Pictet Market Monthly

ご参考資料
ピクテ・マーケット・マンスリー 2015年4月発行
新興国株式市場 注目のトピックス集
Pictet Market Monthly
新興国、注目のトピックス集
3月の新興国株式市場は、ドル高や商品市況の軟調な展開を背景とした上旬の下落が影響し、月間では値下がり
しました。注目のトピックスでは、国際社会の関心が高い中国アジアインフラ投資銀行(AIIB)や、ようやく底を打った
かに見える原油価格の動向などについて取り上げました。
3月の新興国株式市場
注目のトピックス
3月の新興国株式市場は月間で下落しました。月初は、2月の
米雇用統計で非農業部門雇用者数が市場予想を大きく上
回って増加したことなどを背景に米国の利上げ実施が早まる
との観測が強まり、ドル高が進行し商品市況も下落したことか
ら、新興国株式市場は先進国以上に下落しました。その後、
欧州中央銀行(ECB)が月間600億ユーロ規模の債券購入を
開始したことや、主要新興国の金融緩和、米連邦公開市場委
員会(FOMC)後の声明を受け米国の利上げ開始時期を巡る
市場の想定が後ずれしたことなどを背景に、新興国株式市場
は上昇しました。
今後の見通し
地域
国
トピッ クス
ペー ジ
中国利下げの背景と今後の
見所
2
予想を超えた中国貿易統計
の何故
3
中国、地方政府債務の債券
交換のメリット、デメリット
4
韓国も予想外の利下げだが
5
中国アジアインフラ投資銀
行(AIIB)に欧州勢参戦
6
締め切り迫る、アジアインフ
ラ投資銀行
7
利上げでもレアルが軟調な
理由は
8
ブラジル、土俵際の粘りだ
が
9
チリ
チリを例に、これからの新興
国通貨を見る
10
南ア
低成長でも南ア中銀が政策
金利を据え置いた理由は?
11
底打ち感が見られる原油価
格
12
中国
アジ ア
長期的には新興国の先進国を凌ぐ高い成長見通しには変わ
りありません。中間所得層の持続的な拡大や構造変化が新
興国の成長を後押しすると考えます。
引き続きウクライナや中東情勢、ロシアの制裁問題など地政
学リスクには注視が必要ですが、米国をはじめ世界的な景気
回復は新興国経済および企業にもプラスになると考えられま
す。中国では、景気支援に向けて追加利下げや国有企業改
革や経済構造改革を加速するとの期待が、新政権が誕生した
インドなどでも経済改革期待が高まっています。米国の量的
金融緩和が終了し利上げが視野に入っており、新興国市場へ
の資金流入が減少するとの見方もありますが、流動性の面で
は日銀やECBは量的金融緩和を継続しており、先進国におけ
る十分な供給が今後も当面続くとみられます。米国の金利上
昇は新興国のなかでも米ドルでの資金調達の依存度の高い
トルコ、ブラジル、インドネシア、南アフリカなどにマイナスの影
響を及ぼすため注意する必要があると見ています。
こうした状況下、株式のバリュエーション(投資価値評価)につ
いては、株価収益率(PER)や株価純資産倍率(PBR)は先進
国株式に対して相対的割安感が高まっています。また、配当
利回りは過去平均を上回り、先進国株式と比較しても相対的
に高い利回りとなっており、魅力的な水準です。主要新興国は
通貨安傾向にあり新興国通貨の割安感が増しています。また、
足元では、新興国企業は利益改善に向けてコスト削減や設備
投資の圧縮を進めています。このため、世界景気の回復によ
り需要が回復した場合には、大きく株価が反発する可能性が
あると見ています。
韓国
ブラジル
南米
ア フリ カ
グローバル
(※将来の市場環境の変動等により、コメントの内容が変更さ
れる場合があります。)
ピクテ投信投資顧問株式会社
巻末の「当資料をご利用にあたっての注意事項等」を必ずお読みください。
1
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新興国株式市場 注目のトピックス集
中国利下げの背景と今後の見所
中国の国会に当たる全国人民代表大会(全人代)のわ
ずか5日前に中国人民銀行が政策金利を引き下げたタ
イミングはややサプライズとして受け止められています
が、利下げの背景と見られる要因にも注目すべきと思
われます。
中国政策金利引き下げ:3ヵ月間で2回目の
利下げで一段の金融緩和へ
中国人民銀行(中央銀行)は2015年2月28日に政策金利で
ある貸出基準金利(1年物)を5.6%から0.25%引き下げ5.35%に、
また預金基準金利(1年物)を0.25%引き下げて2.5%にすると
発表しました。実施は3月1日となります(図表1参照)。また、
これまで基準金利の1.2倍としていた預金金利の上限を1.3
倍に引き上げました。
人民銀は2014年11月に約2年4ヵ月ぶりの利下げを実施しま
した。また、2015年2 月4日には、幅広い金融機関を対象に
した預金準備率の引き下げを発表、今回の利下げはそれら
に続く動きで、人民銀は世界の他の中央銀行と同様に金融
緩和を推進する傾向となっています。
どこに注目すべきか
中国政策金利、上海銀行間金利、実質金利
中国の国会に当たる全国人民代表大会(全人代)のわずか5
日前のタイミングで人民銀が政策金利を引き下げたことがサ
プライズとして受け止められていますが、利下げの背景と見
られる次の要因にも注目すべきと思われます。
まず、2014年11月の利下げやその後の預金準備率の引き下
げなど一連の緩和策が浸透していない点です。例えば、上海
銀行間金利はじり高となっています(図表1参照)。また、利下
げの恩恵が期待されていた不動産市場の回復が鈍いのは、
最近の当局の緩和策にもかかわらず、金融機関が住宅ロー
ン金利の引き下げなどに消極的という見方もあります。
次に、実質金利(名目金利から(期待)インフレ率を差し引い
たもの)が割高となっている点です(図表2参照)。中国の実質
金利を振り返ると、金融危機前後に変動が高まった時期を除
けば、足元の水準は高く、景気への下押し圧力となる懸念が
あります(図表2参照)。
今後の展開ですが、今回の利下げだけでは効果は不十分と
見ており再度の利下げの可能性が高いと見ています。
