地域紛争と民族問題を考えよう

政治・経済
学習メモ
第3章 現代社会の諸課題 [第 2 節]国際社会の諸課題
第 41 回
地域紛争と民族問題を考えよう
講師:升野伸子
今回学ぶこと
政治分野の学習で、冷戦後も世界では地域紛争が起こっていることを学びました。今
回は、パレスチナ問題を例に、原因や歴史的な背景を理解していきましょう。そして、
このような地域紛争に対して、日本がどのような取り組みを行っているのか、私たちは
何ができるのか、考えていきましょう。
パレスチナ問題って何 ?
ユダヤ人は、2000 年近く前に、国を追
別や迫害にあいました。その最大のものが、
シリア
ゴラン高原
▼
ヨルダン川
第二次世界大戦中のナチスドイツによる虐
レバノン
地 中 海
われ世界を流浪してきました。その間、差
殺でした。
第二次世界大戦後、国際社会はパレスチ
ヨルダン川西岸地区
ナの地にユダヤ人国家であるイスラエルの
建国を認めました。しかしそれは、そこに
ガサ地区
⦿エルサレム
死海
住んでいたパレスチナ人を追い出すことで
もあったのです。
諸国からの支援を受け、イスラエルはアメ
リカからの支援を受け、何度かの戦争 ( 中
東戦争 ) が起こりました。この間、およそ
エジプト
イスラム教徒のパレスチナ人は、アラブ
イスラエル
ヨルダン
0
50km
イスラエル占領地域
パレスチナ自治拡大協定(1995)
パレスチナ自治対象地域
400 万人のパレスチナ人が難民になるなどしています。また、イスラエルが壁を築いて分
− 87 −
高校講座・学習メモ
政治・経済
地域紛争と民族問題を考えよう
断を固定化しようとすることに対し、土地を追われたパレスチナ人がテロ行為を行うなど、
対立が続いています。
対立はなぜ起こるのか
パレスチナ問題は、ユダヤ人とアラブ人が宗教が原因で対立しているように見えますが、
実際にはどちらがどこに住むか、どの土地を得るかという争いの側面も持っています。世界
各地を見てみると、異なる宗教の人たちが共存している国もたくさんあります。
共存のヒントは、経済的にある程度豊かになると、失うものが多い戦争を避ける傾向があ
ることではないでしょうか。
平和国家 日本
日本はパレスチナ問題に対して、どのよう
なことができるのでしょうか。ここでは、柔
道を通して、イスラエルとパレスチナの間に
友情を育み、それによって平和を築いてい
こうという活動を紹介します。
▼
スポーツを通じて、共に汗を流し、将来
的には血を流すのではない関係を作ってい
こうとするものです。今は点の活動であって
も、将来は線になってほしいという山下泰
裕さんの言葉が印象的でした。
パレスチナで柔道を指導する山下泰裕さん 平和憲法を持ち、第二次世界大戦後に一度も他国の人を戦争で殺害したことのない国で、か
つ経済的な繁栄を手にした日本は、欧米とは異なる意味で評価されていることも思い出してく
ださい。
− 88 −
高校講座・学習メモ