工場ルポ No.347 金属製品の粉体･液体塗装株式会社山形メタル〒996-0053 山形県新庄市大字福田字福田山 711-17 １．会社の概要第 347 回を迎えた今回の工場ルポは、山形県新庄市に本社･工場を構える㈱山形メタル新庄工場の液体･粉体静電塗装ラインを取材して紹介する。同社の創業は、昭和 49 年 4 月。当時、真室川大滝にて大滝電機の商号でスタート。昨年 9 月に創業地を離れ、新庄中核工業団地に工場集約を完了し、より効率的な工場運営を続けている。建設機械,工作機械向け板金加工などを手掛けるメタル事業,建材事業の二本柱を中心にして、建築用内外装パネルの製造,板金工事,金属建具の製造などを行っており、板金(切断(レーザー,プラズマ))→ 曲げ工程→塗装までの一貫生産工程を敷いているのが同社の強みだ。今回塗装工程に導入した設備は、昨年 2～3 月にわたって、第 2～第 5 塗装ブースに液体静電塗装システム SUNAC シリーズと粉体静電塗装システム,ハンド静電ガンなど塗装のグレードアップを目指した設備投資が大々的に行われた(塗装機器およびガン,システムは旭サナック㈱)。本号では、塗装システムの全容を工程別に取材してそれぞれの特徴をレポートした。２．塗装ラインと設備の概要新塗装工場は、全長 255m のコンベヤーラインで結ばれている。そのラインスピードは、2m/min。 (1)前処理の工程と設備前処理は、素材のアルミニウムとスチールでは若干の違いがあるが大まかに以下の工程で進行している。 ①予備脱脂(10～20min)→②本脱脂(10～20min)→③第 1 水洗→④第 2 水洗→⑤表面調整(0.5～1min) →⑥皮膜化成(スチール･1～5min)→⑦第 3 水洗→⑧エッチング(アルミニウム･1～5min)→⑨第 4 水洗→ ⑩第 5 水洗→⑪皮膜化成(アルミニウム 1～5min)→⑫第 6 水洗→⑬純水洗→⑭皮膜化成の工程で行われている。《塗装の工程》前処理工程を経たワークは、標準許容サイズはコンベヤー塗装ラインに架けられる。大物ワークは、大物塗装ステージで塗装される。コンベヤー塗装ラインで前処理を施されたワークが着荷されると第 1 ブース(溶剤下塗り)･自動静電塗装システム･SUNAC4430(1 レシプロ 4 ガン･ガンは EAB200 を搭載)を通過して第 2 ブースへ流れて行く。第 2 ブースは下塗り用の静電粉体塗装が行われている。塗装システムは、自動静電塗装システム･1 レシプロ 4 ガン 2 基(対面式)。ガンはコロナ帯電式自動ガン X-3a を装着。塗料は、エポキシ樹脂粉体塗料を採用して、80µ の膜厚を確保。粉体塗料は約 90%が回収されて、再利用されている。この後、ワークは焼き付け乾燥へと移行。塗膜硬化乾燥温度は、180～190℃×20min。ワークは、階上の第 3 ブースへと流れて行く。ここでは、中塗りを液体静電塗装と粉体静電塗装が行われている。液体静電塗装システムは、1 レシプロ 2 ガン･SUNAC5000i･ガンは EAB300 を搭載。粉体静電塗装システムは、1 レシプロ 2 ガン･コロナ帯電式自動ガン X-3a を装着。ワークによって、適切な塗装パターンを構築している。中塗りを終えたワークは、上塗りブースへと移行するが、この間に約 10min のセッティングゾーンを設けている。上塗りは、第 4 ブース。自動静電塗装システム(SUNAC4000i)･1 レシプロ 4 ガンが稼動。ガンは、EAB300 が搭載されている。ここでは、フッ素樹脂塗料が採用されており、ワークの耐候性付与に寄与している。上塗り乾燥は、170℃×15min。乾燥方式は、遠赤外線乾燥とガス熱風乾燥を併用したハイブリッド乾燥システムを採用したことで、設備のコンパクト化を実現したことと、乾燥効率をアップしたことで、約 20%の省エネを達成したことは注目に値しよう。 (2)大物塗装ステージ大物塗装を行うラインは、重量が 1t を超えるものがある。スチール扉などのカスタマー製品はそのサイズ、6000L×3500H×3500Wmm まで塗装可能である。塗装方式は、ハンドスプレーによって行われ、固定炉で乾燥されている。充実した塗装設備群。前処理工程から、下塗り,中塗り,上塗りへと塗膜品質にこだわるために各設備が機能的にかつ効率的に稼動しているのが大いに印象付けられた。本取材に当たっては、同社製造部庄司郁夫取締役部長をはじめ、現場スタッフの方々に大変お世話になりました。御礼を申し上げます。 (野) 新塗装工場の塗装設備レイアウト ▲粉体の補正塗装(手吹き) ▲自動粉体塗装制御盤 ▲塗料供給ポンプ(PD40) ▲上塗りの溶剤塗装ブース 1 レシプロ 4 ガンで、ガンはエア静電自動ガン EAB300