なお、補足的に、プラス面を2つ加えると、1つ目は市中銀行
が設定できる預金金利の上限基準金利を引き上げたことで、
金利自由化へさらに踏み込んだ点です。2つ目は市場も追加
利下げを期待していると見られることから、人民元安が進行し
たことです。資本流出に注意は必要ですが、先進国の回復を
加えて輸出が下支えされる可能性もあると見ています。
図表1:中国の政策金利と銀行間金利の推移
(日次、期間:2014年2月28日~2015年3月2日)
6
%
5
上海銀行間金利1週間(左軸)
貸出基準金利(1年物、右軸)
主要政策金利
4
銀行間金利
上海銀行間金利
14年5月
6.25
6.00
2014年11月
0.4%の利下げ
3
2
14年2月
%
14年8月
5.75
2015年2月
預金準備率引
き下げ
14年11月
5.50
5.25
15年2月
図表2:中国実質金利と製造業PMIの推移
(月次、期間:2005年2月~2015年2月)
実質金利(左軸、逆メモリ)
-2
60
%
中国 製造業PMI(右軸)
-1
0
景気指標は鈍
55
い動き
1
2
50
3
4
45
5
6
金融危機(2008年)
40
7
前後に実質金利
逆メモリのため下に向かう
8
の変動高まる
ほど実質金利が高い
9
35
05年2月
07年2月
09年2月
11年2月
13年2月
15年2月
※実質金利:貸出基準金利-消費者物価指数(前年同月比)を使用
※PMI:製造業購買担当者景気指数(50が景気拡大、縮小の目安)
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
※コメントは2015年3月2日時点
ピクテ投信投資顧問株式会社
巻末の「当資料をご利用にあたっての注意事項等」を必ずお読みください。
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新興国株式市場 注目のトピックス集
予想を超えた中国貿易統計の
何故
2015年2月の中国貿易統計は輸出は市場予想を上回り、
輸入は市場予想を下回りました。全人代で中国政府は
構造改革の推進を維持する方針と見られるだけに、中
国経済の下支え要因のひとつとして純輸出に注目して
います。
中国貿易統計:1~2月の輸出は海外の回復
を受け予想を超える前年同期比15%増
中国税関総署が2015年3月8日発表した2015年2月の輸出
は前年同月比48%強増加し、市場予想の14%増を上回りま
した。ただ春節(旧正月)の連休時期が2014年と異なるため、
統計にはゆがみが指摘されています。それでも、ゆがみが
少ない1、2月を合わせた数字で輸出を見ても前年同期比で
15%増となっています。2月の貿易黒字は606億ドル
(約7兆3,200億円)と、2015年1月に記録した過去最高額(60
0億ドル)を上回りました。1、2月の対米輸出は人民元建てで
年初来前年比21%増、東南アジア諸国連合(ASEAN)向けは
同38%増加しています。
李克強首相は3月5日に始まった全国人民代表大会(全人代、
国会に相当)の政府活動報告で、中国経済の問題点として
過剰生産能力や革新不足などを指摘しています。中国政府
は2015年の貿易目標を6%増に設定しています。
どこに注目すべきか
中国製造業PMI、燃料価格、輸出、人民元
図表1:中国製造業PMIと輸入(前年同月比)の推移
(月次、期間:2012年3月~2015年2月)
35
%
25
15
5
0
-5
-15
-25
12年3月
54
輸入(前年同月比、左軸)
中国製造業PMI(右軸)
53
52
51
50
※PMIは50が景気拡大・縮小の目安
13年3月
49
14年3月
図表2: 人民元(対ドル)レートと貿易収支の推移
(日次、期間:2012年3月5日~2015年3月5日、貿易収支は月次)
6.4 人民元/ドル
安 人民元 高
2015年2月の中国貿易統計は輸出は米国向けなどの回復を
受け市場予想を上回り、輸入は燃料価格の下落などを背景
に市場予想を下回りました。全人代で中国政府は経済成長
に多少目をつぶっても構造改革の推進を維持する方針と見
られるだけに、中国経済のプラス材料のひとつとして、純輸
出に注目しています。
今回の貿易統計に関連して以下の点に注目しています。
まず、輸入がマイナスとなった要因は国内需要の鈍化と燃料
など輸入価格の下落と見られます。通常、製造業購買担当
者景気指数(PMI)などに示される中国国内の経済活動と(原
材料の)輸入の方向性に緩やかながら関係が見られます(図
表1参照)。そのため、足元のPMIの低下傾向が輸入の減少
に寄与した可能性が考えられます。また、輸入の足元の大幅
な減少は主にエネルギー価格下落による輸入価格の低下が
背景と見ています。例えば、原油の輸入数量は年初来前年
比+4.5%であるのに対し、輸入金額は約-44%と大幅に落ち込
んでおり、価格下落の影響が大きくなっています。
次に輸出が好調だったのは、米国や景気が底堅い東南アジ
ア向けを中心に輸出が回復したことが予想を上回った要因と
見ています。また、今後はユーロ圏の回復が視野に入る可能
性もあると見ています。ただし、今後は人民元の動向にも注
目しています。昨年の利下げ(図表2参照)頃から、他の新興
国同様、中国も通貨(人民元)安が進行していました。中国は
追加的な金融緩和政策を維持するなど人民元安要因はあり
ますが、燃料価格下落などは短期的要因といえ、貿易収支が
過去最高額水準で推移するならば、人民元安の勢いに変化
が見られる可能性もあり注目しています。
億ドル
606億ドル
6.3
6.2
6.1
6.0
12年3月
600
100
人民元(左軸)
貿易収支(右軸)
13年3月
2014年11月の利
下げ頃から、人
民元安傾向
14年3月
-400
15年3月
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
※コメントは2015年3月10日時点
ピクテ投信投資顧問株式会社
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新興国株式市場 注目のトピックス集
