4.米国経済:物価見通しに自信が持てれば、利上げ開始へ

グローバル時代の投資戦略
世界経済
4.米国経済:物価見通しに自信が持てれば、利上げ開始へ
過剰流動性
 2014年10-12月期の実質GDPは前期比年率+2.2%となり、7-9月期の同+5%から減速しました。海外
景気の減速やドル高が成長を抑制したものの、個人消費の勢いは続いているとみられ、今後も景
気拡大を牽引することが見込まれます。当面+2%程度の潜在成長率を上回る成長が期待されます。
 雇用の拡大による家計全体の所得の増加、株価や住宅価格の上昇による資産効果のほか、家計
の債務調整が順調に進んでいることなどから、個人消費は今後も堅調に推移するとみています。
市場の歪み
 純輸出は成長を抑制したが、個人消費が景気拡大を牽引する構造が続く
米国 実質GDP(前期比年率)と需要項目別寄与度
(%)
米国経済
10
8
6
4
2
0
-2
-4
-6
-8
-10
純輸出
(輸出-輸入)
在庫投資
2014年
10-12月期
+2.2%
設備投資
欧州経済
個人消費
日本経済
政府支出
実質GDP
(予想)
住宅投資
新興国
2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015
(年)
注)予想(2015年1-3月期~2015年10-12月期)は当社経済調査部による。
出所)米商務省より当社経済調査部作成
各国経済
 資産効果を背景に、底堅い個人消費 - 債務調整も順調に進捗
(兆ドル)
米国 個人消費と家計資産(前年差)
(億ドル)
主要金融資産
8,000 220
35
個人消費(右軸)
30
4,000 180
20
2,000 160
0
-6,000 80
投資戦略
1994
1998
2002
2006
96
-10,000 40
株式・投資信託(左軸)
-15
(=消費支出/可処分所得、右軸)
-8,000 60
住宅・不動産
(左軸)
-10
98
94
92
-2,000 120
-4,000 100
2010
100
家計の消費性向
140
5
-5
102
90
88
86
債務を増やし
消費を増加
家計の債務総額
消費を抑制し
/家計の可処分所得(左軸) 債務を返済
-12,000 20
1950 1960 1970 1980 1990 2000 2010
2014 (年)
(年)
注)左図の直近値は、個人消費は2014年10-12月期、家計資産は2014年12月。個人消費は、年率換算値の前年差を表示。
右図の直近値は、家計の消費性向は2014年10-12月期、家計の債務総額/家計の可処分所得は2014年12月。
消費性向とは、可処分所得のうち消費に回した割合。
出所)FRB、米商務省より当社経済調査部作成
巻末の「本資料に関してご留意頂きたい事項」および
「本資料中で使用している指数について」を必ずご覧ください。
19
84
82
80
KOKUSAI Asset Management Co., Ltd.
為替相場
10
0
家計資産総額
(左軸) その他(左軸)
(%)
消費を抑制して債務を返済する
傾向が終了しつつある可能性
6,000 200
25
15
米国 家計の消費性向と
債務総額/可処分所得
(%)
KOKUSAI Asset Management Co., Ltd.
