工場ルポ No.309 (2010年6月) 『集成材のクリヤー塗装』

工場ルポ
No.309
集成材のクリヤー塗装
セブン工業株式会社 美濃加茂第二工場
〒505-0016
岐阜県美濃加茂市牧野 1011
TEL(0574)27-2345 / FAX(0574)27-2340
1.会社の沿革
今回の工場ルポは、集成材や住宅部材の製造・販売および付帯事業を行っている、岐阜県に本社を
構えるセブン工業㈱を取材し、紹介する。
地球に優しい 科学の木と言われる集成材は、天然の木の品質を均一化することに成功したもので、
木の持つ風合いや優れた特徴を持ち合わせたまま、鋼材やコンクリートに相当する強度や軽さ、そして
自在な加工性を秘めている。
集成材とは、断面寸法の小さい板材を接着材で再構成して作られる木質材料である。集成材の特徴は、
木やアルミニウム,鉄などで代用することができない調湿機能と断熱性を持つことである。木の弱点
である寸法の狂いや干割れ,部分的な強度のバラツキなどを集成することによりカバーしている。
用途は内装建材としての玄関造作材,和風部材,壁材,階段,カウンター、と構造材に用いられて
いる。
これまで、木質構造では困難とされていた曲線部材・大スパン架構などの実現が可能となり、木質
ドームなどが造られるようになった。
本号では、セブン工業㈱美濃加茂第二工場で作られている、集成材の製造工程と塗装仕上げの
プロセスを紹介する。
セブン工業㈱は、1976 年 10 月に丸七住研工業㈱の商号で発足、以下にその主な沿革を紹介する。
昭和 51 年
岐阜県美濃加茂郡白川町に白川工場および加茂郡七宗町に七宗第一工場を建設
平成 2 年
セブン工業㈱に商号を変更
同
4 年
美濃加茂第二工場を建設
同
5 年
美濃加茂第三工場を建設
同
8 年
本店を美濃加茂市に移転
同
9 年
美濃加茂第四工場を建設
同 12 年
ISO9001 認証取得
同 16 年
ISO14001 認証取得
現在に至る。
2.集成材の製造プロセス
集成材の製造には、まず資材調達から始まる。資材は、世界各地の原木が集積されてくる、
グローバル体制が採られている。
たとえば、ヨーロッパからはスプルース,欧州アカマツ、ロシアからはタモ,赤ダモ、北米は米松,
スプルース、南米はチリ松、中国はタモ,ポプラ,キリ、タイ・ベトナムはゴム、インドネシアは合板,
ゴム、国内はヒノキ,杉,カラ松などである。
本号では、階段造作材の製造プロセスを見てみよう。階段は、住む方の安全性を第一に考え、耐久性
や機能性を厳しくチェックしている。
特に、強度アップした集成材を選び、補強部材のけこみや台座など縁の下の力的な部分にも配慮して
いる。加えて、インテリアのシンボルとしてのデザインの重視,多様な住空間にマッチできるさまざま
な形状と色彩の部材をそろえている。
(1)
①
工程
基材の研磨(素材は、ゴム系:東南アジア(タイ,ベトナム,インドネシアなど))
全体に平滑に仕上げることであり、着色時にムラにならないように均一に研磨する。
②
着色(色数は数 100 色、主に①ミディアム系,②ダーク系,③バーチ系)
最近では、白色,黒色など原色を使用するケースも増えており、下地着色と上での着色のバランスを
考慮して色を作成する。
③
下塗り(UV シーラー:3.5min)→ロールコーター
UV シーラーは塗膜密着性向上を目的としており、均一に塗布した木地に浸透させる。
④
中塗り(UV2 回塗り)
中塗りは塗布管理により肉厚を持たせ、研磨を容易にさせる。
⑤
研磨
中塗り UV 塗膜の表面を均一に研磨することにより、上塗りの下地作りを行う。
⑥
補色→クリヤー
クリヤー塗装設備は、水洗ブース内に設置されている。縦型レシプロ,SUNAC1000Ⅱ・1 レシプロ×
4 ガン(ガンはパールガン AGB40 を装着)が、昨年 9 月から本格稼動を開始している。塗料供給ポンプ
には、PD40 を採用。2 液混合塗装システムとして稼動している(塗装システムは旭サナック㈱社製)。
(2)
塗装システムの特徴
上塗り(クリヤー)は、これまでスプレーガンによるハンド塗装が行われていたが、自動化による品質
の安定化とスラットコンベヤーの導入による生産効率のアップを目指して、塗装設備が導入された。
ガンの特徴を生かした塗装システムは
①
スプレーガンに比べて、低いエア圧で微粒化するために、高い塗着効率が得られる。
②
ノズルと塗料溜(たま)りのない経路が、ブツ不良を低減できる。
③
吐出量が安定しており、高い塗膜品質が得られる。
などの導入メリットが挙げられる。
UV 下塗りラインから、UV 中塗りラインおよび上塗りレシプロラインがそれぞれの特徴を生かして、
コンパクトに機能する効率的な塗装システムである。
上塗り後には、遠赤外線乾燥炉(40℃指触乾燥,速度:4m/min)に移行、最終乾燥(40℃,40∼60%)は
蒸気による乾燥が施されている。
科学の力で「木」を超えた木材としてさまざまな特徴を有する集成材。その強度は、実に木より 50%
ほど強いと言われている。
住空間における集成材の可能性は、測り知れないものがある。木質のもたらす付加価値と意匠性は、
われわれの生活環境に限りない創造性をもたらすことだろう。
本号の取材に当たっては、同社取締役製造副本部長梅村誠司氏をはじめ、現場スタッフの方々に大変
お世話になりました。
誌面を通じて、厚く御礼申し上げます。
(野)
▲回り踏板の上塗り塗装
▲レシプロ塗装機による上塗り作業(階段の回り段板)
▲レシプロ塗装機操作盤
ポンプは PD40