中国、地方政府債務の
債券交換のメリット、デメリット
中国全人代閉会後の記者会見で、李首相は中国地方
政府の資金調達事業体を規制することで地方の金融リ
スクを未然に防ぐと述べていますが、発言の背後にある
と見られる地方政府債務の債券への交換に注目してい
ます。
中国財政省:地方政府債務の債券への交換
容認で地方政府の負担軽減の可能性
中国当局は地方政府が抱える高利回り債務の一部につい
て、債券への交換を容認する方針です。中国の地方政府債
務は市場関係者の間では3兆ドル(約362兆6,000億円)超と
みられており、今回の措置で、こうした債務に関する地方政
府のコスト軽減の可能性が考えられます。
中国財政省がウェブサイトで発表した2015年3月8日付資料
によると、政府は 最大1兆元(約19兆3,000億円)相当の債
務をより利回りの低い地方政府の債券に交換することを認
める方針です。報道によれば財政部は年間で最大500億元
相当の利払い負担が削減できると試算しています。ただし、
対象となる債務の種類や債権者に関する具体的な説明は
現段階では行われていない模様です。
どこに注目すべきか
中国地方政府債務、城投債、期間ミスマッチ
2015年の成長目標を7%前後に設定したことが注目された中
国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)は2015年3
月15日に閉幕しました。李首相は閉会後の記者会見で、中
国地方政府の資金調達事業体を規制することで、地方の金
融リスクを未然に防ぐと述べていますが、発言の背後には
地方政府債務の債券への交換があると見ており注目してい
ます。
まず、中国の地方政府債務の残高は、中国審計署(会計検
査院に相当)が2013年末に公表したデータ(図表1参照)か
ら3兆ドル(約18兆元)程度と市場では予想されています。
次に、地方政府の債務を構成する資金の調達方法に注目
すると、債務の6割程度は銀行借り入れです。城投債(融資
平台を中心に発行される債券)や地方政府債券等の残高合
計の1割程度で、残りの多くが信託融資(理財商品に相当)
等となっています。銀行借り入れのコストに比べ、城投債を
含め信託融資などの調達手段のコストは高いと見られます。
今回の(借換債の発行による)地方政府債務の債券への交
換により、期待されるメリットは主に次の2つです。
1つ目は、地方政府の債務負担の軽減です。地方政府が銀
行借り入れ以外の方法で調達している資金の調達コストは通
常借り入れ金利より高く設定されていますが、債券にすること
で金利(コスト)が低く抑えられることが期待されます。
2つ目は、期間ミスマッチの解消です。地方政府はインフラ投
資など長期のプロジェクトに投資する一方、調達は短期資金
に頼るというミスマッチが見られました。より長期の債券に切
り替えることで、期間ミスマッチが徐々に解消に向かうことが
期待されます。
中国当局は2014年後半から、地方政府債務について「減らす
だけ、増やさない」を基本方針に、地方政府の債務の情報収
集を行い、残高の整理、処理の優先順位について検討を進
めており、その成果の一つが地方政府債務の債券交換であ
ると見られます。格付け会社フィッチ・レーティングスは今回の
件について前向きな見解を表明するなど今のところ一定の評
価が得られています。
ただし、デメリットも考えられます。(信託融資などの)利回り
が下がる場合、投資をしていた投資家の不満が高まる可能
性が懸念されます。また、地方政府債務の債券への交換は
内容の詳細が公表されていないため確認する必要はありま
すが、目的は地方政府の救済と見られ、モラルハザードも気
になるところで、債務交換の内容の詳細に注意が必要です。
図表1:中国地方政府債務残高の推移
(時点:2010年、2012年、2013年)
20 兆元
地方政府債務残高
15
債券発
行など
信託融
資など
10
銀行借
り入れ
5
0
2010年
2012年
2013年
出所:審計署、各種報道等を基にピクテ投信投資顧問作成
※コメントは2015年3月16日時点
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新興国株式市場 注目のトピックス集
韓国も予想外の利下げだが
韓国の利下げの注目点を声明文などに捜し求めると、
デフレ懸念、韓国経済の内需の不振と、米国など海外
の金融政策の変更の3点が主な焦点であることが伺え
ます。
韓国金融通貨委員会:市場予想に反し利下
げ、政策金利は過去最低の1.75%に
韓国銀行(中央銀行)は2015年3月12日の金融通貨委員会
で政策金利である7日物レポ金利を2%から0.25%引き下げ過
去最低となる1.75%に引き下げました(図表1参照)。市場で
は大半が金利据え置きを予想していました。利下げの理由
として声明では内需の不振が続くことへの懸念とデフレ、外
的要因として海外の金融政策の変更などをあげています。
どこに注目すべきか
インフレ率、潜在成長率、海外金融政策
韓国の利下げの注目点を声明文などから捜すと、デフレ懸
念、韓国経済の内需の不振と、米国など海外の金融政策の
変更の3点が主な焦点であることが伺えます。
1点目は、デフレ懸念です。韓国の直近のインフレ率である
2月の消費者物価指数は前年同月比で+0.5%と低下傾向が
継続しています(図表1参照)。ただし、韓国中銀は声明文で
原油価格の影響も注目点にあげています。韓国中銀のイン
フレ目標は2.5%~3.5%でインフレ率が目標を下回る展開が続
く中、今回は利下げで対応した格好ですが、韓国中銀が今
後も緩和姿勢を続けるかを占う上で、インフレ率低下の原因
をどの程度、原油価格下落と見るかにも注目しています。
2点目は、内需の不振です。韓国のGDP(国内総生産)成長
率を見ると、2014年通年では+3.3%と概ね潜在成長率(報道
によると韓国中銀は同国の潜在成長率を2014年10月に3.5%
としています)程度となっています。ただし、GDP成長率を四
半期ごとに見ると低下傾向です(図表2参照)。その上、成長