世界経済
経済が正常な状態に回帰した後は、中長期的に+2%程度の成長に
過剰流動性
 企業活動の拡大に伴い、人(労働力)やモノ(生産設備)の動きも活性化してきています。経済全体
でも、家計の貯蓄超過、企業の投資超過がみられ、政府財政も改善に向かう状況が続いています。
経常赤字もGDP比で縮小傾向にあり、米国経済はバランスの取れた状態に戻りつつあるようです。
 米国の成長力は長期的には緩やかに低下しており、今後経済が正常な状態に回帰した後は、中
長期的に+2%程度の成長となることが予想されます。これは、先進国の中では比較的高水準です。
米国 設備稼働率、失業率、
ISM製造業景気指数
(%)
(%)
米国 部門別貯蓄投資バランス(GDP比)
100 10
80
企業
5
貯蓄
超過
70
60
(%)
0
50
2
40
4
0
投資
超過
-5
20
8
12
1970
1980
0
1990
2000
2010
(年)
政府
-15
1960
1970
1980
1990
2000
2010
(年)
 労働生産性と人口の緩やかな増加で、中長期的な成長率は+2%程度となる見通し
米国 実質GDP(前年比)
(%)
8
各国 潜在GDP成長率
(%)
2.5
1960~73年 1974~89年
平均+4.3%
+3.1%
2.10
4
1.5
1980
1990
2000
2010
-0.23
-0.20
0.08
-0.28
②15歳以上人口増加率
(年)
注)左図の直近値は、2014年。
右図の労働生産性上昇率はコンファレンスボード推計の2004~2013年の平均値、人口成長率は国連推計の2016~2025年の平均値。
出所)米商務省、国連、コンファレンスボードより当社経済調査部作成
巻末の「本資料に関してご留意頂きたい事項」および
「本資料中で使用している指数について」を必ずご覧ください。
20
投資戦略
1970
0.60
-0.23
為替相場
1960
0.53
イタリア
-6
0.50
ドイツ
2008年9月
リーマン・ショック
0.38
0.89
日本
冷戦終結
0.83
0.54
英国
-0.5
0.81
1.17
フランス
-2
潜在成長率(①+②)
1.07
0.66
0.66
カナダ
0.0
1989年12月
1.16
オーストラリア
0
1.35
0.52
米国
0.5
1973年10月
オイルショック
0.91
1.29
1.0
2
-4
①労働生産性上昇率
2.0
1990~2008年
+2.8%
2009~14年
+1.4%
6
2.09
主要金融資産
10
各国経済
注)左図の直近値は、2015年2月。
右図の直近値は、経常収支は2014年10-12月期、他は2014年7-9月期。経常収支は当社経済調査部で年率換算した値。
海外部門の貯蓄投資バランスは、経常収支の正負符号を入れ替えた値とほぼ一致する。
網掛けは景気後退期。
出所)ISM、FRB、米労働省、米商務省、NBERより当社経済調査部作成
新興国
1960
経常収支
-10
10
失業率
(左軸、逆目盛)
日本経済
30
6
欧州経済
ISM製造業景気指数
(右軸)
米国経済
家計
90
設備稼働率(右軸)
10
市場の歪み
 企業の生産活動拡大とともに、双子の赤字(経常赤字・財政赤字)も縮小へ
グローバル時代の投資戦略
世界経済
雇用の引き締まりが、徐々に賃金の上昇を加速させる公算
過剰流動性
 2015年2月の失業率は5.5%で、FOMC(連邦公開市場委員会)が長期的水準とする5.0~5.2%に近
づきつつあります。長期失業率の低下や就業率の上昇がみられるなど、労働市場の未活用資源
は着実に減少しています。今後は、雇用の引き締まりが賃金上昇を加速させることが期待されます。
 FRB(連邦準備理事会)は、賃金の動きを注視している模様です。足元の賃金の伸びは前年比+2%
程度ですが、将来の賃金上昇を予想する人々は徐々に増えており、今後の加速が見込まれます。
市場の歪み
月20万人超の雇用増が続き、失業率は5.5%へ低下
米国 雇用関連指標
(万人)
米国経済
80
60
40
20
0
-20
-40
-60
-80
-100
1990
欧州経済
14
20
(就職を希望しているが求職活動
15
をしていない者や、正社員の職を
希望しているパート勤務者などを
含む)
10
11.0%
5
非農業部門雇用者数(前月差)
5.5%
失業率
1995
2000
2005
2010
2015
(年)
(%)
長期失業比率(右軸)
12
日本経済
31.1%
8
6
1.7%
4
新興国
短期失業率(左軸)
3.8%
0
1990
1995
2000
2005
0
1990
