工場ルポ № 209 マグネシウム合金素材の塗装 共立工業㈱ 海老名工場 〒243-0435 神奈川県海老名市下今泉 1230 TEL(0462)32-2261 (1)海老名工場の概要 共立工業株式会社の創業は昭和 34 年 5 月。東京大田区東蒲田において金属製品の焼き付け塗装を 手掛けたのに始まり,漸次に業務を拡張してきている。現在,本社工場(東京都大田区仲池上)と 海老名工場(神奈川県海老名市)のほか,グループ企業として三協塗装,アイ電子技研,ミナミ企 業の 3 社を擁している。 今回,Mg(マグネシウム)合金の塗装を取材させていただくために訪ねた海老名工場は,昭和 54 年 10 月に竣工(しゅんこう)。券売機等の大型製品から電子機器部品などの細かい塗装まで,多品 種少量生産に即応した管理体制の下,≪前処理から塗装・シルク印刷・組み立てまで顧客ニーズへ 的確に対応し,ISO を見据え品質管理を第一に,価格の低減化,納期の迅速化を図り,地球環境を軸 に社会と共に発展していく≫ という企業指針が実践されている。 (2)塗装設備の概要 前処理のほか塗装は 3 分野のエリアに分かれており,パテ工場,組み立て工場等も備えている。 ≪前処理工場≫ ディップ方式による 7 槽の構成で,次のような工程で進行する。 酸洗い→水洗→脱脂→水洗→水洗→化成皮膜→水洗 ≪塗装工場≫ ① A ライン コンベヤー全長:100m(同速度:0.5∼3.5m/min) ワークの塗装条件によって吊(つ)り方式と網物(ゴンドラ)方式とが選定できる,2 ブース 設置されてあるためウェット・オン・ウェット塗装はじめ,色違いの製品でも比較的簡単に塗 装できる(1 回に 4 色まで対応),小ロットから大量品まで対応が容易など,多目的な使い方の できる手吹き塗装ラインである。 工程例:ハンガー掛け→塗装→セッティング→塗装→焼き付け乾燥(160℃×30min) ② B ライン コンベヤー全長:60m(同速度:0.8∼1.2m/min) 塗装装置:SUNAC1400 自動静電塗装システム(旭サナック㈱・1 レシプロ 4 ガン×1 基,ガン は EAB−30A)。 今年 1 月,旧ラインを改造して塗装装置を自動化,Mg 合金の専用ラインとして稼動。塗装ブ ース内はクリーンルーム化されゴミ不良を防止すると共に,多様な塗装仕様に応じたグレード の高い塗膜仕上げを推進できるのが設備設計上の狙(ねら)いになっている。 工程例:エアブロー→ハンガー掛け→エアブロー→塗装→焼き付け乾燥(165℃×20min) ③ 手吹き工場はラインに掛けられない大型製品や特殊塗装を行う。スプレーマンは 5 名。大型 金庫炉(幅 5×高さ 3×奥行き 2.2m)が設置されてある。 (3)Mg 合金塗装の特徴 同社において Mg 合金部品の塗装を手掛けたのは約 20 年前,ビデオカメラの筐体(きょうたい) を嚆矢(こうし)とする。Mg 合金はプラスチックより強度が高くてアルミ合金よりも軽く,リサイ クルの容易性,耐熱性および電磁波シールド性などの特性が注目され出し,パソコン,コンパクト カメラ,携帯電話,ミニディスク等の部材として急激に採用例が増えてきている。 この日,B ラインでは液晶プロジェクターの部品にシルバーメタリック(アクリル樹脂塗料)塗装 が行われていたが,Mg 合金素材は射出成型法(チクソモールディング法)によるもので,すでにノ ンクロムによる前処理が施され,SUNAC 自動静電塗装システムの得意とするメタリック仕上げが無補 正で実施されていた。B ラインにおける主な塗装ポイントを最後に挙げる。 ① 堅実な表面調整 Mg 合金の種類により表面が不安定な物があるが,丁寧なパテ作業で表面を平滑化している。ま た,たとえば表側のみの塗装を完璧(ぺき)に行うためにマスキング治具の設計開発に工夫が凝 らされてあり,塗料が裏側まで回り込んで電磁波シールド性を損なう事態を防止している。 ② 二重の検査体制 下塗りと上塗りの際,遮光灯検査ランプによるチェックを行い目視ではとらえ切れないゴミ・ ブツやヘコミを除去している。ことに下塗りラインにおける不良品のリカバリーは,上塗りライ ンの稼動率アップに結び付いていると同時に,ひいては製品のコストダウンヘと結実している。 ③ 行き届いた整理整とん 工場全体に言えることだが,まず溶剤の臭(にお)いが全くしないことである。そして,各部 署の整理整とんが行き届いており,徹底した品質管理姿勢が貫かれている。また,系列の電子産 業部門の技術が塗装部門にも応用され,自動化のレベルが高度なことも見逃せないであろう。 海老名工場の取材に当たり,徳山 孝代表取締役,徳山勝弘専務取締役はじめ,現場の方々に お世話になりました。厚く御礼を申し上げます。
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