率の内容を見ると主なプラス項目は在庫投資のマイナス寄
与の縮小で、内需の主な項目である民間消費は前年同期
比+1.4%、総固定資本形成も+1.1%と低水準です。一方、輸出
も足元では円安・ウォン高の影響や石油関連製品の価格下
落を受け不振となっています。ただし韓国は中国との自由貿
易協定(FTA)の2015年内の発効が見込まれており、締結と
なれば輸出の下支えとなる可能性もあります。
3点目は海外の金融政策の変更です。声明文では主な国々
の金融政策変更をモニターすると述べており、米国だけでなく、
他の中央銀行の動きにも注意を払っている模様です。米国に
ついては対ドルでウォン安が進行する中(図表2参照)、韓国
中銀は資本逃避に対する懸念を表明しています。一方で、中
国や、昨日のタイのようにアジアの多くの近隣諸国が緩和姿
勢を示していることから、今回の利下げにより調整を図った格
好となっています。しかし、韓国中銀の資本逃避への懸念も
強いと見られることから、韓国中銀は当面、米国をはじめ各
国の金融政策動向を当面注視するものと思われます。
韓国中銀は今後公表予定の韓国経済予測でインフレや内需
の動向を確認しつつ、他の国の金融政策を視野に入れなが
ら慎重に政策運営を行うものと見ています。
図表1:韓国政策金利と消費者物価指数(CPI)の推移
(日次、期間:2012年3月12日~2015年3月12日、CPIは月次)
4
3.0
%
%
2.5
3
2.0
2
1.5
1.0
1
韓国政策金利(左軸)
0.5
消費者物価指数(右軸、前年同月比)
0
0.0
12年3月
13年3月
14年3月
15年3月
図表2:韓国ウォン(対ドル)レートとGDP推移
(日次、期間:2013年3月12日~2015年3月12日、GDPは四半期)
1,180 ウォン/ドル
1,150
1,120
1,090
1,060
1,030
1,000
13年3月
5.0
%
韓国ウォン(対ドル,左軸)
韓国GDP(右軸、前年同期比)
4.0
3.0
2.0
2014年
10-12月
期 2.7%
14年3月
1.0
15年3月
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
※コメントは2015年3月12日時点
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新興国株式市場 注目のトピックス集
中国アジアインフラ投資銀行
(AIIB)に欧州勢参戦
中国が主導する、インフラ投資を主要目的としたAIIBに
対して、米国を筆頭に西側諸国は参加に否定的でした
が、3月末が締め切りといわれる創設メンバーに英国が
名乗りを上げたことで反AIIB陣営に亀裂が生まれた格
好です。
アジアインフラ投資銀行:独仏伊3ヵ国が中国
主導のアジアインフラ投資銀に参加へ
ドイツ、フランスとイタリアは2015年3月17日、中国主導のア
ジアインフラ投資銀行(AIIB)に参加する方針を明らかにしま
した。英国はすでに3月12日にAIIB参加の意向を表明してい
ます。ドイツ財務省は声明で、ユーロ参加国のこれら3ヵ国
が将来的な創設メンバー国になる意向があるとし、AIIBには
アジアで必要とされている大規模なインフラ事業に資金を提
供する上で重要な役割を担うと説明しています。
AIIB設立には2014年10月にインドやベトナム、シンガポール、
タイなど21ヵ国が覚書に署名していましたが、その後参加を
表明する国も増えています(図表1参照)。
AIIBは中国が主導する開発金融機関であることから、アジ
ア開発銀行(ADB)などの既存機関に対抗する存在となる可
能性があります。米国ホワイトハウスのアーネスト報道官は
3月17日の定例会見で、中国主導のAIIBに参加する計画は
ないと改めて表明するなど懸念を示しています。日本も菅義
偉官房長官が17日の閣議後会見で、米国同様参加に慎重
な姿勢を維持しています。
どこに注目すべきか
韜光養晦、人民元自由化、一帯一路
国の人民元の自由化の進展も、この積極的な外交政策の延
長上にあると見ています。
次に投資プロジェクトの魅力です。2015年末に創設が予定さ
れているAIIBの投資先プロジェクトへの関心は徐々に高まっ
ています。例えば、AIIBが投資(シルクロード基金に加えて)
する可能性のある「一帯一路」(陸のシルクロードと海のシル
クロードのインフラ整備、開発で中国から欧州にまたがる壮
大な計画)は関係国に多大なビジネス機会が期待されていま
す。既存の開発金融機関であるアジア開発銀行は一帯一路
に匹敵するプロジェクトは打ち出すにいたっていません。
参加国の顔ぶれにも大きな変化が見られます。最近になって
新たに参加を表明した英国、ドイツ、フランス、イタリアは投資
資金を拠出する側であり、今まで資金を受ける側に偏ってい
た創設メンバー構成から一歩、先へ進んだ印象です。
最後に大切な点として、改めて中国の存在感を認識する必要
があることです。中国はAIIBに参加を表明した多くの国の輸
出相手国で上位となっています。例えば、現在参加を表明し
ていないものの可能性が示唆されている韓国の最大の輸出
相手国は中国です。北朝鮮の脅威を考えれば、国防上、米
国との関係を尊重すべき韓国でさえもAIIB参加が噂されるほ
ど中国の存在感は高まっていると見るべきと思われます。
図表1:AIIBに参加を表明した国
(時点:2015年3月17日)
中国主導でインフラ投資を主要目的としたAIIBに対して、米
国を筆頭に西側諸国はAIIB参加に否定的でしたが、3月末
が締め切りといわれる創設メンバーに英国が名乗りを上げ
たことで反AIIB陣営に亀裂が生まれた格好です。AIIB創設メ
ンバー参加を巡り、改めて中国の存在感(プレゼンス)が脚
光を浴びる中、以下の点に注目しています。
まず、中国の外交政策の積極化です。中国外交の基本方
針は以前は「韜光養晦(とうこうようかい)(国力が整うまで、
国際社会で目立たずに力を蓄える)」と表現されたこともあり
ました。しかし、中国の経済力が存在感を高める中、中国は