50 70
1995
2000
2005
2015
2010
30
20
(年)
(年)
2015
労働参加率
(=労働力人口/16歳以上人口)
66
64
62.8%
62
就業率
10 60
0
2010
(%)
40 68
長期失業率(左軸)
2
広義の失業率
29.5万人
(%)
10
(%)
(=就業者数/16歳以上人口)
58
1990
1995
2000
2005
59.3%
2010
2015
(年)
各国経済
注)直近値は2015年2月。広義の失業率(U-6失業率)は(失業者+縁辺労働者+経済情勢のためパートタイムで就業している者)/(労働力人口+縁辺労働
者)。縁辺労働者は、現在就業も求職もしていないが就職を希望していてすぐ仕事に就ける状態にあり、過去12ヵ月に求職をしたことのある者。長期
失業率は27週間以上失業状態が続いている失業者(長期失業者)数で、短期失業率は失業期間が27週間未満の失業者(短期失業者)数で算出。長期失
業比率は失業者のうち長期失業者が占める割合。
出所)米労働省より当社経済調査部作成
 賃金の伸びは+2%程度だが、今後加速する兆しも
米国 平均時給、雇用コスト指数
主要金融資産
(前年比)
(%)
8
雇用コスト指数
(福利厚生)
7
(%)
40
30
雇用コスト指数
(全体)
6
米国 NFIB中小企業調査、コンファレン
スボード消費者信頼感調査(賃金関連)
NFIB中小企業調査
(3ヵ月後の雇用者報酬見通し、引き上げー引き下げ)
20
5
平均時給
+2.6%
3
+2.2%
投資戦略
+2.1%
2
1
+1.6%
雇用コスト指数
(給与・賃金)
3.1
0
-10
-20
コンファレンスボード消費者信頼感調査
(6ヵ月後の所得見通し、増加-減少)
0
-30
1990
1995
2000
2005
2010
2015
(年)
1990
1995
2000
2005
2010
2015
(年)
注)直近値は、平均時給は2015年2月。雇用コスト指数は2014年10-12月期。NFIB指数は2015年2月。コンファレンスボード消費者信頼感調査は2015年2月。
平均時給は民間部門の管理者除くベース。NFIB中小企業調査(3ヵ月後の雇用者報酬見通し)は、調査対象の中小企業経営者のうち今後3ヵ月内に雇用
者報酬の引き上げを計画していると答えた企業の比率から引き下げを計画していると答えた比率を引いた値。コンファレンスボード消費者信頼感調査
(6ヵ月後の所得見通し)は、今後6ヵ月後の所得が増加すると答えた消費者の比率から減少すると答えた比率を引いた値。
出所)米労働省、NFIB、コンファレンスボードより当社経済調査部作成
巻末の「本資料に関してご留意頂きたい事項」および
「本資料中で使用している指数について」を必ずご覧ください。
21
KOKUSAI Asset Management Co., Ltd.
為替相場
4
14
10
KOKUSAI Asset Management Co., Ltd.
世界経済
インフレ率が+2%へ向かう合理的な確信は得られるのか
過剰流動性
 足元のインフレ率は前年比+0.2%(2015年1月、個人消費支出デフレーター、総合)で、FRB目標の
+2%を下回っています。背景には、原油価格下落やドル高で財の価格が下落していることがありま
す。他方、賃金の影響を受けやすいサービス価格は前年比+2%程度で安定して推移しています。
 ドルの実質実効為替レートは直近の6ヵ月間で9%強上昇しており(2015年2月時点)、ドル高が景気
に与える影響が懸念されます。ただし景気腰折れをもたらすほどの大きな影響はないと考えます。
市場の歪み
 足元のインフレ率の鈍化は、財価格の低迷が背景 - サービス価格は安定
米国 個人消費支出デフレーター
(%)
米国 個人消費支出デフレーター
(総合とコア、前年比)
6
(財とサービス、前年比)
(%)
6
4
コア
4
サービス
3
インフレ目標
2
+2%
1
2
+1.3%
0
+0.2%
-1
-2
財
▲3.4%
-3
総合
-1
0
-4
-2
1995
2000
2005
2010
2015
-5
1990
(年)
1995
2000
2005
2010
2015
(年)
注)直近値は、両図とも2015年1月。
コアは、食料・エネルギーを除くベース。
新興国
1990
日本経済
1
+2.0%
欧州経済
3
米国経済
5
5
出所)米商務省、FRBより当社経済調査部作成
米国 ドル高の成長率押し下げの程度
米国 ドルの実質実効為替レート
140
0.0
ドル高
130
-0.1
110
-0.3
100
-0.4
90
-0.5
実質実効為替レートが
