高校地学教育の現状

G04-08
高校地学教育は盤石か?
Is the Earth Science Education of High School at the Stable Standing ?
滋賀県立大津清陵高等学校・通信部
Shiga Pref. Ohtsu-seiryo High School
中島 健
K. NAKAJIMA
(JpGU 29 Apr. 2014)
内 容





学習指導要領にみる理科の変遷
理科教科書需要数の変遷
理科国内総学習量
理科教員試験合格者数
高校地学の現状と展望
学習指導要領にみる理科の変遷
 設定科目(標準単位数)と必履修要件
全日制3年間で102単位中
理科が12~16単位
(12~16%!)
学習指導要領にみる理科の変遷
 設定科目(標準単位数)と必履修要件
3年間で90単位中
理科は4~14単位
(4~16%!)
3番手に地学基礎が滑り込めるか!?
理科教科書需要数の変遷
 指導要領改訂と「地学」
4倍増!
いやぁ~めでたいめでたい・・
需要数には教師用等も含まれる。
また定員割れや留年・不登校なども
考慮されていない。
(履修した実生徒数とは一致しない)
データは「内外教育」による
昨年度より新学習指導要領に基づく高校理科の
新カリキュラムが始まりました。今年度、「地学基礎」
の教科書採択数は23万冊を越え、その履修率は、
前学習指導要領での「地学Ⅰ」のそれに比べ3倍近い
増加となり、地学履修率の低下に歯止めがかかり、
久々の朗報となりました。
(JpGU教育問題検討委員会シンポジウム報告)
ホンマでっか?
理科教科書需要数の変遷
 指導要領改訂と「理科」
必履修5科目を比べると・・・
要するに,たったこれだけの中の話!
31.6万人
ほぼ高1で全員が履修(128万人)
する英Ⅰなどに対して ≒24%!
化学基礎や生物基礎に遠く及ばず,
(高校生のほぼ8割!)
科学と人間生活(43万)よりも少ない!
(3人に1人はこれ+1科目で理科がおしまい!)
いまどきの高校生にとって
「理科3科目6単位必修」
の負担がいかに大きいか!?
もしかして教員側にも
(定数,スキル・・・)
理科教科書需要数の変遷
「躍進する物理」
 過去の改訂と「地学」
IB
IA
基礎
Ⅰ
理科総合の必履修化で大打撃!
(地学ⅠA+ⅠB→地学Ⅰ で半減)
→地学基礎になり持ち直したようにも見えるが・・・
「総合系」では・・・
B(生地)
A(物化)
3位入賞?
縦
軸
の
違
い
を
そ
ろ
え
る
と
・
・
・
こんなのが残って・・・
「安泰の化学と生物」
理科教科書需要数の変遷
 過去の改訂と「地学」
「科学と人間生活」があれば
理科2科目4単位で済む!
総合理科,理科基礎・理科総合A・B,
科学と人間生活
→「基礎総合系」
○○ⅠA・ⅠB, ○○Ⅰ, ○○基礎
→「○○基礎系」
○○Ⅱ,○○Ⅱ,○○
→「○○発展系」
も含めてみると・・・
やっぱり地学はこんだけ~(32万)の話
理科教科書需要数の変遷
 過去の改訂と「地学」
発展系でも躍進する物理や生物!
(30~40万)
地学 はどこ?
1万前後で伸びる気配なし!
センター試験科目の決定により,せっかくの
地学→「地学基礎演習」への早速の変更も
教科書は2012~14年度分合計(≒現高校生数)で
数1など(約382万冊)に対し,理科全部で約1373万冊
→ およそ 3.6冊/人 と見積もれる
(普通科理系では5冊/人にもかかわらず・・・)
理科教科書需要数の変遷
 「科学と人間生活」
というわけで,地学教育にとって
というより理科教育全体にとって
決して無視できない存在の
(高校生の3人に1人が学ぶ!)
「科学と人間生活」について,
ポスターセッションで発表します。
G04-P01 「科学と人間生活」の問題点と可能性
3階ポスター会場。コアタイム18:15~19:??
理科国内総学習量
 国民はどれくらい地学を学んできたか
国内総学習量(GDL)=Σ(各科目履修者数×標準単位数*)
地学領域:
2001年 → 2007年 → 2014年
90万
89万
88万[人単位]
今回,量(履修者数)は増えたが,
質(GDL)では躍進したとはいえない!
*履修者数
実は教科書需要数
*標準単位数
(2001) 地学IA=2,地学IB=4,
地学II=4,総合理科=1
(2007) 地学I=3,地学II=3,
地学I=3,地学II=3,
理科総合B=1,
理科基礎=0.5
(2014) 地学基礎=2,地学=4,
科学と人間生活=0.4
(基礎総合系科目の換算は上記)
必履修単位数の減少!
理科国内総学習量
 国民はどれくらい地学を学んできたか
国内総学習量(GDL)=Σ(各科目履修者数×標準単位数*)
予稿の訂正
GDLの計算式を間違えていました。
すみません。
2001年→2007年→2014年
地学
90万
89万
88万
物理 295万
263万 260万
化学 495万
392万 347万
生物 515万
358万 358万
理科国内総学習量
 国民はどれくらい地学を学んできたか
今回,量(履修者数)は増えたが,
質(GDL)では躍進したとはいえない!
退潮傾向続く理科にあって
健闘中の地学の現状維持には
履修者数増の効果が大きい!