今後、対外投資などを通じ海外への進出を積極化させてい
くと見られます(今日のヘッドライン2015年1月5日参照)。中
地域
国名
アジア
中国、ASEAN10ヵ国、インド、スリランカ、ネパー
ル、パキスタン、バングラデシュ、モンゴル
中東
サウジアラビア、オマーン、カタール、クウェー
ト、ヨルダン
大洋州
モルディブ、ニュージーランド
欧州
ウズベキスタン、タジキスタン、カザフスタン
英国、ドイツ、フランス、イタリア
※ASEAN10ヵ国:インドネシア、カンボジア、シンガポール、タイ、フィリピン、
ブルネイ、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、ラオス
出所:各種報道等を使用しピクテ投信投資顧問作成
※コメントは2015年3月18日時点
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新興国株式市場 注目のトピックス集
締め切り迫る、
アジアインフラ投資銀行
中国がAIIBを設立したのは中国の経済的な存在感の
高まりに加え、国際通貨基金(IMF)やADBなどの国際
開発銀行との関係も背景と見られることから、この点を
踏まえて注目点を述べます。
アジアインフラ投資銀行:参加新たな手法で
資金支援目指す
米国の慎重姿勢にもかかわらず、中国が主導して2015年設
立を目指すアジアインフラ投資銀行(AIIB)について2015年3
月の創設メンバー締め切りを前に国際社会の関心が急速
に高まり、40ヵ国超が最終的に創設メンバーとなる可能性
があります(図表1参照)。今後は融資目標や承認手続き、
融資条件概要の策定作業に入る模様です。
アジア開発銀行(ADB)の試算では、アジアでは2010年から
2020年の間にインフラ関連で約8兆ドルの資金ニーズを見
込んでいます。
くなる可能性もあります。
次にADBと協力関係が築けなかった場合の投資効率の低下
が懸念されます。AIIBよりも資本が厚いADBは2017年の資本
増強後でさえ年間の融資枠は200億ドルにすぎず大規模プロ
ジェクトではADBとAIIBが協力して融資する必要も想定されま
す。しかし対立を抱えたままでは協力関係に不安が残ります。
このような懸念に対し、変化の兆しも見られます。米国のルー
財務長官は3月18日の議会証言で米国議会がIMFのクォータ
見直しを承認しないことに苦言を呈し、既存制度の維持に固
執することに対して警告しています。
議論の余地は残りますが、既存と新規の銀行の対立の構図
は結局投資スケールを小規模にしてしまうことが懸念されます。
図表1:AIIBに参加を表明、検討している主な国
どこに注目すべきか:
AIIB、クォータ、格付け、融資枠
(時点:2015年3月28日)
中国主導のAIIBへ参加を表明する国が増えていますが、中
国がAIIBを設立した背景には経済的な存在感の高まりがあ
ることを「今日のヘッドライン(2015年3月18日号)」で指摘し
ています。加えて国際通貨基金(IMF)、ADBなど既存の国
際開発銀行との関係も設立を後押ししたと見られます。
まず、中国がAIIB設立を決意するきっかけのひとつといわれ
るのがIMFの出資金(クォータ)をベースに配分する投票権
の問題です。IMFは拡大する新興国の声の反映に向け2011
年のIMF総会で改革(第14次増資)を決定しました(図表2参
照)。しかし米国議会は現在もクォータ見直しに必要な予算
を承認していません。また、アジア開発銀行を見ると、日本
と米国の出資割合が各々約15.6%であるのに対し中国は約
6.4%で、ADB総裁は歴代日本人が就任しています。つまり、
中国の経済的な存在感の高まりに伴う、既存のシステムに
対する不満もAIIB設立の背景に見え隠れします。
その結果日本と米国が取り残された格好となっており両国
はAIIBへの対応に苦慮していますが、中国またはAIIBにとっ
ても米国などとの対立を抱えての運営には懸念が残ります。
例えば、米国抜きでAIIBを設立した場合の格付けはADBの
ように最高格付けが取得できるか不透明で、調達コストが高
地域
国名
中国、ASEAN10ヵ国、インド、スリランカ、ネパール、パキ
アジア
スタン、バングラデシュ、モンゴル、韓国、インド
サウジアラビア、オマーン、カタール、クウェート、ヨルダ
中東
ン、トルコ
大洋州 モルディブ、ニュージーランド、オーストラリア、
欧州
ウズベキスタン、タジキスタン、カザフスタン
英国、ドイツ、フランス、イタリア、スイス、オーストリア、オ
ランダ、デンマーク
出所:各種報道等を使用しピクテ投信投資顧問作成
図表2:IMFのクォータ(出資金)上位の主な国々
20%
※IMF投票権を15%以上もつと
重要事項に対する拒否権を保
持できる仕組みで現状米国だ
けが拒否権を持つ
15%
10%
現状
第14次増資時
5%
0%
米国
日本
ドイツ
フランス
英国
中国
出所:国際通貨基金(IMF)のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
※コメントは2015年3月30日時点
ピクテ投信投資顧問株式会社
巻末の「当資料をご利用にあたっての注意事項等」を必ずお読みください。
7
13
ご参考資料
Pictet Market Monthly
新興国株式市場 注目のトピックス集
利上げでもレアルが軟調な
理由は
ブラジル中銀の0.5%の利上げは上昇傾向が続くインフ
レへの対応と見られます。一方で、相次ぐ利上げにも関
わらずレアルの下落が続く状況で、足元レアル安の背
景として財政健全化の進展とペトロブラス問題に注目し
ています。
ブラジル政策金利:ブラジル中銀、政策金利
を0.5%引き上げ、2009年以来となる12.75%へ
ブラジル中央銀行は2015年3月4日の金融政策委員会で政
策金利を0.5%引き上げ、12.75%とすることを決めました(図表
1参照)。0.5%の利上げは3会合回連続で、2014年10月に
0.25%の利上げを実施していることから、4回連続の利上げと
なります。景気回復が鈍い中、インフレ率上昇への対応を維