10%上昇したときの実質
GDP成長率への影響
-0.6
1980
1990
2000
2010
(年)
3
6
9
12 15 18 21 24 27 30 33 36
(ヵ月後)
注)左図は 1973年1月以降のデータ。直近値は2015年2月。
実質実効為替レートは、各貿易相手国と自国の物価上昇率の違いを調整した為替レートを、貿易額で加重平均して算出したもの。
右図は、FEDS Notes “November 2014 Update of the FRB/US model” に基づき当社経済調査部が作成。
出所)FRBより当社経済調査部作成
巻末の「本資料に関してご留意頂きたい事項」および
「本資料中で使用している指数について」を必ずご覧ください。
22
投資戦略
-0.2
為替相場
120
80
1970
(実質GDP、前期比年率ベース)
(%)
主要金融資産
(1973年3月
=100)
各国経済
 ドル高の影響は長引くが、景気の大幅な減速はもたらさない見通し
グローバル時代の投資戦略
世界経済
緩和的な金融環境は長期化し、リスク資産投資に好ましい環境が続く
過剰流動性
 FRBは、リーマン・ショック後の異常時対応として、資産買入を通じたバランスシート拡大による量的
金融緩和(QE)を実施、株価上昇と長期金利低下をもたらしてきました。米国を取り巻く不確実性が
和らぐ中、FRBは2014年1月以降資産買入額の縮小を開始。QE3は2014年10月で終了となりました。
 利上げ開始は2015年6月以降で、利上げペースも緩慢と考えます。金融緩和の長期化でグローバ
ルな資産市場に流動性が潤沢に供給され続け、リスク資産投資に好ましい環境は続く見込みです。
市場の歪み
 FRBはQE3(量的金融緩和)を終了、バランスシートは4兆ドル台半ばの水準で一定に
米国 FRBの資産、NYダウ、FF目標金利、10年国債利回り
(ドル)
24,000
米国経済
22,000
NYダウ
(左軸)
20,000
18,000
QE3
QE2
QE1
10年国債利回り
欧州経済
(右軸)
16,000
6
毎月450億ドル
長期国債買入
短期国債売却
5
政府機関債、
MBS(右軸)
1.8兆ドル
12,000
日本経済
8,000
7
ツイスト・オペ
14,000
10,000
8
MBS買入
2012年9月‐2013年12月 毎月400億ドル
2014年1月以降減額、10月終了
長期国債買入
2013年1月‐2013年12月 毎月450億ドル
2014年1月以降減額、10月終了
総額
6000億ドル
長期国債
買入
総額 1兆7250億ドル
政府機関債、MBS、
長期国債買入
(兆ドル)
(%)
FF目標
金利 その他
(右軸)
4
3
2
国債(右軸)
2.5兆ドル
(右軸)
新興国
6,000
1
0
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016 (年)
各国経済
注)QE1~3は量的金融緩和第1弾~第3弾。ツイスト・オペは満期の短い国債を売り満期の長い国債を買うことで長期金利の低下を意図する政策。
直近値は、FRBの資産は2015年3月11日(週次)、FF目標金利、10年国債利回り、NYダウは2015年3月18日(日次)。
FF目標金利は、2008年12月16日以降0~0.25%に設定されているが、図では0.25%と表示している。
MBSとは住宅ローン担保証券。
出所)Bloomberg、FRBより当社経済調査部作成
 利上げ開始は2015年6月以降か ― データを注視するFRB
主要金融資産
米国 金融政策における出口戦略の見通し
項目 年
2013
2013年 12月、
QE3
超過準備への
付利(IOER)と
リバース・レポ金利
の引き上げ
2014年を通じて、
段階的に縮小
2015
2014年10月、
QE3終了
2016~
利上げ後のFF金利の誘導目
標は、しばらくの間、0.25%ポ
イントの範囲で示される
利上げ局面は、2017~18年
頃まで続く見通し
2015年6月以降、利上げ開始か
◎現在のフォワード・ガイダンス
(先行きの金融政策の指針)
「雇用にさらなる改善がみられ、イン
フレが中長期的に2%へ戻るとの合理
的な確信が持てれば、利上げが適切」
投資戦略
国債・MBSの
再投資
利上げ開始後、再投資停止
経済・金融情勢を睨みつつ、満期償還分の債券の再投資を
徐々に停止(以降、FRBの資産は緩やかに減少)
債券の売却はせず(長期金利への影響を抑える意図か)
超過準備への付利(IOER)とリバース・レ
ポ金利を、利上げと同時に引き上げ
IOERはFF金利の上限を、リバース・レポ金
