学習メモ

科学と人間生活
テレビ学習メモ
第 18 回
地学編
科学と人間生活監修・執筆 杵島正洋
地球の活動がもたらす景観と災害
今回学ぶこと
地球は活発に活動する惑星である。地表をおおうプレートの運動により、
巨大な山脈など地表にはさまざまな地形や景観がもたらされる。一方、
プレートが運動することで、その境界の周辺ではしばしば、大きな地震が生じたり火山が噴
火したりする。私たちが暮らす地球の活動と上手に付き合うため、プレートや地震、火山活
動について、理解を深めよう。
調べておこう・覚えておこう
⃝プレート(プレート運動)
⃝山脈(ヒマラヤ山脈) ⃝地震
⃝火山(火山活動・噴火)
⃝マグマ
地球のエネルギーとプレート運動
▼
地球は十数枚のプレートに覆われている。プレートとは厚さ 100km 程度の硬い岩盤で、そ
の下のやや軟らかい層(アセノスフェア)の上を、毎年数 cm ずつ動いている。
プレートとプレートの境界では、プレート同士が離れたり押し合ったりしてさまざまな地形や
景観をつくる。ヒマラヤ山脈のような険しい巨大山脈、東アフリカの大峡谷など、地上や海底の
大規模な地形は、たいていプレート運動がつくったものである。
こうしたプレート運動のエネルギーは、地球内部の膨大な熱がもたらしている。地球内部の熱
が地表に流れ出す際、マントルの岩石を大きく対流させる。これがプレートを動かす原動力になっ
ている。
− 37 −
高校講座・学習メモ
科学と人間生活
地球の活動がもたらす景観と災害陽
プレートの境界と地震
地球上で起きる地震の大半はプレート境界で発生している。日本列島周辺は 4 枚のプレート
が押し合い、海側のプレートが列島の下に沈み込んでいる。このとき、沈み込むプレートが陸側
のプレートを引きずり込み、限界に達すると陸側のプレートが急に跳ね上がって地震となる。
2011 年の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)もこのしくみで発生した。
プレート同士が衝突するところでも地震が頻繁に発生する。ここではプレート同士の押し合い
で地盤が盛り上がるように変形し、険しい山脈ができる。また日本列島のように、プレートの押
す力が陸側の地盤に活断層をもたらし、断層の食い違いが大きくなって山脈になることもある。
火山のでき方
火山もプレート境界に集中する。日本列島の場合、沈み込んだプレートが地下 100km 以深
でマグマを生じさせる。これにはプレートが運び込んだ水が大きく関与する。水分子はマントル
の岩石を融解させてマグマをもたらし、上昇して地表のすぐ下にマグマだまりをつくる。ここで
含まれる水が水蒸気の泡を形成すると、マグマの体積が急増し、マグマは岩盤をつき破って地表
に噴き出す。これが噴火である。
マグマの成分や粘性の違い、含まれる水の量の違いなどにより、噴火のしかたやできる火山の
げたような火山ができる。
column
▼
形が違ってくる。粘性の低いマグマからは傾斜の緩やかな火山が、粘性が高いとマグマを盛り上
地球上には地震や火山活動など、私たちの社会に被害をもたらすさまざまな現象がある。
こうした活動は永遠に続くのだろうか。特に地震や火山と付き合いながら暮らす日本として
は、切実な疑問ではないだろうか。答えは、Yes。地震や火山活動の原動力は、放送でも
紹介するように地球内部の熱である。熱が十分に放出されて内部が冷めきったとき、マント
ルの対流は止まり、プレートも動かなくなる。けどそれは、はるかに先のこと。人類が登場
して 500 万年ほど、この先さらに 500 万年続くとしても、そのくらいでは地球内部はまだま
だ熱いまま。実際には、冷めた分を補うように地球内部では放射性元素が崩壊して熱を生
じており、それらが尽きるまで地球内部の温度はあまり下がらないだろう。
ただしプレートが動くことは、人類にとって悪いことばかりではない。放送でも火山の恵
みを取り上げているが、地震をもたらすプレート運動がなかったらどうだろう。高い山地は
徐々に風雨に削られ、砕かれた岩や砂は下流に運ばれる。逆に、海底の深いところは徐々
にこうした土砂で埋め立てられて浅くなる。地球の標高は次第に平均化してくるが、その平
均は海面下 2800m。つまり完全に平均化してしまうと、
地球上から陸地が消失してしまうのだ。
ヒマラヤ山脈をはじめ多くの場所で、かつて海底だった証拠やその地層が残っているが、
これは私たちの暮らす陸地がたえずプレート運動によって維持されている、ということでもあ
る。地震を伴うプレート運動で海底が持ち上げられたり、火山が噴火して新たな陸地がつく
られたりすることは、長期的に見れば私たち陸上生物にとって大事なしくみなのかもしれない。
− 38 −
高校講座・学習メモ