テレビ学習メモ 科学と人間生活 監修:菅 原 大 介 生物編 #4 第5回 微生物の利用 今回学ぶこと みそ、ワイン、納豆などの発酵食品の製造には、微生物は欠かせない。私 たちの生活を微生物たちが支えている。また、命を支える微生物たちもいる。 微生物が作る抗生物質は、感染症の治療や予防に役立っている。大腸菌を使 った遺伝子組換えの技術は、医薬品など有用な物質の大量生産を可能にした。 学習前チェック 発酵食品の製造には、どんな微生物がかかわっているのだろうか。病気に 効く抗生物質にはどんなものがあるのだろうか。また、最近よく聞くように なったバイオエタノールとは、どんなものか調べてみよう。 酵母菌は、生育と増殖に必要なエネルギーを得る。 ▼ : 発酵食品と微生物 パンは、アルコール発酵で作られている。昔、小麦 ヒトは、発酵によってできた食品を飲んだり食べ は煎って食べられていたが、その後、小麦粉に水を たりしてきた。発酵食品には、みそ、しょう油、ワ 加えて食べるようになった。そこに偶然、酵母菌が イン、パン、チーズ、納豆などがある。発酵とは、 入って発酵した。それを焼いたものが、今日のパン 微生物を利用して炭水化物などの有機物を分解する になったといわれている。日本酒やビールも酵母菌 反応をいう。 によって作られている。 発酵食品を作るのに代表的な方法に酵母菌を使っ 微生物の働きにより、タンパク質などの有機物が たアルコール発酵がある。アルコール発酵では、糖 分解され、悪臭を放ったり人間に有害な物質ができ 分がアルコールと二酸化炭素に分解される。同時に、 たりする場合は、腐敗と呼ばれる。 − 10 − 高校講座・学習メモ 科学と人間生活 微生物の利用 : 科学の進歩と微生物 : バイオエタノールと微生物 1929 年、イギリスのフレミングは、アオカビが 石油に代わる燃料として注目されているのが、バ 細菌の生育を止めるはたらきがあることを発見した。 イオメタンやバイオエタノールだ。 そして、その生育阻害効果がある物質をペニシリン バイオエタノールは、トウモロコシやジャガイモ と名づけた。微生物によって作られ、ほかの微生物 などを原料にし、酵母菌の発酵で作られている。し の生育や機能を阻害するものを抗生物質という。 かし、ヒトの食糧や家畜のエサを原料にするため、 ペニシリンは、発見から 13 年後、薬剤として実 価格を下げることが難しい。最近の研究では、生ゴ 用化され、第二次世界大戦で、多くの人命を感染症 ミを原料にしたバイオエタノールの研究がすすんで から救った。 いる。 遺伝子組換え技術により、微生物を使って医薬品 などを作る研究が行われている。大腸菌は、短期間 に増殖できるため、目的の物質を生産するのに利用 されている。例えば、糖尿病の薬として知られるイ ンスリンは、遺伝子を操作した大腸菌によって、工 業的に製造されている。 ▼ 今回のまとめ 微生物を利用して炭水化物などの有機物を分解する反応を発酵という。 微生物のアオカビが作る抗生物質のペニシリンは、フレミング(イギリス)によっ て発見された。医薬品として利用され多くの人命を救った。 石油に代わる燃料を作るため、生ゴミを使ったバイオエタノールの研究がすすんで いる。 − 11 − 高校講座・学習メモ
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