利はFF金利の下限を設定
リバース・レポは必要なくなれば停止へ
注)表は当社経済調査部の予想。
超過準備とは、民間金融機関がFRBの当座預金口座に持つ、法令で必要とされる額(所要準備)を上回る預金残高。
超過準備への付利(IOER)とは、民間金融機関の超過準備に対してFRBが支払う金利で、2015年3月18日現在0.25%に設定されている。
なお所要準備にも、現在0.25%付利されている。
リバース・レポとは、民間金融機関がFRBの当座預金口座に持つ準備預金等を、FRBが国債等を担保として借り入れる金融取引。
出所)FRB等より当社経済調査部作成
巻末の「本資料に関してご留意頂きたい事項」および
「本資料中で使用している指数について」を必ずご覧ください。
23
KOKUSAI Asset Management Co., Ltd.
為替相場
FF目標金利
引き上げ
縮小を決定
2014
KOKUSAI Asset Management Co., Ltd.
 FRBが利上げを開始する際は、超過準備への付利(IOER)とリバース・レポ金利を引き上げることに
よって、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利を一定の範囲に誘導していくものとみられます。
(億ドル)
米国 FRBが保有する
国債・MBSの償還額
(兆ドル)
6
6,000
2014年10月、国債・MBSの買入停止(QE3終了)
2016年前半頃、国債・MBSの再投資
減額を開始。バランスシート縮小へ
5
予想
4
3,000
3
2,000
2
1,000
1
2021年頃、バランス
シート正常化。以降、
銀行券の伸びに応じ
国債を買入
MBS
銀行券残高
日本経済
国債
0
2018
2020
2022
2024
(年)
0
2006 2008 2010 2012 2014 2016 2018 2020 2022 2024 (年)
注)両図とも、Seth B. Carpenter et al. “The Federal Reserve’s Balance Sheet and Earnings: A primer and projections” FEDS 2013-01 Federal Reserve Board、及び
FOMC出口戦略(2014年9月17日公表)等に基づき、当社経済調査部が一定の前提の下で推計したもの。右図の予想は2015年3月以降。
右図のQE3縮小・バランスシート縮小開始等の予想時期は、当社経済調査部の予想。銀行券残高は年率5.6%程度(2001年以降平均)で延伸。
MBSとは住宅ローン担保証券。FRBは、国債・MBS以外に政府機関債や金、貸出等で総額約2,764億ドルの資産を持つ(2015年2月末時点)。
 利上げ開始後は、超過準備への付利とリバース・レポ金利がFF金利の上下限に
各国経済
出所)FRBより当社経済調査部作成
新興国
2016
欧州経済
4,000
2016年後半頃、再投資を全て停止
米国経済
MBSの償還
国債の償還
5,000
米国 FRBが保有する
国債・MBSの残高
市場の歪み
 2016年~2020年代初頭にかけて予想される、FRBのバランスシート縮小
過剰流動性
 FRBは現在、保有する国債・MBS(住宅ローン担保証券)が償還を迎えると、同種の証券に再投資し
ていますが、金融政策が引締め方向に向かうにしたがい、再投資は徐々に停止される予定です。
そのため、以降はFRBのバランスシートは縮小、2021年頃に2兆ドル程度で正常化する見込みです。
世界経済
金融政策正常化の過程では、IOERとリバース・レポが活用される見通し
米国 FRBの各種政策金利とFF実効金利
1.00
主要金融資産
(%)
FOMCから予想される利上げのイメージ
超過準備への付利(IOER、FF金利の実質的な上限)と
リバース・レポ金利(FF金利の実質的な下限)を引き上げ
(金利差は0.25%ポイント)
0.75
0.50
FF金利の
誘導目標の
範囲
超過準備への付利(IOER)
FF実効金利
リバース・レポ金利
0.00
2013
2014
2015
2016
(年)
注)超過準備への付利(IOER)とは、民間金融機関の超過準備に対してFRBが支払う金利で、2015年3月18日現在0.25%に設定されている。
リバース・レポとは、民間金融機関がFRBの当座預金口座に持つ準備金等を、FRBが国債等を担保として借り入れる金融取引。
図では現在(2015年3月18日時点)の主要なリバース・レポ取引である翌日物取引の金利を示している。
FOMC中枢メンバーの見通し(2015年3月19日以降)は、各種資料より当社経済調査部が推測したもの。