持した格好です。市場では大半が0.5%の引上げを予想して
いたと見られます。金融政策委員会の声明によると、今回の
決定は全会一致で、マクロ経済シナリオとインフレ見通しを
考慮した結果だったと述べています。
に不協和音が高まる可能性があります。2014年10月の大統
領選挙では僅差で再選したルセフ大統領の政権基盤は磐石
でない面もあるだけに、財政健全化を進めるには、議会対応
に手腕が求められる局面です。
ブラジルは景気動向などに懸念はあるものの、財政再建を重
視するルセフ新政権の姿勢について、格付け会社からもある
程度評価されている面もあるだけに、財政健全化路線の維持
とペトロブラスの捜査の行方に、当面は注意を払う必要があ
ると思われます。
図表1:ブラジル政策金利とレアル(対ドル)の推移
(日次、期間:2012年3月5日~2015年3月4日)
13
%
12
11
今回、ブラジル中銀の0.5%の利上げは上昇傾向が続くインフ
レへの対応と見られます(図表2参照)。一方で、相次ぐ利上
げにも関わらずレアルの下落が止まらない状況です。足元の
レアル安の背景として以下の点に注目しています。
まず、注目は、ルセフ大統領と連立を組むブラジル民主運動
党(PMDB)のレナン上院議長がルセフ大統領の税制優遇措
置を縮小する計画を議会で拒否したことです。財政健全化を
優先しているルセフ第2期政権ではレビィ財務相のもと、税制
優遇措置の撤廃や補助金削減のため政府管理価格の上昇
容認を進めてきました。しかしレナン上院議長の対応を見る
と反対も根強く、景気回復が鈍い中で、財政健全化法案が議
会で否決されることが懸念されます。
次に、国営石油会社ペトロブラスの不正献金問題です。ブラ
ジル検察当局は3月3日、不正献金問題で政治家を対象とす
る捜査の許可を最高裁に求め、報道によると、検察は政治家
を含む54人を対象とした捜査への承認を求めた模様です。
政治家の関与の有無が今後の焦点となる見込みです。
その上、ペトロブラスの不正献金問題の捜査にPMDBの議員
が含まれている可能性もあり、捜査をめぐって、連立政権内
2.5
10
安 レアル 高
どこに注目すべきか
税制優遇措置、ペトロブラス、格付け
9
8
7
12年3月
13年3月
3.0
レアル/ドル
政策金利(左軸)
レアル(対ドル、右軸)
14年3月
2.0
1.5
15年3月
図表2:ブラジル消費者物価指数(前年同月比)の推移
(月次、期間:2010年3月~2015年2月)
7.5
%
消費者物価指数
インフレ率目
7.0
(IPCA-15、前年同月比)
標上限=6.5%
6.5
6.0
5.5
※足元、インフレ率は
5.0
上限を超えて上昇中
インフレ率目標=4.5%
4.5
4.0
10年3月
11年3月
12年3月
13年3月
14年3月
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
記載された銘柄はあくまでも参考として紹介したものであり、その銘柄・企
業の売買を推奨するものではありません。
※コメントは2015年3月5日時点
ピクテ投信投資顧問株式会社
巻末の「当資料をご利用にあたっての注意事項等」を必ずお読みください。
8
13
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Pictet Market Monthly
新興国株式市場 注目のトピックス集
ブラジル、土俵際の粘りだが
格付け会社スタンダード&プアーズ(S&P)はブラジルの
ソブリン格付けを投資適格級で最も低い格付けである
BBB-(マイナス)で据え置くと発表しました。目先の格
下げ懸念が後退したことはレアルにはプラス要因と思わ
れます。
ブラジル格付け:S&PブラジルをBBB-(マイ
ナス)で据え置き
格付け会社スタンダード&プアーズ(S&P)は2015年3月23日、
ブラジルのソブリン格付けを投資適格級で最も低い格付け
であるBBB-(マイナス)に据え置くと発表しました(図表1参
照)。見通しは「安定的」で維持するとしています。S&Pはリリ
ース文の中で、ブラジルが景気低迷と政情不安にもかかわ
らず緊縮財政への対応などを継続していることで、ブラジル
政府に対する信頼の回復と、将来的には財政の改善と一段
と力強い成長につながるとの見方を示しています。
どこに注目すべきか:
ブラジル長期債格付け、構造改革、スワップ
図表1:ブラジル長期債格付けの推移
(期間:2005年3月31日~2015年3月23日)
ABBB+
BBB
BBBBB+
BB
BB-
投資適
格格付
外貨建て長期債
自国通貨建て長期債
05年3月
08年3月
11年3月
14年3月
※ブラジル長期債格付け:S&Pの外貨建て並びに自国通貨建て格付けにつ
いて各月末時点の格付けを表示
図表2:レアル(対ドル)レートの推移
(日次、期間:2014年3月24日~2015年3月23日)
安 レアル 高
米国の利上げを視野に新興国通貨が全般に軟調な中、ブラ
ジルレアルはインフレ率の高止まりや景気減速、足元では
ルセフ大統領の支持率低下を背景に大幅なマイナスとなっ
ています。加えて、格下げ懸念とブラジル当局のレアル安容
認姿勢観測もマイナス要因でしたが、格付けについては今
回の据え置きで最悪の事態は回避できたものの、他の懸念
要因には依然注視が必要と見ています。
まず、ブラジルの長期債格付けを確認すると、S&Pは外貨建
て格付けを投資適格債ぎりぎりのBBB-としています。ムー
ディーズ・インベスターズ・サービス(ムーディーズ)とフィッチ
・レーティングス(フィッチ)はブラジル長期債(レアル建て、
外貨建て共に)の格付けを最低投資適格債から1段階上の
BBB (または相当する)としています。見通しはムーディー
ズは弱含み(ネガティブ)ですが、フィッチは安定的(ステーブ
ル)です。今回S&Pもブラジルの見通しを安定的とした点は
レアルにとってプラス材料と見ています。
S&Pがブラジルの格付けを据え置いた理由は新政権の構造
改革への取り組み姿勢を評価したためで、今日のヘッドライ
ン2015年2月24日号に概ね沿った内容です。ルセフ第2期政
