さいたま市墓地行政の基本方針 【概要版】

さいたま市墓地行政の基本方針
4
【概要版】
孤立死等による無縁遺骨の状況及び動向の整理
〇孤立死等が発生し、最終的に遺骨の引き取り手が無い場合 ■ 無縁遺骨数(累計)の推移
(件)
累計(件)
は、無縁遺骨となり、専用の施設(以下「無縁遺骨用合葬 ■210
基本方針策定の経緯
1
180
施設」
)へ埋蔵されます。
 本市では、これまで市内5箇所の市営墓地の管理運営を行うとともに、民間墓地の経営許可等により墓
地行政の運営に取り組んできましたが、市営墓地については、平成24年度をもって新規の募集は終了
993
上で推移しています。
120
90
60
し、今後は返還された墓地の再募集のみとなっています。
530
431 479
15
11
48
33
398
30
〇無縁遺骨用合葬施設は、思い出の里市営霊園などに整備さ
1,200
1,096
150
〇純増数は、年々増加傾向にあり、近年では毎年 100 件以
1,400
1,216
0
22
51
592
658
17
12
62
66
722
798
20
6
1,000
884
8
10
86
76
64
800
5
7
109
600
400
120
103
200
0
れていますが、いずれも当初の予定数を超えている状況で
 しかし、超高齢社会に突入し墓地需要の増加が見込まれるなか、少子化・核家族化の進展、生涯未婚率
す。
無縁遺骨純増数
納骨後引取り
無縁遺骨用納骨施設内遺骨件数(累計)
の上昇など社会情勢の変化や、市民の墓地に対する考え方の変化等に対応することが求められています。
 平成25年度に庁内研究会を組織し、市営墓地の現状を整理する中で、承継者がおらず管理されなくな
5
市民意識調査と墓地需要数の推計
ってしまった墓地や孤立死等による無縁遺骨の問題への取組が必要であることが明らかとなりました。
 平成26年度は、墓地を取り巻く問題に関して更に調査を進め、新たに設置した「さいたま市墓地行政
のあり方研究会」の協力を得ながら、様々な角度から検討を行い、官民の役割分担や多様化する墓地ニ
ーズへの対応など、今後の墓地行政を総合的に展開していく際の基本的な考え方と、取組の方向性をま
とめた基本方針を策定することとしました。
〇市民が所有する墓地の状況や、今後の取得意向、墓地整備に対する考え方等を把握するため、市民を対象
としたアンケート調査を実施しました。調査の概要は以下のとおりです。
■ 墓地を取得する際に重視する事項(N=501、複
数回答)※1 番目=3 点、2 番目=2 点、3 番目=1 点として集計
市営墓地の概要
2
市民意識調査
0
200
400
600
800
1000
お墓の価格、維持管理費
○市内には、
「思い出の里市営霊園」
「青山苑墓地」
「諏訪入墓地」
「諏訪入第2墓地」
「善前墓地」の5箇所、
約 24,000 区画の市営墓地が整備されています。
400
600
800
1000
1200
1050
納骨堂
505
樹林型の合葬式墓地
交通の便
475
317
慰霊碑型の合葬式墓地
33
231
こだわらない
21
その他
15
295
こだわらない
247
無縁化防止など将来的な管理に対する安心感
○条例に基づく利用許可の取消し及び利用権の消滅の対象となる墓地数の推移は、年々増加傾向にありま
200
580
墓地の雰囲気や周辺の環境
○市営5墓地における墓地の公募結果をみると、毎年、公募数を申込数が上回っています。
0
個々に区画されたお墓
399
自宅からの距離
宗教的理由(宗旨・宗派)
※1 番目=3 点、2 番目=2 点、3 番目=1 点として集計
1200
1002
墓地の設置者に対する信頼や安心感
■ 取得したい墓地の形態(N=501、複数回答)
その他
118
45
す。
■ 市営5墓地の公募結果
(件)
3,500
(倍)
25.00
20.00
2,500
15.00
2,000
1,500
10.00
5.00
500
H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25
公募数 564 1,627 563
81
