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工場ルポ № 217 鉄鋼/アルミ/SUS/樹脂の塗装 エムケーシー工業㈱ 本社工場
〒561-0805 大阪府豊中市原田南 2-1-40 TEL(06)6862-5387
(1)本社工場の概要
大阪から伊丹空港までは,さほど遠くはない。 その伊丹空港に接するかのようにエムケーシー工
業株式会社・本社工場がある。一般の塗装専業会社とは少し趣を異にしていて,電材部品をはじめア
ルミ製の型材・建材部品,ステンレス製のマフラー等の塗装を主力に取り扱っているが,このほかに
も,機械器具の架台やケーブルラック等の製缶,アルミ・ステンレスの鈑金加工でも実績を上げてい
る。
「うちは,メラミン塗装から耐熱塗装,粉体塗装などの焼き付け塗装はもちろん,製缶した機械器
具を工場で塗装し,取り付け現場へ運搬する。 被塗物の素材も普通綱板はもとよりアルミ,ステンレ
スなど何でもこなしてしまう。
創業は金属塗装ですが,そのうち,その製缶を頼まれて手掛け始めたわけです。また,アルミ・ステ
ンレスの塗装をしていたら,今度は,その鈑金加工ができないかと依頼される。お客さんの要望とあ
らば,当社でできる仕事は応(こた)えてあげたい。うちに頼めば塗装,製缶,鈑金加工と一箇所で済ん
でしまう。それが,当社の特徴の一つかも知れませんね」と溝手 潔専務さんが会社の特徴を語って
くれた。
今回は,本社工場(豊中市)に新規導入された塗装ラインの取材であるが,このほか利倉工場,伊丹
工場,滋賀工場の 3 工場がある。
(2)塗装設備の概要
本社工場に塗装の自動化が完成したのは今年の 8 月。量産部品への対応をより効率的に図り,コス
トダウンを目指すためである。それまでは手吹きラインによる 3 ブース・ 6 人体制で,多品種に及ぶ
ワークをこなしてきている(塗装設備は利倉工場にもある)。
① 塗装ライン
コンベヤー全長:160m (同速度:2∼3m/min) 塗装装置:SUNAC1200 Ⅱ自動静電塗装システム(旭
サナック㈱),1 レシプロ 2 ガン×2 基(ガンは EAB30A を装着),3 色対応オートカラーチェンジャー2
基,使用塗料:メラミン樹脂やエポキシ樹脂塗料,セラミック塗料(ステンレス製のマフラー塗装)等。
ワーク最大寸法:L2400×W1000mm
《塗装工程例≫
ハンガー掛け→自動前処理(脱脂・水洗・化成処理・水洗・純水・純水ミスト)→水切り乾燥→
(手吹き前補正塗り)→自動静電塗装→自動静電塗装→(手吹き後補正塗り)→セッティング
→焼き付け乾燥(140∼250℃)→ハンガーからの取り外し
注 ワークの形状により補正塗りを行う
新設のラインは,焼き付け乾燥炉を建屋の 2 階部分に設置するなど,工場空間の高さを最大
限に利用した設計でコンパクトにまとめられている。 ことに厳しい防錆スペックを要求さ
れるワークに対しては,自動静電塗装によってエポキシ樹脂塗料をウェット・オン・ウェット
で仕上げるなど, 塗膜品質を格段に向上させている。
② アルマイト処理設備
アルミ素材のための処理槽で,工程は次の通りである。
脱脂→水洗→表面調整→水洗→クロメート皮膜→水洗→水洗→湯洗→水切り乾燥
(3)多品種少量に対応
「とにかく忙しいですわ。午前中に品物が入ってきて,その日の夕方に収める,なんていうのは日常
茶飯事です。製缶して出来上がった 5 個の部品を待っているから,すぐに塗って,というのもありま
すね。どこの塗装工場も似たり寄ったりではないですか,小ロットで多品種で急がされる。そうした
傾向ですよ」と,溝手 潔専務さん。毎日,塗装工程の段取りに腐心するもののお得意さんに対して
は,飛び込みの注文であろうと快くこたえてあげたい。 1 日に 10 色の色替えは当たり前にこなして
しまうのである。
今回の自動静電塗装ラインの導入により,従来の塗装時に比べて,生産性は確実に伸展してきてい
る。特に,折り込み部分のある形状のワークでは,自動静電塗装の前後における補正塗り作業を軽減
し,塗膜品質がさらに向上してきている。また,塗料使用量の削減も達成している。
「仕事が減って困っているという塗装工場が多いのに,エムケーシー工業さんの所は,どうして忙
しいのでしょうかね」と溝手 潔専務さんに質問すると,即座に「塗装の値段が安いからじゃないの。
だから儲(もう)けられないんです」と笑って答えてくれた。確かに,企業経営のうえから値段の安さ
は一つの要因ではあるが,私としては, それに加えてエムケーシー工業㈱が「塗装品質の信頼性と納
期の早さ」においても,抜群に優れた仕事でこたえ重宝なところを顧客が評価しているからだと実感
した。