PDFをダウンロード 12KB

工場ルポ № 196 スチール製品の塗装 (有)岸本工業
〒426-0213 静岡県藤枝市中ノ合 22-2 TEL(054)638-3738
(1)会社の沿革
有限会社岸本工業,現在はスチール製品,特に店舗内 CD 棚・ビデオ棚,スチール建具,フレーム
等の焼き付け塗装を行う塗装専業メーカーとして,年間 1000 種類にも及ぶワークをこなしている。
創業は,昭和 62 年 10 月,当時はケーエスティの称号で配電盤などの金属製品を中心に手吹き塗
装でスタート。平成 4 年 4 月に現在地に移転,コンベヤーを設置したライン塗装工場として,現社
名に変更し,業務の拡充を図ってきた。
塗装のスタイルは,コンベヤーを流れるワークを二つのブースで,静電ハンドガンによる手吹き
塗装が行われていたが,昨年 10 月に第 1 塗装ブースに自動静電塗装システム「SUNAC4200 Ⅳ」1 レ
シプロ 2 ガン(旭サナック㈱)を導入し,自動化の第 1 ステップを踏んだ。
自動静電塗装システムの導入に当たっては,
①生産性の向上
②受注先からのコストダウンへの対応
③自動化への一環を図るとともにスプレーマンの作業負担の軽減
等を考慮してのもので,前処理および塗装設備の概要を以下に示す。
(2)設備の概要
前処理と塗装ラインは分離されており,前処理設備は 5 槽から構成されている,ディピング方式
を採用している。
≪前処理の工程≫
脱脂(20 分)→水洗(5 回)→リン酸鉄皮膜処理(15 分)→水洗(5 回)→水洗(5 回)→水切
り乾燥(150℃×20min)
前処理終了後にワークは,塗装ラインへと搬入される。
≪塗装設備の概要≫
コンベヤー全長:70m(同速度:1.0∼1.2m/min),自動静電塗装装置:SUNAC4200 Ⅳ 1 レシプロ
2 ガン(ガンは EAB−30A を装着),ダイアフラムポンプ:PD−30(3 色対応),被塗物素材:主に
スチール製品,焼き付け乾燥炉,使用塗料:メラミン系が 80%,その他アクリル等,膜厚:20∼
30 μ m
同工場では自動静電塗装ラインのほかに,特注品や扉などの大型被塗物に対応するために,手吹
き塗装ブースと大型金庫炉を設置した大型塗装スペースを確保している。
金庫炉の許容サイズは,W3500×H3000×L2500mm
≪塗装の工程≫
ハンガー掛けの前にスコッチブライト処理でゴミ防止と塗膜の付着性を向上させる作業が行わ
れる。
エアブロー→ハンガー掛け→自動静電塗装→焼き付け乾燥(炉長:25m,150℃×20min)→取り
外し
塗装工程は被塗物によって,多少異なる。たとえば,比較的小さなワークは自動静電塗装ブース
で最初の 1 ガンで片面を塗り,センターターン後に次のガンで裏面を塗る 1 コート 1 ベーク方式と
大きめなワークでは,自動静電塗装ブースで片面を,裏面は手吹き静電塗装ブースで塗られるパタ
ーンがある。
(3)自動静電塗装装置導入のメリット
昨年 10 月に 1 レシプロ 2 ガンの自動静電塗装システムが導入されてから,まだ 2 月余りが経過し
たばかりであるが,同社岸本活之代表取締役は,次の導入効果を挙げている。
①形状検出器が枠物などの形状を認知するため,レシプロがワークに追従しムダ吹きがなく,塗
料の消費量を削減した。
②自動静電塗装によって,1 ハンガー当りのワークが 2 倍になったことで生産効率の向上に貢献
している。
③仕切り肌の均一性により塗膜品質の安定化が図られたことは,信頼性につながる。
さらに,制御盤の操作が非常にわかりやすいことをメリットとして挙げている。
同社は,塗装専業メーカーとしてスタート以来,11 年の歴史を誇る,「どんなワークにも対応で
きる専業メーカー」をモットーに,小物から大物まで色数も多様にこなしてきたことで,受注先よ
り厚い信頼を得ている。
同社の所在する静岡県と言えば,サッカー王国として,優秀なサッカー選手を数多く輩出してい
る。2 階オフィスの璧には,全日本代表のゴンの愛称で知られるジュビロ磐田中山雅史選手のサイン
色紙が飾られてあるのは,まさにサッカーの地を藤枝市を物語っている。
現在,同社のスタッフは 11 名。岸本社長の下,明るい雰囲気で活躍する社員は若い。同社の将来
性に大いに期待したい。取材協力有難うごぎいました。