2015年6月以降の利上げ開始を予想しているが、便宜上、利上げ開始を9月と仮定して作図している。
出所)FRB等より当社経済調査部作成
巻末の「本資料に関してご留意頂きたい事項」および
「本資料中で使用している指数について」を必ずご覧ください。
24
投資戦略
0.25
為替相場
FOMC中枢
メンバーの見通し
グローバル時代の投資戦略
世界経済
雇用・物価見通しに自信を深めつつ、FRBは慎重に利上げを進める見込み
過剰流動性
 失業率の低下が続き、雇用の改善は今後も進む見通しです。インフレ率が中長期的に目標の+2%
へ向かう合理的な確信を持てば、FRBは利上げを実施し金融政策の正常化に踏み切ると考えます。
 ただし住宅市場等の懸念もあり、利上げペースは緩やかになる見通しです。ドル高や海外景気減
速により景気が下振れれば利上げペースはさらに遅れる可能性もあります。短期金融市場ではそ
のようなリスクも考慮され、予想される利上げペースはFOMCの見通しの中心を下回っています。
市場の歪み
 失業率が長期水準を下回って改善し、インフレ率が+2%に向けて上昇する可能性
米国 FOMCの経済見通し
米国経済
2015年
実質GDP
2016年
(単位:%)
2017年
長期
+2.3~ +2.3~ +2.0~ +2.0~
+2.7
+2.7
+2.4
+2.3
4.9~
5.1
+0.6~ +1.7~ +1.9~
+1.9
+2.0
+0.8
+2.0
インフレ率
(コア)
+1.3~ +1.5~ +1.8~
+1.4
+1.9
+2.0
+2.0
2003年1月
2017
2016
前 1.6
年
1.4
比
1.2
%
1.0
年末
2015
●はFOMC
の見通し
年末
2015年1月
失業率の長期見通し
5.0~5.2%
0.8
新興国
※失業率が長期の水準以下に改善
2008年10月
年末
)
インフレ率
インフレ目標
+2%
2008年9月
、
日本経済
5.0~
5.2
◆リーマン・ショック後(2008年10月~)
、
5.0~
5.2
●リーマン・ショック前(2003年1月~08年9月)
イ 2.6
ン 2.4
フ
レ 2.2
率
2.0
コ
ア 1.8
(
欧州経済
4.8~
5.1
失業率
米国 失業率とインフレ率
2.8
4
5
6
7
8
失業率(%)
9
10
11
各国経済
注)左図は、FOMC(連邦公開市場委員会)の見通しの中心的傾向(Central Tendency、2015年3月18日時点)。実質GDP、インフレ率は各年の10-12月期の
前年比、失業率は各年の10-12月期の水準を示す。インフレ率は、両図とも個人消費支出(PCE)デフレーターによる。FRBはインフレ目標としてPCEデ
フレーターの総合を採用しているが、右図のインフレ率は簡便化のためコアを使用している。コアは、食料・エネルギーを除くベース。右図のFOMCの
見通しは、左の見通しの範囲の中心値。2015年3月10日現在、2015年2月時点の失業率(5.5%)は公表されているが、同時点のPCEデフレーターは未公
表のため、右図の直近値は2015年1月となっている。
出所)FRB、米商務省、米労働省より当社経済調査部作成
 景気・物価動向をにらみ、利上げは慎重なペースで実施される見通し
米国 政策金利(FF目標金利)の見通し
主要金融資産
4.5
為替相場
(%)
2.5
4.0
●は各FOMC参加者の政策金利見通し
(2015年3月時点)
3.5
3.5
3.0
1.5
投資戦略
1.0
0.5
0.0
FF目標金利
(年間1%利上げする場合
:FOMCで2回に1回0.25%
ずつ利上げする場合)
FOMC中枢メンバー
エバンス・シカゴ連銀総裁
コチャラコタ・ミネアポリス連銀総裁
2012/12
FF金利先物
(3月18日時点)
2013/12
2014/12
2015/12
2016/12
2017/12
2018/12
2019/12
(年/月)
注)FF目標金利は、当面の間、0.25%ポイントの範囲で示される見通し。
上図の折れ線は、IOER(当座預金の超過準備への付利)で、FF目標金利の上限としての役割が期待されている。
FOMC中枢メンバー及び地区連銀総裁の位置は、各種資料より当社経済調査部が推測したもの。
2015年6月以降の利上げ開始を予想しているが、便宜上、利上げ開始を9月と仮定して作図している。
出所)FRB、Bloomberg等より当社経済調査部作成
巻末の「本資料に関してご留意頂きたい事項」および
「本資料中で使用している指数について」を必ずご覧ください。
25
KOKUSAI Asset Management Co., Ltd.