975
244
申込数 773 1,914 2,622 504 1,269 719
公募残 116
3
230
99
0
180
0
64
96
253
243
245
155
244 1,088 1,750 1,480 1,190 3,044
0
0
0
0
1
0.00
0%
160
141
140
120
111
40
20
0
23
19
39
30
平成23年度
平成24年度
3年以上滞納者
平成25年度
利用者死亡
平成26年度
○過去 15 年間(平成 10~24 年度)の市内における墓地の許可件数(新規及び区域変更含む)は 69 件、
27,632 区画でした。年間あたりの供給数は、平均すると約 1,800 区画となっています。
○過去 15 年間に許可された民間墓地のうち 38 施設を対象とした調査(平成 25 年度に実施)の結果、
空き区画数は約 7,500 区画となっています。
14.2
4.4
18.6
20~29 歳
20%
40%
60%
22.7
80%
45.9
26.7
30~39 歳
22.0
40~49 歳
22.4
50~59 歳
2.8
60~64 歳
11.8
39.8
100%
6.2
14.2
5.3
9.1
8.3
46.2
8.2
6.8 3.4
9.2
50.7
27.9
9.9
47.6
23.3
11.7
49.5
10.0
9.5
6.6
4.9
5.9 4.5
3.5 4.3 5.1
5.7 4.3
7.1
28.9
3.3
3.0
65~69 歳
70 歳以上
21.2
18.3
積極的に設置すべき
考え方が理解できない
所在不明
民間墓地の現状
0%
全体
32.6
心配事はない
その他
40%
22.9
お墓までの交通が不便
寺院、教会等の今後に対する不安
無回答
0
1.37 1.18 4.66 6.22 1.30 2.95 3.81 11.33 6.92 6.09 4.86 19.64
52
44
36
30%
承継者がいない又は今後いなくなるかもしれない
将来管理する墓地が増える可能性がある
60
20%
■ 年齢別の樹林型合葬式墓地についての考え方
(N=2,227、単回答)
8.3
お墓の手入れが行き届かない
73
34
10%
管理費が高い
承継者はいるが負担をかけたくない
96
100
80
1,000
倍率
■ 所有している墓地についての心配事
(N=1,175、複数回答)
(区画)
3,000
0
■ 市営墓地における利用許可取消及び利用権
消滅の対象となる墓地数の推移
43.5
17.0
42.3
12.7
承継者がいなければやむを得ない
その他
3.5 5.7
9.2
2.3
6.8
17.6
墓地として好ましくない
無回答
墓地需要数の推計
〇墓地行政の基本方針を検討するうえでの参考指標の一つとして、墓地需
要数の推計を行いました。推計結果は右図のとおりです。
〇平成 27 年から平成 46年までの墓地需要数の累計値は、48,847 件と
なります。1年あたり、平均して 2,054~2,792 件の間で需要が発生
し続ける見込みとなります。
年平均
累計
H27~31
2,054
10,269
H32~36
2,335
21,943
H37~41
2,589
34,888
H42~46
2,792
48,847
今後の墓地行政の方針と取組
6

本市の墓地行政が抱えている課題を踏まえ、今後の市全体の墓地のあり方として、以下の3つ
の方針を念頭に取り組む必要があります。
さいたま市の墓地行政が抱えている
課題
需要量・供給量に関する課題
1)墓地需要への対応
・新たな墓地区画の量的確保
2)社会情勢に見合った適正
な墓地供給
・将来的な空き区画の増加や
無縁化の進展を考慮した
墓地供給

墓地行政の基本方針の実現に向け、官民がそれぞれに取り組む必要がありますが、市営墓地と
しては、早急に取り組むべき短期的な取組と、中長期的な取組の以下の内容を中心に進めます。
基本方針1
墓地需要に対し、官民の役割分担による墓地供給を図ります。
①短期的な取組
これまで本市では、約 24,000 区画の市営墓地を供給し、市営墓地で対応しき