権がブラジル・コストとも言われる管理価格への改革を進め
ていることや、インフレ対応を重視した金融政策も評価して
います。さらにS&Pは長期的な経済成長の要因として、民間部
門のインフラ投資への参加拡大への期待を述べるなど、構造
改革と経済成長のバランスに配慮した内容となっています。
足元レアルは米国の利上げ時期後退観測などを受けやや回
復していますが(図表2参照)、今は汚職問題で強烈な逆風の
ルセフ政権ですが、政策内容の評価が高まる可能性もあると
思われます。
なお、足元、市場ではブラジル当局はレアル安容認との見方
もあります。中銀が3月のレアル安の進行で通貨スワップによ
る対応を控えた等が理由です。ブラジル中央銀行のトンビニ
総裁に対する上院の公聴会が3月24日に予定されており、3
月末終了予定の通貨安抑制プログラムの継続の有無が注目
されています。すでにスワップ規模を縮小していることから既
存スワップの残高維持ならばレアルに中立と見ています。
3.3
レアル/ドル
3.0
レアル(対ドル)
2.7
2.4
2.1
14年3月
14年6月
14年9月
14年12月
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
15年3月
※コメントは2015年3月24日時点
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9
13
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Pictet Market Monthly
新興国株式市場 注目のトピックス集
チリを例に、
これからの新興国通貨を見る
米国の量的金融緩和の終了や利上げを意識し始めた
2014年後半から新興国の通貨は全般に軟調ですが、
同じ新興国の中でも国により変動度合いに違いが見ら
れます。チリを例に、相対的に変動が小さい要因を振り
返ります。
チリ中央銀行:市場の予想通り、政策金利は
据え置き、利下げには慎重なトーン
チリ中央銀行は2015年3月20日に政策会合を開催し市場予
想通り政策金利(翌日物誘導レート)を3.00%で据え置くこと
を決定しました。2014年10月に利下げを行った後、5会合連
続で政策金利を据え置いています(図表1参照)。
声明の中でチリ中銀は、インフレ率は今後数ヵ月許容できる
範囲(インフレ目標上限=4%)を超える見込みであると述べ
ています(図表1参照)。また、チリ国内の金融市場には金融
緩和の影響を反映した動きとなっているとも指摘し、追加利
下げの可能性には慎重なトーンとなっています。
どこに注目すべきか:
通貨騰落率、銅価格、経常収支
など産業の分散が進んでいる点もプラス要因と思われます。
次に、債務、特にドル建債務が相対的に小さいことです。新興
国で米国の利上げが懸念される理由のひとつは過去のドル
建債務が累積した国の返済が懸念されるためで、その点、チ
リのような国は相対的に影響が小さいと思われます。
最後に、経常収支の改善傾向です。新興国通貨安の原因の
ひとつが経常赤字(例えばフラジャイル5)であったものの、通
貨安は経常収支の改善に寄与し、原油安(石油輸入国にとっ
て)のプラス寄与も伴うことで、経常収支は改善傾向です。た
だし、内需不振による輸入の減少が貿易収支の改善を助けて
いる面には注意が必要です。
新興国通貨は米国金融政策次第で、変動の大きい展開も想
定されますが、今回指摘した要因以外にも様々な要因が影響
を与えると考えられることから、分散投資が重要と考えます。
図表1:チリの政策金利と消費者物価指数(CPI)の推移
(日次、期間:2013年3月20日~2015年3月20日、CPIは月次)
5.5
%
%
4.5
インフレ
目標上限4%
3.5
インフレ目標
3%(±1%)
政策金利(左軸)
消費者物価指数(前年同月比、右軸)
2.5
13年3月
13年9月
14年3月
14年9月
6
5
4
3
2
1
0
15年3月
図表2:チリペソ(対ドル)と銅先物価格の推移
(日次、期間:2014年3月20日~2015年3月20日)
安 ペソ 高
米国の量的金融緩和(QE3)の終了や利上げを意識し始め
た2014年後半から新興国の通貨は全般に軟調です。今後
の新興国通貨市場の動向は米国次第という面はあるものの、
同じ新興国の中でも国により変動度合いに違いが見られま
す。チリをひとつの例に、注目すべき要因を振り返ります。
まず、過去1年の新興国通貨の騰落率をランキングで見ると、
上位グループ(騰落率プラス~マイナス5%程度)には人民元
などアジア通貨が顔をそろえます。一方、チリは同じ南米の
ペルーとともに第2グループ(-10%前後)に属します。
通貨市場の動向を見るうえで、注目点は以下の通りです。
まず、チリの場合は銅市場の動向です。新興国は産業の分
散化が進んでいないケースが多く、例えばチリは銅、ナイジ
ェリアやガーナなど産油国は原油に依存しています。チリ中
銀の声明にもあるように、銅価格は足元底打ちの兆しも見ら
れます(図表2参照)。また、世界金属統計局(WBMS)による
と、銅の需要と供給は若干供給過剰は見られるものの、概
ね均衡している模様です。ナイジェリアやガーナなど産油国
が原油価格の下落を受け最近相次いで格下げされている
状況とは異なり、三大格付け会社はチリの見通しを安定的
としています。チリは銅産業だけでなく、食料品や化学製品
660
チリペソ(対ドル、左軸)
ドル 7,500
銅先物価格(右軸)
ペソ/ドル
630
600
570
540
14年3月
2014年10月:
米国QE3終了
14年6月
14年9月
14年12月
7,000
6,500
6,000
5,500
5,000
15年3月
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
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新興国株式市場 注目のトピックス集
低成長でも南ア中銀が政策金利
を据え置いた理由は?