2.0
ジョージ・カンザスシティ連銀総裁
プロッサー・フィラデルフィア連銀総裁
フィッシャー・ダラス連銀総裁
ラッカー・リッチモンド連銀総裁
KOKUSAI Asset Management Co., Ltd.
世界経済
利上げ局面でも、長期金利の上昇は限られる可能性
 米国債は高格付でありながら、海外金利の低下で相対的に高利回りとなり、魅力が高まっていま
す。グローバルな投資資金の流入が、米国債利回りを一定程度抑制しているものと考えられます。
(%)
米独の10年国債利回り、FF目標金利
10
米国経済
9
ドイツ10年国債利回り
8
7
5
欧州経済
6
米10年国債利回り
4
2
利上げ開始
1994年
2月4日
1
1995
2000
2005
2010
2015
新興国
1990
2004年
6月30日
FF目標金利
0
日本経済
1999年
6月30日
3
(年)
(%)
(%)
10
1994年2月4日
10
9
イタリア
9
9
8
8
7
7
7
高利回り
カナダ
米国 6
6
フランス
ドイツ
5
3
5
カナダ
日本
フランス ドイツ
B
B
B
a
3
a
2
a
1
A
0 1a 2a 3a 4A 5A 6A 7Aa 8Aa 9Aa 10111213
(格付)
a
3
2
1
3
2
1
a
5
4
2
日本
1
1
0
0
B
B
B
a
3
a
2
a
1
A
0 1a 2a 3a 4A 5A 6A 7Aa 8Aa 9Aa 10111213
(格付)
a
3
2
1
3
2
1
a
米国
イタリア
英国
フランス
日本
B
a
a
3
B
a
a
2
B
a
a
1
カナダ
ドイツ
A
A
A
A
3
2
1
a
0 1 2 3 4A 5A 6A 7a 8a 9a 10111213
a (格付)
3
2
1
注)上図の直近値は、2015年3月18日。下図の格付はムーディーズによる。
1994年2月4日時点のカナダの格付は、同時点でムーディーズによるものはないため、同年6月2日の格付取得時点のものを用いている。
出所)FRB、Bloombergより当社経済調査部作成
巻末の「本資料に関してご留意頂きたい事項」および
「本資料中で使用している指数について」を必ずご覧ください。
26
投資戦略
高格付
低格付
6
3
3
2
1
米国
イタリア
4
低利回り
2
0
英国
為替相場
4
英国
2015年3月18日
10
主要金融資産
8
2004年6月30日
各国経済
各国の10年国債利回りと格付
(%)
市場の歪み
 海外金利低下で相対的に高利回りとなった米国債に、世界の投資資金が流入か
過剰流動性
 利上げは近づいているものの、長期金利の上昇は抑制されています。FRBの利上げペースが年間
1%ポイント程度という非常に緩慢なものになるという見方が強いことが背景のひとつですが、ユー
ロ圏や日本の緩和的な金融政策が、米国債の利回りにも影響していることも考えられます。