Ⅰ. 2015 年に変化したポイント:世界的な金融緩和と米国利上げ観測の

グローバル時代の投資戦略
Ⅰ. 2015年に変化したポイント : 世界的な金融緩和と米国利上げ観測の台頭
2015年に入り変化したポイントは「世界的な金融緩和」と「米国利上げ観測の台頭」です。
1989年のベルリンの壁崩壊を契機にグローバル経済化が進行し、通常は世界景気の連動性が
高まり、金融政策の方向性も一致しやすい筈ですが、今回は国ごとにばらつきが見られます。
この点に対する解釈は、新興国BRICsのうちインドを除く中国・ロシア・ブラジルでは景
気が低迷する一方、米国が世界景気を牽引、日欧も緩やかに成長加速し、世界経済は2014年
+3.3%、2015年+3.5%、2016年+3.7%(IMF見通し2015年1月)へ拡大が見込まれることです。
Ⅱ. 世界的金融緩和は世界不況を示唆しない : 物価と為替に配慮した措置
「世界的な金融緩和」の背景は、世界景気の失速リスクが強まったからではなく、①昨年
来の原油安に伴う物価下落に対応した措置であること、②世界的金融緩和に自国だけ追随し
ないと自国通貨高で輸出競争力が弱まるリスクを回避したかったこと、が挙げられます。
世界の金融政策は、①通貨防衛の高金利国(ロシア等)、②一時的利下げ国(多数)、③
利上げ休止国(フィリピン等)、④利上げ開始国(米国・英国等)、⑤量的緩和国(日本・
ユーロ圏等)に大別され、①の高金利国以外は2008年金融危機からの正常化過程にあります。
Ⅲ. 米国利上げは金融引き締めではない : カネ余り続き、良好な投資環境に
米連銀は、6月16-17日または9月16-17日のFOMC(連邦公開市場委員会)で利上げを開始
する見通しです。しかし、米連銀が保有している米国債等の売却はせず、量的緩和効果を温
存させることで利上げの影響を和らげ、超緩和から数年かけ慎重に中立状態へ戻す予定です。
さらに、日本では年間約80兆円の日銀資産購入、欧州では年間約7,200億ユーロ(≒93兆円)
の欧州中銀・ユーロ加盟中銀の資産購入が予定されるため、米国が金融政策の正常化を進め
ても世界的カネ余りは続き、今年来年とも余剰資金が資産価格を押し上げると予想されます。
Ⅳ. 過剰流動性の弊害には注意 : 低流動性資産には選別投資が必要に
ただし、過剰流動性がもたらす市場の歪みには注意が必要です。安全資産である主要国の
国債利回りはゼロないし一部マイナスに突入、さらにジャンク債・レバレッジドローン・米
国の自動車ローン・学生ローン等では、拡大が行き過ぎている兆候も散見されます。
また、寡占化した米国投信業界では、超低利で調達した資金を低流動性資産・低クレジッ
ト資産に振り向け収益を上げる動きも見られますが、外的ショックで解約が殺到した場合、
2007年8月“パリバショック”のような解約凍結リスクもあり、事前防止策が求められます。
Ⅴ. 日本経済 : 日銀の金融緩和効果で、消費増税の影響薄れ成長軌道へ
昨年4月の消費増税による景気下押し圧力は残り、また原油安をうけ春先から消費者物価
(生鮮食品除く)は前年比マイナスに陥る見通しです。しかし、日銀の思惑通り実質長期金
利(=名目長期金利-予想インフレ率)は低下し、日本経済は着実に成長しています。
Ⅵ. 投資戦略 : 実質金利の低下で、投資対象はインフレ対応型資産に注目
主要国で実質長期金利の低下が進むと、安全資産に安住していた過剰流動性は、一定のリ
スクを甘受することでインフレによる資産の目減りを回避、インフレ率以上の資産拡大を目
指すようになります。配当利回りに着目しますと主要国株式、リート等が注目されます。
米国利上げが始まると選別色が強まり、経常赤字・インフレ・外貨準備不足の新興国資産、
低流動性資産、低クレジット資産は敬遠される恐れもあります。他方、原油需要期に入る夏
場から原油価格が持ち直す場合、資源国通貨やMLP等の資産が反発する可能性もあります。
巻末の「本資料に関してご留意頂きたい事項」および
「本資料中で使用している指数について」を必ずご覧ください。
1
KOKUSAI Asset Management Co., Ltd.
実際の生産活動が潜在成長力を下回るうちは、引き続き日銀緩和が有効に機能し、消費・
設備投資・輸出を軸に生産活動が潜在成長力に近づくでしょう。そして、実際の生産活動が
潜在成長力に達すると、規制緩和で潜在成長力押し上げを目指す段階へ移行する見通しです。