最近、韓国やタイが予想外の利下げを実施する中、イ
ンフレ懸念後退や低成長率など同様の経済環境の南
アの金融政策に注目しましたが、声明から判断して、当
面政策金利を据え置き、引き締め姿勢を維持するもの
と見ています。
南アフリカ準備銀行:政策金利を5.75%に据え
置き、景気減速もインフレに警戒感
南アフリカ準備銀行(中央銀行)は2015年3月26日、市場予
想通り政策金利を5.75%で据え置きました(図表1参照)。昨
年2014年7月に5.75%へ引き上げインフレへの警戒感を示し
て以来、政策金利を同水準に据え置いています。
中銀のハニアフ総裁は2015、16年の南アの経済成長率の
見通しをそれぞれ2.2%、2.3%と述べています。
どこに注目すべきか:
南アコアCPI、インフレ見通し、電力供給
最近、韓国やタイが予想外の利下げを実施する中、消費者
物価指数(CPI)で測定したインフレ懸念の後退、成長率も低
水準と似たような経済環境である南アの金融政策に注目し
ましたが、声明内容から判断して、当面政策金利を据え置き
つつ、引き締め姿勢を維持するものと見ています。
声明内容で注目したポイントは以下の通りです。
まず、インフレに対する南ア中銀の見方ですが、警戒心を幾
分高めたと見られます。足元の消費者物価指数(CPI)は前
年同月比3.9%と南ア中銀のインフレ目標(3%~6%)に収まっ
ています。しかし、原油輸入国である南アは原油価格下落
などを受けCPIが低下したと見られますが、コアのCPIはイン
フレ目標上限近辺での推移となっていることが(図表1参照)
警戒心を緩めない理由の一つと見られます。
また、前回2015年1月の声明に比べ、3月の声明では「前回
は引き締めペースを緩める余地も考えられたが、インフレ見
通しの悪化によりその可能性は狭まった」と述べるなどイン
フレ見通しを悪化させています。例えば南ア中銀の2015年イ
ンフレ予想は今回4.8%と1月の3.8%から引き上げており2016
年についても5.9%と1月時点予想の5.4%から引き上げていま
す。見通し変更の理由は食料品価格の上昇、原油価格の
今後の回復、電力供給不安などをあげています。
通貨ランドについて、南ア中銀は米国の金融政策の影響で
変動が高い展開を想定しています。仮にランド安進行となれ
ばインフレには痛手となるだけに、通貨安傾向も当面、金融引
き締め要因となりそうです。
次に景気見通しは2015年のGDP(国内総生産)成長率を2.2%と
見ており、前回と変更ありません。むしろ、南ア中銀は電力供
給を経済のリスク要因と指摘しています。南アに必要な電力
のほぼ全てを供給する国営電力会社の石炭の貯蔵施設が豪
雨で浸水したため、全国規模の計画停電を実施したことなど
電力供給不安が南アの経済成長の足かせとなっています。逆
に言えば(電力供給不足の解決は南アにとり喫緊の課題です
が)低成長の一要因は短期的とも考えられます(図表2参照)。
南アの金融政策について市場では利上げ、利下げ両方の声
がありましたが、利上げ含みでインフレへの警戒心を維持しな
がら当面据え置きがメインシナリオであると見られます。
図表1:南アフリカ政策金利と消費者物価指数の推移
(日次、期間:2010年3月26日~2015年3月26日、CPIは月次)
7.0
南ア政策金利(左軸)
消費者物価指数(CPI、前年同月比、右軸)
コア消費者物価指数(前年同月比、右軸)
%
%
6.5
6.0
CPI
5.5
コアCPI
直近
CPIは
3.9%
5.0
4.5
10年3月
12年3月
7.0
6.5
6.0
5.5
5.0
4.5
4.0
3.5
3.0
2.5
14年3月
図表2:南アの電力供給とGDPの推移
(月次、期間:2010年3月~2015年1月、GDPは四半期)
9
%
6
3
0
-3
-6
10年3月
電力供給(前年同月比、左軸) % 3.5
実質GDP(前年同期比、右軸) 3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
11年3月
12年3月
13年3月
14年3月
出所:,ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
※コメントは2015年3月27日時点
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新興国株式市場 注目のトピックス集
底打ち感が見られる原油価格
2014年来、大きく下落してきた原油価格ですが、リグ稼
動数の減少や石油企業の設備投資減などを背景に、
足元では1バレル50ドル近辺で推移しており、底打ち感
が見られます。
を受け、採算性の問題などから原油のリグ稼動数は、2014年
10月10日時点の1,609基から 2015年2月27日時点では986基
まで大幅に減少しています(図表2参照)。
原油価格に底打ち感
米国におけるシェール革命により原油生産(供給)が増加す
る一方で、世界経済の回復が緩やかで原油の需要は伸び
ない状況が続いていることや、2014年11月に開催された石
油輸出国機構(OPEC)総会において減産の合意に至らなか
ったことなどを背景に、原油価格は2014年半ばから大きく下
落しています。
ただし足元の原油価格の動きを見ると、日々の価格変動は
依然として大きいままですが、WTI(ウエスト・テキサス・イン
ターミディエート)先物ベースで1バレル50ドル近辺での推移
が続いており、2014年来の下落傾向に底打ち感が見られま
す(図表1参照)。
どこに注目すべきか:在庫の積み上がり、石
油企業の設備投資、米国のリグ稼動数
現在、底打ち感が見られる原油価格ですが、今後の動向を
考える上で、以下のような点が注目されます。
①在庫の積み上がり:シェール革命以降、米国での原油生
産は大幅に増加しています(図表2参照)。一方、需要は大き
くは伸びておらず、米国における原油在庫は4億3,407万バレ
ルと過去最高水準に達しており、原油価格にとってはマイナ
ス要因となっています。
②石油企業の設備投資:原油価格下落は石油企業の設備
投資にも影響を与えています。石油大手のBP(英国)は2015
年の設備投資計画を従来の240-260億ドルから200億ドルに
下方修正しました(2014年は230億ドル)。なお同社のダドリ
ーCEOは原油価格の回復に対して1バレル40-60ドルのレン
ジを脱するには3年かかるとの慎重な見方を示しています。
また、他の石油メジャーについても設備投資計画の縮小など
を発表しており、今後、原油在庫の調整が進むことが期待さ
れています。
③米国の原油リグ(掘削装置)稼動数:原油価格の下落など
足元、石油企業の設備投資やリグ稼動数が減少していること
から、米国における原油在庫の減少につながる可能性があり、
原油相場を占う上での注目材料といえます。原油価格につい
てはこれまでも変動が大きく、今後もオーバーシュート(価格
の行き過ぎた変動)する可能性もありますが、底打ち感は高
まっているものと考えます。
図表1:原油価格の推移
(日次、期間:2014年3月3日~2015年3月2日)
ドル/バレル
120
原油価格に
下げ止まり感
100
80
60
40
14年3月3日
14年7月3日
14年11月3日
図表2:米国における原油在庫と原油リグ稼動数の推移
(週次、期間:2012年3月2日~2015年2月27日)
1,800 基
在庫は過去
最高水準
1,600
億バレル 4.5
4.0
1,400
1,200
1,000
3.5
米国原油リグ稼動数(左軸) リグ稼動数は大
幅に減少
米国原油在庫(右軸)
800
12年3月2日
13年3月2日
3.0
14年3月2日
※米国原油在庫の期間は、2012年3月2日から2015年2月20日。
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
※コメントは2015年3月3日時点
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