注意を受けるが、集団の中で 楽しくやっているように見える子。実は集団の間ですっかり馴染めていないのかもしれません。 今の状況を正しく把握する力が弱いのです。注意すれば、みんなもやっていると答えます。み んなというのは誰ですか?と聞いても名前が出てきません。目先の楽しさ、瞬時の面白さに目 を向けています。状況を把握して正しい判断と行動をする力をつけることに目標を置けば、指 導方法が見えてきます。全体を見渡せるような役割を持たせれば、羽目をはずすぐらい活力が あるので好結果が出てきます。罰を与えてじっとさせるのではなく、責任感とやりがいを持た せます。距離を置いて見れば新たな面が見えてきます。 いつもおとなしくて目立たない子どもがいました。注意されることはないが特別誉められる こともない子どもでした。その子は教師になりました。ずっと教師になりたかったようで、先 生の赤ペンの○つけがやりたかった、日記に書いてくれる返事を私も書きたかったと教えてく れました。今思い起こせば、詩を書くのが上手な子でした。話すのは苦手でしたが、いつも私 のそばで日記の返事を書くのを見ていました。日記を書く鉛筆と返事の赤ペンで話をしていま した。少し距離を置いて子どもを見つめてみよう、そして、大人も子どもから見つめられてい るのだと思いました。
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