ということは・・・
1人当たり学習量は
激ヤセ
ではないか!
内容はどうなった??
理科国内総学習量
 地学基礎の内容
(資料:河合塾)
・科学的な視点,思考,
論理をたどることが
ほとんどなくなる!
・数式をほとんど
扱わなくなった!
・原理・法則の成立
過程を考えず,
結果としての用語
暗記が中心
・しかも出版社により
不統一が甚だしい!
いったい誰が,
どうやって教えるの?
理科国内総学習量
 GDLのもう一つの意味
GDL=履修者数(人)×標準単位数(単位)
↓ 1講座あたりの人数を 40人/講座 とすると
GDL÷40=講座数(講座)×標準単位数(単位)
↓ 教員1人あたりの持ち時間を 16講座・単位 とすると
GDL÷40÷16=担当教員必要数(人)
地学教員
生物教員
化学教員
物理教員
2011
2012
1311
1193
5572
6329
6063
5154
4115
3950
理科教員17000人中
地学は全体の12分の1
いればよい!?
2013
1299
5967
5994
4247
2014
1375
5593
5427
4061
し・か・し
地学担当教員は
わずかでも増えて
いかねばならない!
地学教員の
無配置校の存在!
理科教員試験合格者数
 「地学」を専門とする高校教員
都道府県・政令市の教員採用試験2011~2014年度合格者数
(資料:東京アカデミー)
地学専門はたった2%!
北海道(4),青森,岩手,
秋田,山形,茨城(4),
群馬(2),静岡(3),大阪(17),
広島(5),山口(2),香川,
熊本(3),宮崎(2),沖縄(4)
理科教員必要数(44276)÷38×4
=4661
←入替数
理科教員試験合格者数
 「地学」を専門とする高校教員
都道府県・政令市の教員採用試験2011~2014年度合格者数
(資料:東京アカデミー)
実は中高のくくり募集がある
このうちどれだけが
高校地学を担当する?
理科教員試験合格者数
 「地学」を専門とする高校教員
前回の改定以来,「地学」専門で採用される教員は
ほとんどいない(2%)!→退職補充なし!
→若手がいない!
いったい誰
が
今後の地学
を
背負うのか
!?
背負い手がなくなれば,
お荷物は捨てられるだ
け・・・
理科教員試験合格者数
てんでばらばらな
教科書単元の配列と
出題範囲もミスマッチも・・・
 「地学」を専門とする高校教員
ちなみに
某大手の高2模試(11月;47万人余受験)結果によると・・・
わずか 647人! 「地学を教えてるけどよくわからん」先生に教わった
「地学はとったけどよくわからん」生徒層の増加?
わずか 9.6%(それでも 4倍増!)
受験者
得点率
180000
160000
140000
120000
100000
80000
60000
40000
20000
0
50
40
受験者
30
得点率
20
地学
生物
化学
物理
地学基礎
生物基礎
化学基礎
0
物理基礎
地学
生物
化学
物理
地学基礎
生物基礎
化学基礎
物理基礎
10
高校地学の現状と展望
 基礎科目2単位化と地学基礎
「何を伝えたいか」を十分吟味しないまま,
「あれもこれも」とりあえず残した。
↓
内容が網羅的・羅列的・暗記的になり,
総合的・系統的に「考えさせる」ことが少ない。
「だれでもできる地学」に近づいた反面,
地球をシステムとして捉えることができなくなった。
「何を伝えたいか」の精選が必要
※4単位地学には期待できないし・・・
高校地学の現状と展望
 「生き残り」のために
旧来の「地学」にとらわれず、
思い切って脱皮する必要がある!
「物理をやってくれば
いいよ」という研究者の
楽観論は正しいか?
本当に生きるために必要だと
周りから認められれば,
全員必修も可能に!
必要だから学ばせる
必要だから学ぶ!
防災・減災・環境
覚えるだけで
資源・エネルギー
センター試験
高得点
天地人
etc.
午後の提案に期待しましょう・・・
参考・引用資料
・ベネッセコーポレーション:平成25年度11月高2模試結果
・時事通信社:高校教科書採択状況,内外教育,2001.1~2014.1
・河合塾:新課程「地学基礎」と現行課程「地学Ⅰ」の項目比較,
http://www.kawai-juku.ac.jp/analysis/pdf/geo_siryo_03.pdf
・桑原淳・遠西昭寿:学習指導要領の改訂に伴う地学領域の内容の変遷,名古屋地学,70
・宮城晴耕:新学習指導要領「地学基礎」「地学」,理科資料,66
・宮嶋敏:教育問題検討委員会主催・地学教育シンポジウム報告,
http://www.jpgu.org/whatsnew/130518symposium_report.pdf
・文部科学省生涯学習政策局調査企画課:学校基本調査,
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001011528
・旺文社教育情報センター:新課程「地学」は“新教科書なき入試”に!,今月の視点,
http://eic.obunsha.co.jp/viewpoint/20120901viewpoint
・大阪府教育センター:学習指導要領の変遷に見る「理科教育」の移り変わり,
http://www.osaka-c.ed.jp/kak/karikenweb/webpdf/webcur/wc10rika/wc1001.pdf
・高橋喜彦:高等学校地学の学習指導要領の変遷,天気,18
・東京アカデミー:教員採用試験結果,http://www.tokyo-ac.jp/adoption/outline/high1/
ご静聴,ありがとうございました。