れない墓地需要に対しては、境内墓地・共同墓地・事業型墓地といった民間墓地
がその受け皿となっています。
市営墓地では、承継者がいない方や経済的な不安を抱える方が安心して利用で
きる、「承継者が不要」で「安価な料金」の墓地の供給、孤立死等による無縁遺
骨への対応等といった福祉的な視点からの墓地の供給及び墓地の公共空間とし
ての活用を中心に進めていく必要があります。
民間墓地に対しては、引き続き市が適正な審査を実施しながら、立地場所、取
得時期、デザイン等を自由に選択できるという特性を活かし、これまで同様に墓
地供給の中心的な役割を担うことを期待します。
こうした役割分担を図りつつ、将来的に市全体で供給過多とならないよう需給
バランスを注視しながら対応していきます。
墓地ニーズに関する課題
1)墓地ニーズの多様化
・合葬式墓地(樹林型)など新
たな墓地形態へのニーズ
墓地の無縁化に関する課題
1)市営墓地の無縁化
・
2)民間墓地の無縁化
・無縁化が疑われる墓地の追
跡調査や維持管理の問題
1)人生の終末期における福
祉的サービスの役割
・承継者がいない方でも安心
して利用できる
2)誰もが親しめる緑豊かな
公共空間としての活用
・緑豊かな地域の憩いの場
■ 合葬式墓地整備による墓地問題への対応のイメージ
無縁化墓地の整理
ソフト面の
有効性
無縁化した墓地の改葬先として利用す
ることで、無縁化した墓地の整理が可
能
土地の有効活用
無縁化が予想される墓地の共同埋蔵場
所として利用することで、無縁化を防
止
基本方針3
多くの市民が市営墓地の利用を望んでいることや、公共施設である市営墓地で
は施設利用者が管理にかかる費用を負担する「受益者負担」の考え方が原則であ
ることから、市営墓地における管理料の滞納は市民感情面の問題があるだけでな
く、公共財産の適正な利用、さらには今後の墓地の維持管理・運営に影響を及ぼ
すこととなります。
民間墓地においても、管理料の滞納が経営面に影響を及ぼすだけでなく、追跡
調査や維持管理等が負担となりつつあります。
そのため、官民を問わず、墓地の無縁化防止に向け、適切な維持管理に努める
とともに、無縁化しないための仕組みづくりに取り組む必要があります。市営墓
地では、無縁化が疑われる墓地の整理と、あらかじめ合葬墓へ改葬することや使
用期限を設けるといった無縁化防止策の導入を検討し、循環利用を進め、市営墓
地における取組を、民間墓地の参考となるよう積極的な周知を行っていきます。
多様なニーズへの対応
ハード面の
有効性
家族構成や社会情勢の変化による、新
しい墓地形態に対するニーズに応える
ことが可能
新たな墓地形態や利用方法を導入し、ニーズの変化に対応します。
社会情勢や家族形態の変化により、市民が求める墓地の形態や利用方法にも変
化が生じており、官民が利用者のニーズを捉え、対応していくことが望まれます。
「将来の承継者がいなくなる」といった不安や、
「承継者を必要としない墓地」
といったニーズの変化に対応するため、墓地に使用期限を設けることや、合葬式
墓地や樹林型合葬式墓地の整備を行う必要があります。こうした墓地について
は、市が先導的な役割を果たしていきます。
一方、依然としてニーズの高い個別に区画された墓地の供給は、民間墓地の協
力を得ながら進め、市全体でニーズの変化に対応していきます。
少ない面積に多くの遺骨を埋蔵するこ
とで、土地を有効に活用。長期の供給
や使用料を安価に設定することが可能
墓地の無縁化防止
基本方針2
墓地を適切に管理するため、無縁化防止に努め、循環利用を進めます。
市営墓地に求められる役割の変化
市営墓地の取組
無縁化墓地の改葬整理による循環利用の推進
①改葬整理に向けた無縁化墓地の判断基準と具体的な改葬手法の
検討
②合葬式墓地を利用した無縁化墓地対策
③期限付き墓地(個別に区画された墓地)の整備
④利用者要件の見直し
孤立死等による無縁遺骨への対策
①埋蔵方法の見直し
②発生数や費用を検証し、合葬施設整備についての検討
②中長期的な取組
墓地需要の見直し
①短期的な取組の効果や、埼玉県及び民間墓地の供給状況を踏まえ
た墓地需要の検証
②社会情勢等を踏まえた見直し
公園型墓地の整備に向けた検討